心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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Let's enjoy 構造計算④  (^-^)v

2006年03月19日 | うんちく・小ネタ

今日は子供と凧揚げ ヽ(^▽^)ノ をしました。でも、すっごい風で、あっという間に木に引っ掛かって絡まってしまい、あえなく終了。小さいことは全く気にしない豪快な?息子は、『あっはっは~』と笑ってました。『名は体をあらわす』とはいいますが、人間の性格とは面白いものですね。

さて、Let's enjoy 構造計算④。

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1.一般事項、2.耐力壁の設計に続いて、3.各部の設計を提示します。3.1.で軸力の算出を行います。軸力とは、平たく言えば、柱にかかる荷重のこと。どの柱に一体どれ程の荷重がかかってくるかを計算して行く訳ですね。設計士は荷重(かじゅう)と言いますが、大工は”荷(に)”と言ったりします。『荷がかかる柱』というように。実際、木材一本一本を手に持ったり、肩で担いだりしながら墨付けや刻み(きざみ:墨付けがなされた木材を鋸や鑿等で工作するこという大工用語)を行うので、身体感覚に大変近い表現がされているのだと思います。

で、3.1.1.で水平力による耐力壁の応力を提示します。ここで示されているのが、簡易軸組み図です。筋違い(筋交いではないよ)が一方向にしか示されていませんが、これはソフト上だけの表記で、現実には圧縮筋違いと引っ張り筋違いがあるので、/と\が同数になるように設計しなければなりません。(こういうこともご存知無い設計士、しかも一級にも、ざらにいらっしゃいます(・・;)

3.1.2.で柱の長期軸力と短期軸力を提示します。長期とは地震や台風や雪が無いような状況下での構造の有り様、短期とは地震や台風や雪があるような状況下での構造の有り様(大変乱暴な言い方)です。ですからこの項では、長期、積雪時、水平力(地震や風による横から建物に加わる力のこと)について、軸力を見る訳です。大雪が屋根に積もっている時に、暴風雪が吹き荒れ、そこに震度7の大地震が来た時が建物にとって構造的に最も過酷な状況な訳です。そんな状況はまず無いでしょうが、それでも絶対に無いとは言い切れない訳でして、品確法では『500年に一回あるかないかの…』といった表現で、構造設計のグレードをランク付けしています。

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それらを平面図上の柱位置(座標軸として表記)に落としこんだものがこれらです。左から長期鉛直軸力、積雪時鉛直軸力、水平力による軸力。そして右端は計算により判明する、柱が重力に逆らって上方へ上がろうとする力『引き抜き力』を示しています。これが多くの方の理解に苦しむ力のようです。さて、興味ある方は、これらから、長期軸力と短期軸力の違いを見てみて!。きっと、普段の設計や施工が、いかに根拠も持たずになされているかを”目からうろこが落ちる”ように気付くかもしれないからです。また、それに気付くことが出来れば、設計や施工が本当に理解出来るようになるだろうし、建築主への職能上の最大限の貢献、ひいては社会貢献のよろこびで仕事がとにかく楽しい・愉しいものになるに違いありません。(^-^)v  仕事はね、どうせやるなら、たのしんでやろうよ!

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これらを踏まえて、3.2.で柱の設計、3.3で梁・桁・胴差の設計、3.4.でたるき・母屋・根太・他の設計を行います。柱の設計についていえば、仕様規定として建築基準法施行令第43条に基づいて小径(断面寸法のこと)を決定するのがポピュラーなのですが、性能規定という道が2000年の法改正で開かれたのだから、設計士はジャンジャン構造計算を行って、安全性を計算で証明した上で、感性に訴えかけてくるような素晴らしいデザインをして欲しいものです。デザインとはネ、構造だってデザインなんですよね。パリのポンピドーセンターぐらいは知ってるでしょ?レンゾ・ピアノ氏やリチャード・ロジャース氏、ノーマン・フォスター氏とかネ。私は今大工やってますけど、彼らの講演行きましたよ。関空はこの目で体験もしたし。

ところで、特に注意すべきは3.3梁・桁・胴差の設計です。構造計算で算出した断面寸法さえ守れば必ずしも良い訳ではないんですね。それがOKかは材料次第、それを扱った職人次第といった要素が極めて大なのです。それは、木が生物材料だからです。つまり、それが1番玉なのか2番玉なのか3番玉なのか、木には腹と背があり、『背に腹はかえられない』訳でして、単純梁で使用するのか、連続梁で使用するのか、跳ね出し梁で使用するのか、また、集中荷重がどこに下りてきてどこから降りていくのか、単独材なのかそれとも他材との絡みはあるのか、根太彫りはあるのか、etc.適材適所を見極めなければ、計算で出た設計が担保出来ない複雑な事情があるのです。計算では、50%割り増しの安全率を掛けてはいますが、それよりもはるかに大事なのが、”人”なのです。     う~ん、だからネ、木造は面白いんですよね (^-^)v

続く。


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