遠く離れた地で、この古い写真を目にした時、私は懐かしくも切ない思いに駆られました。
清楚で、たおやかな、亜麻色の髪の乙女。歴代のイタリア大使のご家族の方でしょうか。
が、いつか何処かでお逢いしたような気がしたのです。
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例えると、《銀河鉄道の夜 監督:杉井ギサブロー 1985年》【新世界交響楽】より。
~BGMで新世界交響曲第二楽章がオーケストラ編成で流れている~
ジョバンニ 「あっ!?」
女の子 「あら!?」
カムパネルラ 「なんだい?」
女の子 「男の子がいたの、小さな家の前にひとり」
カムパネルラ 「そうかい」
女の子 「私ね、あの子を知ってるわ」
ジョバンニ 「僕も、知ってる!」
カムパネルラ 「きっと、どこかで逢っているんだね」
ジョバンニ 「うん」
女の子 無言でうなずく
・・・
記憶とは曖昧なものでもあるけれど、同じ思いは、この物語中にも。
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古い写真の場所は、奥日光中禅寺湖畔《イタリア大使館別荘記念公園(HPはこちら)》。
2024年6月15日(土)この建築と周辺だけで、日がな一日、佇んでいました。
草木、深い森や山並み、透明な湖、カジカ蛙や野鳥の合唱、梢の葉擦れや湖面の波の音、
風の香り、季節感、ゆっくりと、とうとうと流れる時の感覚・・・、感じる、観じる。
均質で画一的な大量工業生産品で固められている現在の都市・住・生活環境では、
ここで得られる様な、心地良いゆらぎは無い。ほっこりとした気持ちにはならないなぁ。
人間が都市で生活していく為のノイズは、ここには無い。
そこで何かに急かされるこころのあり様は、ここでは無い。
感性が澄んでいく。おおらかな自然に包まれて。
森羅万象、平衡を感じる。魂もここでは中心に還っていく。土に還っていくようだ。
この環境、心地いいなぁ、ずーっと居たいなぁ、と思う。しみじみ。
建物を残してくれて、一般公開もしてくれて、イタリア大使館と栃木県に、心の底から感謝します。
大自然の只中、まさに環境と共生する建築。自然と一体となっていて、紛れもない数寄屋です。
設計者はアントニン・レーモンド(1888~1976)。1928年(昭和3年)創建 木造。
さすがデザインの国イタリアが選んだ建築家。魂のこもった設計は、溜息が出るほどに素晴らしい!
自然の森にしか感じないほど、建築が環境と調和しています。意匠を凝らした外観なのに。
6月15日は栃木県民の日で、埼玉県民の私も入館無料でした。島根県からの老夫婦の方とご一緒に入館。
つくづく、
建築家の設計理念と意匠を受け入れた、デザインの国・文化先進国イタリアのものづくり精神には感銘を受けます。
外壁は、杉皮と屋根のこけら葺き(トントン葺き)に使用する薄板(椹:さわら)の面材と竹の押縁。
創建時の屋根は、こけら葺きだったようだ。軒天は、杉皮の面材と竹の押縁。軒の出も深い。
建材は全て建築地近辺の自然素材。地産地消の時代の家の作り方は、環境へのやさしさ最上級でしょう。
室内に入っても森の中に居る印象。内外装も、建築家として地元職人と意見交換して、設計したそうです。
居間と広縁は天井照明なし。心の豊かさの為に、部屋の隅々まで煌々と平板状に明るくする事を避けています。
私は懐かしの木造校舎で学んだ経験がありますが、教室と廊下と間仕切りの木製窓の空間構成を思い出します。
栃木県の計らいでイタリア製ソファは自由に座って良く、私、朝9時から夕方5時迄佇んで、心遊ばせていました。
設計次第で『こうも心豊かになれるものなのか!』 成れるものならイタリア大使になりたかった(笑)
建築家は、窓からの風景を【絵画】にデザインします。ピクチャーウインドウ②(2024年6月17日記事)
溜息が出るほど美しい。しかも肌に心地良く、優しいほのかな風が、窓を通して建物内を通り抜けています。
豊穣で至福の時を過ごすことが出来ました。建築でこれほど感動し、琴線に触れた事は、そうはありません。
次は盛夏、避暑を体験しに訪れたいと思っています。5月~11月までは無休とのこと。栃木県に感謝ですね。
参考過去記事:2012年7月7日【環境共生住宅の設計にあたり】
【データ】
自宅を朝5時に125ccスクーターで出発。下道を走り、現地到着8時45分位。
朝9時の開館と同時に入館。食事時は一旦外出して湖畔のベンチで佇んだり、湖畔を散歩したり、
近隣のイギリス大使館別荘記念公園を見学に行く。その後また戻り、夕方5時の閉館まで佇む。
華厳の滝も戦場ヶ原も中禅寺湖も観光せず、日がな一日、ほぼイタリア大使館別荘記念公園内に居た。
埼玉県狭山市の帰宅は夜10時頃。
走行距離305.7km 消費ガソリン4.84L(770円) 燃費63.1km/L
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