心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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木組みによる隅木⑤振れ隅木(都市型)その2

2016年08月08日 | 日記・エッセイ・コラム

『化粧振れ隅木の製作承ります』(反り軒を除く木造一般住宅の振れ隅木関連材の手墨・手加工)。

 

☆振れ隅木編☆

2016/08/04【木組みによる隅木④振れ隅木(都市型)その1

2016/08/08【木組みによる隅木⑤振れ隅木(都市型)その2

2024/04/21【木組みによる隅木⑥振れ隅木(薬研・都市型)その3

 

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ちょいとややこしい(+o+)、 振れ隅木(都市型)のお話し。

【2016年8月4日 木組みによる隅木④振れ隅木(都市型)その1】の続編。

 

今回は部材ではなく、振れ隅木の上棟後現場の紹介。

但し、天井下地施工の進捗で、シンプルな構造現わしになっていないので、分かりにくいのだけれど(^_^;)

 

まず、家の屋根・小屋伏図。  山あり谷ありの振れ隅木。 楽しいな (^^♪ 

しかも ”小屋束が無い” 意匠設計。木造伝統構法ではなくて在来構法なのに。しかも3寸5分仕様。

『こまったちゃん、またキタ━(゚∀゚)━!』 

 

都市型デザイナー設計士(一級建築士であっても)は、鉄骨造と木造を十把一絡げに考えているようです。

木造一般在来構法の接合部は ”ピン” (プレカット柱のほぞ長さは4.5~9センチ程度ですよ!)なのに。

 

剛接合には成り得ないので、スリーヒンジラーメンにはなりません。だから鉄骨のつもりで木造を考えてはダメ。

鉄骨でコストが合わなかったからただ木造に変更した場合、大地震が引き金で、あなたが殺人犯かも。(・・;)

 

”建築士法第2条の2【職責】”を全うしましょうよ。自分のデザインを追求したい気持ちは理解出来ますけど。

今回は「出来ない」と誰もがさじを投げたようなので、私から構造上のアドバイスを提案・承諾で、実施と相成りました。

 

さて画像。棟木を支える小屋束が無い構造。これも私は過去に完成体験済み o(^▽^)o

しかも振れ隅木、それも山あり谷あり。構造一級建築士と宮大工のスキルが無いと安全な構造に出来ないのでは?

ね、棟木を支える小屋束が無いでしょ。\(◎o◎)/!

 

黒い棒状の物、これが意匠設計士に私から譲れない構造で助言した”金属製タイ・バー”。これで三角形が成立。

太い柱と大きい梁成の伝統構法ならまだしも、一般在来構法では三角形を構造で作らなければ不安定構造物でアウト。

 

”金属製タイ・バー” はもっと下、小屋桁天端レベル近辺に入れる様に助言したのだけれど、意匠で嫌との事。

他に、伝統構法の木組み等による架構方法の変更と接合部の準・剛接化を助言したのも、コストで却下。

 

意匠設計者は【建築士法第20条の2】によらず、木造でも変わった事をしたい場合には、構造設計一級建築士、

その中でも特に、木造に造詣の深い建築士に計画段階で関与して貰った方が良いですよ。今回却下ずくめだし。

 

さて、振れ隅木の頂部・拝み部分。架構方法が分かりますか?(^-^)凸

L字状の片側の棟木を跳ね出させて、そこに山振れ隅木と谷振れ隅木ともう片側の棟木を乗せる架構。\_(・ω・`)

 

模型ではありません、現実の構造です。手品みたいでしょ? 小屋束が無いのに屋根がちゃんと架かっているって。

それに、見るからにややこしくて面倒臭そうでしょ? ほんと、”ホセメンドクセ”(クレヨンしんちゃん観てます?) (^_^;)

 

でも”完全プレカット”です、これ。登り梁、配付け垂木、構造金物、金物の添付、全て私一人。仮組みも無し。

但し、振れ隅木のM16拝みボルト1本を現場対応したいとの申し出が設計士からあり、墨だけ・加工残しが1箇所あり。

 

高難易度の都市型振れ隅木であっても、私は構造金物の為の墨付け・加工を行います。

画像左が谷振れ隅木と登り梁と小屋桁の入隅接合部。画像右は・・・忘れた(^^ゞ

 

現場対応でなんか出来ないよねぇ、これだけ大きくて在来方式からかけ離れた架構になっちゃうと。

 

「構造金物関連のプレカットは出来ません」って言ったら、現場の大工はやっぱり釘だけで済ませてしまうのでしょうか?

 

過去記事【2012年6月7日 木組みによる隅木(隅木の金輪継ぎも)】参照。 ”ぶっつけ仕事” (帯金物は◎)。

 

振れ隅木頂部・拝み部分。勾配のある材が振れ隅木。構造金物部もご覧の様に、全て事前に墨を出して手加工。

 

画像保存して拡大して墨線を見て欲しい。振れ隅木の拝み用M16ボルトの墨線が2本あるうち、下側が現場対応の墨。

ところが現場で大工は施工しておらず、後日、振れ隅木側面にM12ボルト(羽根金物併用六角ボルト)を施工した次第。

 

左画像で、手前の羽根金物+M12ボルトがそれ。すぐ上のM16鉛筆線が設計墨。山振れ隅木と谷振れ隅木の緊結用。

力の偏心が発生しない様、材心に上下2本構造設計したのですが、『現場でするから』って、やっぱり未施工だった(・・;)。

 

代替策の両側面M12ボルト追加は、耐力大のM16用座金がM12かんざしに変更になってしまった不安があるなぁ。

後の祭りで現場対応したものの、その後、事無きは得たらしく、何とか完成したそうです。良かったですね。

 

ふぅ~ (^^ゞ

大工と雀は軒で泣く(鳴く)といいますが、今回の様な泣き(>_<)方もある訳です(笑)

 

さて、これだけの高難易度仕事、私一人の墨付けと刻みで一体何日(何人工)かかったと思いますか?

びっくりしますよΣ(゚д゚lll) コストダウンは仕事に精通していて、高い技術・技能で対応出来る者でなければ難しいでしょう。

 

『化粧振れ隅木の製作承ります』

(反り軒を除く木造一般住宅の振れ隅木関連材の手墨・手加工)。

 

参考過去記事(ややこしい隅木の参考例)

【2012年6月 7日 木組みによる隅木(隅木の金輪継ぎも)

【2012年6月25日 木組みによる隅木②捻組と渡腮

【2012年7月 6日 木組みによる隅木③大入れ兜

【2016年8月 4日 木組みによる隅木④振れ隅木(都市型)その1

 

追伸:

私、白状します。今回一箇所、登り梁のタイバー用穴と座彫りを開け忘れて/(-_-)\、現場で開けました。(^_^;)

現場の画像が撮れたのは、そのおかげ?です。

 

 

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【追記 2024年3月17日】

 

比較の為、建売住宅の隅木を掲載しておきます。振れ隅ではなくて棒隅ですけど。

一目瞭然。

 

日本で一番施工棟数が多いといわれるパワービルダーの施工現場。

部位は隅木と棟木の接合箇所。プレカット加工。

それにしても見事なまでの建売的施工(゚∀゚ ;)

かすがい金物が施工されているだけマシですが。

 

但しかすがいの使い方が適切ではありません。

材の上端に打っているのが、アウト。

 

下の画像が、国が指導するこの様な部位での適切な使い方。

《写真でみる接合金物の使い方》(材)日本住宅・木材技術センター刊より。

材の上端の表現は何処にもありません。

 

かすがいは『材が割れないよう』との文言が最も重要です。

材の割裂破壊=脆性破壊=強度が一瞬でゼロになる破壊だから。

 

それに、かすがいは強度最低金物なんですよね。

 

短期許容耐力はべいまつ類で1.27kN、べいつが類で1.18kN、すぎ類で1.08kN。

《平成12年建設省告示第1460号に対応した木造住宅接合金物の使い方》

(財)日本住宅・木材技術センター刊による。

 

N値計算では、N=0以下の部位にしか使えない最低耐力金物。

金物補強といっても、最低の補強にしかならない訳です。

 

これが現在のプレカット加工とぶっつけ大工による、

建売住宅・分譲住宅・一般住宅の現実です。

 


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