心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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合掌(トラス)その8 構造設計事務所編②

2016年08月01日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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【2016年7月27日 合掌(トラス)その6 木造トラス施工図

【2016年7月29日 合掌(トラス)その7 構造設計事務所編①】の続編。

 

2015年に、全て大工による墨付け・加工で製作した木造トラス(合掌)。

製作者である私が設計監理で立ち会ったその建て方・施工現場を、画像で紹介。

 

”設計をする大工・大工をする設計士” による、

建築士法第2条の2【職責】を果たす仕事の一部を、垣間見て欲しいと思います。

 

埼玉県所沢市立富岡保育園建替え(建築)の木造トラス。 【富岡保育園HPはこちら

構造設計は、㈱K構造研究所です。

 

今回は【トラス1】 合計4セット。 材は杉無垢材。   注)スパン、材成等は著作権により伏せています。

JIS A 3301によるプレカット木造トラスの屋根勾配は,3/10~4.5/10 が適用範囲。(機械加工制限が入るみたい)

【トラス1】は3/10未満。よって、意匠設計の時点で既にプレカット不可。大工が製作するしかありませんでした。

 

【トラス1】≒”和小屋+方づえ” として施工。よってボルト緊結はこの後。

画像手前が上弦材と下弦材接合部である、”傾ぎ3枚輪薙込みほぞ入れ”仕口。ボルトの墨線が見える。

仮組みした時にボルト穴をあけているのではなく、部材単独であけて、それぞれをセットアップ。

 

”傾ぎ3枚輪薙込みほぞ入れ”仕口のアップ。 

無垢の木の経年変化対策と安全率向上の為に、補助ボルトも仕込みました。園児の安全が最優先だから。

手墨・手加工です、この木組み。それでも、隙間も殆ど無い精度でしょ?

 

私一人の加工では原則仮組みを行わないのだけれど、アシスタントに手伝って貰ったので、ミスが無いかを仮組み検証。

案の定、アシスタントのミスによるボルト穴の非貫通箇所が見つかり、現場では事無きを得ました。ほっ。

 

 トラスの墨付けで一番難儀するのが材の割れ。無垢材には背と腹もあり、生物材料ゆえの適材適所の見極めが大変。

JIS A 3301のプレカットトラスはJAS製材OKだけど、木の癖や割れも見抜けないでライン投入しちゃってるのに、良いの?

設計者が『何ミリ上げで計算』ったって、無垢材の背と腹を逆にするだけで十ンミリ~ン十ミリも垂れるのに。(^_^;)

 

上弦材と直交する材は母屋。斜めに架かる【渡り腮】仕口(過去記事2006年8月2日 わたりあご①)で木組み。

経年変化対応で、3部材接合部も全て凸凹に木組みをしてあります。筋違いのような”げんぞう”は一切無し。

 

”げんぞう” 木組み部で凸凹を加工しないでただ突き合わせるだけの、最もローコストな木工技法。

        釘やビスでとまっているだけなので、安全性や経年変化に対しては問題がある。

 

後工程のボルト施工により、材の胴付きもピタッと隙間無く接合され、トラスが完成します。

ボルト関係も、施工図作成時点で全て計算済みで、私自身が添付しています。

 

トラス部以外はマシン加工プレカット。よって、母屋材に邸名がインクジェットされています。

構造用合板両面打ちで三角形を作れば簡単にトラス化するのだけれど、耐久年数を考慮した場合、この設計が正解。

根拠は過去記事【2012年7月21日 合掌(トラス)その3】を参考にされたし。

 

それにしても、杉のやわらかな印象は良いものですね。

 

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園児がこのトラスの下で過ごす時間を考えた時、『最上級の仕事をしなければいけないな』と、考えていました。

巡り会ったご縁から、私は私の全てを持って、この仕事をやらせていただきました。(雑音もあったけどネ)

 

このトラスは、木造に造詣の深い構造設計事務所による、確かな構造設計です。

その設計を実際の形にしたのは ”設計をする伝統構法大工、伝統構法大工をする一級建築士・設計士”。

 

全て人間による墨付け、人間による手加工。高度な技能を保持した人間による、魂を込めた仕事です。

 

建築士法第2条の2【職責】を果たすそれぞれの担当者の仕事の一部を垣間見て貰えたなら、幸いです。

大地震に見舞われたとしても、このトラスの下にいらっしゃる方は、安心してください。

 


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