岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

異変、ワックスが効かない…(その1)

2009-03-20 05:41:34 | Weblog
(今日の写真は岩木山の東面のある斜面である。西日本ではすでに、「黄砂(こうさ)」が舞い降りているというが、岩木山では、主にこれからがその時季になる。
 今日の写真にも、あちこちにその痕跡が見られるだろう。うっすらと「黄変」した雪面部分がそれだ。
 黄砂とは「春、モンゴルや中国北部で強風のために吹き上げられた多量の黄色い砂塵が天空をおおい、下降する現象」をいうが、それが偏西風に乗って運ばれて、日本に「降り注ぐ」のである。
 関西や九州地方では空がどんよりと黄色っぽくなり、太陽も霞むといわれているように「視覚的」に確認出来るが、ここ津軽地方では「視覚的な確認」は、広い雪面に降り注いだ黄色の「現物」となる。
 この黄砂現象は、何も最近のことではなく、昔からあったことだ。別名を「霾(ばい)」といい、「霾ぐもり(よなぐもり)」と呼ばせている。
 なお、俳句の世界では他に、黄砂霾(つちふる)・霾風(ばいふう)・霾天(ばいてん)・黄砂(こうさ)・黄沙(こうさ)などと書いて「春」の季語になっている。
 交通の障害になったり、洗濯物が汚れたり、衣服が汚くなったり、白銀を汚したりと、決して、春の風物としては「望まれない」側面を持っているものだろうが、俳人の感性にかかると、それは「望まれるもの」に変身するらしい。

「つちふるや日輪高く黄に変じ (長谷川素逝)」
「鳥の道きらりきらりと黄沙来る( 石寒太)」
            …黄砂は大体3月から5月にかけて多いとされている。)

        ◇◇ 異変、ワックスが効かない(その1) ◇◇

 岩木山スカイライン株式会社のAさんから、次のような電話による問い合わせがあった。
『スノーボーダーから、今年の雪は「ワックス」が効かない。という声が寄せられているのだが、どうしてだろう。何と答えていいのか分からず困っている』…と。

 難しい問い合わせである。最近このような問い合わせがよくあるのだ。

 雪面を滑らかに移動させるための「ワックス」の成分は、その雪面を構成する「雪質」に巧く対応する「物質」であろう。「効かない」ということは、巧く対応出来ず、「滑らない」ということである。
 つまり、「ワックス」の成分と雪面に付着している物質がなじまない、滑らかにするどころか「ブレーキ」役になっているということであろう。
 これは「滑るための物質」が、ある「物質」と接触・合成した結果、「滑らなくする物質」に変化したということだろうか。可逆変化また可逆反応とでもいえばいいのだろうか。
 私もスキーをするので、乾雪用とか湿雪用の使い分け程度なのだが、若干は「ワックス」の効能については知っている。「ワックス」は使い分けを誤ると、それこそ「悲惨」なものだ。
 先ず、私は「ワックス」との関係から「雪面に付着している物質」について話した。その1つは「酸性雨」である。
 
 酸性雨とは「火力発電所や石油コンビナートが、化石燃料を燃焼させることによって排出される硫黄酸化物・窒素酸化物などの酸性気汚染物質が、空気中の水蒸気と反応して、硝酸や硫酸に変化して降ってくる」ものである。
 日本の酸性雨の原因は、日本国内の火力発電所や石油コンビナートから発生した汚染物質だけではない。
 「黄砂」の例からも分かるように、日本海側に降る酸性雨は、中国などで石炭を燃やした結果、汚染された大気が偏西風に乗って、日本に運ばれてくることが1つの原因でもある。
 だが、何も、工場から排出される汚染物質だけが、酸性雨の原因となっているわけではない。自動車の「排気ガス」も大きな原因となっている。

 ここでいう、汚染物質とは化学方程式で示すと…
NOx + H2O → HNO3 + その他
(窒素酸化物) (水) (硝酸)
SOx + H2O → H2SO4 + その他
(硫黄酸化物) (水) (硫酸)       …となる。  

 また、酸性雨とは、水素イオン濃度(pH)が5.6以下の雨のことを指していう。pHは酸性度を表し、値の範囲が0~14である。7が中性でそれ以下が酸性、7以上がアルカリ性で、値が低いほど酸性度が高いということになっている。
 なお、pH値は、1違うごとに、酸性度は10倍違うことになる。つまり、値がたった2少なくなるだけでも、酸性度は100倍になっているということなのだ。
 日本のpH値は4.4~5.5、欧州(英・独・仏)のpH値は4.3~5.1であるから「汚染度」はヨーロッパより小さい。しかし、日本の中には、まれにpH3未満のきわめて酸性度の高い酸性雨も観測されることがあるという。

 「酸性雨の被害」として、一番はじめに被害を受けるのは湖や川に住んでいる生物だろう。魚類は、水の酸性化に対して非常に感受性が高く、弱い。湖や川が酸性化すると、まず、それに耐えられない小魚が死んでしまう。
 その時、大型の魚は、死んだ小魚を食べるので、一時期、その湖や川では、普段より大きな魚が生息することになる。
 しかし、やはり、これは一時的なものであって、その魚も、餌がなくなり結局、死んでしまう。
 そこはもう、生物が存在しない透明な死の湖、死の川となってしまうのである。

 酸性雨は森にも影響を与える。酸性雨の恐ろしいところは、ある日突然、「一斉に木々が枯れること」だ。この現象を「アシッド・ショック」と呼ぶ。
 何故、急に木々が一斉に枯れるのかというと、それは、木が酸性雨を浴びると、木の抵抗力が弱くなってしまうということに因る。
 そのため、干ばつや寒波がやってくると、その刺激で一気に木がやられてしまうのである。(明日に続く)