(今日の写真は、白沢の橋の上から撮った岩木山である。季節は秋である。ここ見る限りでは、「端正さ」はまったくない。「連山」であって単独峰を意識させない。)
◇◇「龍馬にしがみつくのは成熟拒否の表れ」◇◇(2)
「龍馬」は32歳で暗殺された。そこで彼の人生は終わったのである。プロセス途上で突然、「龍馬」は死んだのだ。
それまでの彼の行動、言動からすれば、「死なずに、その後も生き続けていたならば、どのようなこをしてくれたのだろうか」ということは「人々に彼が生きておればとの期待を持たす魅力」であろうし、同時に「NHKドラマ」の主題にもなるものであろう。
だが「ドラマ」は、「期待を持たせる魅力」に力が入り過ぎている。それゆえに、歴史の流れから逸脱している場面も多々あるのである。世に言う「歴史物」にあって絶対的な必要要件は「史実に忠実である」ということだろう。
大河ドラマ「龍馬伝」では、「このままでは日本は外国に食い物にされる」、「外国の植民地にならないよう、強い国家を作らねばならない」と「龍馬」に言わせ、「竜馬」は国の将来を案ずる「真の愛国者」として描かれる。海を見ながら浜辺に立っている姿は、海外の侵略者から国を守る頼もしい男とドラマを見る者には写る。
この姿は、明治維新から1945年までの65年間の日本を率いてきた者たちの、あるいはその精神を引き継ごうとする反省のない「現代日本の思想集団」からすれば、願ったり叶ったりのものではないだろうか。
そして、私は「国民の妙な愛国心を鼓舞し、軍事力強化という精神的土壌作りに利用される」のではないかと恐れているのである。
朝日新聞オピニオン「異議あり」に、高知県出身・野田正彰さんの竜馬人気に疑問の意見が掲載されている。その大要を紹介しよう。
「竜馬は長崎の英国人商人グラバーと親しくし、武器を大量に買い付けました。それなのに、ドラマの中で何度も登場する台詞に『列強は日本を植民地化しようとしている、だから幕府を倒さないといけない』というのがあります。これは変でしょう」
「知り合いの歴史学の専門家に、竜馬が植民地化への危機感を持っていたという文書はありますかと聞いたら、無いと言うんですね。ならばうそということになる。うその語りをずっとさせている。番組を通じて、国民にある種のメッセージを発したいのでしょうか」
「ドラマだからと言って、何をやってもいいはずがない。歴史学の知見や実証的にわかっていることと大きく違うことは、作ってはいけません。特に映像は、人の記憶に蓄積して感情を喚起する力が強いですから。地元紙の記者に聞いたら、高知では『史実と違いすぎる』と冷めているそうです。」
「これは強調しておきたいのですが、軍国主義に利用されたことを忘れないでほしい。明治に入って、竜馬はいったん忘れられた。それが、日露戦争の際、皇后の夢枕に竜馬が現れて、『露国と海戦になれば、魂は我が海軍の将卒に宿って日本を守る』と言ったという話が新聞で広がった。土佐出身の宮内大臣、田中光顕から出た話です。」
一方で、野田さんは精神科医として、竜馬好きの企業経営者を「成熟拒否です。本来、人は年齢を重ねるとそれなりに成熟していかないといけない。なのに青春像にしがみつくのは、申し訳ないのですが、人格的に未熟だからです。彼らが竜馬にあこがれるとしたら、それは竜馬という青春にこだわることであり、幼稚さの表れでしょう」このように批判している。
いずれにしても、「坂本龍馬」が、後の軍国主義に利用されたことは忘れないで欲しい。大河ドラマ「龍馬伝」は、その手の「思想家集団」に与しているかに見えるが、その意志はNHKそのものにあるのか、デレクターなど製作担当サイドにあるのか…実に国民をなめた態度であることには変わりはない。
(都合により、明日から数ヶ月間はブログを休載します。なお、本会あての問い合わせ、および事務局長宛のメールなども一切、受け付けることが出来ませんので、ご了承下さい。 三浦章男)
◇◇「龍馬にしがみつくのは成熟拒否の表れ」◇◇(2)
「龍馬」は32歳で暗殺された。そこで彼の人生は終わったのである。プロセス途上で突然、「龍馬」は死んだのだ。
それまでの彼の行動、言動からすれば、「死なずに、その後も生き続けていたならば、どのようなこをしてくれたのだろうか」ということは「人々に彼が生きておればとの期待を持たす魅力」であろうし、同時に「NHKドラマ」の主題にもなるものであろう。
だが「ドラマ」は、「期待を持たせる魅力」に力が入り過ぎている。それゆえに、歴史の流れから逸脱している場面も多々あるのである。世に言う「歴史物」にあって絶対的な必要要件は「史実に忠実である」ということだろう。
大河ドラマ「龍馬伝」では、「このままでは日本は外国に食い物にされる」、「外国の植民地にならないよう、強い国家を作らねばならない」と「龍馬」に言わせ、「竜馬」は国の将来を案ずる「真の愛国者」として描かれる。海を見ながら浜辺に立っている姿は、海外の侵略者から国を守る頼もしい男とドラマを見る者には写る。
この姿は、明治維新から1945年までの65年間の日本を率いてきた者たちの、あるいはその精神を引き継ごうとする反省のない「現代日本の思想集団」からすれば、願ったり叶ったりのものではないだろうか。
そして、私は「国民の妙な愛国心を鼓舞し、軍事力強化という精神的土壌作りに利用される」のではないかと恐れているのである。
朝日新聞オピニオン「異議あり」に、高知県出身・野田正彰さんの竜馬人気に疑問の意見が掲載されている。その大要を紹介しよう。
「竜馬は長崎の英国人商人グラバーと親しくし、武器を大量に買い付けました。それなのに、ドラマの中で何度も登場する台詞に『列強は日本を植民地化しようとしている、だから幕府を倒さないといけない』というのがあります。これは変でしょう」
「知り合いの歴史学の専門家に、竜馬が植民地化への危機感を持っていたという文書はありますかと聞いたら、無いと言うんですね。ならばうそということになる。うその語りをずっとさせている。番組を通じて、国民にある種のメッセージを発したいのでしょうか」
「ドラマだからと言って、何をやってもいいはずがない。歴史学の知見や実証的にわかっていることと大きく違うことは、作ってはいけません。特に映像は、人の記憶に蓄積して感情を喚起する力が強いですから。地元紙の記者に聞いたら、高知では『史実と違いすぎる』と冷めているそうです。」
「これは強調しておきたいのですが、軍国主義に利用されたことを忘れないでほしい。明治に入って、竜馬はいったん忘れられた。それが、日露戦争の際、皇后の夢枕に竜馬が現れて、『露国と海戦になれば、魂は我が海軍の将卒に宿って日本を守る』と言ったという話が新聞で広がった。土佐出身の宮内大臣、田中光顕から出た話です。」
一方で、野田さんは精神科医として、竜馬好きの企業経営者を「成熟拒否です。本来、人は年齢を重ねるとそれなりに成熟していかないといけない。なのに青春像にしがみつくのは、申し訳ないのですが、人格的に未熟だからです。彼らが竜馬にあこがれるとしたら、それは竜馬という青春にこだわることであり、幼稚さの表れでしょう」このように批判している。
いずれにしても、「坂本龍馬」が、後の軍国主義に利用されたことは忘れないで欲しい。大河ドラマ「龍馬伝」は、その手の「思想家集団」に与しているかに見えるが、その意志はNHKそのものにあるのか、デレクターなど製作担当サイドにあるのか…実に国民をなめた態度であることには変わりはない。
(都合により、明日から数ヶ月間はブログを休載します。なお、本会あての問い合わせ、および事務局長宛のメールなども一切、受け付けることが出来ませんので、ご了承下さい。 三浦章男)