岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

今日の写真はタテハチョウ科の蝶、「メスグロヒョウモンチョウ(雌黒豹紋蝶)」

2010-10-03 04:46:06 | Weblog
 (今日の写真はタテハチョウ科の蝶、「メスグロヒョウモンチョウ(雌黒豹紋蝶)」である。これは、9月26日の毒蛇沢沿いの「自然観察会」途上で撮ったものである。
 これは「ヒョウモンチョウ」の雌である。「ヒョウモンチョウ」は別に珍しい「蝶」ではない。岩木山ならば沢沿いの繁みや山麓の草原など、どこにでもいる。
 赤褐色に黒い斑点をつけているのが「豹の紋」に見えるのでこう呼ぶのである。だが、このように呼ばれる、つまり「豹の紋様」に見えるのは、「雄」だけなのである。
 そして、今日の写真の蝶、この開いた羽のどこに、その「豹の紋様」があるというのか。蝶の名前は、たとえば「クジャクチョウ」のように、開いた羽の紋様からつけられることが多い。だが、ないではないか。それでも、「豹紋」という言葉を名前に負っている。  「メスグロ」までは何とか分かる。ある種の蝶で「黒い雌の個体」という意味だろう。だが、「豹紋蝶」となると、途端に不可解になる。どこにも「豹紋」が見当たらないからである。
 最初にこの「蝶」を見た人は、何の躊躇いもなく「豹紋蝶」とは別種と考えたのではないだろうか。「ヒョウモンチョウ」の雄はポピュラーな蝶だ。非常に目につきやすいし、色々と多くの花にやって来る。蝶に関心のある人の脳裏にはしっかりとその姿が焼き付けられていたはずである。その「脳裏にある姿」と比べた時、これが同じ種の「雌」だと思えたであろうか。
 門外漢の私を例に出して、申し訳ないが、私は時々この「メスグロヒョウモン」に出会っても、「何という蝶かなあ」というとらえ方程度で、全くの別種だと考えていた。
 「捕らえて顕微鏡的な世界」で把握しない限りは、つまり、飛翔したり、停まったり、吸蜜している姿からは「ヒョウモンチョウ」の雌であるということは理解出来ないのである。
 今だから、「これは『メスグロヒョウモン』といって『ヒョウモンチョウ』の雌である。学問的には『性的二形』というのだ」と、蝶の研究者や蝶マニアたちは「こともなげ」に言うけれども、この「違い」つまり「性的二形」の発見は、戸惑いであり、驚きだったのではないだろうか。私は本当に、単純に「戸惑い、驚いた」のである。
 だが、素人で門外漢の私のような人間には、雑木林の周辺や路傍などで活発に飛び回り、いろいろな花で吸蜜する黒地に白帯模様の羽のデザインが全く違う「雌」は「ヒョウモンチョウ」とは思えない。
 しかしだ、素人の私にとっての利点は「雄」と「雌」で、これだけ違うと、「雄」と「雌」を間違えることは決してないということである。

 「メスグロヒョウモンチョウ」の大きさは、前翅長が30mmから40mmで、翅開張が約7cmである。北海道、本州、四国、九州に分布しているが、種子島と屋久島以南には分布しないとされている。幼虫の食草は、どこにでも生えているスミレ類である。
 活動する時期は6月と9月から10月である。何故かしら、7月と8月は活動期ではないのだ。そして、9月、秋の野山には「ヒョウモンチョウ」が多い。だが、秋の「ヒョウモンチョウ」は羽が傷んでいる。今日の写真のものも、よく見ると「後翅の黒帯は中央が尖っている」のが普通なのだが、かなり欠けているのが分かるだろう。これは「7月と8月は活動」しない時に、何かの原因で「羽」を痛めたのである。この活動しない時期を「夏眠」という。秋になると、「夏眠」していた多くの「ヒョウモンチョウ」たちが眠りから覚めるのである。
 「冬眠」という言葉は一般的であり、誰もが知っているだろう。蝶も「冬眠」をする。冬眠をするのは蝶の種類によって、「卵」であったり、「幼虫」であったり、「成虫」であったりする。
 ところで、「夏眠」という言葉には馴染みのない人が多いはずである。
 蝶の中には、春に蛹から羽化して、しばらく行動した後で、夏の間眠ってしまう種類がいるのだ。このことを「夏眠」というのである。「夏眠」は、夏の暑さをしのぐためのものと考えられているそうである。
 今年の夏は猛暑であった。その上に、期間が長かった。「メスグロヒョウモン」たちも今夏は例年にないほどの「長い夏眠」をしたのではないだろうか。もしも、季節どおりに今後、冬に向かうならば、彼女たちの活動時期は狭められてしまうのだ。それが心配だ。

 その日、この蝶を見つけたのは私だった。写真を撮ってから、同行の会長に訊いた。捕虫網を持っている彼の習性が発揮される前にと考えたからだ。彼は、「蝶とみると」直ぐに捕虫網を振り回して捕ってしまうからである。その後で、彼の「講義」が始まった。今日のブログはその講義をかなり参考にして書いたものである。

 その後の道すがら、この黒い雌、「メスグロヒョウモン」の後ろを、オレンジ色に豹紋の影が追いかけているのを何回か見た。姿、形は全くの別ものであっても、「伴侶」とすべきものには、しっかりと分かるのである。)

最新の画像もっと見る