岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「自生する大山桜(オオヤマザクラ)」と「植樹されたオオヤマザクラ」について(その1)

2009-03-30 04:32:19 | Weblog
 (今日の写真は、「オオヤマザクラ」満開の花である。これは直近で、しかも下から撮ったものだ。
 五月中旬の後長根沢である。この沢は源頭部が急峻に落ち込んでいるので、その下流はいたって平坦である。その上、広い。源頭部直下は雪に埋まり、全層雪崩の危険もあるのでその手前で、詰めることをやめる。途中、アオイスミレなどが足下で迎えてくれる。
 視点を転じると、対岸のミズナラやブナの尾根には「淡い桃色の小宇宙」が点在している。その点在の仕方には、お互いが一定の距離を保っているという法則性があった。
 それぞれ半径20m程度の円を描き、隣接する幹まで40mは離れている。この「小宇宙」こそが「オオヤマザクラ」の世界なのである。

 直近で眺めても、この淡いピンクは美しいし、新緑の中で淡くありながらも「毅然」と立っていて、しかも淡い緑に埋没することもなく、同化することもなく、調和をとりながら存在している姿は、自然の織りなす春のキャンバスである。
 「並木」もいいかも知れない。霞のかかる中、淡い「オオヤマザクラ並木」を足下に置いて、白く屹立する岩木山は確かに幻想的な風情ではある。

 しかし、西国の山桜も、北国の大山桜も、山の林の中に他の樹種とともに在ってこそ、仲良くしかも個性的に映えるのではないだろうか。やはり、「オオヤマザクラ」は「並木」としては日本人の精神風土には馴染まない要素を多分に含んでいるように思えるのだ。
 日本人は、「山の林の中に他の樹種とともに在ってこそ、仲良くしかも個性的に映えるオオヤマザクラ」に、「自分たちの原風景」を感ずるのではないだろうか。)

◇◇「自生する大山桜(オオヤマザクラ)」と「植樹されたオオヤマザクラ」について(その1)◇◇

 …本会の視点…

 本会の「岩木山県道30号線(岩木山環状道路)沿いに植樹されたオオヤマザクラ」に対する基本的なスタンスは大きく次の5点をである。

1.植樹をした行政に「保守と管理(「オオヤマザクラ」の保育も含む)」の責任があるということを、当該行政である「青森県、弘前市、鰺ヶ沢町」に明確に認知して貰い、その責任の遂行を実行して貰うこと。

2.この「オオヤマザクラ」の植樹によって生ずる様々な負の要因、(例えばリンゴにつくシンクイムシ「ハリトーシ」の発生がりんご園地に及ぶことなど)を的確に防除すること。
(注:シンクイムシについて
 オオヤマザクラの果実を食べて増え、近隣りんご園に広がる。ここで言うシンクイムシとは「シンクイムシ類」の「モモシンクイガ」のことである。「モモ」とあるが「リンゴ」につく害虫で、病害虫名を「モモシンクイガ」という。成虫で体長は8mmという小さい虫だ。これが、リンゴの実に、幼虫期に食入して被害を及ぼす。
「モモシンクイガ」の生態は大体次のとおりだ。
(1)年に2回発生するが、一部は1回発生のものもある。
(2)地中1~3cmの深さ扁円形の冬まゆをつくり、その中で幼虫で越冬。
(3)幼虫は5月上旬頃になるとまゆから脱出し、地表面に紡錘形の夏まゆをつくり、その中で蛹化する。
(4)越冬世代の成虫は5月下旬から7月下旬まで継続発生する。
(5)産卵は果実のがく部に多く、8~10日でふ化し果実内に食入する。老熟すると果実から脱出して地表面に夏まゆをつくり、蛹化する。
(6)第1世代成虫は8月上旬から9月下句まで継続発生し産卵する。ふ化幼虫は果実内を食害し、老熟すると脱出する。
(7)9月以降に脱出した幼虫はすべて冬まゆをつくり越冬する。
そして、その被害であるが…
(1)ふ化幼虫は果面に小孔をあけて食入する。食入痕からは、汁液が滲み出て、乾くと白い糊状になる。
(2)幼虫は「果実内を食害し、老熟すると径1~2mmの穴をあけて脱出」する。被害を受けた果実は「商品価値を失う」のである。

 …発生要因は…

 周辺に放置されたりんご園があるとモモシンクイムシは大量に発生し、被害が大きくなる。「オオヤマザクラ」はこの「放置されたりんご園」の役割を果たすことになる。「日本一のリンゴ生産県」と胸を張っているのに、どうして「行政主導」で、このような「馬鹿げた」ことをしたのか不思議でならない。

3.「オオヤマザクラ」につく虫の「駆除」のための「薬剤散布」などをする場合は、周囲の生態系に対する影響を十分調査した上で、「影響のない」方法と薬剤使用を考えること。
 また、樹高が20m以上になると「薬剤液」が十分に届かなくなり、樹の上部でシンクイムシの発生が可能になることなどを十分に考慮に入れること。

4.「オオヤマザクラ」は20数mの樹高になる樹種であり、岩木山に自生しているものは、生えている個体同士の距離は短くて15m、長ければ20m以上になる。これらのことを見通して今後の「保守と管理」は実行されるべきであること。

5.「苗を寄贈した人」の中には、その成長を期待を込めて見ている者が多くいる。現在の状態では「寄贈者への責任と対応」が皆無に等しい。「寄贈者」の中には中学生なども多くいる。このままでは「若い者」の夢を壊すことを「行政」がしていることでもある。
 民間の組織や個人が、この「オオヤマザクラ」の並木に関心を持って動き出す前に、何よりも「行政」が動き出すべきであること。(明日に続く)