岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

異変、ワックスが効かない(その3)

2009-03-22 05:36:42 | Weblog
(今日の写真はキンポウゲ科フクジュソウ属の多年草、福寿草「フクジュソウ」だ。実は私の狭い庭に咲いたものだ。昨日の午前中は、まだ日射しが弱かったので開いていなかったが、午後になるとこのように開いていた。花弁に見えるものは萼片である。
 これはアネモネやイチリンソウ、オキナグサの仲間である。日本では北方に多く見られる。アイヌの人はクナウ・ノンノ(母の花)と呼ぶそうだ。雑木林に群生するが、里山の雑木林が減少するに従い、岩木山等では希少種といってもいいほど少なくなってしまった。
不思議なことに身近な花であるにもかかわらず、和歌の世界では近世まで見あたらないのである。
 近世に入ってから俳句などにも盛んに登場するようになるのだが、対象は自然に生えて咲いているものではなく、鉢植えがほとんどである。しかも新年、正月の花として歌われているものが多い。
 目出度いお正月、七福神「恵比寿・大黒天・毘沙門天(多聞天)・弁才天(弁財天)・福禄寿・寿老人・布袋」の中の寿老人と福禄寿の名を拝借して名付けたものである。「福禄寿+寿老人+草」であり、福寿草の中には「禄」という字があるのだ。
 別名の「賀正蘭」「元日草」にもその根拠を探ることは容易だろう。
 太田蜀山人の狂歌「あら玉の年のはじめの福寿草禄といふ字は其の中にあり」には福寿草という花名の由来が示されているようで楽しい。
近代以降は里山の雑木林から採取したものを栽培して庶民が楽しんだものらしい。
ニンジンに似た茎や葉は晩春には枯れてしまうので、季節を違えると春の旺盛な息吹がまるで嘘のように思える。また、日光を受けて開花するので朝早くや曇天ではまだ蕾みでしかないように見える。何ともはや、不思議な花である。

・風いく日乾反(ひぞ)りて荒れし庭土にほほけて咲けり福寿草の花(太田水穂)

…今日の写真の趣によく合う短歌ではないか。「冷たい風が吹き抜けていく乾き反り返って荒れている庭に、ほつれあうように乱れて咲いている福寿草の花よ」と訳しておこう。)


      ◇◇ 異変、ワックスが効かない(その3) ◇◇
(承前)

 …ところで、この「摩擦を軽減させる」ために「ワックス」に使われている「配合成分」とはどのようなものなのであろうか。
 「ワックス」には、これまで、パラフィン等の鉱物油、牛脂などの油脂成分をベースにした金属石鹸、シリコーン樹脂粉末、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹皮粉末、その他の潤滑性能を持つ物質を混合配合したものが使用されてきた。
 その主成分は「パラフィン」である。「パラフィン」は、石油に含まれ、分留によって取り出される。重油、アスファルトも炭化水素を含み、広義のパラフィン類に含まれるものだ。
 これは無味無臭で「ろう(蝋)」状の固体だ。融点は約47~65 ℃だから、雪や水には溶けないが、「エーテル」や「ベンゼン」には溶解する。
 もう一つ、成分として添加されているものには「ポリフルオロカーボン(フッ化カーボン)」がある。この「ポリフルオロカーボン」は、撥水(はっすい)性を高め、滑走性能を向上させる効果を有する。
 つまり、「ワックス」とは簡単に言ってしまえば、「パラフィン=炭化水素(ハイドロカーボン)」なのだ。
 一時期「銀パラ」と呼ばれていたワックスがあった。このパラフィンに、銀の微粒子には「摩擦を軽減」する働きがあるので、混ぜた形で使用されていたものだ。だが、「銀」は比較的高価な金属なので、コスト的に問題があったと聞いている。果たして現在も使われているのだろうか。
 もちろん、黄砂の影響で滑らなくなることもある。だが、滑らないということは複合的な事由が重なっていることが多いだろうから、それだけとは言えない。

 気温が高い春先や、今季のように温暖な岩木山では「雪面の直下」に水分が浸透している。もともと、水分は「お互いが引き付け合う力」を持っている。いわゆる、「表面張力」がその例である。
 「スキー滑走面」に張り付いた水は、雪面に染み込んでいる「水」と簡単にくっついて離れない。大ブレーキとなり、スキーは滑らなくなる。
 「パラフィン=炭化水素(ハイドロカーボン)」や「ポリフルオロカーボン」は水を弾く性質、つまり、撥水性を有しているため、滑走面に塗る事により「滑走中に発生した水分をより早く取り除いてくれる」効果があるのだ。  
 しかも、フッ素系の「ポリフルオロカーボン」は溶かした水滴を丸くさせ、滑走面を転がすようにして捌いてしまうといわれている。
 この時に「撥水性」ある「ワックス」が働いてくれたら問題はないのだが、「撥水性」を失わせる「雪面上の何かや溶けた雪の水分に含まれている化学物質」が「ワックス」に、作用していると考えると、どうなるのだろうか。
 「雪面上の何かや溶けた雪の水分に含まれている化学物質」とは、単純に言えば不純物である。
 それは「酸性雪」に含まれる酸性物質の「窒素酸化物」や「硝酸」、それに、「硫黄酸化物」や「硫酸」だ。加えて、「油煙に含まれるタール成分」のことである。
 この「滑らなくなる現象」は「石鹸は酸に出会うと、中和されて効果がなくなってしまう」という例を持って考えると理解が早いだろう。
 食べ物の汚れは、醤油、酢、果汁など酸性のものが多い。衣類についた皮脂汚れも、酸性だ。直接、石鹸で洗うと「中和」されて、「アルカリ」性が失われ汚れが落ちないので「水で予洗」する必要がある。
 だから、石鹸液のアルカリ性を保つために、炭酸塩(アルカリ剤)の配合された石鹸を使う場合もある。
 つまり、この「石鹸の中和」のように、スキーの滑走面に塗られた「パラフィン」や「ポリフルオロカーボン」が「窒素酸化物」や「硝酸」、それに、「硫黄酸化物」や「硫酸」、「油煙に含まれるタール成分」である酸性物質と化学反応を起こして「滑らない」状態を造りだしていたのだろうか。ただ、これは「私」という全く、化学的知識のない者の、勝手な推量に過ぎないことだ。(明日に続く)