岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

NHK弘前文化センター講座「岩木山の花をたずねて」余話(1)

2009-03-26 05:03:08 | Weblog
(今日の写真は降雪続くブナ林だ。そのほんのひととき、降り続いていた雪が止んだ。そんな時に写したものである。場所は岩木山の北西麓の上部である。樹高の低さから考えると標高は800mを越えている辺りだろう。3月の下旬、ちょうど今ごろの時季である。
 3月22日には小雨が降り続いた。そして、翌日からは典型的な西高東低の気圧配置になり、雪が降り続いている。だが、平地の里では殆ど降り積もることはない。庭などには朝方うっすらと積雪を見るが、疑似好天で、日中に少しでも太陽が覗くと消えてしまうし、路上のアスファルト面に降る雪は、路面に落ちると同時に消えてしまう。
 そのような降雪が昨日まで続いていた。このような時に、ブナ林の様相は「今朝の写真」そのものなのである。このブナ林の降雪は静かに降った。西からの弱い風はあったようだが、静かな風だ。そのことを枝や幹に貼り付いている雪が教えてくれる。
 静かなブナ林、さえずる小鳥もいない。聞こえるのは踏み固めて進む「ワカン」と雪がきしむ音だけである。
 だが、遠くから「コツコツコツ」という音や「タタタタタタ…」という木管楽器のような響きだけは聞こえてくる。コゲラやアカゲラが捕虫のために、樹皮をついばむ音だ。
 静かさは「音」を生む。騒音は騒音でしかないが、静寂は微かな音を含めて色々な音を私たちに感得させてくれる。だから、自然はすばらしいのだ。)

     ◇◇…「木とは何ですか、草とは何ですか」に答える…(1)◇◇

講座の中で受講者から色々と質問を受けることがある。俳句や短歌が登場することもあるので受講者が作った俳句や短歌の講評を頼まれることもある。
 そこで今日は質問の一つ、「木というものは何ですか。草と木の違いは何ですか」という、私にとっては、まさに「意表を突かれた難問」について、答えたことを書いてみたい。

 木(木本)とは…

 1.木(tree、woody)は、植物の形のひとつ。硬い幹をもち、幾本もの枝があり、地面に根を張り、生長するものである。
 幹は木質化し、次第に太く成長するもの。枝の先には葉と芽を付け、花を咲かせ、主に種子をもって繁殖するもの。

 2.年輪が出来る植物を木(木本)という。年輪というものは…この場合、「パパイアの木」には年輪ができないので、「草」に分類される。ただし、年輪は、季節による寒暖の変化や、乾燥・湿潤の変化により組織の生長スピードが変化した結果生じるから、明らかに木であっても、連続的に生長する条件(熱帯雨林のように、1年を通じて寒暖等が変化しない環境で生長した場合など)では、年輪はできない。
 そこでこの見方を拡張して、茎が肥大成長する植物が木本である。つまり、茎の周囲に形成層があって、年々太く育つものが木であるということになる。

 さらに別の見解として、
 3.木とは非常に厚くなった細胞質を持つ死んだ細胞により生体が支持されている植物であるという見方もある。
 残った細胞壁がパイプの形で水をくみ上げる仕事を続けるものである。そのような部分をもつ植物が樹木だ、という判断である。
 細胞が非常に厚い細胞壁を発達させ、死んで生体の支持に使われるようになることを木化、あるいは木質化という。具体的にいうと、いわゆる木材は、主として道管から成り立っているが、この道管は細胞壁が厚くなって、最後には細胞そのものは死んで、「木」ということになる。
 前者の定義に従うと、竹は「肥大成長」しないので「草」であるが、後者の定義に従うと、「死んだ細胞で支持されている」ので「木」と言うことになる。

 4.また、木か草かということは、必ずしも種に固有の性質ではない。
 ナス科、キク科、マメ科などには、通常は草として生育しているが、条件がそろえば枯れることなく連続的に生長し、軸を木化させる種もたくさんある。
樹木になる植物は、シダ植物と種子植物のみである。コケ植物には樹木はない。


草(草本)とは…木本(もくほん)に対する言葉

 1.木にならない植物を指す。つまり、樹木のように大きくならず、太く堅い幹を持たない植物である。

 2.年輪の出来ない植物を草(草本:そうほん)と定義する。
 より具体的には、茎の構造の問題である。樹木は幹の周囲にある分裂組織・形成層で内側に道管を主体とする木部を形成し、これが材を形作る。したがって、

 3.草とは、木部の形成を行わない植物のことである。

 双子葉植物では、茎の内部の周辺域に、内側に道管、外側に師管の配置する維管束が並ぶ。木本ではこの道管と師管の間に形成層が入り、内側に道管を作ってゆくが、草では形成層がないか、またはあまり発達しない。
 茎は多少堅くなるものがあるが、木質化はしない。茎は先へ伸びてゆくが、あまり太らない。そのような特徴を持つものが、草本である。

 4.茎が肥大成長しないものが草本である。
 実際には木本と草本の区別は、それほど明確ではない。たとえばタケは、茎は太くならず、形成層もないが、木質化するので木本と考える場合がある。
 高山植物では、ツガザクラやイワウメなど、ごく背が低く、茎は木質化し、形成層もあるが、太くなるのが遅いため、草にしか見えないものが多い。これらの植物は場合によって木とも草とも扱われる。
 逆に、バナナは間違いなく草である。そのほかにも、熱帯ではショウガ科などに数mを越えるような草がある。熱帯雨林では、その高さでも樹木の下生えになる。
(明日に続く)