(今日の写真は、また「タニウツギ」だ。この色彩の艶やかさは、まさに見事というほかない。
「スイカズラ(忍冬)」の仲間だから、甘い蜜を出しているのだろう。「スイカズラ」は「忍冬」と書くが、これは葉を落とさずに寒い冬に耐えるという意味からの命名だ。だが、「吸う葛」という字義を当てると、この花の出す「甘い蜜を吸う葛」ということになり、花の基部から折り取って、実際に吸ってみると、確かに甘いのだ。
花もどちらかというと大きいので、大きな「熊蜂」までもやって来るし、その他にミツバチや蝶の仲間も沢山集まってくる。
それにしても、えもいわれぬ「美しさ」である。色々な形容がすべて当てはまってしまう「色彩」とその「優美」さである。
爽やかさもあり、清新さもあり、若やぎを見せながらも、どこか妖艶でもある。すごくエネルギッシュでもありながら、去りゆく春に対する寂しさも滲ませている。その反面、暑さを濃縮したような「度きつさ」も演出する。
私は毎年、この時季になると、この千変万化する「季節的な色彩と横溢する息吹」に出会って、胸がときめく。
それは、10代の頃に「美しい女性」を遠くから眺めて、抱いた「ときめき感」に通ずるものである。「10代の頃のときめき感」を今でも持てる「ときめきのある人生」を70代に近づきつつある現在も、「タニウツギ」は与えてくれるのだ。
本当に嬉しい。何でもいいだろう。人生にあって「ときめく」ことはいいことだ。それこそ「生きている」証だろう。)
◇◇ 「ムラサキ」は白い花だが、その他は「ムラサキ」色系だ ◇◇
(承前)
最初に「キュウリグサ」について触れながら、これと非常に似ていたり、生えている場所が同じである「ハナイバナ」について触れないわけにはいかない。
そこで、先ずはムラサキ科ハナイバナ属の一年草または越年草である「ハナイバナ(葉内花)」のことだ。
これは、北海道から九州の日本全土の畑や道端などにごく普通に生える草だ。茎は細く上向きの伏毛があり、10~15cmになる。
初めはやや地面に伏したように斜めに伸びるが、次第に立ち上がって茎が増えてくる。葉は長楕円形又は楕円形で長さ2~3cm、幅1~2cmあり、表面にしわがある。
葉の形は、あまりしっかり決まった形があるようではなく、縁は波打つことが多い。葉や茎、萼片などに、やや長めの毛が多く生えている。
枝の上部の葉の脇に淡い青紫色の花をつける。花冠は直径は3mm程度のごく小さい花で、花冠の先は5つにさけている。
花期は4月から11月であり、長い。同じ個体がこの期間ずっと咲き続けるというよりは、早めに咲いた個体に出来た果実が、「発芽」してまた夏や秋には花をつけ、全体として花期が長くなっているらしいのだ。つまり年数回、順次「生えては咲かせる」を繰り返しているということだろうか。花はキュウリグサに非常に似ている。
秋に芽生えた個体の越冬中の「根生葉」は褐色を帯びていて、葉の縁の毛がやたらと目立つ。
花名の由来は『茎の上部の葉と葉の間に花をつけることで「葉内花(ハナイバナ)」』ということによる。
「キュウリグサ」と「ハナイバナ」は見た目が非常に似ている。その見分け方を次に述べよう。
…キュウリグサ
・葉をもむとキュウリのにおいがする。・葉は茎の下のほうに、花は茎の上のほうにつく。
・クルッと巻いた花序が開花とともにほどけていく「さそり状花序」。
…ハナイバナ
・花穂の先端にも葉(葉状の苞)がある。・揉んでもキュウリの匂いがしない。・開花期初期にも花穂が渦を巻かない。・花の先端がくるりと巻かない。・花の形はキュウリグサそっくりだが中心が黄色くない。・さそり状花序にはならず茎の上部の方まで葉がついている。・11月ごろまで淡い青色の花を咲かせる。・葉と葉の間に花がつき、キュウリグサによく似ているが、多くはつかない。
さて、しんがりが「ムラサキ科」の総元締め、ムラサキ属の多年草「ムラサキ(紫)」である。
花期は初夏で、日当りのいい山地や草原に自生する多年草。根が太く紫色で古代の服色最高位の紫色を染めるための染料として使われた。同じ仲間の花の色は「赤や紫」系であるのに、しかも「ムラサキ」という花名であるにも拘わらず、花の色は白だ。
青森県でも滅多に見られない花となり、絶滅危惧ⅠB類にランクされている。
根は紫色、これを乾燥したものが漢方生薬の紫根(しこん)で、解毒剤・皮膚病薬とするほか、昔は重要な「紫色」の染料とした。これが花名の由来だ。
「ネムラサキ」「ミナシグサ」「ムラサキソウ」などと呼ばれる。高さ約50 cmである。
万葉集には「紫草(むらさき)のにほへる妹を…」などと詠まれている。
「源氏物語」のヒロインといえるのは、「紫の上」であろう。高貴な色とされる「紫」の印象を託された女性だ。
「紫色」は、「ムラサキ」で染めた色だ。「ムラサキ」は、日本に自生する草だ。根から紫色の染料が取れ、根の外皮が、濃い紫色をしている。
「ムラサキ」の花は「白」だ。花も小さく、葉や茎にも、目立つ特徴はない。一見、「ただの雑草」にしか見えない。
しかし、「ムラサキ」は、日本文化に、大きく貢献してきた。万葉時代から、染料や薬に用いられている。
「ムラサキ」がなければ、「万葉集」の歌や「源氏物語」は生まれなかったかも知れない。宮廷では「紫」が最高位の色でもあった。
ところが、現在は「ムラサキ」は、絶滅寸前である。「ムラサキ」が生える環境が破壊されてしまったのである。「ムラサキ」の栽培は難しい。現在では「ムラサキ」と似た別の外国から移入された種が栽培されることが多い。
伝統を維持するのに、外国の植物に頼らなければならないとは、情けない話しだ。
日本におけるムラサキ科の代表選手「ムラサキ」は今や自生しているものが少なくなり、「危急種」に指定されている。(この稿はこれで終了)
「スイカズラ(忍冬)」の仲間だから、甘い蜜を出しているのだろう。「スイカズラ」は「忍冬」と書くが、これは葉を落とさずに寒い冬に耐えるという意味からの命名だ。だが、「吸う葛」という字義を当てると、この花の出す「甘い蜜を吸う葛」ということになり、花の基部から折り取って、実際に吸ってみると、確かに甘いのだ。
花もどちらかというと大きいので、大きな「熊蜂」までもやって来るし、その他にミツバチや蝶の仲間も沢山集まってくる。
それにしても、えもいわれぬ「美しさ」である。色々な形容がすべて当てはまってしまう「色彩」とその「優美」さである。
爽やかさもあり、清新さもあり、若やぎを見せながらも、どこか妖艶でもある。すごくエネルギッシュでもありながら、去りゆく春に対する寂しさも滲ませている。その反面、暑さを濃縮したような「度きつさ」も演出する。
私は毎年、この時季になると、この千変万化する「季節的な色彩と横溢する息吹」に出会って、胸がときめく。
それは、10代の頃に「美しい女性」を遠くから眺めて、抱いた「ときめき感」に通ずるものである。「10代の頃のときめき感」を今でも持てる「ときめきのある人生」を70代に近づきつつある現在も、「タニウツギ」は与えてくれるのだ。
本当に嬉しい。何でもいいだろう。人生にあって「ときめく」ことはいいことだ。それこそ「生きている」証だろう。)
◇◇ 「ムラサキ」は白い花だが、その他は「ムラサキ」色系だ ◇◇
(承前)
最初に「キュウリグサ」について触れながら、これと非常に似ていたり、生えている場所が同じである「ハナイバナ」について触れないわけにはいかない。
そこで、先ずはムラサキ科ハナイバナ属の一年草または越年草である「ハナイバナ(葉内花)」のことだ。
これは、北海道から九州の日本全土の畑や道端などにごく普通に生える草だ。茎は細く上向きの伏毛があり、10~15cmになる。
初めはやや地面に伏したように斜めに伸びるが、次第に立ち上がって茎が増えてくる。葉は長楕円形又は楕円形で長さ2~3cm、幅1~2cmあり、表面にしわがある。
葉の形は、あまりしっかり決まった形があるようではなく、縁は波打つことが多い。葉や茎、萼片などに、やや長めの毛が多く生えている。
枝の上部の葉の脇に淡い青紫色の花をつける。花冠は直径は3mm程度のごく小さい花で、花冠の先は5つにさけている。
花期は4月から11月であり、長い。同じ個体がこの期間ずっと咲き続けるというよりは、早めに咲いた個体に出来た果実が、「発芽」してまた夏や秋には花をつけ、全体として花期が長くなっているらしいのだ。つまり年数回、順次「生えては咲かせる」を繰り返しているということだろうか。花はキュウリグサに非常に似ている。
秋に芽生えた個体の越冬中の「根生葉」は褐色を帯びていて、葉の縁の毛がやたらと目立つ。
花名の由来は『茎の上部の葉と葉の間に花をつけることで「葉内花(ハナイバナ)」』ということによる。
「キュウリグサ」と「ハナイバナ」は見た目が非常に似ている。その見分け方を次に述べよう。
…キュウリグサ
・葉をもむとキュウリのにおいがする。・葉は茎の下のほうに、花は茎の上のほうにつく。
・クルッと巻いた花序が開花とともにほどけていく「さそり状花序」。
…ハナイバナ
・花穂の先端にも葉(葉状の苞)がある。・揉んでもキュウリの匂いがしない。・開花期初期にも花穂が渦を巻かない。・花の先端がくるりと巻かない。・花の形はキュウリグサそっくりだが中心が黄色くない。・さそり状花序にはならず茎の上部の方まで葉がついている。・11月ごろまで淡い青色の花を咲かせる。・葉と葉の間に花がつき、キュウリグサによく似ているが、多くはつかない。
さて、しんがりが「ムラサキ科」の総元締め、ムラサキ属の多年草「ムラサキ(紫)」である。
花期は初夏で、日当りのいい山地や草原に自生する多年草。根が太く紫色で古代の服色最高位の紫色を染めるための染料として使われた。同じ仲間の花の色は「赤や紫」系であるのに、しかも「ムラサキ」という花名であるにも拘わらず、花の色は白だ。
青森県でも滅多に見られない花となり、絶滅危惧ⅠB類にランクされている。
根は紫色、これを乾燥したものが漢方生薬の紫根(しこん)で、解毒剤・皮膚病薬とするほか、昔は重要な「紫色」の染料とした。これが花名の由来だ。
「ネムラサキ」「ミナシグサ」「ムラサキソウ」などと呼ばれる。高さ約50 cmである。
万葉集には「紫草(むらさき)のにほへる妹を…」などと詠まれている。
「源氏物語」のヒロインといえるのは、「紫の上」であろう。高貴な色とされる「紫」の印象を託された女性だ。
「紫色」は、「ムラサキ」で染めた色だ。「ムラサキ」は、日本に自生する草だ。根から紫色の染料が取れ、根の外皮が、濃い紫色をしている。
「ムラサキ」の花は「白」だ。花も小さく、葉や茎にも、目立つ特徴はない。一見、「ただの雑草」にしか見えない。
しかし、「ムラサキ」は、日本文化に、大きく貢献してきた。万葉時代から、染料や薬に用いられている。
「ムラサキ」がなければ、「万葉集」の歌や「源氏物語」は生まれなかったかも知れない。宮廷では「紫」が最高位の色でもあった。
ところが、現在は「ムラサキ」は、絶滅寸前である。「ムラサキ」が生える環境が破壊されてしまったのである。「ムラサキ」の栽培は難しい。現在では「ムラサキ」と似た別の外国から移入された種が栽培されることが多い。
伝統を維持するのに、外国の植物に頼らなければならないとは、情けない話しだ。
日本におけるムラサキ科の代表選手「ムラサキ」は今や自生しているものが少なくなり、「危急種」に指定されている。(この稿はこれで終了)