時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

労働経済白書が異例の提言

2007年08月07日 | 政治問題
戦後最長におよぶ景気回復とは裏腹に、実質賃金は減り、労働時間も延びるなど労働環境が改善されていない実態が、厚生労働省が先日発表した2007年版「労働経済の分析」(労働経済白書)でわかった。
白書は非正規雇用や成果主義、裁量労働制などの拡大を原因として指摘。業績回復の果実が労働者にも行き渡るよう、新たな成果配分の仕組みが必要だと訴えている。
今回の白書は、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を主題に分析。賃金面では、1980年代や1990年代の景気回復期と、2002年からの今回の景気回復とで賃金上昇率を比較した。
今回の景気回復では、景気の谷だった2002年第1四半期に比べ、2006年第4四半期の賃金は従業員500人以上の大企業でも0.3%増でほぼ横ばい。100~499人の中堅企業では1.2%減、5~29人の小規模企業は5.3%減と、むしろ悪化した。物価上昇率を反映した2006年平均の実質賃金は、前年に比べ0.1%減った。
これに対し、1980年代の景気回復は小規模企業のデータがないが、大手や中堅でみると、1983年第1四半期からの回復時は賃金が9.1~5.0%上昇。1986年第4四半期からの回復期には、18.7~14.1%増えた。1993年第4四半期からでは8.4~3.9%増だった。
一方、2006年の労働時間は残業が5年連続で増え、総労働時間は前年比0.5%増の年間1811時間だった。若年層を中心に労働時間が短いパートが増えたものの、働き盛りの30代や40代の正社員に仕事が集中。週60時間以上働く人の割合を1996年と比べると、35~39歳が19.6%から21.6%に、40~44歳が16.3%から21.2%に、45~49歳が14.9%から18.3%に上昇した。
こうした現状について白書は、非正社員の増加や労働組合の組織率の低下などで「経済成長と労働生産性の上昇を労働条件の改善につなげる従来のメカニズムが働きにくくなった」と分析している。
また、この白書では、労働生産性が向上しているにもかかわらず、これが賃金の上昇に反映せず、その一方で、経営者への報酬や株主への配当が大幅に増えていることも指摘されている。
つい先日も記事の中で述べておいたが、多くの国民は、景気回復を実感できていない。大企業が儲けを溜め込んでいる一方で、労働者に分配されていないことを指摘しておいたが、今回の白書の内容はそれを裏付けるものである。
厚生労働省さえ、企業に分配の適正化を求めているのが現在の労働環境である。企業の儲けを労働者により多く分配するためには、国民世論の高揚を背景に、労働組合などが具体的な数字も指摘しながら企業と交渉し、成果の適正な分配を要求することである。
また、政府もこのデータに基づき、住民税や消費税などの庶民増税ではなく、法人税への課税強化や所得税の累進課税の強化による資産家への課税を強化し、これを福祉や医療、教育など庶民の暮らしに直接結びつく分野に投じることであろう。
給料が上がらないことをグチったり、泣き寝入りしているだけでは、決して賃金は上がらず、景気回復の恩恵を受けることはできないのである。


最新の画像もっと見る