時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

怒り心頭 - 財界の図々しい要求

2006年12月13日 | 財界
古い話で恐縮だが、先月末に政府の経済財政諮問会議が開かれ、御手洗冨士夫経団連会長ら民間議員4人が、「労働ビッグバンと再チャレンジ支援」と題する文書を提出した。この文書の内容が大問題である。一定期間後に正社員として雇用することを前提としている現在の派遣労働者のあり方を見直すという提案だ。
しかも、提案の理由を聞いて驚いた。「規制緩和で派遣期間の制限をなくすことで、派遣労働者の真の保護につながる」と主張しているのだ。どうして、派遣労働者の保護につながるのだろうか?まったく理解不能である。一生、派遣社員として過ごす人が増えることは明らかではないか。
現在は、派遣期間が1年になると、企業に直接雇用の義務が生じる。しかし、これも財界の要求によって、来年3月からはこの期間が3年間に延長される。来年3月以降は、直接雇用を希望しても、3年間にわたって派遣労働という低賃金労働を行わなければ直接雇用に道が開かれなくなるのだ。
ところが、今回の提案は、その期間さえ取り払ってしまって、企業の雇用義務を完全に撤廃して、正社員と同様に経験を積んだ派遣社員を無期限に低賃金で雇用できるようにしようという企みだ。
今でさえ、ワーキングプアと呼ばれる非正規雇用者などが増え続け、格差の広がりが問題になっている時に、企業が更に儲けを積み上げ、格差をますます拡大することが許されてよいわけがない。
しかも、現在の労働法制の根幹である「企業が労働者を直接雇用する」という基本原則にも抵触するとんでもない提案である。
更に驚くべきことに、「不公正な格差の是正」のために、「正社員の解雇条件や賃下げの条件を緩和する」すなわち、企業が簡単に首切りや賃金の切り下げができるようにし、「派遣、パート、契約など様々な雇用形態の非正社員との格差を縮める」ことができると提案していることだ。
格差の是正は、非正規雇用者の賃金の上昇によって解決を図るべきであるが、財界の主張は、正規雇用者の解雇や賃金の切捨てで、格差を「是正」しようというのだから開いた口が塞がらない。
これが、財界のいう「労働市場改革」(労働ビッグバン)だ。
しかも、この会議に出席した安倍首相は「労働市場改革は内閣の大きな課題」と言明し、来夏の「骨太の方針」に方向性や工程表を盛り込む方針という。この内閣の正体見たりという思いだ。
読者諸兄はけっして「改革」の名に騙されてはならない。
「55年体制」と呼ばれた時代があったが、もし、当時であればこういう発言そのものが容易には許されない雰囲気があったように思われる。鉢巻を締めて、デモやストライキ、団体交渉をするのは、私の性に合わないし、あまり係わり合いになりたくない。しかし、労働者、国民もこういう時代とは違った方法で、財界の思惑と対決していかなければ、知らず知らずの間に、自分自身はもちろんのこと、家族や親戚、友人などが次々とこの渦の中に巻き込まれてしまうのではないかと危惧するのは私だけではあるまい。渦に巻き込まれてからでは、もう手遅れである。
「55年体制」の時代とは異なる新しいタイプの労働運動、新たな対決方法を模索する動きも進んでいる。一人一人の国民も、携帯電話やメール、インターネットなど新たな武器も手に入れた。
黙っている手はない。沈黙は、財界や政府に承認を与える行為だ。
今の社会に矛盾を感じる読者諸兄の声がじわじわと日本中に広がることを願っている。

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