今年度の年金の運用成績が5年ぶりにマイナスとなり、資産を目減りさせる見通しだ。米サブプライム問題に端を発した株安が主因。年金は長期運用のためすぐに給付が減るわけではないが、株安が長引けば影響は大きい。退職金での購入が多い投資信託も株式運用はマイナスになっているとの報道があった。
年金は、全国民に共通する基礎年金のほか、サラリーマンには「2階」部分として厚生年金が上乗せされる。さらに、企業が社員向けに用意する企業年金もある。
基礎年金や厚生年金の資産約91兆円を市場で運用する年金積立金管理運用独立行政法人の運用成績は、公表済みの最新データとなる昨年7~9月は1.80%のマイナスだった。運用の約20%を占める国内株が低迷したためだ。
サブプライム問題が表面化する前の同4~6月は2.75%のプラスだったため、4~9月通算では0.85%のプラスを維持したが、その後も国内株の下落は続いており、運用環境は厳しさを増している。近く公表される4~12月の成績がマイナスに転じる恐れがある。
企業年金の成績は一足先に落ち込んでいる。格付け会社の格付投資情報センターによると、企業年金などを運用する約2000ファンドの運用成績は、07年4~12月が1.97%のマイナスとなった。債券や外国株での運用は2~4%台のプラスだったが、国内株が13.31%のマイナスになったのが響いた。今年1月分を含む推計値ではマイナス幅が6.39%に広がっており、2007年度全体は2002年度以来のマイナスになる可能性が高い。
企業年金連合会は、中途退職者の年金や解散した企業年金の資産など約13兆円を運用している。運用成績は2006年度まで4年連続でプラスだったが、「2007年度のプラスは難しい」という。2006年度には、加入者の掛け金と運用益を合わせた年金資産が、加入者に支払う年金負債より13%多かったが、07年度にはその幅が10%を切る見通しだ。
年金は加入者らの掛け金を数10年かけて運用するため、一時的な損益が給付水準に直結するわけではない。ただ、マイナス運用が続けば、年金の資産が負債を下回るなど財務状態が悪化し、企業などが補填を迫られる恐れもある。
中高年の購入が多い株式投信の運用成績も悪化している。投資信託協会によると、株式投信の1月末の純資産残高は前月末比6兆715億円減の60兆7130億円になり、月間で最大の減少を記録した。日本株に加え、昨年まで好調だった中国などの新興国市場も株安になって、運用部分で5兆4593億円も目減りしたためだ。株式投信の購入者は含み損を抱えた人が増えたと見られる。
そもそも、年金資金を株式などの不安定な市場に投入すべきではない。バブル崩壊後に何としても株価を引き揚げたいという政府、財界の思惑に従って、年金資金や郵便貯金などが投入されてきたものであり、年金原資が将来的に確保される保証もない。
いざ支給という段になって、株価が低迷していれば元も子もない。また、運用額が多額のため、いざ株式を売却すると、株価の低落を招くという矛盾に陥ることは明白である。年金原資は低利率であっても、安全な運用を心がけ、この試算に基づいて、保険料徴収と年金支給のバランスを考えるべきである。
年金は、全国民に共通する基礎年金のほか、サラリーマンには「2階」部分として厚生年金が上乗せされる。さらに、企業が社員向けに用意する企業年金もある。
基礎年金や厚生年金の資産約91兆円を市場で運用する年金積立金管理運用独立行政法人の運用成績は、公表済みの最新データとなる昨年7~9月は1.80%のマイナスだった。運用の約20%を占める国内株が低迷したためだ。
サブプライム問題が表面化する前の同4~6月は2.75%のプラスだったため、4~9月通算では0.85%のプラスを維持したが、その後も国内株の下落は続いており、運用環境は厳しさを増している。近く公表される4~12月の成績がマイナスに転じる恐れがある。
企業年金の成績は一足先に落ち込んでいる。格付け会社の格付投資情報センターによると、企業年金などを運用する約2000ファンドの運用成績は、07年4~12月が1.97%のマイナスとなった。債券や外国株での運用は2~4%台のプラスだったが、国内株が13.31%のマイナスになったのが響いた。今年1月分を含む推計値ではマイナス幅が6.39%に広がっており、2007年度全体は2002年度以来のマイナスになる可能性が高い。
企業年金連合会は、中途退職者の年金や解散した企業年金の資産など約13兆円を運用している。運用成績は2006年度まで4年連続でプラスだったが、「2007年度のプラスは難しい」という。2006年度には、加入者の掛け金と運用益を合わせた年金資産が、加入者に支払う年金負債より13%多かったが、07年度にはその幅が10%を切る見通しだ。
年金は加入者らの掛け金を数10年かけて運用するため、一時的な損益が給付水準に直結するわけではない。ただ、マイナス運用が続けば、年金の資産が負債を下回るなど財務状態が悪化し、企業などが補填を迫られる恐れもある。
中高年の購入が多い株式投信の運用成績も悪化している。投資信託協会によると、株式投信の1月末の純資産残高は前月末比6兆715億円減の60兆7130億円になり、月間で最大の減少を記録した。日本株に加え、昨年まで好調だった中国などの新興国市場も株安になって、運用部分で5兆4593億円も目減りしたためだ。株式投信の購入者は含み損を抱えた人が増えたと見られる。
そもそも、年金資金を株式などの不安定な市場に投入すべきではない。バブル崩壊後に何としても株価を引き揚げたいという政府、財界の思惑に従って、年金資金や郵便貯金などが投入されてきたものであり、年金原資が将来的に確保される保証もない。
いざ支給という段になって、株価が低迷していれば元も子もない。また、運用額が多額のため、いざ株式を売却すると、株価の低落を招くという矛盾に陥ることは明白である。年金原資は低利率であっても、安全な運用を心がけ、この試算に基づいて、保険料徴収と年金支給のバランスを考えるべきである。