阿部ブログ

日々思うこと

金融決済インフラを使った商流情報(取引関連情報)の流通によるビジネス環境の革新

2011年12月13日 | 日記

情報通信技術の進展により金融決済インフラを通じた民間企業の商流情報(取引関連情報)など多様な情報を送ることができる環境が整いつつある。その背景には、世界的にも類例を見ない高度な金融決済システムの存在がある。

我が国では、全国規模の銀行間資金決済ネットワークとして「全銀システム」が1973年に稼働開始し、全国各地の銀行等で受け付けた振込依頼を振込先の銀行まで送信する手続を極めて短時間に処理している。また企業間決済においては、手形の他、銀行振込などの企業間決済の高度化に対応するための取組みが営々と進められてきた。それは、主として企業の売掛金の消込事務の効率化を目的に、振込データに取引関連情報(商流情報)を付加する「金融EDI」と呼ばれるシステムによるものだが、今年11月稼動の第6次全銀システムでは、従来の固定長の決済電文に加えて、XML(eXtensible Markup Language)電文(140桁)と言う商流情報も添付可能な世界標準準拠の拡張機能が組み込まれた。更に2015年の稼働開始を目指してシステム設計が進められている「新日銀ネット(第2期開発分)」においてもXML電文の利用が可能となる。

産業界においてもXML電文を用いた受発注から支払までのデータ交換標準が普及しており、小売・卸売業界では「流通BMS」が稼働し現在約180社が導入している。このように、産業界と銀行業界の双方においてXML電文を用いたデータ交換が可能となると、今まで分断されていた産業界の取引データと銀行業界の決済データの相互利用が可能となり、受発注から決済までのシームレスな商流情報も含めたシステム間連携環境が整う事となる。

更に金融決済インフラで商流情報がシームレスに流通するようになると、国際財務報告基準(IFRS)への対応も企業としては前向きに取組む意味がある。IFRSの本質は世界共通の財務報告書と言う事ではなく、業務プロセス、取引データの透明性、公正性に関わる点にある。金融決済インフラにおいて本格的な商流情報が流通するようになると、連結財務情報からグループ全体を包括した「会計トレーサビリティ」が実現できる。即ち連結財務情報からドリルダウンすると個々の取引データや決済、資産データを取り出せるシステムが理論上は構築可能であり、将来的に物流情報や貿易に関する情報などを付加するなど、従来は単なる決済に関連した数字の羅列に過ぎない情報に、ビジネス取引や会計処理に有為な意味ある情報が付加されることにより、流動性マネーの捕捉が容易となり、またマネーロンダリングや脱税などの抑止・防止にも役立つなど、我々のビジネス慣行と業務プロセスを大きく変貌させるだろう。

※全銀システム(全国銀行データ通信システム)は「資金決済に関する法律」に基づく資金清算機関である「全国銀行資金決済ネットワーク」によって運営されている。2010年度末時点で1,370の金融機関、32,618の店舗が加盟。2010年度中の1営業日平均のテレ為替の取扱金額10.6兆円、取扱件数560万件。

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