阿部ブログ

日々思うこと

中国国際エネルギーフォーラム開催延期の原因

2013年09月18日 | 雑感
中国国務院・参事官室が主催者の一角をなす「中国国際エネルギーフォーラム」が、11月1日に北京で開催される予定だったが、これが延期となった。この決定は、先週の金曜日午後に国務院参事官室が行った。このフォーラムの開催についての検討会議が、先週月曜日の午前中、国務院で行われ、上部組織と調整の上、最終的な結論を金曜日に出したという事。この決定は可成り迅速に行われたようで、大連のダボス会議に出席していた関係者も、この決定は知らずにいた事からもわかる。

表面的な開催延期の理由は11月に開催される三中全(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)が開催される為としているが、これは事前にわかっている話。本当の理由は、中国石油天然ガス集団(CNPC)に対する中国当局の汚職摘発にあると聞いた。多分、講演予定者が摘発される可能性があるのでは??と勝手ながら推測している。
聞くところによると、中国石油天然ガス集団(CNPC)の副総経理2名を含む4人の幹部が逮捕。その後、今年3月まで同社の会長を務め、現在は、国務院・国有資産監督管理委員会(国資委)主任という大臣ポストにある蒋潔敏氏が更迭された。中国・監察省は、国資委の蒋主任を「重大な規律違反」の疑いで調査中と発表している。この国有石油業界をターゲットにした汚職摘発は、子会社のペトロチャイナにも波及しており冉新権副社長、同社の地質学責任者の王道富、それと傘下企業である昆侖能源の李華林会長が、当局に身柄を拘束され、これまた取調中。

中国当局は周到に準備しており、CNPCの課長級以上の職員のパスポートは没収。つまり海外逃亡出来ない状態。これは芋づる式に身柄拘束や証人喚問という形での身柄拘束の拡大が容易に想起される状況。汚職疑獄の最終的なターゲットは、CNPCの元会長で前中央政治局常務委員・周永康氏との事で、中国政界の最高指導層であるチャイナ・ナイン(今はチャイナ・セブン)である中央政治局常務委員経験者が、当局に逮捕されると、これは文化大革命以来のこと。習近平政権の汚職摘発は、本気も本気、絶対根絶する!と言う強い意志の証左。疑惑は、この元チャイナ・ナインの周永康氏の長男周斌氏の妻の両親(在米)が、CNPCの設備購入に関連して8億米ドルを不正に得たというもので、これを盛んに中国メディアが報じている。明らかに当局が情報を流している。

まあ、中国の石油業界の汚職摘発は、初めてではない。2008年1月25日、シノペックの陳同海前会長が、総額3億元(45億円)の収賄で中国共産党の党籍を剥奪された前例がある。陳同海の父親は陳偉達元天津市委書記(元党中央政法委副書記)で、所謂太子党。何でも職権を乱用して、シノペックの製油所関連施設がある、山東省青島市の杜世成(前党委書記)と自分の愛人を共有する「公共情婦」の関係になりつつ、北京五輪のヨット競技施設会場となった青島の商業開発などで不正な利益を得ていたと言う。金と女とは良く言ったもので、共産党幹部や政府幹部の「腐敗分子」には、愛人が存在し、2002年11月の第16回党大会以降の約5年間に汚職事件で逮捕された党・政府関係者16人のうち14人が愛人を囲っていた。愛人問題で有名なのは陳良宇元上海市党委書記と劉志華元北京副市長などだが、邱暁華前国家統計局長には愛人との間に子供までいる重婚状態で人倫不在とも言われた。

さて、この当時は3億元と言う巨額で「新中国建国以来最大規模の汚職」と報道されていたが、今回のCNPCやペトロチャイナの不正利益の額は桁が違うようだ。石油業界の利権の大きさを物語る。今回のこの勇気ある汚職摘発に対して、習近平のリーダーシップを褒め称える声が一般民衆には多いと言う。よくぞタブーを打ち破ってくれた!というもので、何でも中国民衆は、国営企業、特に石油・ガスなどエネルギー系企業を唾棄するほど嫌っており、そのトップの汚職摘発は、拍手喝采状態。さあ、次は電力業界の汚職摘発か? 請うご期待と言う事らしい。
中国共産党の歴史上、三中全会は経済政策の大転換を意味する意義深い会議であり、この三中全会を目前にして、中国の国内情勢が面白さを増している。