阿部ブログ

日々思うこと

関東大震災90周年のとある週末

2013年09月08日 | 雑感
知らなかったが、今年は関東大震災90周年だという。
          
どおりで都市災害やら生物化学防護というテーマで講演依頼が来る筈だ。いろんな所で同じような講演会やらが開催されると人手不足と言う訳か~
どおせ首都圏限定の匿名ボランティアでやるので、土日であれば話はする。しかし今回はシリアの化学兵器使用が国際的に話題となっている事もあり、実際のガスマスクなどを用意して、より実践的な内容にして欲しいと言うが、他に専門家(自衛隊や消防・警察)がいるだろうと指摘すると、NPO理事の彼は駄目だと言う。

「その道の専門家と言う者は、その分野に特定した話しか出来ない。それに国内限定では今回の講演的では弱いね。何せ今回の聴衆には猛者連がいるから。それと、あなたの書いたものを読んでいるが、シリアの情勢にも詳しいし、ハーバーボッシュから現代のNBC戦の現状について医化学的な見地も交えて話せるのは居るようで居ないんだよ。」
「適当に書き連ねているだけ。シリア情勢に詳しいのは、知り合いが現地にいるから。適任者を紹介するから、今回は勘弁して。」
「いや、お願いしたい。なんなら、あなたが断れない人から依頼が行くようにしようか?」
「・・・・・」

仕方がないのでヤル事になったが、場所は意外と近い。ので走って行く事にした。
そうだ、途中に陸軍の被服廠跡があるので立ち寄ってデジカメしよう。この場所では実に3万8000人の方が亡くなっている。
  祈り。(冥福)
          
失敗した! タオル忘れた~汗ダクダク。
流石にジョギング気分じゃまずいね。気の緩みと言うか、今日は妙に緊張感がない。しかしタオルないと熱いな~着替えるにも着替えられない・・・こんな状態の時に、件の彼氏が来る。
「なんという格好で来るの???」
何という格好もねえもんだ。こちトラ休みつぶして無給でやるんだからイイでしょ!と思うが~・・・・・・「ねぇ、タオルない?」

「着替えは?」
「あるよーっ、ほら」と言いながら、汚い山登り用のリュックサックからズボンとシャツを出して、ピラピラさせる。
「その格好でしゃべるの? ベルトは? 靴下はジョギング用?」

実は私服は余り持っていない。また髪の毛もボザボザになってきているし、そもそも服装に頓着しないので、こんな微妙な会合の場合には、何着ていいのかが分からなくて困る事が多い。
「いいじゃん。ボランタリーだし、休みだし。それに聴衆は猛者連なんでしょ」
「違う。猛者と言うのは、それなりに影響力のある人たちと言う意味。走ってこれるんだったら戻って着替えてきたら?時間あるし」
「猛者って、NBC経験者を言わねぇか? それに戻ったら、帰ってこないと思うよ。アマゾンに注文したエズラ・ヴォーゲルの『小平』が届いている頃だから」
「ああ、例の『Deng Xiaoping and the Transformation of China』だね。翻訳本が出たか。」
「スラスラ英語で原著名が出てくるのは流石ね。しかし、齢80にして900ページの大著を出すなど凄いね。キッシンジャーの『On Chaina』も500ページで88歳だしな。」
    

さて、講演そのものは、きっちり2時間やった。
質問を受けたくないので、8秒装面のパフォーマンスとか、さっき撮った被服廠のデジカメなど見せながら、時間調整しつつ、適当に盛り上げて無事終了!
自分に「お疲れ様」と言って、速やかに退却。来た時と同じ、汗臭いジョギング姿に80秒で変身。さーて帰るか~、
そうだ。浅草に寄っていこう。我ながら名案だ。今度こそメロンパン食べなきゃ。
            
と、こんな時にまた、件の彼が来る。
「あれっ、着替え早いね。もっと話を聞きたいとおっしゃっている方々いて、質問もあるようだから、今からの食事会に出て。好きなビールも飲み放題だよ。」
「ダメ、ダメ。酒とタバコと賭け事はやらないのよね。」
「あれ? 前はハイネケンを用意しとけって、浴びるほど飲んでいたよね」
「知っているでしょ、若い頃に体をチョー酷使したので、今じゃ内臓も、腰も、膝もボロボロよ。最近は眼も見えないしね。帰って風呂入って寝る」
「ああ、それじゃ弁当、持って帰ったら~コレコレ。良く出来てるでしょ」
「これは・・・流石に食べれないでしょ・・これ・・・しかし良く作ったな~っ。ケイジツ品だ。不細工な奥さんが作ったの?」
(ニコニコしながら)「そうそう」
     
「残念ながら、この通り不細工な格好なので持って帰れない。食べる前にスマホかなんかで撮って送って。FacebookでもMailでもOKだから、じゃぁ」
「本当に帰るのか?」
「んん、花月堂に行く。メロンパン食べに。」
   

シリア情勢 徒然なるままに

2013年09月08日 | 雑感
シリア情勢について徒然なるままに

シリア軍はマスタードガス、サリン、VXガスを含む様々な化学物質(約1000トンを保有。投射兵器は、化学兵器弾頭搭載可能な地対地ミサイルのスカッドB、スカッドC、SS21を保有。これらの弾頭は100または300リトルの毒ガスを搭載可能。後述の記報告書にある通り、シリア国防省傘下のシリア科学研究調査センター(SSRC)が化学兵器を管理しているが、実戦で運用するのは、シリア陸軍第450師団で、同師団は、全てアラウィ派の将兵で構成されている。極めてアサド政権に対する忠誠心厚い部隊として有名。

第450師団や第155スカッド旅団などはシリア攻撃に備えて地下施設への移動など欺瞞行動を開始。現地ではイスラエル情報機関と空軍偵察機&衛星が追跡している。またシリア国内ではイスラエルの長距離偵察部隊と在ヨルダンの海兵隊偵察部隊や特殊部隊が活動中であるが、昨年来、イギリスの第23SAS連隊、及び現役の22SAS連隊が積極的に活動中。イギリス議会は参戦を否決しているが、米仏など関係国は、湾岸戦争時のブラボーツーゼロ並みの活躍を同部隊に期待している。

EUのヴィリュニュス外相会議で、米国の対シリア軍事行動について討議したが、満場一致の結論は出なかった。他聞なれど外相会議の総括声明には、シリア軍による8月21日の化学兵器攻撃を非難し、シリア政府の責任を追及する文言は盛り込まれていたものの、対シリア軍事作戦についての言及はない。米連邦議会では、9月3日の上院で審議され決議案が出た。
To authorize the limited and specified use of the United States Armed Forces against Syria

上院に続き9月4日、米下院外交委員会においてヘーゲル国防長官、デンプシー統合参謀本部議長、ケリー国務長官が出席し公聴会が開催。
メディアで既報につき、公聴会記録全文のみの掲載。
Syria: Weighing the Obama Administration’s Response U.S. House Committee on Foreign Affairs, September 4, 2013

シリア政府と良好な関係にあり中東域での紛争を望まない日本は、本音は冷ややかだが国際社会向けには、化学兵器使用に関して非難声明は出さざる終えない。こんな中、オバマ大統領と安部首相は、9月3日に電話会談をおこなった。型通りに「シリアの化学兵器使用は国際規範の重大な違反であり、容認できないとの立場で一致し、国際社会による対応について、引き続き緊密に協議する」ことを確認している。
Readout of the President’s Call with Prime Minister Abe of Japan The White House, September 3, 2013

■参考1:
オバマ大統領は8月31日、シリア政権に対する軍事行動の可能性について発言し、軍事力の行使のために米国議会の承認を求めるとしている。
Statement by the President on Syria The White House, August 31, 2013

■参考2:米議会調査局によるシリアの化学兵器関連の報告書。
Syria's Chemical Weapons: Issues for Congress CRS Report for Congress, August 20, 2013. R42848

■参考3:米情報コミュニティの情報評価
大統領声明の前日、8月30日、シリア政府による化学兵器の使用に関する米国政府調査報告書を発表。
Government Assessment of the Syrian Government’s Use of Chemical Weapons on August 21, 2013 The White House, August 30, 2013

被害地域の地図
Syria: Damascus Areas of Influence and Areas Reportedly Affected by 21 August Chemical Attack

今回の情報評価について、CIA元副局長のジョン・マクローリンは、「情報コミュニティーでは徹底的に議論されないかぎり『high confidence(強い確信)』と言う表現は使わないと」と発言しており「非常に強力な評価」であるとしている。また国家情報長官室(ODNI)の元情報分析官トマス・フィンガーもマクローリンの発言を敷衍し、直接証拠がなく、状況証拠が多いことは弱いが、一連の情報は筋が通っていて信憑性が高く、今回の情報評価には、それなりの説得力があるとコメントしている。
しかし、直接的証拠が無いことは、過去の致命的な過ちを繰り返す事態を容易に想像できるのは自分だけではないだろう。意図的に情報評価を捻じ曲げる背景も勘案すると、両名のコメント・発言のポイントは、情報評価自体に論理的な矛盾が無く推論的に間違っていないといった類の評価である。
つまり客観的事実について評価していないと言う致命的な欠陥がある。英仏やシリア人権監視団などの犠牲者数は、それぞれ異なっているし、国連の調査報告がもし出ることがあれば、また数字は異なるだろ。因みにイギリスは犠牲者1429人、シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は、502人としている。またロシアが主張するように反政府勢力がサリン攻撃を仕掛けたとの情報もあり錯綜している。プーチン大統領の「はっきりとした証拠が提示されればシリア攻撃を容認すると発言している背景は、良く理解出来る。
イラクの時は、意図的に情報評価を捻じ曲げたと考えているが、今回はイラク戦争と同じ轍を踏みたくないと推測するので、情報分析にはそれなりに力点を置いた様子が報告書の行間から読み取れる。

■参考4:英合同情報委員会(JIC)の情報評価

■参考5:フランスは対外治安総局(DGSE)と陸軍G2をメインとする軍情報部が合同で作成した調査報告をシリア問題を審議する仏議会に提出。ダウンロード可

※注:ユタヤロビーについて
現在、在米ユダヤ人組織AIPAC(American Israel Public Affairs Committee)が先に米議員に対して積極的なロビー活動を始めているが、選挙を控えている議員は、国内世論も無視できず、旗幟を鮮明に出来ない向きも多いようだ。これまで、AIPACのロビー活動が効を奏しない事が、少なくとも2度あった。(レーガンのサウディへのAWAC売却問題とパパ・ブッシュのイスラエルの1991年のイスラエルの債務保証の凍結問題)。過去の経験を教訓としてユダヤロビーの力を結集して、その後のイスラエル支持を強固しているが、ミアシャイマーとウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』にもある通り、米国内では親イスラエル政策への疑問が渦巻いているのも事実。
今回は、民主党支配の上院が承認し、共和党支配の下院が拒否する可能性ありで、米連邦議会とイスラエルとの関係変化に注目したい。私見ながら共和党議員らのイスラエル支持派に変化が生じる可能性があるだろうし、共和党等の動き如何では民主党政権が長期に続く可能性もあると感じている。