阿部ブログ

日々思うこと

太平洋ルートの物流状況とSCMの変化

2010年12月28日 | 日記
アメリカ西海岸の港湾など物流インフラの状況は、今後の太平洋ルートの物流に徐々に大きな影響を及ぼす可能性がある。

アメリカのコンテナ貿易の3分の1は、ロサンゼルス=ロングビーチ港湾コンプレックス(以下、LA-LB)を経由しており、2007年の実績ではコンテナ800万個を取り扱った。アメリカの鉄道は年間1200万個のコンテナを輸送しているが、ユニオンパシフィック鉄道の平均速度は膨大なコンテナ輸送の為、10年前は31マイルだったが現在は28マイルにまで低下し、ロサンゼルスからシカゴへの輸送時間は8時間多くかかる状態となっている。

LA-LBの陸上輸送網の過密な状況と投資不足、港湾インフラの生産性の改善がみられないために、今後LA-LBの港湾、道路、鉄道の混雑はますます悪化すると推測され、アメリカ内陸部への輸送コスト・時間もさら上昇するだろう。

だが2014年にパナマ運河の拡張工事が完成すると、LA-LBの海上・陸上交通の混雑もいくぶん緩和されるかもしれない。但しパナマ運河の通行料としてコンテナ1個当たり144ドルかかり、より高いコストを負担しなければならない。それでなくとも2007年秋以降のコンテナ輸送コストは15%上昇し、アメリカ国内の輸送コストにおいては25%も上昇している。

また、環境コストも考慮せねばならない。特にLA-LBでコンテナを牽引する16000台のトラックの多数が20年を越えて使用されており2012年までに、カルフォルニア州のディーゼル燃料汚染対策基準を満たすトラック換える必要があり費用も22億ドルと見積もられている。港湾施設内を走る機関車も電気に変える様に州政府から指導されている。

以上の背景から2009年からはLA-LBのインフラ改善のためコンテナ1個について30ドルの料金が課せられる。このように環境対策など様々な理由で物流コストが上がる事により輸入品価格が跳ね上がるようになれば、メーカーは生産拠点を市場の近くに移さざるを得なくなるのではないか?

事実、米企業はサプライチェーンをアジアからメキシコなどの南米にシフトしつつある。今後はグローバルSCMから域内SCMへと大きく転換していく可能性があり、リーマンブラザース崩壊以降、変調をきたしているグローバルな物流の状況には今後とも十分に注意を払う必要がある。