北杜夫の『木霊』は、初期の傑作『幽霊』の続編に当たる青年期の魂の変遷を書き留めた、これも秀作です。ドイツのチュービンゲンに留学した主人公が過去の恋愛を思い出しながら、トーマス・マンの導きによって最初の長編(じつはこれが『幽霊』という設定になっています)を、マンの『ブッデンブロークス家の人々』で有名な北ドイツの町、リューベックの海沿いのホテルで書き始めるところで小説は終わります。
『木霊』は単行本が1975年で、その初版本が手元にあるのですが、新潮文庫版の初版本(1979年)も本棚には置いてありました。こちらはかなり疲れた感じで、つい最近まで開くこともなかったのです。先日、何気なく文庫本を手にとって扉を開けると、紙切れが挟んであるのに気がつきました。リューベックのHotel Berlinという安ホテルの領収書です。日付は1982年6月14日、1泊して28マルクであったことが書かれています。
私もアメリカの留学の帰りに、『木霊』を鞄に入れてリューベックを歩いたということの、記念だったのでしょう。たぶん、そのときはもう1冊、ボネガットのMother Nightもあったと思います(こちらは非政治的なアメリカ人が世界大戦中にニュルンベルグでアメリカ軍による無差別爆弾に遭うという話)。
ちなみにインターネット検索をしてももはやリューベックにはHotel Berlinは引っかからないので、安ホテルはきっと消えてしまったとしか考えられません。
『木霊』は単行本が1975年で、その初版本が手元にあるのですが、新潮文庫版の初版本(1979年)も本棚には置いてありました。こちらはかなり疲れた感じで、つい最近まで開くこともなかったのです。先日、何気なく文庫本を手にとって扉を開けると、紙切れが挟んであるのに気がつきました。リューベックのHotel Berlinという安ホテルの領収書です。日付は1982年6月14日、1泊して28マルクであったことが書かれています。
私もアメリカの留学の帰りに、『木霊』を鞄に入れてリューベックを歩いたということの、記念だったのでしょう。たぶん、そのときはもう1冊、ボネガットのMother Nightもあったと思います(こちらは非政治的なアメリカ人が世界大戦中にニュルンベルグでアメリカ軍による無差別爆弾に遭うという話)。
ちなみにインターネット検索をしてももはやリューベックにはHotel Berlinは引っかからないので、安ホテルはきっと消えてしまったとしか考えられません。
お知らせがあります。
「小熊秀雄賞」が来年第40回で廃止という件、前回お伝えしましたが、継続の道が開かれつつあるようです。
ほっとしました。
ところで先週、工藤正廣先生とお話する機会がありました。
「ドクトル・ジバゴ」が中心ですが、太宰や津軽のこと、井上靖のこと等、話が尽きませんでした。
二人で面と向かって文学話をしたのはたぶん教養部の頃依頼ではないでしょうか。