ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「教師が教えない人になれる時間」(青木善治著;東洋館出版社)を読む

2024-08-04 22:17:58 | 読む

「教師が教えない人になれる時間」。

教育の専門書なのに、書名からして面白い。

「教師」という言葉には、「教える人」の意味がある。

その「教師」が「教えない人」になれる、とはどういう意味?

教えることをサボって得しようということか?

…なんて考える人がいてもおかしくはないだろう。

 

でも、その意味が分かる人は分かるはずだ。

意味が分かる教師は、きっと心ある教師だろうと思う。

ちなみに、帯には次のような方におすすめと書いてある。

 

本書は、表紙に「15分間の『朝鑑賞』が子どもの自己肯定感を育む」とある。

どういうことかというと、月に1,2度でいいから、15分間の朝学習の時間に、学級で美術作品を鑑賞することによって、子どもたちの力も、教師の力もつけていこうということなのだ。

そのために、「対話型鑑賞」の実施と、教師がファシリテーターに徹するということが求められる。

 

子どもたちの表現力や思考力は、教師が教え込んでも育つものではない。

では、教師にどのような配慮や役割が求められるのか。

その大切なものが、本書の実践の中に見ることができる。

 

著者の青木善治氏は、現在滋賀大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)教授である。

その前には、校長など新潟県の公立小学校の経験もある方である。

私も、かつて十数年前に一緒に勤めた経験がある。

物腰も頭脳も柔らかさを感じさせる人だった。

図画工作や美術を専門としていたが、当時よく実践論文などを書いていた方であった。

そのせいか、本書はかたい内容ではなく読みやすく分かりやすいのは、いかにも氏らしい。

「質問を投げかけてから、10秒は待つ」

「否定する言葉を使わない」

「オウム返しや言い換えをする(『〇〇ということですね』など)」

「事実と意見を分ける」

など、教師が「教えない人になる」ために大事なポイントが具体的である。

 

朝の短い時間の実践によって、

子どもたちに自分の思いを自由に表現する力をつける

みとめ合う力をつける

自己肯定感をつける

などができるということ。

そして何より教師の「子どもを支える力」「子どもの力を引き出す力」が育つことが期待できる。

すでに現職から離れて遠くなってしまったが、読みやすくいい本だと思った。

コメント (2)
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