この記事は2020年5月18日に配信したメルマガの
メインコラムを再録したものです。
先週14日、日本政府は東京都や大阪府を除く
39の県で新型コロナウイルス感染症拡大に関する
緊急事態宣言がを解除しました。
残る8つの都道府県でも21日を目途に
緊急事態の解除を検討するとのこと。
これまで外出/営業の自粛や通勤・通学を
控えてきたわけですが、
少しずつ日常を取り戻す取り組みが始まりました。
残念ながら緊急事態宣言の解除は
新型コロナウイルスがいなくなることを意味しません。
感染する可能性は依然として残っていますし、
ワクチンや特効薬も見つかっていません。
緊急事態宣言の有無に関わらず、
健康維持のために可能な対策
(手洗い・うがい、早寝早起き等)
を実践する必要があると考えています。
さて、日本では一部の国と違い、
緊急事態宣言下で求められている
外出や営業の自粛に強制力がありません。
これは根拠となる法律がないためです。
法律に基づいて外出を抑制できる、
あるいは罰則を定めている国では
罰金や禁固を伴う措置も講じられています。
(例えばカタールでは公共の場で
マスクを着用しないと最大3年の禁固
もしくは約600万円の罰金が定められています)
こうした状況下、
日本では自粛要請を守らない店舗や
マスクを着用していない人に対し、
法律とは全く別の次元で他人の行動を
制限しようとする方もいらっしゃるようです。
NHKの報道によれば、
「自粛警察」と称されるような
独自の正義感に基づく行為が発生しているとのこと。
(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200509/k10012423651000.html)
中には、感染を避けつつ、
お客様に楽しんでもらうための
「無観客(遠隔)ライブ」
ですら自粛を求めるよう迫ったり、
事実関係を確認せずに他人を
コロナウイルス感染者と断定してしまったり、
という行為も散見されるのだとか。
法律に基づかず、独自の正義感によって
他人に罰を与えるような行為、
つまり私刑は憲法31条で明確に禁止されています。
自粛要請には法律上禁止する効力はないので、
むしろこうした「自粛警察」のような
活動だけが法律違反と言うことになります。
実際にNHKの番組でも虚偽の情報を書き込んだ人物が
刑事事件で立件されたケースもある、としています。
こうした行き過ぎた自粛要請やマスク着用の
強要の背景には様々な要因があると思われます。
NHKの番組では防衛本能の現れや、
悪意のない情報拡散という指摘がありました。
ただ、こうした動きを横目で見ていて、
Ozakiが感じたのは、本来感染の予防や
急速な感染拡大の防止という目的で行われている
外出/営業自粛やマスク着用そのものを
目的だと誤った認識を持つ危険性です。
本来の目的達成のための手段である
外出/営業自粛やマスク着用が目的化してしまうと、
自粛をしない店舗に嫌がらせをする
マスク着用していない人物にマスク着用を強要する
自分の思う「正しい」対策をしない人物を糾弾する
といった行為につながるのではないでしょうか?
安全や健康を守るというテーマになると、
天秤の片側が人命になることがままあります。
このため、極端に保守的な判断がなされてしまう
ケースを見かけますが
NHKでとりあげられた「自粛警察」は
まさに目的が手段化している事例の一つ、
言えるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症をはなれて
日常的なビジネスの世界でもこうした
手段の目的化はしばしば顔をのぞかせます。
業務の効率化が目的のシステム開発のはずが、
何でもかんでもできるようにITシステムを設計し、
結果的にシステムに合わせるために
非効率な作業が増えてしまった
新しい経営戦略立案が目的のはずが、
気づけば革新的な製品・サービス検討ではなく、
競合他社の弱点探しの議論をしていた
有志での実りある勉強会が目的のはずが、
勉強会での討論の場がいつの間にか
内部の派閥争いや人脈の競争がはじまっていた
といった手段の目的化にギクりとした方も
いらっしゃるかもしれません。
「自粛警察」に憤っている場合ではありません。
我々もちょっと気を抜くと
手段の目的化
の罠にはまってしまいかねないのが怖いところ。
目の前で何らかの成果が見える、
あるいはあれもこれもと考え始めると
具体性があって取り組みも進みます。
しかしながら、その取り組みは本来何のために
何を目指してはじめたものなのか、
は折に触れて見直した方がよいのだと思います。
メインコラムを再録したものです。
先週14日、日本政府は東京都や大阪府を除く
39の県で新型コロナウイルス感染症拡大に関する
緊急事態宣言がを解除しました。
残る8つの都道府県でも21日を目途に
緊急事態の解除を検討するとのこと。
これまで外出/営業の自粛や通勤・通学を
控えてきたわけですが、
少しずつ日常を取り戻す取り組みが始まりました。
残念ながら緊急事態宣言の解除は
新型コロナウイルスがいなくなることを意味しません。
感染する可能性は依然として残っていますし、
ワクチンや特効薬も見つかっていません。
緊急事態宣言の有無に関わらず、
健康維持のために可能な対策
(手洗い・うがい、早寝早起き等)
を実践する必要があると考えています。
さて、日本では一部の国と違い、
緊急事態宣言下で求められている
外出や営業の自粛に強制力がありません。
これは根拠となる法律がないためです。
法律に基づいて外出を抑制できる、
あるいは罰則を定めている国では
罰金や禁固を伴う措置も講じられています。
(例えばカタールでは公共の場で
マスクを着用しないと最大3年の禁固
もしくは約600万円の罰金が定められています)
こうした状況下、
日本では自粛要請を守らない店舗や
マスクを着用していない人に対し、
法律とは全く別の次元で他人の行動を
制限しようとする方もいらっしゃるようです。
NHKの報道によれば、
「自粛警察」と称されるような
独自の正義感に基づく行為が発生しているとのこと。
(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200509/k10012423651000.html)
中には、感染を避けつつ、
お客様に楽しんでもらうための
「無観客(遠隔)ライブ」
ですら自粛を求めるよう迫ったり、
事実関係を確認せずに他人を
コロナウイルス感染者と断定してしまったり、
という行為も散見されるのだとか。
法律に基づかず、独自の正義感によって
他人に罰を与えるような行為、
つまり私刑は憲法31条で明確に禁止されています。
自粛要請には法律上禁止する効力はないので、
むしろこうした「自粛警察」のような
活動だけが法律違反と言うことになります。
実際にNHKの番組でも虚偽の情報を書き込んだ人物が
刑事事件で立件されたケースもある、としています。
こうした行き過ぎた自粛要請やマスク着用の
強要の背景には様々な要因があると思われます。
NHKの番組では防衛本能の現れや、
悪意のない情報拡散という指摘がありました。
ただ、こうした動きを横目で見ていて、
Ozakiが感じたのは、本来感染の予防や
急速な感染拡大の防止という目的で行われている
外出/営業自粛やマスク着用そのものを
目的だと誤った認識を持つ危険性です。
本来の目的達成のための手段である
外出/営業自粛やマスク着用が目的化してしまうと、
自粛をしない店舗に嫌がらせをする
マスク着用していない人物にマスク着用を強要する
自分の思う「正しい」対策をしない人物を糾弾する
といった行為につながるのではないでしょうか?
安全や健康を守るというテーマになると、
天秤の片側が人命になることがままあります。
このため、極端に保守的な判断がなされてしまう
ケースを見かけますが
NHKでとりあげられた「自粛警察」は
まさに目的が手段化している事例の一つ、
言えるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症をはなれて
日常的なビジネスの世界でもこうした
手段の目的化はしばしば顔をのぞかせます。
業務の効率化が目的のシステム開発のはずが、
何でもかんでもできるようにITシステムを設計し、
結果的にシステムに合わせるために
非効率な作業が増えてしまった
新しい経営戦略立案が目的のはずが、
気づけば革新的な製品・サービス検討ではなく、
競合他社の弱点探しの議論をしていた
有志での実りある勉強会が目的のはずが、
勉強会での討論の場がいつの間にか
内部の派閥争いや人脈の競争がはじまっていた
といった手段の目的化にギクりとした方も
いらっしゃるかもしれません。
「自粛警察」に憤っている場合ではありません。
我々もちょっと気を抜くと
手段の目的化
の罠にはまってしまいかねないのが怖いところ。
目の前で何らかの成果が見える、
あるいはあれもこれもと考え始めると
具体性があって取り組みも進みます。
しかしながら、その取り組みは本来何のために
何を目指してはじめたものなのか、
は折に触れて見直した方がよいのだと思います。