最近読了した
「1989年12月29日、日経平均3万8915円」
(近藤駿介、河出書房)
の冒頭の記載を引用します。
「誰もバブル崩壊が始まっていることに
気づかなかった。それどころか、
自分たちがバブルの真っただ中にいること
すら自覚していなかった。
バブルの真っただ中にいることに
気がついていない人間に
バブル崩壊の足音が聞こえるはずはない。」
この一節が一週間経っても頭を離れません。
日ごろ海外での安全管理について、
いろいろと書いていると、
テロや犯罪に対するリスク管理も
全く同じことが言えるからです。
自分も危ない目に遭うかもしれない、
という意識を持っていない人に
「危ないですよ」
と言っても、その声は届かないもの。
これは、海外での安全対策の大切さについて
より多くの人に知ってもらおう、と考えている
Ozakiにとって最大のハードルです。
今のところ安全管理に関するコンサルティングで
お客様になっていただけるのは
海外で、どのような危険があるのか、
ある程度ご存知の企業様ばかり。
危ないかもしれない、という事実に
気づいていない企業様からは、
「安全対策にお金をかけるほど余裕はない」
という回答が最も自然な反応です。
必要性を感じていないのですから、当然でしょう。
ただ、世の中よく言われるように
人生には三つの坂があります。
絶好調の時の「上り坂」
調子の悪い時の「下り坂」
そして思いがけないことが起こる「まさか」
の三つ。
絶好調の時はいわずもがな、よい時ですね。
調子が悪い時も、それを認識して
家族や仕事の同僚と助け合うことができれば、
下り坂でもなんとかこらえられるでしょう。
しかしたちが悪いのは三つ目の「まさか」
上り坂だと思って調子に乗っていたら、
全く予期しないトラブルに見舞われる、
ということが人生では起こりえます。
この「まさか」が怖いのは、
下り坂の時と違って、
「今自分は調子が悪いかもしれない」
ということにすら気づかないまま
トラブルに不意を突かれるためです。
1989年の年末に最高値を付けた
日経平均株価を見て、当時の野村証券内で
1990年からの相場について
「割高すぎないか」
「これ以上顧客に買いを推奨してよいのか」
という声はほとんどなかったとのこと。
むしろ
「日経平均は3年後、10万円になります」
が1989年の野村証券内運用会議の
〆のセリフだったのだとか。
89年~90年にかけて経済的もしくは政治的な
大きな変化がなかったにも関わらず、
90年に入った瞬間株価は急落し始めます。
バブルの崩壊が始まった時は業界の殆どが
「一体全体何が起こっているのだ!?」
とパニック状態だったことがこの本では
克明に描かれています。
この状態こそ不意打ちを食らった状態。
「まさか」のど真ん中、
の典型的な事例、
と言えるのではないでしょうか?
(次回に続けます)