前回は言葉に宿る力を実例を交えて説明してみました。
今回は我々が言葉に力を宿すにはどういった方法があるか、
具体的に考えてみたいと思います。
まず、言葉に力を宿すとはどういうことでしょうか?
相手に伝わりやすい、
相手に理解してもらいやすい、
相手の共感を得やすい
そんな発信ができる能力、それが言葉に力を宿すということではないか、
Ozakiはそう考えています。
前回取り上げた二つの事例でも多くの人に発信した情報が伝わり、
理解され、共感されたからこそ、大きな動きに至ったのだと思います。
他に事例を挙げるならばアップルコンピュータで
マッキントッシュ、iPodやiPhoneなどを爆発的ヒットに導いた
故スティーブ・ジョブズ氏も共感を呼ぶ力を持っていましたね。
自分の開発したアイテムの素晴らしさを伝え、
ユーザーに良さを理解してもらい、
そして自社の商品を使いたいという気持ちを喚起する天才でした。
こういった事例を踏まえて考えていくと、
上記の三点を心がければ少なからず言葉には「力」が宿るはず。
つまり、
相手に伝えるにはどうしたらいいのか、
相手に理解してもらうにはどうしたらいいのか、
そして相手の共感をどうすれば得ることができるのか、
について試行錯誤するうちに言葉に力が宿るということになりますね。
情報が上手に伝わるために、まずは自分が考えている
ことをしっかりと発信できる必要があります。
そして、相手に理解してもらうためにはさらに
相手が自分の発信した情報をしっかり受け止めてもらわねばなりません。
ある人が情報を発信した際に情報の受信者(聞き手、読み手)が
正しく情報を受け取り、理解できるかどうか、は
(情報発信者の伝達力)×(情報受信者の理解力)
といった数式で表現できるはずです。
つまり、発信者側が伝わりにくい表現、手法を用いれば伝わりませんし、
受信者側がよく受け止められなかったり、背景を共有しなければ理解できません。
この「かけ算」が成立するかどうか、が重要なのでOzakiは繰り返し
コミュニケーションの齟齬はどちらか一方の責任ではない、と
主張してきています。
今回のテーマは発信者側の要素を取り上げていますので
情報発信の際の伝達力と共感を呼ぶための工夫を考えてみましょう。
まず、相手に伝える力を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか?
いくつも方法論があるはずですが、大きく分類すれば二つ
大事なポイントがあるのではないかとOzakiは感じます。
一つ目は言葉の選び方。
もう一つは自分の考え(気持ち)をストーリーに乗せること。
一つ目のポイントは相手にもわかる言葉で発信するということです。
どの業界にも必ず『業界用語』と呼ばれる言葉がありますね。
芸能界やテレビ局などで使われる用語は特殊ですよね。
「バッテラ」というのはバッテリーライトのことだそうですし、
どんな時間でも「おはようございます」と挨拶するのも業界ならでは。
他の業界でもさまざまな特殊な単語が飛び交っているはずです。
Ozakiがこれまで経験してきた業界だけでも
液クロ(化学実験に使います)
単協(協は生活協同組合の協です)
ピンスポ(舞台演劇などで使います)
カンカン泣き(競馬用語の中でもマニアックです)
といった言葉をなんの説明もなく日常的に使ってきました。
各業界に染まると必ずこういった用語を理解しなければなりません。
また、気が付けば違和感なく使っている自分に気づくはずです。
こうなると自分とは違う業界の方と話すためには言葉を選び、
相手に合わせた言葉づかいをしなければ意志疎通できませんよね。
他の業界の方からすれば、そういった単語は「外国語」に近い
といっても過言ではないからです。
同じ日本語を話しているはずなのに、よくよく考えてみると
年代や性別、業界や地域といった属性によって全く違う日本語が
飛び交っている、実は我々が生きているのはそんな世界なのですね。
相手に何か情報を伝達するという際に、気をつけなければならないこと。
それは特殊な用語を使っていては外の世界と会話できないということです。
自分とは違う世代の人、
自分とは業界が違う人、
自分とは異なる日常を送っている人、
こんな「他者」に通じる言葉を持つためには
狭い範囲でのみ通じる『業界用語』を普遍的な言葉で表現できる、
そんな能力が必要になるのではないでしょうか?
相手に伝えるための言葉選びは非常に重要な要素だと思うのです。
もう一つは自分の考え方、気持ち、伝えたい趣旨を
相手が理解しやすいようなストーリーに沿わせることです。
例えば
「こういう問題があり、
こんな深刻な被害が出ています。
ですからこういった解決策を考えなければならないのです」
であるとか
「この作業をお願いできますか。
お願いしているのはこういう方針に基づいて進んでいる取り組みの
この部分に相当して、こんな成果が期待されています。
この成果が次のステップに進む条件なので大切です」
といったようなもの。
聞き手、読み手に対して、過去、現在、未来といった時系列や
今自分がどこにいて、どちらの方角を目指せばいいのかを明確にする、
そんな語りかけができればドラマや漫画のように伝わりやすくなりますね。
ロジカルな話し方、文章というと堅苦しくなりますが、
自分なりの物語を相手に提示すると言うと気楽にできそうです。
突発的に
「こういう解決策が必要なんです!」
「とにかくこの仕事やってください!」
と言ってしまうのは手っ取り早いですが、
そうしてしまうと相手を共感させることはもとより、
その人の協力を得ることも難しいかもしれません。
言葉に力を宿すためにまずは相手に自分の意思、考え方、気持ちを
少しでも上手に伝える方法を考えてみました。
(次回に続きます)