皆さんは「ヒヤリ・ハットの法則」をご存知でしょうか?
読者の中にはエンジニアの方も少なからずいらっしゃるので、
そういった方には周知の事実かもしれませんが念のため説明します。
ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故には至らないものの、
そういった大事故に直結してもおかしくない一歩手前の事例のことです。
文字通り、「ミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの」ですね。
たとえば、お医者さんが間違った薬を患者さんに渡してしまった。
でも、患者さんがいつもの薬と違うことに気づき、実際には飲まなかった。
という事例は実際に何ら被害が起こっていませんが、
一歩間違うと完全に「医療事故」となりえるケースです。
一般的に
「1件の重大事故の陰に29件の軽微な事故があり、
その陰にはさらに300件のヒヤリ・ハットが存在する」
とされています。(ハインリッヒの法則と言います)
つまり、ヒヤリとしたり、ハッとした事件が多い作業現場には
より多くの重大事故を起こす危険性があるということですね。
こういった側面を捉え、「失敗学」の大家である畑村洋太郎さんは
「失敗は確率現象である」とおっしゃっています。
そういった経験則があるため、工場や医療といった現場では
日々ヒヤリ・ハットの事例を蓄積、共有して事故の防止に努めています。
さて、今回のテーマは「逆ヒヤリ・ハットの法則」です。
逆ってなんだ?と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
逆ヒヤリ・ハットの法則はOzakiの造語ですが、簡単に言えば
「1ついい仕事をしようと思ったら29回そこそこ褒められる仕事をして、
さらにその裏では300回失敗したり、無駄になるような仕事が必要」
ということです。
あの人はいつも仕事の成果がすごいなぁ、自分もあんな風になりたい、
なんて思うことはありませんか?
でも実際にそういった人が百発百中でいい仕事をしているわけではありません。
そういった人は300回の失敗や無駄を厭わず、仕事をし続けているはずです。
そうやって「空振り」を恐れずに努力を続けるからこそ、
「さすが」と言われる成果をあげているのです。
しかしながら、外から見ていると、300回の失敗はなかなか見えません。
ですので、一回、もしくはせいぜい数回の挑戦で大きな成果を上げている、
と考えがちなんでしょうね。
そして、自分も!と思い、空振りなしでホームランを狙いたくなるのです。
ところが、そういった「一発狙い」は往々にして失敗します。
それだけの努力をしていないのですから、当然ですよね。
たまたま大当たり!というケースもあり得なくはないでしょうが、
そういったまぐれ当たりは長続きしないはずです。
成果を出し続ける人は300回空振りしてもその経験を活かして
次の一振りができる人なのだと思います。
そうやって「逆ヒヤリ・ハット」であるところの地道な努力を
続けている中に「軽微な事故」にあたるそこそこの成果がいくつか生まれ、
「大事故」にあたる大きな成果が生み出されるのではないでしょうか。
Ozakiのような凡人が「一発大当たり」を狙ってもすぐには成果は出ません。
たとえ一つ一つは失敗に終わったとしても、無駄に終わったとしても
スイングを続け、その経験を蓄積していかなければ「当たり」はないのです。
そう考えると地道なスイングを嫌がっている場合ではありませんね。
ちなみに、あのピカソは生涯で15万点近い作品を残しているそうです。
単純計算で、一日5~6の作品を描いていたことになるのだとか。
ピカソの代表作はいくつもありますが、その影には世に出ない、
圧倒的な数(有名な作品の300倍以上)の作品があるのですね。
むしろそれだけの圧倒的な作品数があるからこそ、有名な作品が
多く含まれていると考えることもできます。
ピカソの名作群も「逆ヒヤリ・ハットの法則」の結果生まれた、
と言えるのかもしれませんね。