3104丁目の哀愁と感傷の記録

日々生きてます。自分なりに。感じた事を徒然に書きます。素直に。そんな人間の記録。
since 2008.4.4

編集者

2008-10-31 21:26:52 | 徒然
今日ご質問があったので、
その質問に関して明確に答えておこう。

俺が今、どんな会社でどんな事をやっているのか、
それを知ってる人は、
この世で2人しかいない。
てか二人にしか言ってないから。


俺は今、
某出版社で働いている。

そして俺は今、
編集部にいる。

扱っている書籍は全て、
教育書ばかりである。
教職に詳しい人はどこだか気付くかもね。

その中でも部門があって、
算数科、
国語科、
英語科、
音楽科…など。

で俺が所属しているのは、
編集部の教育書科。

算数や英語の教材を作る事に加えて、
教育書という、
生徒向けではなく、
教師向けの書籍を多く作っている部署である。

簡単に言うと、
“学級経営のしかた”や、“授業力の向上”などだ。
“特別支援授業の技術”(ハンデを持っている子)などもある。

で、どんなことをやっているかというと、
もちろん、出版社の編集なので、
本を作っているのだ。

では、俺の会社の編集業務はどんな感じなのかを
詳細に書いてみることにします。

これを読んだら、君も編集者になれる!
って思うくらい詳しく書いちゃうから。



まず、編集者の仕事っつうのは
企画から始まる。
まあ、その前に営業部が仕事とってこないと
販売できないから話にならんけど。

企画という業務は編集者にとって夢の仕事だが、
これはかなり上のクラスのひとしか手を出せない。

特にうちは教育界なので、
年功序列も甚だしく、
俺なんかが関与できる業務ではない。

簡単にいうと、「どんな本を作るか」を企画、立案するんだ。

企画が通り、
どんな本を出版するか決まったら、

やっと編集業務に入る。

まずは原稿依頼という業務。

多くは現役の小、中学校の先生に原稿執筆の依頼をする。
大学の教授、多くは教育学を専門とされる教授、准教授などにも。

依頼が済み、
内諾が取れたら、
その先生が担当する題目、内容、ページ数、締め切りを決定する。

その後、
締め切りになっても原稿が来なかったら、
原稿督促と言う業務だが、
もちろん、

「締め切りは10末日っつっただろうが、ボケ、カス!」
なんて言えるわけなく、

「お忙しいところすいません、
原稿の方はいかがでしょうか?」
くらいのソフトタッチで。

先生方の原稿が送られてきて、
原稿がそろったら、
といってもデータは、
生の原稿用紙だったり、
ワードデータだったり、
一太郎だったり、ばらばらだ。

次にそれを本の本文用紙の
フォ-マットに落とし込む作業。

やっとこっから編集っぽくなって来るんだが。

デザインはある程度決まっているのだが、
それを調節して、
その文章をそのデザインに入れる。
地味な作業だ。
ここでいかに見栄えよくするかが勝負。
改行したり、改頁したり
文字間、行間、フォントをいじりまくって最高の形にする。
ここは才能との勝負だ。

古文とかルビふってなくて、
全部自分で入れた。
泣くかと思った。いやでも古文に詳しくなった。

小学校の国語の教科書を思い出して欲しいのだが、
本文の下に下に漢字や、語句の解説とかあったでしょ。
ああいうデザインとか。
絵とかも、そのままスキャンするのか、
データを貼り付けるのとか…
地味だね。
ここで加えて本文の文字校正。

フォーマットに落とし込めたら、
印刷会社に依頼して、
ワードのデータをPDF形式にしてもらう。

そして帰ってきたら、
要するに校正されてない、
PDFを印刷したぺラの紙が150枚くらいの束になって帰ってくる。
いわゆる、これが「ゲラ」ってやつだ。

そして校正作業。
この作業はうちの業務ではない。

校正が終わった校了と呼ぶのだが、
校了したゲラと同時に、
造本指定書というものを作成する。

これはどんな本にするのかを正式に決定するというもの。

タイトル、
サブタイトル、
著者、監修者、編者…
初版部数、
アキ(右アキ、左アキ、あんま無いけど下アキ)、
トジ(アジロ、糸、)
版型(A4、B5…サイズ)
対象(小、中、高)
分類(理科教育、英語教育、指導技術…)
印税率、
用紙指定(本文用紙、扉、表紙、コート紙、)
加工(表紙にPP加工、つるつるになるやつ)
台割(何ページから何ページまでが目次、前書き、執筆者一覧、奥付)
など…

これが完璧に決定されると修正はできない。
経理部に下ろされ、
価格とISBNコード(本の後ろについてるナンバーね)が決定される。

これが決定すると、
バーコードの作成(これも本の後ろについてる奴ね)
と売り上げカード(本屋で買う時に挟まってる、
立ち読みを防止するかのようなカード)の作成が出来るようになる。

そして、広告作成。
本の巻末数ページって広告はいってるじゃん。
あれの作成。
ここが一番編集者っぽい。

ワードアートや、オートシェイプ、アミ掛けを駆使し、
見栄えがいいデザインにするかが才能との勝負だ。

ここは比較的自由。
遊ぼうと思えば遊べるのだが、
なんと言っても教育界。
おかたいんだ、とにかく。

「マジやべえ本発売!!てめえら買わねえと一生後悔するぜ!!」

なんて事書けるわけがなく、

今なら小学校で指導要領が改訂されたので、

「新教育課程を前に、売れています!」

が限度かな。
フォントは遊べるけど。

俺が始めて広告作成で、
ポップ体で!をつけたら、
随分、はしゃいだね、って言われた時はびっくりした。
これも後に郵送し、PDFファイルにしてもらう。

バーコードデータ(ISBNコード)と売り上げカードデータを
フロッピーに焼く。

そしてやっとこさ、
表紙やカバーの校正。

デザインはデザイナーの人が作ったりするから、
文字要素をデザイナーに送る。
ついでにソデ(表紙カバーのめくったトコにある、
著者近影とか、シリーズがかいてあるやつ)の文字要素も
校正し、データにし送る。
今、俺はデザインの作成はやらせてもらえない。
校正作業のみ。

表紙とカバーの校正は一番編集者っぽく、
定規と赤ペン、青ペン、赤ラッシャー
フォント表、校正記号帳が必需品。
ミリ以下の単位でデザイン校正する。
一ミリずれただけで、
表紙カバーから字がはみ出すことがある。

俺の上司が、
「これがね、失敗した例だよ」
って言って、ホントにカバーから右に字がはみ出してる
本を俺に見せてくれた。
彼は遠い、そして悲しい目をしていた。

校正が終わって、
その原稿と、
先ほどのバーコード(ISBN)と売り上げカードのデータと、
発注所をひとまとめにし、
封筒につめ、印刷所に郵送する。

これがいわゆる、入稿ってやつ。

これで作業終了。

印刷所が造本指定書どおりに印刷し、
製本所が綴じて、

やっとこさ本が出来上がる。


ここまでの工程を経て、
やっと本が出来上がるのだ。

まあ、ここに著作権の問題とか入ると、
転載申請っていって、
日本著作権協会とか、JASRACに申請書送ったりもする。

あと、出来上がったあとに
「てめえの本が出来上がったからよ、見てみろや」
という献本作業というものなんかもある。
礼状も作る。


あの一冊500円以下の文庫本も
こうやって、できてるんだなと思うと、
感慨深いものがあるな。

てかホントにこれ読んだら、
かるく編集者になれるんじゃないでしょうか。