練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『アサッテの人』 諏訪哲史

2008-04-04 | 読書
小説だと思うのだけど、これは本当に小説?と首をかしげたくもなる。

作者自身が作中で叔父さんの言葉を借りて述べているように、
意図的に作られた大団円だとか、いかにも小説らしいストーリー展開、エピソードの理論的意味づけなどは期待してはいけないのだろう。

どちらかというと、この本に書かれているのは、「言葉」に対する作者の考え、哲学のようなものなのだろう。
と、同時に「アサッテ」的な生き方に対する共感?

まぁ、読む人によっていろいろな読み方ができる作品ではあろうが、
私個人としては、作中ある部分で真っ黒い雲の切れ間から太陽の光が差し込んだかのように一気にこの読みにくい小説が輝きだす瞬間があった。
呪文のような散文のようなひらがなの羅列。
それが何の意味を持つのか、主人公が叔父さんに問いただすシーン。
叔父さんの応えは、「ギルバート・オサリバンのアローン・アゲインの歌詞を聞き込んで聞き込んでひらがなで表記するとこうなる」というもの!
ギルバート・オサリバン!アローン・アゲイン!!
それだけで私的にはググッときてしまったが、さらに英語の発音をひらがなで表記するとは!!
まさに私が幼い頃やっていたのと同じことではないか!!!
これだけでもう、この作品を読んでみてよかった、と思ってしまったのである。