練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『百鼠』 吉田篤弘

2007-02-27 | 読書
少し前に吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んだときは確か私は「スローライフ系」だとかほのぼのとした雰囲気の作品だったというような感想を書いたと思う。

でも、この『百鼠』を読んで、吉田さんの作品に対するイメージがまたガラッと変わってしまった。

3篇からなる短編集、1作目と3作目はまぁ、『それからは・・・』に通じるような雰囲気もあるが、表題の『百鼠』。
これはまぁ、なんというか、ファンタジーのような、幻想小説のような・・・。
読み始めの何ページかは、何の事だか全く分からないで、読みにくいなぁ・・・はっきり言って面白くない、とか思いながら読んでいた。
でも、ある山を越えると、なんだか不思議なものにトリツカレタかのように先が読みたくて仕方なくなってきた。
「三人称」って?「一人称」?なにか意味があるの?

あらすじすら私のつたない文章力ではうまく書けないのだけれど、
ひとつだけとても印象に残ったシーンを記しておくと、
「一人称」の小説を読む事を禁止されている「朗読鼠」の僕がどうしようもなくその禁止されている書物に惹かれてしまって、古本屋のようなところに出向いて、賄賂と交換に「一人称小説」を店の主人からこっそり手に入れるというシーンだ。
禁断の・・・とか、いけない・・・とかいうことの誘惑、手に入れたときの甘美な気持ち、すごく怪しげなその記述。
ちょっとよかったです。

とにかく、なんだか読んだことないような不思議な話。
でも、こういうの好きだなぁ・・・。