☆ 軍艦島ツアーについて、もう少し。 友人が勧めてくれたホテルはツアーの出る常盤桟橋のすぐ傍で、便利だった。同桟橋からは2~3社が
ツアー客獲得を競っている。 見渡すと私が乗った会社の船は最もトン数が少なく「これで海が荒れたら・・・大丈夫かな?」と少し気になったが、
それこそ<乗りかかった船>だから、と腹を括る。 船酔い経験ゼロの私、他の乗客34名のうち一人くらいは? と案じていたが幸い誰も酔わなかった。
ガイドは、世界遺産になる前から活動してきた某NPO法人所属だと自己紹介。小柄な青年だが、眼が鹿のように黒く澄んでいる。若干の九州アクセントは
感じられるものの、ハキハキと説明してくれた。大概の内容はパンフレットと重なったが、印象に残った説明を二つ三つ紹介すると、端島は岩礁だった場所を
埋め立てて造られた人工島ゆえ、次の4つが無かった、即ち<真水、緑、火葬場、墓>。
まず、「水」。最初は海水を淡水化していたそうだが、人口増加で追いつかなくなり、対岸から船で真水を運んだ。それでも昭和になると不足したので、遂に
対岸から海底に送水ラインを引いたというから、三井鉱山の財力は凄い。採炭は国策で保護されたとはいえ、こんな場所は他にあったのだろうか?
次に「緑」。高層住宅などの上に今でいう屋上菜園や花畑を作り、憩いの場とした。ガイド君の説明は「子供たちが花や草を知らないので、本土へ移り住む
可能性に備え、それは教育上よくないからとの配慮もあったと言われています」。
「火葬場と墓」;これは今のような老人の死に対応するニーズではなく、乳幼児の死亡、炭鉱夫の事故死/病死などによる葬儀が必要でも、狭い軍艦島では
行えなかった、ということか。 「近隣の島まで運び、火葬・埋葬などを行いました」とガイド君。 ああ、死はここでも日常生活で目に触れないものに
なっていた・・。
* 興味深く聞いたエピソードは、採炭作業を終えた炭鉱夫たちが入る風呂のこと。風呂桶は大きなものが3種類あり、最初は衣服のまま海水湯に浸かり、
衣服に着いた炭塵などをざっと洗い流し、洗濯場へ出す。その次は同じ海水だが自分の体を洗う。そいて最後に真水で体をすすいだのだそうだ。
★ 小雨に打たれ帰港する。 遅い昼食のあと、少し歩き長崎県立美術館で夕刻まで過ごすことにした。長崎県あるいは九州出身の画家の作品が中心の展示だ。
従い、油彩/水彩/水墨/日本画/版画/写真などなど、何でもありのジャンル別コーナー設定。 建物の立派さに度肝を抜かれるのは覚悟していたが、正直驚く。
おのずと水墨作品に目が留まった。 私が足を止めた作品は、大久保王眠「伊勢大廟図」の松樹の描き方に、小波魚青「春野白狐」における狐の毛並みの
描写技法に、それぞれ感服。 降りやまぬ雨に垂れ込められ、部屋で一人食す夕食を買うと、ホテルに戻った。 < つづく >
ツアー客獲得を競っている。 見渡すと私が乗った会社の船は最もトン数が少なく「これで海が荒れたら・・・大丈夫かな?」と少し気になったが、
それこそ<乗りかかった船>だから、と腹を括る。 船酔い経験ゼロの私、他の乗客34名のうち一人くらいは? と案じていたが幸い誰も酔わなかった。
ガイドは、世界遺産になる前から活動してきた某NPO法人所属だと自己紹介。小柄な青年だが、眼が鹿のように黒く澄んでいる。若干の九州アクセントは
感じられるものの、ハキハキと説明してくれた。大概の内容はパンフレットと重なったが、印象に残った説明を二つ三つ紹介すると、端島は岩礁だった場所を
埋め立てて造られた人工島ゆえ、次の4つが無かった、即ち<真水、緑、火葬場、墓>。
まず、「水」。最初は海水を淡水化していたそうだが、人口増加で追いつかなくなり、対岸から船で真水を運んだ。それでも昭和になると不足したので、遂に
対岸から海底に送水ラインを引いたというから、三井鉱山の財力は凄い。採炭は国策で保護されたとはいえ、こんな場所は他にあったのだろうか?
次に「緑」。高層住宅などの上に今でいう屋上菜園や花畑を作り、憩いの場とした。ガイド君の説明は「子供たちが花や草を知らないので、本土へ移り住む
可能性に備え、それは教育上よくないからとの配慮もあったと言われています」。
「火葬場と墓」;これは今のような老人の死に対応するニーズではなく、乳幼児の死亡、炭鉱夫の事故死/病死などによる葬儀が必要でも、狭い軍艦島では
行えなかった、ということか。 「近隣の島まで運び、火葬・埋葬などを行いました」とガイド君。 ああ、死はここでも日常生活で目に触れないものに
なっていた・・。
* 興味深く聞いたエピソードは、採炭作業を終えた炭鉱夫たちが入る風呂のこと。風呂桶は大きなものが3種類あり、最初は衣服のまま海水湯に浸かり、
衣服に着いた炭塵などをざっと洗い流し、洗濯場へ出す。その次は同じ海水だが自分の体を洗う。そいて最後に真水で体をすすいだのだそうだ。
★ 小雨に打たれ帰港する。 遅い昼食のあと、少し歩き長崎県立美術館で夕刻まで過ごすことにした。長崎県あるいは九州出身の画家の作品が中心の展示だ。
従い、油彩/水彩/水墨/日本画/版画/写真などなど、何でもありのジャンル別コーナー設定。 建物の立派さに度肝を抜かれるのは覚悟していたが、正直驚く。
おのずと水墨作品に目が留まった。 私が足を止めた作品は、大久保王眠「伊勢大廟図」の松樹の描き方に、小波魚青「春野白狐」における狐の毛並みの
描写技法に、それぞれ感服。 降りやまぬ雨に垂れ込められ、部屋で一人食す夕食を買うと、ホテルに戻った。 < つづく >