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【書評135-3】  周恩来・キシンジャー 機密会談録   毛利 和子・増田 弘(監訳)       岩波書店       2004年2月 第1版  

2021-06-29 09:08:19 | 書評
* キーボード操作を誤り、文章の途中で投稿してしまった。 改めて、【書評135-2】の末尾段落からスタートします。

【1】 周恩来の革命観/世界史認識、その米国との溝
  だが米国にとっては、ソ連の出現と強大化に加え共産中国の誕生こそが西欧型代議制民主主義を否定・敵対する全体主義ゆえ許容できない現実だ。第二次大戦後の共産主義国家の増加と隆盛は
  <民族自決、民族解放と統一>に名を借りた膨張でしかない。だからこそ上海コミュニケに、共産中国にとり台湾は「解放/統一」の対象ゆえ、其の表現を盛り込もうと周は粘り盛り込んだ。
  他方、Kは両論併記で対応し、現在まで続く米国の台湾政策の基礎を打ち立てた。本年4月の菅首相訪米時の宣言で台湾防衛の意思表示が繰り返されたが、そこでも”台湾問題の平和的解決”に
  言及するのは1972年2月上海コミュニケ後半にある重要な文言を根拠としている(以下に引用)

 【A】≪ 合衆国は、台湾海峡の両側の全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識する。合衆国政府は其の立場に異議を申し立てない。
     合衆国政府は、中国人自身による台湾問題の平和的解決に関心を持っていることを重ねて強調する。
 【B】≪ この展望を前提として、合衆国政府は全ての米軍及び米軍施設を台湾から撤去するという最終目標を確認する。其の間に合衆国政府は、此の地域における緊張が減少するに従って、
     台湾における米軍及び米軍施設を漸減させるであろう。


★ 現在、台湾島に米軍施設は無い。1979年の米台断交後、撤去された。米軍にすれば沖縄にある基地で十分だとの判断であろう。一方、米国側が未だに武力統一を許さないとする根拠が【A】だ。
  然し、鄧小平訪米で「外交関係樹立に関する共同コミュニケ(1979年1月)」を発する直前(1978年12月16日)『米中正常化に関する中華人民共和国政府声明』を出し、そこでは次の様に書く。
  <台湾の祖国復帰を解決し,国家統一を完成する方式については,これは全く中国の内政問題である。>・・つまり武力統一も完成する方式の一つだ、と釘を刺しているわけである。

  香港の「1国2制度」の約束を中国は破り、英国を怒らせた。では中国は、78年声明(上記)に続く「外交関係樹立に関する共同コミュニケ(1979年1月)」に書かれた次の文言を利用し、
  武力統一に踏み切るのか?(いずれの側も,アジア・太平洋地域においても又は世界の他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく,また,このような覇権を確立しようとする他の
  いかなる国又は国の集団による試みにも反対する。)・・武力による台湾統一への介入をアジアにおけるアメリカの覇権確立だ、との論法でヤルのか? 

☆ こうして本書から読み解ける伏線を眺めてみると、周K会談に始まる米中関係、その50年後の結節点に菅訪米時の共同声明が位置付けられる。手島龍三氏の言う『紙上の同盟が試される時』が来た?
  いや、それは飽くまで一つの推理・仮説にすぎないのか? 先を急ぐ前に、もう一度、アジア全域の国際情勢を振り返りたい。                     < つづく >
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