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Z世代が石丸伸二氏を支持する理由

2024-07-12 07:56:47 | 時評
【毎日】???リベラルにはわからない? Z世代が石丸伸二氏を支持する理由 東京大学大学院情報学環准教授:藤田結子  聞き手【オピニオン編集部・小国綾子】 要旨転載
1) 多くの若者にとって都知事選は「石丸一択」でした。テレビを見ない若者にとって、石丸氏は唯一の、よく顔の見える候補だったからです。
  投開票日の夜のテレビによる石丸氏のインタビューは、象徴的でした。蓮舫氏支持の中高年リベラル層などは、石丸氏の態度を見て、「質問にまともに答えない高圧的で危険な人物が2位に
  食い込むなんて」と嘆いたようです。しかし、若い支持者の目には「古いメディアのテレビがえらそうにリーダー・石丸氏をいじめている」と映りました。
    テレビとネット。普段接するメディアが異なるため、両者は同じ報道にも逆の意味を見いだしていたのです。

  選挙も、若者にとって遠い存在です。「老害の就活イベント」と表した大学生もいます。政治家の多くは高齢で共感できません。そんな中、肌身離さず持ち歩くスマホの中で奮闘する石丸氏は、
  見た目も若く「自分たちの候補」として親近感を抱いたのでしょう。既得権益と闘うかのような彼の言動を「爽快」と語る学生もいます。
  「強いリーダーシップ」「経済に強い」などのキャラ設定や、切り抜き動画などのSNS戦略も、今の若者の感覚にフィットしました。

  広島県安芸高田市の市長時代、市議会で議員の居眠りをとがめ、「恥を知れ!」と怒鳴りつける石丸氏の姿を、動画投稿サイトなどで見かけていたのです。
  「既得権益を持つ議員らがふんぞり返る市議会で一人闘うヒーロー」という物語は、若者の間で徐々に共感を生みだしていきました。
  だから、社会を変えたいと感じている若者の方が石丸氏に投票しました。現状維持で構わない若者は小池氏に投票したと思います。

  ただし、ボランティアに参加したような熱心な支持者はともかくとして、私が聞き取りをした若者たちにとって石丸氏は推し活の対象ではありませんでした。むしろ代替可能な存在です。
  SNSが投票行動に与える影響は十分解明されていませんが、既得権益のような大きな敵を設定し、劇場型選挙を仕掛けられれば、第二、第三の石丸氏が登場する可能性はあると思います。

2) 中高年のリベラル層は、「社会を変えたいならなぜ蓮舫氏を支持しないのか」と思うかもしれません。しかし、蓮舫氏のことを「よく知らない」と語る若者は多いのです。
  「怖い」という印象もあります。蓮舫氏の若者人気が低い理由を、学生たちはうまく言語化できませんが、いくつかの理由が推察できます。
  気遣いを大事にする今の若者たちは、批判的な態度を嫌います。ただ、石丸氏が安芸高田市議会で「恥を知れ!」などと大声で怒鳴ることについては、
  「彼が大きな敵と闘うためには強い口調も必要だ」と受けいれています。男性が怒鳴るのは良いが、女性が怒鳴るのは……というジェンダー規範を内面化している可能性もあると思います。

3) 今、Z世代の最も切実な関心事は、将来不安の大きいこの国でいかに稼いで暮らしていくかなのです。そんな彼らにとって、選挙時の格差是正だ、平等だ、少子化対策だ、という訴えは、
  目下の悩みとかけ離れていて、「は?」というのが正直な感想ではないでしょうか。
   若者はそもそも政治に関心がありませんし、政治の話をよくする人は「変な人」、特定の政党を支持している人は「偏った人」と感じています。
  でも、それは若者だけのせいではありません。そもそも家庭で政治の話をしていません。親世代の政治への関心の薄さも影響しているのではないでしょうか。

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 インタヴュー記事なので整理してみると、藤田氏の指摘は(1)SNSと選挙活動の連動 (2)反自民型政党への忌避感 (3)政治教育の不在・・の3点に分けられる。
(2)は既成野党が猛省せねばならないし、(3)は与野党問わず、
国家としての統治のあり方の根幹に触れる課題だ。政治意識をなくさせる方向へ導こうとする与党の動きは止めさせねばならない。

(1)については政治家よりもメディア各社に働く者こそ、最も真剣に考える必要がある。それは選挙をおもちゃにする輩の規制とは別のハナシで、個人が私生活をアップロードするものではない政治活動や選挙では、SNSで流れるニュース・解説・映像は、ネットプロヴァイダーや商業サイトが独力で取材作成したコンテンツではないからだ。

 既存メディアが流す内容をつまみ食いするのはZ世代の嗜好に敏感なプロヴァイダー・商業サイトだが、元のコンテンツが政治と日常生活の乖離を感じさせない内容ならば、政治離れも今ほど酷くない?
 つまり、政治や選挙は遠い世界の出来事ではなく、Z世代の「明日の飯・将来の不安」と直結してるんだよと悟らせる伝え方に努めないと、藤田氏の指摘点は何も変わらないまま放置される。
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