著者は香港生まれ。14歳でシンガポールから1965年に移った横浜で青春期を過ごし、米国の大学を卒業後、東京でのサラリーマン経験もある。英語・仏語・日本語・北京語・広東語のマルチリンガル。
本書は、中国大陸から様々な理由で世界中に散り、各地に住み着いた漢人の何代にも跨るファミリーヒストリーを著者自ら訪ね歩き、監督して映像化したドキュメンタリー映画『Chinese Restaurants』(2005年発表)を書籍化したものの日本語訳。英語版での原題は『Have You Eaten Yet ?』らしい。 ← 你吃飯了嗎? 。
これは中国人と親しくなった方なら耳馴染みの挨拶慣用句。戦前の台湾で暮らした亡父が言っていたのを思い出す。
著者は2000年過ぎから相棒のカメラマンと世界各地の中国人街で中華料理店を営む人を訪ね、家族譚を聴いて回る。本書では16のルポになっているが、映像を撮った国はもっと多いのかもしれない。
今も昔も、中国大陸のどこの出身であれ、移民として外国で生きてゆくには肉体労働、清掃人、クリーニングなどが暮らしを営む生業だが、中華料理店を開けば何とかなる。
無論、料理も言語同様、出身地が違えば互いに通用しないので、厳密には集団としてのアイデンティティーを構成する核にはならない。中華料理店を営めば移民先の外国人には珍しく、美味しいと
いってもらえることで土地には馴染んで行けるが、所詮、アジア人差別はなくならない。・・これは日系移民も全く同じだろう。
では<Disapora=離散民>としての人生を歩む中国系移民〇〇人にとり、何が心の拠り所になるのか?著者の出した答えは【地球市民】意識だ。それは、複数の国籍・文化・家系意識を飛び越え、
≪ 華人としての故郷イメージ ≫であろうか、と著者。だが、その故郷イメージは抽象的であり、実際に存在する大陸とは結びつかない。結びつかないけれども≪ 華人 ≫というワードで絆感をもちたい。
著者はこのように整理しているが、果たして、全ての移民・華僑は同じ≪ 華人イメージ ≫を共有しているのだろうか? いま、大陸内で暮らす人々は同じイメージを自覚しているか?
しからば、海外に住み着いた日本人の二世・三世は著者が描く≪日本人イメージ≫や【地球市民意識】をもっているのだろうか? 自身を<Disapora=離散民>と思っているのか?
などなど、本書は様々な事を考えさせてくれる。国家の枠に閉じこもりたがる性癖の日本人には「個人と集団・社会」の関係のありよう、距離の取り方等を振り返るきっかけになる。 < 了 >
本書は、中国大陸から様々な理由で世界中に散り、各地に住み着いた漢人の何代にも跨るファミリーヒストリーを著者自ら訪ね歩き、監督して映像化したドキュメンタリー映画『Chinese Restaurants』(2005年発表)を書籍化したものの日本語訳。英語版での原題は『Have You Eaten Yet ?』らしい。 ← 你吃飯了嗎? 。
これは中国人と親しくなった方なら耳馴染みの挨拶慣用句。戦前の台湾で暮らした亡父が言っていたのを思い出す。
著者は2000年過ぎから相棒のカメラマンと世界各地の中国人街で中華料理店を営む人を訪ね、家族譚を聴いて回る。本書では16のルポになっているが、映像を撮った国はもっと多いのかもしれない。
今も昔も、中国大陸のどこの出身であれ、移民として外国で生きてゆくには肉体労働、清掃人、クリーニングなどが暮らしを営む生業だが、中華料理店を開けば何とかなる。
無論、料理も言語同様、出身地が違えば互いに通用しないので、厳密には集団としてのアイデンティティーを構成する核にはならない。中華料理店を営めば移民先の外国人には珍しく、美味しいと
いってもらえることで土地には馴染んで行けるが、所詮、アジア人差別はなくならない。・・これは日系移民も全く同じだろう。
では<Disapora=離散民>としての人生を歩む中国系移民〇〇人にとり、何が心の拠り所になるのか?著者の出した答えは【地球市民】意識だ。それは、複数の国籍・文化・家系意識を飛び越え、
≪ 華人としての故郷イメージ ≫であろうか、と著者。だが、その故郷イメージは抽象的であり、実際に存在する大陸とは結びつかない。結びつかないけれども≪ 華人 ≫というワードで絆感をもちたい。
著者はこのように整理しているが、果たして、全ての移民・華僑は同じ≪ 華人イメージ ≫を共有しているのだろうか? いま、大陸内で暮らす人々は同じイメージを自覚しているか?
しからば、海外に住み着いた日本人の二世・三世は著者が描く≪日本人イメージ≫や【地球市民意識】をもっているのだろうか? 自身を<Disapora=離散民>と思っているのか?
などなど、本書は様々な事を考えさせてくれる。国家の枠に閉じこもりたがる性癖の日本人には「個人と集団・社会」の関係のありよう、距離の取り方等を振り返るきっかけになる。 < 了 >