財務省の近現代史Ⅴ

　故城山三郎氏の小説に「男子の本懐」という作品があります。
濱口雄幸と井上準之助の物語です。そこには致命的な欠陥があり、城山三郎は影響力があるだけに問題です。
彼の作ったイメージで、研究者までがそれを信じてしまっているところがあります。
　そこには、戦前「軍部」という最強の拒否権集団がいて、大蔵省はか弱い役所であるという前提です。
最強官庁大蔵省はあくまで戦後の話であって、戦前は「軍部」や内務省の後塵を拝していたと言う歴史観があります。
実は全然そんなことはなく、むしろ大蔵省から見ると井上準之助は「我は富士山、他は並びの山」の人だったのです。
たしかに城山三郎の時代には資料的制約がありました。実際は陸海軍や内務省、その他全省庁が井上一人に戦々恐々としていたのです。
ロンドン海軍軍縮条約の時が典型的で、アメリカに備えるためにアメリカとの軍艦数比率を７割か６割かどっちなのと言う話になって、
日本海軍にとったら７割あった方がいいに決まっているわけです。じゃあその予算をどうするんだ。よく海軍は条約派（予算がないので６割で）と艦隊派（７割支持）が対立していたといわれます。条約派の典型とされているのは山本五十六。彼はロンドンへの行き帰りの船の中で大蔵省主計局の賀谷興宣にやけくそになって殴りかかって鼻血まみれにさせたと言う逸話があります。ところが山本は条約賛成派、海軍良識派とされているのに。大蔵省や政府に向かっては「７割ないと戦えません」とポジショントークの応酬をしているのです。

　そのとき陸軍は何をしていたのでしょうか？全くの他人事を決め込んでいたのです。なんか変なことを言ってとばっちりが来たら大変だからです。
海軍課長の梅津さんなどから、海軍が軍艦削られそうなので飛行機を代わりにもらえる話がでると、
じゃあこっちにも付けてもらわなければ困ると主計局に陳情に行ったり。
法制局が、当時あった統帥権独立問題で軍部の統帥権を制限しようと言う話になると、陸海軍共同してちょっと法制局に申し入れしましょうかとか・・・。
今の霞ヶ関とほとんど同じなのです。

　戦前の日本がスターリンのソ連やナチスドイツに近いというは全く逆で、むしろ今の日本と同じなのです。
冷静に考えてみれば当たり前で、他の国の方が今の我々よりも近いなんてあり得ないのです。
８月１５日をもって別の国になったなんてことはありえません。戦前の日本があって、今の我々があるのです。
官僚機構なんてのは一番その体質を受け継いでいるのです。良くも悪くもナチスドイツやソ連とは違います。
日本は独裁国、恐怖政治の国ではなく、お金と法的権限取り合いのお役所論理。それに注目しないと無にも見えてこないのです。

　今までの近現代史からいかに官僚機構、特に大蔵省というファクターが抜けていたかということです。大蔵省の視点から見ると全然違って見えるのです。
確かに陸海軍は、大日本帝国にとって軍事予算が日清日露の時、国策最優先事項だったので重要な役所であることは間違いありません。
しかしそれでも最初は衆議院が、憲政の常道で衆議院と大蔵省主計局が一体化してみると主計局が、それらが予算を付けなかったら何もできないのが陸海軍なのです。
他よりは強いが、主計局から見ると「並びの山」に過ぎなかったのです。

☆お知らせ
営業日の午後12時～午後４時は、手術、治療業務のため留守番電話にしている場合があります。
フィラリアの予防を開始しましょう。


9月の予定

秋の健康診断を実施します。
対象：全ての健康な猫ちゃんワンちゃん。
期間：9月3日（月）～15日（土）の二週間、日曜はお休みです。
費用：1回5000円
内容：検便、検尿（容器を差し上げます）、レントゲン二枚（胸または腹）、エコー（胸及び腹）
ご注意：前日までに要予約。予約当日午前中に、食事を6時間以上抜いた状態でお連れください。
夕方4時以降にお返しします。
後日郵送で報告いたします。

9月23日（金）、24日（土）の2日間は獣医師不在のため診療はお休みします。
スタッフは常駐しています。営業内容はお尋ねください。ご迷惑おかけします。