5月12日(木)11時9分配信
◇信号無視や逆走など 警察庁
75歳以上の高齢者を対象に認知症の度合いの確認を強化する改正道路交通法が成立したことを受け、警察庁は12日、認知症により引き起こされやすいとされる信号無視や逆走など18項目の「違反行為」を定め、道路交通法施行令などの改正試案として公表した。該当する行為をした場合は認知機能検査を受けることになる。
2015年6月に成立した改正道交法では、違反行為をした75歳以上の高齢者に教習所などで実施する認知機能検査を受けさせる制度が新設された。検査で「認知症の恐れがある」と判定された場合は医師の診断を受けることも義務化された。認知症と診断されると運転は禁止となる。
改正道交法ではこの制度の対象となる違反行為を具体的に定めていないため、警察庁は認知症の専門医を含む調査研究委員会を設置し、18項目の違反行為を選んだ。いずれも認知症が原因となることが多いとみられる行為で、速度違反や駐車違反は認知機能の低下との関連が薄いとの理由から含まれていない。
認知機能検査によって医師の診断を受けることになった場合、受診先は認知症の専門医や主治医とし、脳波などの検査結果の記載も義務づける。
また、現行制度では75歳以上の全員が免許更新時に2時間半の高齢者講習を受けているが、講習前の認知機能検査で認知症の疑いがないと判定された人の講習時間は2時間に短縮することにした。認知症の疑いがある人の講習は3時間に延ばす。
警察庁は、道路交通法施行令などの改正試案について、今年5月13日から6月11日まで国民の意見を募集する。意見を踏まえて制度を正式に決定し、改正道交法とともに17年3月の施行を目指す。【川上晃弘】
◇認知機能検査の対象となる18項目の違反行為
・信号無視
・通行が禁止されている道路を通行
・歩道の通行や逆走など通行区分違反
・Uターン禁止の道路でのUターン
・進路変更禁止を示す黄色の線を越えて進路変更
・一時停止をせず踏切に立ち入り
・交差点で徐行せずに右左折
・直進レーンを通行中に右左折
・徐行せずに環状交差点で右左折
・優先道路を通行中の車両の進行を妨害
・交差点で直進する対向車を妨害して右折
・環状交差点内の車両の進行を妨害する
・歩行者が横断歩道を通行中に一時停止せずに通行
・横断歩道のない交差点で歩行者の通行を妨害
・徐行しなければならない場所で徐行しない
・一時停止をせずに交差点に進入
・右左折する時に合図を出さない
・ハンドル操作を誤るなど安全運転義務に違反