陸上自衛隊の新型ヘリコプター納入をめぐる2012年の官製談合事件を見過ごし、会社に多額の損失を生じさせたとして、川崎重工業(神戸市中央区)の個人株主が23日、村山滋社長と高尾光俊元副社長に対し、約46億円を同社に支払うよう求める株主代表訴訟を神戸地裁に起した。
株主は神戸市の70代の男性。
訴状によると2人は当時、代表取締役常務で談合に関わった部署や、コンプライアンス(法令順守)部門を統括していた。
株主側は、村山社長が防衛省の担当者と面談し、搭載するエンジンを決定したとの刑事記録などを挙げ「談合に関与あるいは見過ごし、談合防止の社内体制構築も怠った」と2人の注意義務違反を主張。
事件発覚で約35億円の契約が無効とされ、研究開発費や信用失墜に伴う損失も約11億円に上った、とする。
男性株主は昨年7月、川重に対し役員への提訴請求を行ったが、同社は「経営陣は不正を知らなかった」とし、提訴しなかった。
防衛省は12年3月、ヘリコプター開発で川重と契約。
その後、東京地検特捜部の捜査で談合疑惑が浮上した。
川重に便宜を図ったとして、陸自2佐の2人が官製談合防止法違反罪で罰金100万円の略式命令を受け、川重の担当社員らは同法違反のほう助罪で起訴猶予となった。
・・・・・・・・・・株主代表訴訟とは・・・・・・・・・・
取締役が違反行為などをして会社に損害を与えたときに、株主が会社に代わって取締役の責任を追及する訴訟。
株主が会社に訴訟を起すよう請求し、60日以内に提訴がされない場合、訴訟が起こせる。
株主が勝訴すれば、賠償金は会社に支払われる。
過去には仕手集団の恐喝に応じた損害に関する「蛇の目ミシン工業」の株主代表訴訟で、東京高裁が旧経営陣に約584億円の賠償を命じた。