落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

こんにちはさようなら

2011年11月12日 | 復興支援レポート
震災直後、テレビでは通常の放送が再開された後も一般企業のCMは放送されず、ACの公共CMばかりが繰返し流れていた。
その中でも最も多くの人に強く印象づけられたのはこのCMではないだろうか。



言語に絶する悲惨な大災害の報道で日々埋め尽くされたメディアの中で、画面の色鮮やかさと牧歌的なメロディーは確かに異彩を放っていた。
これを見てイライラした人も、うっとうしいと思った人もいるだろう。でも、インパクトだけは間違いなく強烈だったと思う。

3月下旬の物資仕分けボランティアに参加したのが2日間、現地での復興ボランティアにはGWから半年強の間に合計でのべ39日間参加した。
最初はまず行ってみたい、どうなってるのか見てみたい、そこで何かできることがあるならしてみたい、そんな曖昧な気持ちで参加したけど、実際行き始めたらきりがなかった。何回行っても達成感なんかない。帰る時にはいつも、次はいつ来ようかと一生懸命頭の中でスケジュールを繰った。行くたびに東北という土地がどんどん好きになった。ここで起こっていることがどれほど残酷でも関係ない。ただただこの土地を離れ難かった。ここでできることはずっと続けたいと思った。

活動中、しんどいことももちろんあった。
見知らぬ人間同士の寄せ集めの共同作業だから、思うようにいかないこともあれば気に入らないこともあった。本気で頭に来ることだってもちろんある。単純に作業がしんどくて体力的に疲れることもあるし、精神的にキツいこともあった。信じられないくらい広大な被災地のあまりの惨状や、考えられないくらいたくさんの人たちの命が失われた大災害の現場での活動であることを、常に忘れないように慣れてしまわないように意識し続けるのは、理屈でいうほど簡単な話ではない。

それでも、いつでも、ああここに来てよかった、参加してよかったと心の底から思うことがあった。
この被災地では、誰でも、どんな人でも、どこで出会っても決して挨拶を忘れない。
地元の人も、ボランティアも、警察官も、消防の人も、自衛隊の人も、目があえばにっこり笑って「こんにちは」「お疲れさま」と声をかけあう。地元の人のなかには、深々と頭を下げて「ご苦労様」「遠くから来てくれてありがとね」といってくれる人もいる。
拠点から出発する時、拠点に残る人はみんなでクルマに向かって全力で手をふる。クルマが見えなくなるまで手をふる。何も帰る人にだけふるだけではない。単に活動場所に行くだけ、夕方戻ってくることがわかっていても、みんな力いっぱい「いってらっしゃい!」と手をふる。戻ってくればもちろん「お帰りなさい」「お疲れさま」と労いあう。ここでは挨拶はいちばん大切なタスクのひとつなのだ。
先日滞在した拠点は本来レストランなのだが、ここのオーナーはリピーターのボランティアが到着すると「お帰り」といい、帰るときは「いってらっしゃい」という。先週帰る時、今月はもう来れないことを告げると(この拠点は今月で閉鎖される)、「来月また来ればいいっちゃ」と笑ってくれた。さりげなくこんなふうにいえる気持ちのよさが、東北という土地のほんとうの美しさなんだと思う。

最後の活動日、作業を終えて拠点に戻る時、クルマの窓を下げて両手を出したら、漁師さんのうちのお母さんが両手を伸ばしてぎゅっと握ってくれた。
何かいいたかったが、なかなか言葉が出てこなかった。手紙を書くこと、必ず戻ってくることはもう伝えてある。ぐりが黙っていると、お母さんはにこっと笑ってうんうんと頷いてくれた。
ぐりの手にはまだその手の温かさが残っている。
その温かみがまだ残っている間に、何かしたい。し続けたいと、心から思う。
そしてそう思えることで、ここに来たこと、続けて来たことは間違ってない、これでよかったんだと思う。


肉を焼く漁師さんたち。どこのお国のヒトかわかんないくらい真っ黒けの日焼けは労働の勲章です。そして11月でも全員半袖。どういうことだ。
現在このあたりの漁師の皆さんは本来の家業がなかなかできない状況なので、ふだんは瓦礫撤去作業など自治体から依頼された地域の復旧作業をしている。どっちみち焼ける。
わかっていても、朝、顔を見るたび「黒くね?!」とビックリしてしまう。思わずいっちゃうときもある。それくらい黒い。

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