落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ラヴソング

2004年01月02日 | movie
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もう8年前の作品になるんですねえ。驚きです。
私はこの作品が大好きで、公開当時も劇場で2度観たしLDも持ってます。ディスクが事故で観られない状態になってしまったので、今日偶然テレビで観るまで何年も観てませんでした。
この映画が公開された頃、私にも好きな人がいて、タフを装い健気に突っ張るヒロインと自分を重ね合わせてはただただ涙したものです。あー若かったな。自分よ。
今観ると流石にちょっと古臭いと云うか、きれいにまとまってはいてもありふれたメロドラマの域は出てないなと云う印象はしてしまいますね。
運命に翻弄される男女の恋愛物語に、中国本土から香港、アメリカへと移って行く中国人たちの旅と、ブラックマンデー、宗主国イギリスへの複雑な香港人感情、香港返還前の混乱、HIVの流行と云った社会背景を上手く組み合わせて、それなりに広がりのある物語になってるとは思うけど。

この印象の変化は、作品が古くなったとかぐりがトシを食ったとか云うことではないと思います。
そうではなくて、この8年の間に世界が大きく変わってしまった、我々の世界観が否応なく変化を強いられて来たからじゃないかと思います。
確かに物語の進行は安易です。ストレート過ぎたりご都合主義的ではあっても、文学的であったり芸術的であったりは全然ない。ただエンターテインメントとしての完成度はちゃんとあるし、ある面では普遍的でもあると思う。
でも、この映画のラストの舞台がニューヨークである限り、どうしても我々は9.11を連想してしまうし、9.11の前と後では我々の世界観は完全に別物になってしまっている。普段はその変化を特に意識したりはしないけど、“事前”の本を読んだり映画を観たりしているとふとそのことに気づかされてせつなくなったりします。

古く感じるとは云っても、改めていいなと思う部分も多々ある作品です。それがこの映画の優秀なところだと思う。
マギーもレオンも良い役者です。レオンの怒りさえ感じさせられるほどの天然・鈍感・愚直ぶりも良い味出してるし(全く演技に見えないけど演技である)、マギーの無愛想なテンパりぶりも可愛いしさりげないかっこよさもクールだ。カメラワークや音楽の使い方は今観てもオシャレです。
私がこの映画を観て今も泣けるシーンは、クライマックスのニューヨークでの一場面。レオンとの恋を捨ててヤクザ(エリック・ツァン)との逃避行に同行しニューヨークまで彷徨って来たマギー。しかし家を買って落ち着こうとする矢先にヤクザはつまらないトラブルに巻き込まれて命を落とす。警察で身元確認を求められ、マギーは遺体の背中を見せてくれと云う。死んだ恋人のいちめん刺青の背中の中の“しるし”を目にして覚えず笑みを浮かべ、泣き笑いの顔になるマギー。
粗野であっても優しく男らしく彼女を守って来てくれた彼の、茶目っ気と愛情が溢れるシーンで、観る度泣けて来ます。えも云われぬマギーの表情も胸に迫る。ホントにすごい女優さんだなと思う。

この映画を観ても、若い頃のように「恋がしたいな」とかは思わないけど、このヤクザさんのように強く優しく心の大きな男性には出会ってみたいものです。
あと テレサ・テンの歌はやっぱ良いですね。ぐりは仕事中気持ちが荒んでくるとよく聴いてます。中国語版昭和歌謡、なごみます。