「詠草」
稲の穂はすべて東を向いて垂れ水の匂いのふと香ばしく
谷風は刈草の香を運びくる裏切るように蝉声は無く
起こされて「今は春だ」と言われればそうかと頷きそうな農道
老い果てて朝露の乗ることもなく里芋の葉の野垂れてゆくか
刈り株にゆれる二番穂三番穂また白色の軽トラが行く (☆)
「うたう☆クラブ」
ぬる濡れたガラスを滑る指先もかなしい言葉なのでしょうから
ここまでが相模の海である海の見える斜面にある俺の墓 (☆)
墓苔の匂いは指に沁みついて車窓にひとり頬杖をつく
悲しんでくれるであろう人がいるうちにと思う四十四の初夏
一度だけほんとの恋がありまして陽光発電板の黒ずみ
(☆)のついているものが、取られた歌です。
完全に季節はずれなのは、ご容赦を。
作ったのは夏だったんです。