はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

『現代短歌朗読集成』(同朋舎メディアプラン)(3)

2008年11月22日 18時04分45秒 | インターミッション(論文等)
(2)歌人それぞれの朗読の構成、演出を楽しめる

 各歌人はそれぞれ3~10分程度の時間を持って朗読を行っている。
 解説等には特に書かれていないが、その持ち時間内での構成や演出(どの歌を読むか、どのように読むか)は、各歌人に任されているようだ。

 当然といえば当然かもしれないが、各歌人はその中で、自分の代表歌(と世間が見ているもの)を必ずしも歌わない。
 与謝野晶子は
「やは肌のあつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君」
を歌っていないし、北原白秋も
「君かへす朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとく降れ」
を入れていない。
 穂村弘の朗読には
「ブーフーウー」「象のうんこ」「終バスの『降りますランプ』」
は含まれていないし、俵万智は歌集『サラダ記念日』から歌を選んだが、その中には
「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」
は入らなかった。
 各歌人が構成した「数分間の宇宙」には、これらの歌はそぐわないと判断されたのだろう。

 そのようにして選んだ歌を、歌人は各々工夫を凝らして読む。
 塚本邦雄は笛、前登志夫はピアノ、佐々木幸綱はギターの調べに乗せて、自作を朗読した。
 寺山修司は音楽、読み方、エコー等を駆使し、朗読を映画のように仕立てた。
 岡井隆は、語句の説明、ポイントの繰り返しなどで、朗読会の雰囲気を醸し出した。
 池田はるみは大阪弁を操り、独自の世界を作り上げた。
 三枝昴之は詞書の朗読に女性を配した。
 小島ゆかりはあえて長歌と反歌を歌った。
 もちろん、小池光のように、何の仕掛けも衒いもなく淡々と朗読を行った人もたくさんいる。それこそが自分の歌をもっともうまく表現できるのだと言うように。