はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

Tさんのこと(1)

2008年07月24日 17時57分09秒 | たんたか雑記
 テレビを見なくなって、もうずいぶんたつ。
 別に困らないからいいや、と普段は思っているのだが、ちょっとした時に一般常識を疑われることがあって、そういうときは少し後悔する。

 あるイベントの受付をしていたTさんが、突然
「マツシマナナコのナの字って、菜の花の菜ですよね?」
と聞いてきた。
 電話の向こうで、申込者が自分の名前を説明してるらしい。
 で、ぼくが
「マツシマナナコって誰だ」
と聞き返したら、Tさんが固まってしまった。
 周りにいた課長も課長補佐も嘱託員のNさんも、みんな固まっている。
 どうやらずいぶん有名なヒトらしいのだが、知らないものはしょうがない。誓って初めて聞く名前だ。
 固まりつつもなんとか受付を終わらせたTさんが、改めてこっちを向いた。
「中村さん、マツシマナナコ知らないんですか?」
「知らない。何やってるヒト?」
「女優ですよ!ずいぶん前からいろんなドラマや映画に出てます。見たことないんですか?」
「ない。テレビ見ないもん。なに、その異星人を見るような目つきは」
 Tさんは20代半ばの女の子で(ぼくから見ればこの年代は女の子だ)、仕事も出来るしいつもころころ笑っているので、みんなから可愛がられている。
しかし、ときどき笑いながら妙に辛辣な意見を言うので、けっこう油断できないのだ。

(続く)