テレビを見なくなって、もうずいぶんたつ。
別に困らないからいいや、と普段は思っているのだが、ちょっとした時に一般常識を疑われることがあって、そういうときは少し後悔する。
あるイベントの受付をしていたTさんが、突然
「マツシマナナコのナの字って、菜の花の菜ですよね?」
と聞いてきた。
電話の向こうで、申込者が自分の名前を説明してるらしい。
で、ぼくが
「マツシマナナコって誰だ」
と聞き返したら、Tさんが固まってしまった。
周りにいた課長も課長補佐も嘱託員のNさんも、みんな固まっている。
どうやらずいぶん有名なヒトらしいのだが、知らないものはしょうがない。誓って初めて聞く名前だ。
固まりつつもなんとか受付を終わらせたTさんが、改めてこっちを向いた。
「中村さん、マツシマナナコ知らないんですか?」
「知らない。何やってるヒト?」
「女優ですよ!ずいぶん前からいろんなドラマや映画に出てます。見たことないんですか?」
「ない。テレビ見ないもん。なに、その異星人を見るような目つきは」
Tさんは20代半ばの女の子で(ぼくから見ればこの年代は女の子だ)、仕事も出来るしいつもころころ笑っているので、みんなから可愛がられている。
しかし、ときどき笑いながら妙に辛辣な意見を言うので、けっこう油断できないのだ。
(続く)
別に困らないからいいや、と普段は思っているのだが、ちょっとした時に一般常識を疑われることがあって、そういうときは少し後悔する。
あるイベントの受付をしていたTさんが、突然
「マツシマナナコのナの字って、菜の花の菜ですよね?」
と聞いてきた。
電話の向こうで、申込者が自分の名前を説明してるらしい。
で、ぼくが
「マツシマナナコって誰だ」
と聞き返したら、Tさんが固まってしまった。
周りにいた課長も課長補佐も嘱託員のNさんも、みんな固まっている。
どうやらずいぶん有名なヒトらしいのだが、知らないものはしょうがない。誓って初めて聞く名前だ。
固まりつつもなんとか受付を終わらせたTさんが、改めてこっちを向いた。
「中村さん、マツシマナナコ知らないんですか?」
「知らない。何やってるヒト?」
「女優ですよ!ずいぶん前からいろんなドラマや映画に出てます。見たことないんですか?」
「ない。テレビ見ないもん。なに、その異星人を見るような目つきは」
Tさんは20代半ばの女の子で(ぼくから見ればこの年代は女の子だ)、仕事も出来るしいつもころころ笑っているので、みんなから可愛がられている。
しかし、ときどき笑いながら妙に辛辣な意見を言うので、けっこう油断できないのだ。
(続く)