はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 036:組

2006年09月26日 14時05分48秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
このところ番組表が心地よくなっているのでとてもうれしい
                      (笹井宏之) (【些細】)

 はじめ、あまりのシンプルさに思わず笑ってしまったので
すが、何度か読み返しているうちに
「これはそう単純な歌じゃなさそうだぞ」
と思えてきました。
 「番組表」とは、新聞の最終面にあるテレビやラジオの時
間割のことなのでしょうが、これが「読みやすく」とか「すっ
きりと」ではなく「心地よく」なっているというのは、どういう
状態なのか。
 「このところ」は、「以前に比べて」と読むよりは「予測がつ
かないある一定期間内」という雰囲気があります。
 つまり、以前はあまり心地よくなく、ちょっとしたことでまた
以前の状態に戻ってしまいかねない、ということ。
 かっちりとプログラムされているはずの「番組表」には、あ
まり相応しくない言葉のように思われます。
 下二句が全部ひらがななのも、単純なうれしさよりも「ほ
っとした、緊張から解放された」というニュアンスがあるの
では。
 さて、この「番組表」は果たしてどんな「番組表」なのか。
 興味は尽きません。

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優しさはつけ込みやすさ腕組みをほどく間合いで冷麺が来る
                 (岩井聡) (North Marine Drive)

 阿吽の呼吸と言いますか、この「つけ込」んでいる人は、絶
妙の間合いを計れる人なのでしょうね。
 そもそも「冷麺」は、そう簡単に作れる料理ではありません。
 様々な具を刻み、調理し、麺を茹で、スープを冷やし、盛り
つけ…。
 間合いを間違うと、スープが生ぬるかったり、麺がのびてし
まったり。
 つまり間合いを計っていると言うよりも、間合いをコントロー
ルし、冷麺がちょうど出来上がる頃合いに「腕組みをほど」か
せるよう仕向けているのではないでしょうか。
 うーむ、達人だ。
 これは個人的な好みですが、第一・二句がちょっと説明調っ
ぽいかなと感じました。
 ではどうすればよいか、というと、なにも思い浮かばないの
ですが。

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πとe唱えて傘を抜け出した彼らは天に近いひと組
                     (瀧口康嗣) (可燃性連鎖)

 「円周率πと自然対数の底eは超越数である。超越数(ちょう
  えつすう)とは、代数方程式
    anxn + an-1xn-1 +…+ a0 = 0
    (n ≥ 1, an ≠ 0 かつ各 ai は整数)
  の解とならないような複素数のことである。有理数は一次
  方程式の解であるから、実超越数はすべて無理数である。
  超越数論は、超越数について研究する数学の分野で、与
  えられた数の超越性の判定などが主な問題である。」
         (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 解りますか?僕にはぜんぜん解りません。あ、頭が痛い…。
 つまり彼らは、人の支配から抜け出た特別な存在だという
ことでしょうか。
 それを唱えつつ傘から抜け出した人々もまた、「天に近い」
存在であると。
 しかしどうも僕には、πとeがふたり仲良く手をつないで雨の
中をスキップしているのどかな風景が(どこがのどかなんだか
よくわからないけど)頭に浮かんで離れません。
 作者の意図とはだいぶかけ離れてしまう読みでしょうけれど
も。すみません。