フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月25日(火) 晴れのち曇り、夜半に小雨

2008-03-26 09:08:20 | Weblog
  今日は大学の卒業式の日。毎年3月25日と決まっている(したがって曜日は毎年変る)。9時、起床。トースト、ハム、柚子のマーマレード、牛乳、紅茶の朝食。出掛けに学文社から刷り上ったばかりの拙著『日常生活の社会学』が届く。年末年始に書いていたのはこの原稿である。入稿から短期間で刷り上ったのは109頁の小冊子であることと、校正のときに加筆をほどんどしなかった(完成原稿を渡した)からである。どうにか新学期に間に合った。「早稲田社会学ブックレット」の「社会学のポテンシャル」シリーズの最初の巻であるが、嶋崎尚子『ライフコースの社会学』と長田攻一『対人コミュニケーションの社会学』も同時刊行された。書店にはこれから並ぶ。定価は1300円。

       

  午後1時に大学に到着し、教員ロビーで嶋崎先生、人間科学部の池岡先生と「ライフコース・アーカイブ研究所」の立ち上げの件で相談。名誉教授の正岡先生を中心にわれわれがこれまで手がけてきた種々のライフコース調査の資料をデータベース化して管理・活用していくための研究所である。しかし、その相談の時間より、「早稲田社会学ブックレット」の企画委員である嶋崎先生がわれわれに原稿の催促をしていた時間の方が長かった気がする。池岡先生は二冊、私もあと一冊書く約束になっているのである。「大久保先生、GW明けには原稿をいただけますよね」と嶋崎先生。「は、はい」と私。池岡先生も叱咤激励されていた。
  遅めの昼食は「メーヤウ」で。インド風ポークカりーを食べる。辛さを示す★印は3つである。一番よく食べているタイ風レッドカリーが★2つであるから、それよりもワンランク上の辛さである。辛さが美味さを凌駕しない上限ギリギリの辛さではないかと思う。食後もしばらく辛さの感覚が喉に張り付いていた。コンビニで明治のストロベリーチョコレートを購入し、歩きながら口に入れる。
  4時から各専修ごとの卒業証書授与式。社会学専修室はいつもの36号館AV教室。主任の那須先生が一人一人に卒業証書を手渡す。私は今回の学生たちは演習の授業を担当してこなかったので(卒論演習を除く)、顔と名前の一致する学生がごくわずかしかいない。それでも何人かの学生が私のところへやってきて「お世話になりました」と挨拶をしてくれた。2年生か3年生のときに大教室での私の講義を履修したのであろう。「先生のブログを読ませていただいています」という学生もいた。彼らは私の日常について知っているが、私は彼らの名前さえよく知らない。この非対称性はブログならではである。カフェテリアの前の広場で行なわれている二文の卒業パーティーに途中から顔を出す。ほとんど終わりかけていたが、1年生のときの基礎演習の学生だったC君、Kさん、Iさんと言葉を交わすことができた。C君は出版社に就職する。Kさんは芸能プロダクションで活動を続ける。Iさんはロースクールに進学する。三人三様だ。握手をして別れる。
  気になる案件があったので、現代人間論系室に顔を出す。助手のAさんと話をしているところに社会人間系専修助手のYさんがやってきた。Yさんは今月末で助手の任期が終わる。これまでほとんど個人的に話をする機会はなかったが、歌人の穂村弘のファンで(それもかなり熱烈なファンで)、私がブログで彼のことを取り上げたときは嬉しかった(というよりも興奮した)そうだ。そんなこととは少しもしらなかった。話はしてみるものである。
  論系室ですっかり話しこんでしまい、時計を見ると7時15分前。馬場下の交差点でタクシーを拾って、7時から椿山荘で開かれる社会学専修の謝恩会に駆けつける。会の半ばで、教員のスピーチがあった。年齢の若い順に、土屋先生、嶋崎先生、長谷先生、森先生、私、浦野先生、那須先生、坂田先生、和田先生、長田先生の順でスピーチをしたが、順序を当てるクイズを出したら面白かったのでないだろうか。はたして何人正解者が出ただろうか。私は卒業生たちに健康を損なうほど一生懸命に働いてはいけないということを言った。企業というのは利潤追求(金儲け)を目的とした集団である。社会的正義という観点からすれば問題をかかえた集団である。しかし、それがどのような集団であれ、個人は集団の一員として組み込まれれば、その中で認められようと一生懸命になる。しかし、われわれの生活=人生というのは多元的な集団所属によって成り立っており、企業(職場)はあくまでもそのワン・オブ・ゼムであり、しかも交換が可能な要素である。そこに過剰な時間とエネルギーを投下して燃え尽きるようなことがあってはならない。労働の対価として企業(職場)から受け取る報酬以上のものを企業に捧げてはならない。・・・というような趣旨の話をした。それはこの春、目の前にいる卒業生たちと同じく、新社会人となる私の娘に対して父親として言ってやりたい言葉でもあった。
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