まりっぺのお気楽読書

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『破局』強い人ばかりじゃないから・・・

2008-10-11 08:59:35 | イギリス・アイルランドの作家
THE BREAKING POINT 
1959年 ダフネ・デュ・モーリア

創元社の『デュ・モーリア傑作集』はじわじわと怖くなる、という
1冊でしたが、こちらはだんだん情けなくなる、という感じでしょうか?

収載されている6篇の主人公は、迫りくる悲劇をなす術も無く受け入れてしまう
悩める人たち。
無力な人々の悲しさや哀れさに、焦燥を感じてしまいました。

特にその傾向が顕著だった2作品。

『アリバイ(The Alibi)』
口うるさい妻や退屈な日常に、ある日きっぱり別れを告げたくなったフェントンは
ふいに殺人を思いつきます。
彼は犠牲者にもってこいの母子を見つけ、画家を装って彼らが住む家に部屋を借り
チャンスが来るまで通う事にします。

どうみても、自分が犯人としか思われない状況にたたされたら
人はどうすればいいのでしょう?

『皇女(The Archduchess)』
700年に渡って平和に暮らしてきた公国には、ある神秘的な王族が君臨してきました。
たった二人の反対分子によって滅ぼされていく王一家と
たった一人生き残った皇女の哀れな末路が描かれています。

長い歴史の中で、実際に同じようなことが繰り返しありました。
中には戦った王(指導者)もいたでしょう。
でも、あきらめきった王もいたのでしょうね。

『青いレンズ』では目の手術を終えた人妻が、
『美少年』ではイタリアの少年に恋してしまった英国男性が、
『荒れ野』では自分の意志が言葉で伝えられない少年が、
『あおがい』では、愛した人たちが次々に去ってしまう女性が、
それぞれに「どうしたらいいの?」と訴えかけてきます。

私が感じたイライラは“ 同病相哀れむ ”というものかもしれません。
自分ではどうしようもない苦境や不幸というのは
そこらへんにゴロゴロ転がっていて、ある日気がついたら
取り囲まれちゃってるものなんですよね。

なるべく避けて生きたいですけど、そうもいかないんですよねぇ。
そして人は、往々にして甘んじて受けるしかないんですよねぇ・・・

破局 早川書房


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