まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『スーラ』誰が主人公か悩むわ・・・

2019-10-25 21:47:20 | アメリカの作家
SULA 
1973年 トニ・モリスン

トニ・モリスンは数冊しか読んでいないので大きなことは言えませんが
『スーラ』はいつになく身近な内容に思えました。
もちろんありがちな話ではないのですが、突拍子もない設定や
時代が何代も遡るという流れではなくて、日常的な展開の物語でした。

ただ日常的とはいっても、何度も盛り上がりのあるドラマティックなストーリーです。
けっしてありふれた町の暮らしの話ではありません。

メダリオンのボトムという黒人が多く住む集落が舞台で
スーラ・ピースとネル・ライトという少女が親友になり、大人になっていくお話です。

ドラマで女同士の友情が描かれていると、たしかに、途中でけんかしたり
同じ人を好きになって気まずくなったりするものですが
だいたい「やっぱり友だちが最高よね!」てな感じで終わるものですよね。

この物語の中でも同じようなエピソードがあるのですけど、かなり激しいです。
うーん・・・説明するのもあらすじを書くのも難しい・・・

何人かの女性が登場しますが、みなキャラクターが強くて
誰が主人公でも物語が一冊書けそうです。
とりあえずその人たちを紹介してお茶を濁しちゃおうかしら・・・

まずエレーヌ・ライトが登場します。
ネルの母で、クレオール人の娼婦を母に持ち、祖母に娼館から連れ去られて
母親から隠されて育ちました。
完璧な妻でと母であろうと務め、ネルを愛情というよりは義務として厳しく育てます。

エヴァ・ピースはスーラの祖母で、家族の絶対的権力者です。
夫に捨てられ極貧の中三人の子を育てていましたが、子供を隣人に託して出て行き
一年半後に戻って来た時には、片足を失い、大金を携えていました。

ハナはエヴァの次女で、スーラの母。
夫に先立たれエヴァの世話をしながら暮らしています。
地味で飾り気のない女性ですが、とにかく男好きする女性で
町中の妻たちの怒りを買っていました。

そしてネル、スーラの親友です。
「友だちを作るな」という母親に初めて反抗してスーラと友だちになりました。
激しい気性のスーラと対照的ですが、実はスーラを支配するところがあります。

スーラは大家族の中でほったらかしにされて育ちました。
人の死に立ち会ってもを表情を変えないようなところがありますが
ネルのために自分のからだを傷つけるような激しさを持っています。

女性陣だけでもエピソード満載なのに、さらに一癖も二癖もある男性陣が多数
スーラやネルに絡んできます。

結果的に言うと、スーラとネルの友情は壊れます。
スーラは町中の人たちに嫌われ、病気になっても薬代にも事欠き亡くなります。
しかしスーラが亡くなったことで、町の人たちに大きな悲劇が起こります。

とにかく事件がいろいろありすぎて書けないんだけどね。

おもしろかったのは、なんだかんだいってスーラもネルも
あまり愛情を抱けなかった母親のような女性に成長していたみたいな気がしたことです。

トニ・モリスンが女同士の友情を描きたかったという物語ですが
正直ヘヴィだった気がする・・・
ただ「やっぱり友情よね!」ドラマよりリアルな気はします。
多感な時期をずっと一緒に過ごしたからといって、何があっても友だちでいられる訳はなく
全てを分かり合えていたと思っていても、いつか相違点がさらけ出される・・・

できたら友だちとはそういうことにはなりたくないですね。

毎回引き込まれてしまうトニ・モリスンの世界
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


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スウェーデン王フレデリク1世愛妾 ヘドヴィク

2019-10-04 20:36:39 | 王の寵姫・愛妾
スウェーデン王室でただひとりの公妾(らしい)
ヘドヴィク・ウルリーカ・トーベ


1714〜1744/愛妾 1731〜1744

フレデリク1世は、もともとスウェーデン王家の人ではなくて
お妃のウルリーカ・エレオノーレのおかげで王様になった人でございます。

60歳になろうかというのに女性関係の悪評が高まる一方のフレデリク1世が目を留めた時
ヘドヴィクは16歳でした。 そりゃあ嫌がりますよね。

ヘドヴィクは、ドイツ系の貴族エドヴァルド・ドーヴェの娘さんなのですが
一家はその時ギャンブルの借金に頭を痛めておりました。
         
そんなわけで、ここからヘドヴィクに対する大説得作戦が始まります。

はしょるけど…
まずは宮廷の役人たちが、愛妾とはどういうものか理解できて決心するまで
王妃の侍女として宮廷に入ってはどうか? と申し入れてきます。
また、王と家族の共通の知人たちがヘドヴィクの家族の説得にあたりました。
Carl Tersmedenという人は、彼女と家族の輝かしい未来について演説し
貴婦人たちが訪れ、ヘドヴィクが宮廷に上がれば彼女の母も姉妹も淑女の仲間入り!と
口々に(うるさそう)言いくるめようとしました。

とうとうヘドヴィクは根負けしてしまいまして、家族への恨みつらみの言葉を残し
宮廷へと向かいました。

お約束どおり王妃の侍女になったヘドヴィクは、すぐに愛妾になったようです。
1733年に娘を生みましたが翌年亡くしました。
その後ヘッセンシュタイン伯爵の称号と宮殿を与えられ公妾になりました。

スウェーデン王家にはその前にも後にも公妾になった愛妾はいなくて
ヘドヴィクはスウェーデンで唯一の公妾と言われています。 名誉なんだか不名誉なんだか…

ヘドヴィクが公妾になったことはスウェーデンで大スキャンダルになりました。

まずはヘドヴィクを紹介された王妃ウルリーカが、体調不良を理由に部屋に引き蘢ります。
聖職者たちは “ 二人の妻を持つ王 ” に臣従の礼を払うことを拒否しました、
世論は王家の血をひき敬虔な王妃に同情的で、ストックホルムには風刺画があふれました。

ヘドヴィク自身は「しめしめ」と思っていたのかというとそうではなく
宮廷へやって来た時同様、フレデリク1世の愛妾でいるのは不幸だと思っていて
王妃との衝突を避けるため宮廷に顔を出すのはやめました。
そのかわり自分の宮殿に、王妃に匹敵するサロンを開いて芸術家たちを招いていました。
政治家がヘドヴィクの力を利用しようとしたこともありましたが
彼女は公妾という自分の立場が大嫌いで、協力を拒みました。

議会は、王が前代未聞の公妾を持ったことに激怒して何度も議会を開き
王妃はヘドヴィクの息子二人を国外追放にしてほしいと主張しました。

フレデリク1世っておバカなのかなぁ?
不穏な空気を感じていたのか、 “ 私の死後はヘドヴィクたちをよろしく ” という
主旨の手紙をその王妃に送ってるんですよね! 聞いてくれるわけないじゃんね!!

結局ヘドヴィクと息子たちはヘッセンに送られることになりましたが
ヘドヴィクはこっそりニュヒェーピングで暮らして「狩りに行く」と言ってやってくる
フレデリク1世と会っていました。
これは王妃にバレて、またまた部屋に閉じこもったりしましたが
ヘドヴィクはスウェーデンに居続けました。

ヘドヴィクは、愛妾はいやだったけどフレデリク1世のことは好きだったのかしら?
それとも息子たちのために耐え続けていたのかしら?

1744年、ヘドヴィクは四度目の出産の時に亡くなりました。 30歳でした。

16歳の娘をよってたかって甘い言葉で誘っておいて、やってきたら辛い目にあわせるなんて
なんなんだよー!! なんだかすごく可哀想… 本当は同じぐらいの年の青年と結婚して
普通の貴婦人として過ごしたいっていうタイプの人だったんじゃないの?
自分の意志じゃないのにこんなに嫌われ者になっちまって…
愛妾になりたいという女性もけっこういただろうから、そういう人を選べばいいのにね!

(参考文献 武田龍夫氏『物語スウェーデン史』 Wikipedia英語版)

北欧といえば!の武田龍夫先生による一冊
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


 
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