まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『猫の文学館 I & II』いくら猫好きでも…

2017-10-22 21:14:03 | 日本の作家


疲れた… 2冊続けて読んだら。

日本の錚々たる作家・著述家・芸術家が、よってたかって猫について書いた
エッセイ・小説・書簡・詩・童話などなどが、80篇!おさめられています。
あまりにありすぎて、ひとつひとつはあげられません。

『猫の文学館 I』は
1 のら猫・外猫・飼い猫 2 仔猫がふえる! 3 猫も夢を見る 4 猫には何軒の家がある? 
5 そんなにねずみが食べたいか 6 パリの猫、アテネの猫 
の6章にわかれていて、エッセイが多めでした。
うちの猫自慢とか、猫は高貴で優雅だ、みたいな内容が多かった気がします。

『猫の文学館 II』は
1 死んだ猫のゆくえ 2 ペット・ロス症候群 3 猫の精霊ばかりが住む町
4 化け猫と不思議な話 5 猫の一族 
の5章から成っています。
サブタイトルどおり、猫にまつわるミステリアスな内容のものが大半でした。

ほぼ全ての作品の題名に “ 猫 ” “ ねこ ” がついていて、同タイトルもありました。

作家陣には、以前読んだ『猫』と重複している方々もいました。
有名どころをあげると、太宰治・三好達治・与謝野晶子・壷井栄・室生犀星・内田百閒
向田邦子・佐藤春夫・川端康成・井上靖・高村光太郎・井伏鱒二・谷崎潤一郎・村上春樹
志賀直哉・夏目漱石・吉行淳之介・三島由紀夫・筒井康隆・小泉八雲・菊池寛・星新一 etc…
特に、大佛次郎さんのものはいくつもありました。

だけど、村上春樹さん以外は、皆さん一昔前すぎる面々ですよね?
そんなわけでこの本を読んで解ったことは、昔は皆さん、猫をペットとして飼うにあたり
ネズミ退治をしてもらうという目的も大きかったということです。

今なら、ネズミどころかセミやカマキリなんかくわえてたら「バッチィでしょ!」と
あたふたしちゃう感じですが、昔は「エラいエラい」と褒められたわけですね。
それから、不妊手術などはしてなくて、どんどん生まれる仔猫を
しかたなく捨てたとか始末したという話しを正直に書いています。

だけど猫を可愛がる気持ちは今と変わらず、エッセイは自分ちの猫にデレデレの
内容になってますし、病気になればちゃんと “ 家畜病院 ” なんかに連れて行ってます。

出産や食べ物についてと、うちの子はよその猫より器量よしで賢いについては
皆さん書かずにはいられないみたいですね。
谷崎潤一郎さんは、あいかわらず「猫は外国の猫じゃないと…」と書いてます。

各作品の後に作者の説明が書かれていて、他の猫についての作品が紹介されています。
皆さん、猫についてはいろいろあるみたいで、いくつも書かれていました。

一番好きだったのは、大佛次郎さんの『猫家一族』という、フランスの墓地で見つけた
日本語に訳すと “ 猫 ” と “ 雌猫 ” という墓標から想像がふくらむというエッセイでした。

もう少し最近の作家の『猫の文学館』が読みたいですよね。
海外版も読んでみたい。 でも1冊でいいかもしれん…

ネコにどっぷりつかってみたくありませんか?
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね

 

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『斜陽 他一篇』強い女はお嫌い?

2014-05-02 23:41:05 | 日本の作家

1947年 太宰 治

日本の小説の書き出しといえば、川端康成の『雪国』が有名ですが
私は『斜陽』の書き出しの方が印象的で好きなのです。
ちょっと書いてみますね。

 朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
 「あ。」
 と幽かな叫び声をお挙げになった。

この一文に惹かれて買った『斜陽』なのですが、読むにつれて気分

私は没落の物語はけっして嫌いではなくて、むしろ好きなジャンルなのですが
この話はどうも入り込むことができませんでした。

敗戦後、経済的に苦しくなった家庭の娘、かず子が主人公の物語です。
かず子は一度結婚したことがあるのですが離婚して
今は、貴婦人の典型のような優美で可愛らしい母と暮らしています。
父は亡くなり、弟は戦争で南方へ行ったきり行方知れずになっています。

東京での生活がたちゆかなくなり、伊豆の山荘に移り住んだ母子ですが
母の弟の和田の叔父からの仕送りもあり、編み物なぞしてみたり
食糧の足しにちょっと畑仕事をしてみたりして日々を送っています。

けれども、生活はだんだんきつくなる一方。
母は日に日に体が弱くなり、かず子は慣れない家事に追われ
和田の叔父からは仕送りが難しくなったと言われ
遊び人だった弟は、南方でさらに身を持ち崩して帰国し…と
お嬢様育ちのかず子の肩には、一家の生活と運命がのしかかってきます。

私はお嬢様育ちじゃないから知らないけどさ~
日本のお嬢様は、淑やかで従順で風情があって、知性と美徳を兼ね備えている、だけど
Survive ! するための何かが、完全に欠落しているような気がしてならない…
勝手な印象だけを言っていますけどね。

海外の物語でも、没落して路頭に迷ってしまう主人公は少なくないのですが
どんな手を使っても生き抜こうとするメンタリティの強さとガッツが垣間見えて
主人公がこの世を渡っていけそうな気にさせられます。
でも、かず子のような主人公が路頭に迷ったその後は想像できない…生きていけなそう…

例えば(例えるのもどうかと思うが)『風とともに去りぬ』も没落のお話しですね。
スカーレット・オハラは、様々な困難にぶちあたって、なんとか打破しようと頑張るけど
ことごとく裏目にでちゃう、という女性でした。
どっちかっていうと、身から出た錆的な不幸が多かった気もするけどね。
でも最後まで前向きな女性でありました。

スカーレットが、方法はどうであれ、明日に向かってもがき、ぶちあたるタイプだとすると
かず子はおとなしく誰かを待っているタイプ?

私は、苦境にある女性が頑張って、幸せになって、あー、良かった!という話が
良いと言っているわけではありません。

しかし、かず子ったら、生きていく上で、どこかネジがゆるんでいる気がするわ。
かず子が遅ればせながらした決心もどうかと思うよ。
自分一人でもこれからどうなるかって時に、さらに読者を心配させるラスト…
和田の叔父も頭痛の種が増えるというものです。

たぶん、太宰治はうちのめされた女性が強く立ち直っていく姿や、
弱々しい女性が苦境をはねのけるために生まれ変わっていく様を
描きたいわけではなかったのでしょうね?

たしかに「もうどうでもいいや」と無気力になる時は少なくないですよね。
「なんとかなるだろう」と、立ち向かわないままやり過ごすことも多いしね。

そう考えると、『斜陽』は、なんだかんだ言っても無力な人間の
正直な姿が描かれているのかもしれないですね。
こちらの方が、リアルといえばリアルなのでしょうか?
でも、自分がこの立場におかれたら、かず子と同じ選択はしないと思うな… やっぱり

もう一篇の『おさん』は、以前書いたので割愛します。

ひとことゲームコーナー
ほしの島のにゃんこ、Androidはもう最新版にアップデートできるらしいんだけど、iPhoneはまだなのね~
だから豆腐屋が手に入らないのよ~! 音楽のダウンロードは上手くいかないし… IPhoneに変えなきゃよかったよぉ
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『花ざかりの森』上っ面をなぞってみました

2014-04-02 22:00:22 | 日本の作家

三島 由紀夫

これまで三島由紀夫を何冊か読んでまして、それなりに楽しく読めていたのですが
これはダメだった~ 、特に前半。
何度放り出しちゃおうと思ったか… 100円でよかった。

9篇の物語がおさめられています。

何が苦手だったかというとね…
美しい言葉を選び、単語の順序も美しく響くよう気を配り、などと
細心の注意を払って書いているのでしょうか? とてもとても綺麗な文章です。

だけど、比喩に比喩を重ね、修飾に修飾を施し、ってな感じで
くねくね曲がり、どこにつながっているのかわからない道を進んでいるような感覚?
いったい何が言いたいんだよ~、キーっ となること数知れず…でした。
私には難しくてわからなかったわけだが、こういうのが耽美派の神髄なんですかね?

なので文章の意味するところを考えるのは放棄し、綺麗な単語をひたすら目で追う、という
読み方に切り替えてみたら、物語としてはそれなりに楽しむことができました。

印象的だったのは、むかしむかし…的な話の数々でした。

『みのもの月/1942年』
女から男へ、心が離れてしまったことを責めるような手紙。
男から女へ、他に好きな女性ができたことを打ち明ける手紙。
女から男へ、未練たらたらに思える手紙。
男から女へ、音信不通をなじる手紙。

通い婚って平安時代でしたっけ? これはその通い婚の話みたいで
二人には娘がいるのに、男性が女性の家に寄り付かなくなったみたいなんですよね。
前々から、通い婚って男性が飽きたらどうするんでしょ? と思っていたのですが
そうか… こうなるか… と読んでいたら、驚きのラストでした。

『中世/1946年』
25歳にして世を去った足利義尚の父義政は、深い悲しみに暮れていたが
儀式を行わせた美しい巫女を侍らせることにする。
義尚の寵愛を受けていた猿楽の菊若は、霊海和尚を訪ね剃髪を願いでたが
菊若の美しさに魅了された和尚が拒む。
義政の前に、どこからか大きな亀が現れる。

室町時代の話? 
悲しみを紛らわせる良薬が、若い女性たちをとっかえひっかえ
寝所に入れることだという発想といい、性欲に溺れる高名な聖職者といい
君主の絶対的権力といい、洋の東西を問わない中世的な内容になっております。

『軽皇子と衣通姫 -かるのみことそとおりひめ-/1947年』
皇后が、亡くなった前天皇の陵を訪ねようとしていた夜道で
妹であり前天皇の愛妾でもあった衣通姫に出くわす。
姫は天皇の死後、天皇と皇后の長男である軽皇子と愛し合っていた。
それがもとで、軽皇子は後継の座を弟に奪われ、伊余へ流されていた。

旦那も息子も奪った妹は憎かろう… というわけで
姉と妹の壮絶バトルが繰り広げられれば面白かったのですけどね、違います。
ただ、最後の最後に勝ったのは、姉の皇后だったような気がしました。
行いの立派な人の言うことが正しい! と言っているような印象を受けました。

ノスタルジックな話が多く、面白くないテーマじゃなのですが
なにしろ読み通すことに疲れてしまいまして…
誰か削りに削った簡単な文章で書き直してくれないかなぁ、と考えたほどでしたが
三島文学、だいなし…ってことになっちゃいますよね?

ひとこと消費税コーナー
5%から8%になるっていうんで買いだめ… はしなかったんですけど、店の値札替えが死にそうだったさ!
来年また上がるんでしょー こっちの苦労も考えてよね!言ったとおり景気が潤わなかったら許さないからね!!
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『古都』観光局においとくっていうのは…?

2014-01-15 01:29:28 | 日本の作家

1961年 川端 康成

私は谷崎潤一郎の『細雪』が、京都の名所案内にもってこいだと思っていましたが
この『古都』も負けていない一冊です。
どちらかといえば、伝統行事や由緒などはこちらの方が細かくて
京都観光局に置いといてもいいのじゃない? と思いましたよ。 置いてんの?

物語の舞台はもちろん京都です。
戦後とはいえ、呉服屋と着物や帯を織る機屋がかろうじて軒を連ねている時代でした。

主人公は中京の呉服屋の美しい娘、佐田千恵子です。
千恵子は、生まれてすぐ捨てられた娘で、捨てられていた呉服屋の夫婦に
実の娘のように育てられました。

千恵子は自分が捨て子だったことを知っています。
しかし両親は、千恵子が実の子ではないことは公言していますが
千恵子には「あまりにも可愛いのでさらって来た」と言い続けていました。

で、詳しいことは省くけど、ある日千恵子の前に、同じ顔をした娘が現れるのね。
千恵子はびっくり! 相手は大喜び!!

苗子というその娘は、杉山の材木問屋で奉公をしています。
捨てられた双子の姉妹を探していて、千恵子に会えて嬉しくて仕方がありません。

千恵子も今の両親を本当の親のように思っていますが、やはり実の親は知りたいわけで
これからどうしたらいいのか迷います。

千恵子を育ててきた父親の太吉郎と母親しげも複雑な心境…

そしてなにより、千恵子に想いを寄せていた男性陣も衝撃を受けます。

生き別れの双子なんて、韓国ドラマにありがち~
しかも千恵子をめぐる男性陣三人のうち二人は兄弟で
もうひとりは身分違い… ぞくぞくする布陣ですね。
だけど、これだけのお膳立てがありながら、この物語の人々は皆お人好しなのか
ドラマ的ドロドロは無くて、お話しはまったりと展開していきます。

あらすじより気になったのは、同じ母親から同じ日に生まれても
育った境遇ででこんなに差がでちゃうのか? という二人の性格。

たぶん根本的な部分はあまり違わず、二人ともいい娘さんなのですが
千恵子は育ちがいい分、どうしても上から目線になってるのよね。
苗子も、姉妹なんだからもう少し気楽に接すればいいのに
千恵子をお嬢さん扱いして下手に出ているし…
しつこいけど、ドラマなら逆に下心がありそうな行動に思えちゃいます。

せっかく斜陽をむかえそうな京都の伝統工芸や祭りに言及しといて
尻つぼみな感じも否めません… もったいない気がします。

ただ京都弁も手伝ってか、すごくのんびりゆったり読めた一冊でした。
しかし、面白いかといえばそうでもない…

丸くおさまりそうに見えて、二人のまっすぐで純粋な娘のせいでそうはいかず
え! そこで終わる? と、消化不良気味にラストを迎える物語でした。
読んでいる途中で妄想が広がっちゃって、ちょっとがっかりしちゃったのね。

ひとことHard Rockコーナー
夜中に『リッチー・ブラックモア・スペシャル』をやるっていうから録画して、旦那と二人でワクワクしながら見たら
通販番組~? がっかり… でも買うかどうか迷っちゃったさ… 買わなかったけど
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『新樹の言葉』前向き、後ろ向き…人生って複雑ね

2013-07-05 22:35:45 | 日本の作家

太宰 治

何冊か太宰治の短篇集を読んでまいりましたが、この『新樹の言葉』は
一番感想が書きづらい気分でいます。

今までの短篇集にも「貧乏で酒好きで情けないし、書けないし…もう死んじゃいたいよぉ」と
いう話がちりばめられていましたが、そこはかとなくユーモアがあったのですよね。
でもこの一冊のそういった題材をテーマにした話は、すごく悲しくなったんです。
中には冗談などをはさんでる話もあるのですが、かえって目頭が熱い…

収載されている話が多いせいか、他の短篇集より幅広いテーマで書かれている気がします。
でもほぼ全編寂しくって悲しい…
30歳前後に書かれている話が中心ですけど、何がそんなに悲しかったんだろう…

そんな中では比較的前向きと思われる、好きだった話をいくつかあげてみます。

『葉桜と魔笛/1939年』 
老婦人が語る35年前の思いで話… 松江に移り住んだ後妹の病は悪化しました。
死期がせまっていると思われた頃、妹宛の手紙の束を見つけました。
それはラブレターでしたが、相手はどうやら病を理由に妹を捨てたようです。

このあと、男への怒りと妹の不憫さを感じた姉はある行動にでます。
O・ヘンリ的な展開と言えるかしら?
死をテーマにしているはいますが、暗くならなかった良い物語でした。

『新樹の言葉/1939年』 
甲府に滞在中「義弟だ」という男の訪問を受けました。
怪訝に思いましたが会ってみると、子供の頃乳母だったおつるの息子幸吉だと言います。
幸吉に誘われ食事に出ますが、立派な料亭で支払が不安になります。

その料亭っていうのが、幸吉が昔住んでいて、家が落ちぶれ売られた家なのね。
この物語のラストを作者が言うように「勝利」と 言っていいのかどうかはわかりませんが
これで本当に過去がふっきれたかもしれないね。

『花燭/1939年』 
働くことなく親からの仕送りで暮らしている“ 男爵 ” と呼ばれる男性がいます。
気の弱さから人々にたかられているのですが、ある日しぶしぶ知り合いの仕事先である
撮影現場を見に行き、以前実家で女中をしていたとみに会いました。
とみは女優になっていましたが、懐かしそうに話しかけてきました。

この二人がゆくゆくうまくいくとは思えないんだが… まぁ、とみの思いが通じるといいね。
女性の力で男性が変わってくれればいいんですけどね… しかし、なぜこの男がいいかなぁ?

以上、前向きとは言え一抹の哀しさがぬぐい去れない三編をご紹介しました。

あとはねぇ、すごく気になった話を二つ。

恋人とは言えない大切な人と数日を過ごす『秋風記』
二人の微妙な関係と、尋常とは思えない死への憧憬と、女性の夫と子供が気にかかる一編。

安井夫人が、女学校時代の友人の駆け落ちを語る『誰も知らぬ』
なんだかものすごく情熱的な話に思えるのよね。
友人の方じゃなくて、若かりし頃の安井夫人がね。

読み終わってしんみりしちゃうよ… でも考え込むほど重いテーマとは思えない。
死を扱っているとはしても、あまりにも個人的で考え込んでられないのよ。
たぶん教訓を与えようと思って書いていたのでは無いのでしょうね。
世間には、“ 弱い ” というのではなく、生きることに馴染まない人もいるのだということを
知ってほしかったのかもしれませんね。

ネガティブとポジティブが一編の中で入り交じったような独特な感じです。
ネジティブとでも名付けちゃう? ポガティブよりいいよね?

ひとことK-POPコーナー
SHINeeのつづき… 私は3日間かなりいい席だったのですけど、毎回隣に母娘ペア、前に恋人ペアがいたの
皆で楽しめてよかったです。 キーペンの中2のお嬢ちゃん&ママ、とっても楽しかったですね
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『女神』“ 絵になるカップル ” 好きとみた!

2013-04-05 01:19:15 | 日本の作家

三島 由紀夫

前回読んだ『永すぎた春』で上手く三島像が掴めなかったわたくし、
この本を読んでさらに迷走している気分です。

表題の中篇『女神』と10篇の短編がおさめられていますが、ほぼ全篇恋のお話し。
ファンタジーめいたものもあれば妖しい話しもあり、可愛らしいエピソードもありと
バリエーションに富んでいますけど、なんていうか…
三島由紀夫という人は美男美女の組み合わせが好きなのね?きっと。

そりゃ、美しい人が主人公の方がドラマティックだとは思うけどさ…
確かに古今東西のメロドラマの主人公は美しいけどさ…
三島由紀夫の場合 “ 完璧に ” 美しいカップルがお好みと見ました。
容姿端麗で頭脳明晰で天真爛漫で家柄良し… 悩みなんかなさそうですけどね。

印象に残ったお話しを紹介しますね。

『女神/1955年』
美術品のように美しく完成させた妻依子が空襲で顔に火傷をおってから
周伍は娘朝子を完璧に美しい淑女にすることに心血を注いできました。
年ごろになった朝子は画家の青年一(はじめ)と、銀行の跡取り俊二に出会います。
朝子は俊二となら完璧なカップルになると思い婚約することにします。

お気づきでしょうが朝子は本当は一に惹かれているんです。
ありがちな話しなら、朝子が本当の愛を大切にしようとすったもんだ…って展開ですが
そうはならないのが三島由紀夫のスゴいとこ!!
でもこの話しのラスト、私はちょっと気持悪いんですけどね…

『接吻/1951年』
満月の夜、詩人Aは思い立ってお嬢さん画家のアトリエを訪ねました。
お嬢さんは快く迎え入れてくれましたが、静物のデッサンが気に入らないらしく
イライラしながら筆を噛んでいます。
詩人Aはそんなお嬢さんの唇を盗み見ています。

最後に画家がとった行動を、気持悪~と見るか、可愛いね!と見るかはお任せします。
私は純愛ぽくていいと思ったんですけどね。
ただ、こんなことが許されるのも若く美しいからなんでしょうね?

『朝の純愛/1965年』
良輔と玲子の夫婦は世間から自分たちを遮り二人だけの世界に生きてきました。
二人の気持は30年前に出会った時のままでした。
しかし老いを感じ始めた時、愛のために他人を利用することにします。

この話しは、実はあまり好きではないんですけど
作者の美しいカップル好きが垣間見えるのでは? と思いましてね…
巻き込まれちゃった若い二人がお気の毒です。

13年前に出会えなかった二人が出会うお話『伝説』とか
イライラさせられる向いの女学校の生徒に恋をしちゃったかもしれない男性のお話『哲学』
なんかが好きでした。 かなり短い話しですけど。
お伽噺のようなのに少し気味が悪い『雛の宿』も印象的でした。
『鴛鴦(えんおう』という、恋する二人の会話にイラつく話もありました。

でも私が言いたい最大の感想は、三島由紀夫は目で見て美しい恋愛が好きだ!!
ということかしら?
物語の内容はおいといて、とにかく、登場人物がどれほど理想的で
二人が並ぶとどれほど絵になるかっていう描写が欠かせないらしいのね。

こういうのを耽美派っていうのでしょうか?
よくわかりませんけど、美男美女のいないところに物語は生まれないという気がしました。
平凡な見かけの人でも恋をするってわかってほしい…

ひとことK-POPコーナー
先月末行って来ました!日本武道館、テソンのDLive!! 出だしから泣いちゃったよ
そして『粉雪』で再び泣いたね! テソンの声は素敵すぎるぅぅ… 全てものすごくいい曲に思えるよ
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『永すぎた春』恋する二人に優しい物語

2012-12-08 23:22:40 | 日本の作家

1956年 三島 由紀夫

うーんと… 私は三島由紀夫という作家の性格や主義、私生活については全く知りません。
最期が印象的だっただけに、けっこうラディカルな思想の持ち主なのかしらん、などと
想像はしてみるものの、特に知りたいとは思わないので調べたこともありません。

だから、ほんとぉぉぉに、この一冊だけから受ける印象を書くと、すごく優しい人みたい。

“ 永すぎた春 ” と聞くと、恋人に訪れた倦怠期とか、待ちくたびれてお別れ…的な
印象を受けませんか?
私はそのつもりで、恋人たちを襲ううんざり状態がどのように描かれているのかと
わくわくしながらこの物語を読み始めました。

宝部郁雄というT大法学部の学生がいます。
もちろん頭はいいですよね? 父親は財界人で裕福な家の一人息子です。
性格も良く、素行も良く、しかし適度に遊ぶことも知っていて、どうやら顔も良いらしい。
一昔前のドラマや漫画の王子様タイプですよね!!
今だとツンデレ主人公の恋敵っぽいけど… 「いい人なのに~」フラれるタイプ。

その郁雄が大学門前の古書店の美しく聡明な娘、木田百子に恋をしまして
母親の反対を押し切り婚約までこぎつけたところから物語が始まります。

ドラマ好きとしては母親の反対がどれほどのもので、どんな邪魔をしたかが知りたい所。
しかし、それはさら~っと数行で終わっちゃいます。

でも若い二人に試練はつきもの!
婚約に際して郁雄の父親は「結婚は郁雄の卒業を待ってから」という条件を出しました。
郁雄の卒業までは1年3ヶ月です。

もちろん、この1年3ヶ月は平穏ではすみません。
まずは、百子の親戚に逮捕者が出て郁雄の母大激怒&婚約破棄を画策。
そして婚約の喜びも色あせてきた郁雄を誘惑する年上の美女つた子の登場、揺れ動く郁雄。
百子の兄で唯一の跡取り東一郎が望む身分違いの結婚。
そんな時に現れた郁雄の友人、デンジャラスガイ吉沢。
吉沢は恋人と別れ百子にアタックしてきます。
そんな吉沢に加勢しようとするある女性の陰謀。

もう書いてるだけで楽しいよぉ
来るべき別れに向かってまっしぐらって感じでしょ?

で、あらすじを書くとそうなんですけど、作者三島由紀夫は優しいですよ。
これはドラマにならないね!

恋する主人公二人を応援しようという気持は、読者(視聴者)にはもちろんあります。
ありますけど、苦しい~時期を乗り越える姿を見るのも好きなもの…
そんなわけでドラマでは「え、そこまで?」という無理くりなシチュエーションまで
創りだして恋人たちを苦しめるじゃないですか?

そこまでしてほしいとは思いませんけど(文芸作品だしね)
作者は若い二人をあまり傷つけたくなかったみたいです。
痛手を受けそうになると作者の救いの手が見える… そんな気がする物語でした。
主人公二人はたぶん No damage 、青春っていいよね!

三島由紀夫は何冊か持っているのですが、他に読んだのは『女神』だけです。
『女神』は違った作風で、二冊のうちのどちらが三島文学らしいのかわかりませんが
女性の純潔や男性の正義感を守っていきたいという考えの作家なのかなぁ…
などと感じています、今はね。

結論としては、わたくし “ 永すぎた春 ” の意味を取り違えていたことに気がつきました。

ひとことK-POPコーナー
良かったよ~! BIGBANG!! もちろんみんな素敵だったけど、テソンが素敵すぎる
そんなわけで来年3月のソロライブ予約してみました… 抽選に当たるといいなぁ
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『幸福な家族』お幸せそうでなにより・・・

2012-09-28 21:19:54 | 日本の作家

武者小路 実篤

この本はなんだか本棚にあったから読んでみたものです。
だから武者小路実篤の他の小説は読んだことがないので偉そうなことは言えないのですが
いったい読者に何がを伝えたくて書いたんでしょうね?

私は『幸福な家族』という題名を見た時、ものすごく皮肉が込められたネーミングだと
思い込んでいたんですよ。
そりゃあんたの勝手でしょ! と言われればそれまでなんだが
まさかその通りの内容だとは思わないでしょ?

あらすじを書きますね。

佐田正之助は53歳。
ドイツ語教師をしていましたが「おもしろくないので」リタイアし
画家を目指そうかって勢いで毎日絵ばかり描いています。
東京の一軒家で妻敏子、息子の正蔵、娘の綾子と暮らしています。

正蔵は表には出しませんが父を尊敬する勉強家の好青年です。
綾子は20歳ですが、まだまだ無邪気で善良な娘です。

ちょっと不愉快なことがあって以来女中をおかなくなってからは敏子が家事を切り盛りし
油絵に没頭する正之助をにこにこ見守っています。

目下の悩みと言えば、からだが弱くて戦争に行かなかった正蔵が
女性と出歩いているらしいという人づての話ぐらいです。

スピードアップしていくけど…

その女性について正蔵は何も語ろうとしませんでしたが
ある日、正之助に、ある女性をモデルに使ってほしいと頼んできました。
そしてその女性にモデル料を払ってあげてほしいと言います。

正蔵と友人の川上は、出征している親友田方の婚約者秀子を気にかけていました。
モデルにしてほしい女性とは秀子の知人で千津子といい、何か事情がありそうです。

正之助はひと目で千津子が気に入りモデルにして絵を描き始めます。
敏子も綾子も通って来る千津子のことが好きになりました。
そして正蔵が千津子に好意を抱いていることに気がつきます。

ところが、娘が絵のモデルをしていると知った千津子の父と継母は怒り
千津子に縁談を薦めます。

一方、綾子もたびたびやって来る川上が気になっています。
けれども川上は頑固で、食事を薦めても帰ると言い張るし
綾子を喜ばすようなことは言いつつ、あまり気にかけているようにも見えません。

さぁ! 普通ならここから盛り上がりますよね。
継母と上手くいっていない様子の千津子、親の反対と無理矢理の縁談、
やきもきしながらも心を伝えられない正蔵、親友に弄ばれているかもしれない妹…
もうワクワクですよ! ドラマ的要素満載!!

でも、盛り上がらないの

なんていうのか、昭和の人々は純粋だったというか単純だったというか
すぐに誤解が解けてまぁぁるくおさまっちゃうのよ。
姑息な人や底意地の悪い人なんかいやしない。
バブルが人々を変えたのか? なんちゃって

とにかく、どこにも悪意の無い物語。
皆が笑顔で終われるって、いい話かもしれないよ。
でも面白くないよ。

小波乱があるだけでチャンチャンって終わられても… 本を読む楽しみは何処に?
この小説をもとに映画だかドラマが作られたそうなんですけど
私はぜったい見ないと思います。

せめてカツオ君クラスのやんちゃ者やサザエさんクラスのうっかり者でも
いればよかったのだが… しっかり者で行いの良い人ばかりでした。
だから皆が幸せに暮らすことができましたとさ。
どう? 読んでみたいですか?
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『檸檬』昭和初期ブログ型小説

2011-10-14 23:01:53 | 日本の作家

梶井基次郎

教科書で『檸檬』の書き出しに感動して買ったような気がする梶井基次郎の短篇集、
小説の形はとっているものの、梶井基次郎の心情を綴った日記のような気がします。

ほとんどの小説の主人公が、著者同様病に罹っていて健康を案じる身で
文学を学ぶ学生、あるいは文筆を生業にしている男性です。

どちらかといえば活動的ではない主人公たちが、窓から外を眺めているか
あてもなく町を散歩する… という内容が多かった印象があります。

だから、あらすじ…というのとはちょっと違う気がするのですが
何篇かさらっと内容をご紹介します。

『檸檬/1924年』
気分が優れない日が続き、見窄らしくも美しいものに惹かれています。
気に入っていた果物屋の店先で檸檬を見つけひとつだけ買いました。
檸檬を握っているとその冷たさに少し気が晴れ誇らしい気さえします。
足が遠のいていた丸善に入り画集を眺めることにしました。

『城のある町にて/1924年』
峻が妹を亡くし、近所にお城跡がある姉夫婦の家で過ごした一夏の記憶。
ちょうど義兄の妹信子も帰省していました。
花火や手品を姉夫婦一家と見に出かけたりと、他愛無い日々が過ぎて行きます。
峻より一足先に、信子が学校の寄宿舎に戻る日がやってきます。

『冬の蠅/1928年』
渓の温泉宿で、日光浴の時に冬の部屋の日だまりで暖をとろうとする蠅を見るのが
日課のようになっていました。
しかし、ある日郵便局に出かけた帰りに宿へ戻りたくなくなり、数日帰らずにいたら
蠅たちは人気の無い部屋の寒さで死んでしまっていました。

起承転結がある話はほとんどなくて、気に入った風景、ふと目についた花、
散歩の途中で見かけた少女、空の色…などなどからおこった感情を書き留めています。
でも、そこは作家ですから、とても綺麗に詩的に書かれていますけどね。

数篇猫のことを書いてある短い話があり、そこにはちょっとしたユーモアが感じられます。

私は完全に間違ったブログの使い方をしていますが
本来ブログとは日記みたいに日々のことを書くものですよね?

もしもこの短篇集の作品に写真やスケッチなどが添えられていたら
ずばり “ 文学的ブログ ” と言えますでしょう。

ただ、著者が抱く感情というのが、能天気な私には合わなかったみたいです。

窓の外の花の香りで季節を感じたり、気持のいい道を見つけてご満悦になったりして
感動しているうちは良いのだが、そこからあれよあれよという間に暗くなっていくのよね

そして行きつく先は “ 死 ” です。
なんでも、いろいろなかたちで、とにかく死に結びついちゃう…
けれども、登場人物=著者が、果たして死を恐れているのか、死に憧れているのか、
読みの浅い私にはよくわかりませんでした。

梶井基次郎という方は、頽廃と暴力が同居していたような方らしく
けっこう乱暴と放蕩をされていたようです。
寡黙そうで人生に疲れたような作風はポーズなのか? 心の叫びなのか? も
いま一つわかりません。

何度か読み直してみなければ理解できないと思います。
しかし、そこまでするほどの思い入れは無い… というのが正直な感想です。
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『ろまん燈籠』謎が深まる太宰治像

2011-05-16 00:45:51 | 日本の作家

太宰 治

むかーし凝ったんだけどすっかり忘れてしまった太宰治を読み返し始めて
『ヴィヨンの妻』『グッド・バイ』『女生徒』に続く4冊目です。

私は作家像を深追いしない読者だからあまり気にはならないんですけど
太宰治ってよく分かんない人だわ…と改めて思いました。

呑気な厭世家なのかと思ったら、そこそこ愛国心溢れる人みたいにも思えるし
人嫌いかと思えばなんだか面倒見が良くて慕う人は多いみたいだし
人生の些事に頓着してないかと思いきや、心配性だし… 多くの顔を持つ人ですね。

でも、太宰治論は方々で出尽くしているのであえて私が考えるまでもないし
考えてたら単純にお話しを楽しめないので気にしない!

これは短篇集というより随筆集なんですかね?
16篇収められているのですが、第一人称で書いてあるものが多く
ほぼご自分のことを語っていらっしゃるみたいです。
『服装について』とか『小さいアルバム』などはかなりの自虐ネタです。

好きだったお話しをあげてみます。

『ろまん燈籠(1940年)』
洋画家入江新之助一家の三男二女はロマンス好きの読書家です。
五人は退屈すると連作で物語など書いたりします。
ある正月、末っ子の三男から物語を書き始めて連作を開始しました。
題材は『塔の上のラプンツェル』からの拝借です。

アニメ映画『塔の上のラプンツェル』は現在公開中みたいですが
五人が書いた物語は、だんだん五里霧中状態に陥っていって愉快です。
性格が全く違う人が連作を書くのって大変ですね。

『禁酒の心(1943年)』
配給酒の瓶に目盛りをつけて飲んだりウィスキィを薄めたり、他人に飲ませないために
居留守を使ったり…酒飲みは度し難いので禁酒をしようと思います。
戦時下になってから酒の店に行くと主人におべっかを使って無視されたり
酒を一杯多く飲むために、いらないつまみまで頼む始末。

ものすごく自嘲的な中にも哀しさが滲み出た一篇です。
「わかっちゃいるのに…」ってとこですよね。
太宰治がこのように公言しておいて禁酒したかどうかは不明です。

『佳日(1944年)』
友人に代わって北京で暮らす大隅君の結婚を世話することになってしまいました。
五年ぶりに帰って来た大隅君は、偉そうに日本で暮らす我々を呑気だと叱責します。
彼の話しから相手宅で大変な粗相をしてしまったことに気づき怒りが込み上げました。
大隅君を一人で相手宅に行かせ、恩師瀬川先生のお宅へ愚痴を言いにに行きます。

なんだかこの一篇を読んでいるだけで、太宰治へのイメージが大幅に変わるのよ。
すごいお人好しだし奥ゆかしい…恩師への尊敬も忘れず仁義にもかたい…ナイスガイです。
『人間失格』の内容と作者がリンクするエピソードが、大々的に世に出たことが
かなりマイナス(プラスなのか?)に作用している気がします。

若くして太宰治を読んでおきながら、な~んにも憂うことがなかった私…
もっと「人生とはなんぞや?」なんて考えてたら違う人生があったかもしれないのに。
ま、いいけど…

まだ何冊か太宰治を持ってるんですよ。
さらに読み続けて勝手に作家像を想像しようと思ってます。
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『猫』文豪とお猫さま

2011-03-22 23:27:56 | 日本の作家

クラフト・エヴィング商會

日本文学会・芸術界における錚々たるメンバーが、自分ちの猫を自慢している一冊です。

ものすごい偏見ですが、猫を飼ってその様子を愛おしそうに眺めるその姿を思い浮かべると
破滅型も多かったような気がする過去の作家たちの中にあって
ここに登場する方々は “ 善き家庭人 ” だったのかしら、などと思えてきます。
本当のところはわかりませんけどね。

登場する作家・芸術家および猫たちは

『崩壊』の有馬頼義の家の、勘平とお軽、主役は腹切りをしたお軽です。
洋画家・猪熊弦一郎の家の、疎開先に連れて行ったみっちゃんとタヌ子。
『黒い雨』の井伏鱒二の家の、蛇と戦うたくましい母猫と子猫。
『鞍馬天狗』の大佛次郎の家の、“ 隅の隠居 ” と呼ばれたミミ。
翻訳家・尾高京子の家の、アメリカからやって来たキティとパティ。
評論家・坂西志保の家の、下水に落ちていたポツダム。
小説家・俳人の瀧井孝作の家にいつもやってくるチータと玉。
『細雪』の谷崎潤一郎の猫論3篇。
『二十四の瞳』の壺井榮の家の、虎模様のユキと多産系のトミ。
猫嫌いの随筆家・寺田寅彦が飼い始めた三毛とたま。
詩人・柳田國男の野良猫論と猫だらけの島に関する論文。

最後に可愛い黒猫が登場する詩がついています。

名前については、たまとかシロとか三毛とか、安易なようですが
実はよ~く考えてつけられているんですよ

皆さん餌と出産については言いたいことがあるようで、よく登場したエピソードでした。
村上春樹さんが自分の猫の出産(膝に寄っかかり腹を上に向けて産む)は
変わっているとエッセイで書いていましたが、どうやら家猫は多いパターンみたいですね。
産み方はどうであれ、新しい生命がこの世に出てくる瞬間を目にしたら
とても印象深いものでしょうね。

餌については “ なんでも食う ” から “ いいものしか食べない ” までありましたが
やはり有名な方々なので “ いいもの ” の割合が多かったような気がします。

好きだったのは猫嫌いの寺田寅彦さんの話し。
妻と娘たちにせがまれて飼い始めてみたら、愛らしくなってきて
(本人曰く)人間に対して懐く事のできない純粋で温かい愛情を感ずるようになったこと。

猫を飼う事を反対されている皆さん、無理くり飼ってみるしかありませんね。

人も貧しい時に疎開先に猫を連れて行く気持や、せがまれて夜の散歩に付き合う気持は
痛いほどわかります。

中には自慢たらたらな部分も垣間見え、ちょっと鼻白むところもありました。
銀座の三愛や魚河岸でお魚を買って帰らないと怒ったり、舶来品が好きとか…
谷崎潤一郎さんに至っては、日本の猫が嫌いだから飼っている6匹が外国の猫、ってあたり。
当時としてはたいそう贅沢なことだったのでは?

ともあれ、誰が書いても猫のことだと心がほのぼのしますね。
“ 猫好きに悪人なし ” という格言を作ってしまおうかと思う一冊でした。
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『志賀直哉』大御所の貫禄

2010-05-24 23:42:20 | 日本の作家

1908~ 志賀 直哉

学生時代に国語の授業で習った作家のものはだいたい持っています。
志賀直哉はたしか『小僧の神様』だったかしら?
新潮社版を持っているのですが、ちくま日本文学の本が1冊欲しくなって買いました。

ほぼ年代順にならんでいるようで、後半にいくにつれて大御所感が漂います。
谷崎(潤一郎)君、芥川(龍之介)君、とかね…

短篇で27篇、長い年月のせいかテーマも幅広いですよ。
思い出、歴史もの、ハムレットを下敷きにしたものや中国を舞台にしたもの
ミステリーにお伽噺などなど、飽きることなく読めました。

“ 評論家は枯渇したように書いてるけど、年寄って見えない裏側が書けるようになり
作品に潤いがでてきた…云々 ” と、ご本人が作品の中でと書いてますが
私も後半の作品の方が好きですね。
すっかり落ちついちまってドキドキ感はないけれど、深みが感じられます。

そんな3篇を…

『老人/1911年』
54歳で長年連れ添った妻を亡くし、娘より年下の妻をもらいました。
その妻にも69歳の時に先立たれて、72歳の時、3年の約束で若い遊女を囲うことにします。
しかし3年たっても別れられず過ごす中で、女は他の男の子を生みます。

これ、28歳で書いてるんだけど、願望ですか?
元気なじい様の不埒な話のように思えるでしょ? ところが実はいい話し!(だと思う…)
いろいろとわきまえている人々が多い時代だったのだな…と思いましたとさ。

『自転車/1951年』
少年の頃自転車に熱中し、高価なデイトンで遠出や曲乗りをしていました。
さんざん乗り回したのでクリーヴランドという自転車を買うことにします。
結局ランブラーにしましたが、ちょっとした誤解から自転車屋に「ペテン」と言われます。

純粋な少年の悩みが垣間見える “ ちょっとイイ話 ” なんですが、それよりなにより
志賀少年が結構お金持ちで、祖母が粋な人だというのがわかります。
この祖母は『或る朝』というお話でいい味出してます。

『盲亀浮木/1963年』
“ つまらない海水浴場で拾った沢山の軽石の中に、もとは一つだったものがあった ”
“ 興味があったモラエスの夢を見た朝、モラエスの研究家がふいに訪ねて来た ”
“ 犬のクマが東京へ越して来てからいなくなり、1週間後にバスの窓から見つかった ”

上の三つのエピソードから “ 盲亀浮木 ” という寓話を導きだしています。
わたくしはかなりポジティブな寓話だと思うんだがどうでしょう?
何ごとにも教訓が潜む…のほほんと毎日を生きていてはいけないわね。

長篇を読んでいないのでなんとも言えないのですけど
この一冊に限っていえば、モラリストっぽいお話が中心です。
読んでいてギョッとさせられる、ハッとするという刺激はありません。
でも一語一語噛み締めながら読むと、ゆるゆると浸っていくことができますよ。

考えている内にさっさと前に進んでしまう映画やドラマと違って
自分のペースで進められて、立ち止まることができるのが読書の良さですから
こんな一冊もたまにはいいかしらね…と思っております。

小僧の神様・城の崎にて 新潮社


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『ノラや』これぞ猫っかわいがり

2010-05-09 21:44:50 | 日本の作家

1957年~ 内田 百﨤

百﨤先生が一緒に暮らしたノラとクルツという猫のことを延々と書いた本でして
猫と一緒に暮らして、最後まで看取ったことがない人は「なんのこっちゃ?」と
思われるかもしれません。

まずは、庭にやって来るようになって、家に居着いたノラの話し。
文中しつこく書かれていますが、ノラはイプセンの『人形の家』のノラでなく
ノラ猫のノラ、シッポが曲がった男の子です。

1年半ほどして家を出て行ったきり帰って来なくなったノラを
広告を出したり、折り込みをしたりして何年も待ちわびます。

次に、ノラを探す間に庭にやって来るようになったノラそっくりの猫。
そちらも家に居着いてしまい、クルツという名を与えられます。
なぜかというとシッポが短いからだそうです。

ノラを待ちながら次第にクルツが可愛らしくなっていく百﨤先生。
5年半の月日が流れた頃、クルツが重い病にかかりました。
毎日獣医さんに往診してもらいますが、クルツは弱っていく一方で
とうとう神に召されてしまいます。

あとがきで、文中にも度々登場する平山三郎氏が
“ あの気むずかしい先生が猫がいないくらいでおろおろして、涙を流しながら
猫の名を呼び続けるなんて…云々 ” と回想してらっしゃいますが
文中の先生を読むにつけ、そうなってしまうのもむべなるかな…と思えます。

刺身も牛乳もチーズも、自分よりいいものを食べさせて
眠っている猫を起こさないように気をつけてソロリソロリと歩いて
でも可愛いから額をくっつけて名前を呼びながらさすったりして…
何かあるにつけ「ノラは(クルは)賢い」と自慢げに綴って、もう親バカです

平山氏はじめ、まわりの方々は寂しくなった先生の晩酌相手を務めたり
折り込みを配ったり、猫探しに出かけたりと大変な毎日を送られた様子…ご苦労様でした。

うちにもボンちゃんという猫がいて、両親が王子様のように可愛がっていました。
5年ぐらい前に亡くなったんですけどその時の父と母の嘆きようは
見ているこちらがハラハラしました。

途中、ノラを待ちわびる日々を日記形式で書いた項は、ちょっと業務日誌みたいで
中だるみがありますが、猫たちの可愛らしさや「そうそう!」というしぐさは
読んでいて楽しくなります。

クルが亡くなった時、そのクルを先生が思い出す時、どちらも涙が止まりません。
私がこの本を読んだのは3回目ですけど、今回も電車の中で号泣でした。

先生はその後猫を飼うまいと決心したのですが、風の強い雨の晩など
勝手口に音がすると、子猫が震えているんじゃあるまいかとドキドキしたようです。
それで「ああ、風の音でよかった…」と胸をなでおろすんだって。
子猫だったら、きっとまた家に上げておおいに可愛がっちゃったんでしょうね。

ノラや―内田百けん集成 筑摩書房


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『ヴィヨンの妻』奥さまに興味津々

2010-04-11 01:43:12 | 日本の作家

1946~1948年 太宰 治

太宰治は作家ですから、本名の津島修治が登場して
酒と女で破滅寸前と書いてあったとしても、100%信じるものではありませんが
50%に割り引いたとしても非道い夫で父親であることに変わりはないですねぇ…

この一冊に収められている物語は、ものすごく自分を卑下していて
反省し、懺悔しているようで、実はすごく自分を弁護している気がします。

酒飲みの言い訳は、実は私もよく知ってんのよね~
言い訳のパターンって、昔も今もだいたい同じですのよ。
だのに太宰治が書くとどうして面白く、しかも正論に思えてしまうのでしょう?
文学的だから?

『親友交歓/1946年』
津軽に避難中、むかしの喧嘩友達と名乗る男が訪ねて来ます。
薮から棒に「酒を飲ませろ」と言うと、難儀して手に入れたウイスキィをガブガブ飲み
妻に酌をさせろだとか配給の毛布をくれだとか、言いたい放題です。

覚えていない友人に偉そうな顔をされるって、考えただけで忌々しいですね。
このお話の中の、東京から津軽に避難した作家(太宰?)は常識人にさえ見えます。
ただ「井伏(鱒二)さんと飲みたいから…」と1ダース買って破産する…ってどうよ?

『家庭の幸福/1947年』
ラジオを聞いていたら、民衆と役人の街頭討論が始まりました。
役人のへらへらした受け答えが気に入りません。
そこで、模範的で評判のいい役人を主役にまったく架空の話を書くことにします。

この短篇では、ある(想像上の)役人を、こきおろしている太宰治ですけど
お父さんは議員なのよね? そして孫とかも議員なのよね?
しかし “ 家庭の幸福は諸悪の本(もと)” とはシニカルな…
確かにこういう役人はいますけどね。

『ヴィヨンの妻/1947年』
ある夜、夫が行きつけの店からお金を盗んだことがわかります。
盗んだお金は他の女が返してくれましたが、貯まりに貯まったツケを払うため
その店で働くことにしました。
すると、夫は飲みに来るし、たまには一緒に帰れるし…なんだか幸せです。

これ以外にも『父』『おさん』『桜桃』にでてくる妻、
太宰治の本当の奥さまがモデルですか?

見ざる・聞かざる・言わざるのライフスタイルは立派ですけど
少しぐらい怒ればいいのに…と思ってしまいます。

何も愚痴を言わず、従順で、大人しく耐える妻、と聞いたら
男性は「うらやましい!」って言うけど、かなりのプレッシャーだと思いますよ。
「・・・」という感じで隣に座られ、靴下の穴を縫いつつ伏し目がちな目元がキラリ、
なんて、耐えられますか?

何も言わず貧しさに耐える妻に「すまない」と書いていながら
そういうのも息詰まる…ということが言いたかったような気がして
仕方がないんですけどねぇ。

奥さまへの懺悔とも、心情の吐露ともいえるこの一冊。
わたくしは作家本人より断然奥さまに興味がわいております。

ヴィヨンの妻・桜桃・他八篇  岩波書店


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『グッド・バイ』太宰治、最後の作品

2010-03-06 02:30:54 | 日本の作家

1945~1948年 太宰 治

太宰ブームの今日この頃、作品や映画の紹介で、飲酒癖や借金、女グセなど
なにかとダメ男ぶりがクローズアップされていますよね。

しかしこの一冊では、ところどころで男らしい一面も見せています。

まず、戦時中家族をともなって疎開する物語『薄明』や『たずねびと』では
やはり太宰も一家の大黒柱、という(少しは)頼りがいがあるところをのぞかせています。
もちろん、ものすごく良い夫で良い父親とは言わないけど…

それから、『苦悩の年鑑』や『十五年間』では
かなり鼻息荒く、主義を振りかざす虚無感や文壇(サロン)への決別を語っています。

女性にさりげなく男気を見せる『メリイクリスマス』もいいお話です。
もし自分がモデルなら、もてたでしょうね? やっぱり…

そんな中から、特にユーモアのきいた三篇をあげてみます。

『男女同権』
老詩人が講演で、男女同権が定められたことへの喜びを語ります。
小さな頃は実の母、奉公時代は店のおかみさんと女中
成人してからは三人の妻にめちゃくちゃにされた過去を振り返り
「もう女が弱いなんて言わせない」という決意を表明します。

男女同権をおもしろくないと考えていた男性も多かったと思いますけど
この老詩人みたいに考えれば、少しは気が楽になったかもしれませんね。
一種のポジティブシンキングと言えましょう。

『朝』
ある晩酔っぱらって、昼間仕事部屋に借りている若い娘さんの部屋に泊めてもらいます。
しかし、停電で部屋は真っ暗…このままでは何かしでかしてしまうと思い
蝋燭をつけてもらいましたが、短くて消えそうになってしまいました。

“ 蝋燭がつきないうちに眠るか酔いがさめないと、キクちゃんがあぶない ” って
自分で思うのが笑える…笑えるけど
誘惑に弱い人が誘惑に負けまいとする努力は、相当大変なものでしょうね。

『グッド・バイ』
そろそろ妻と娘を東京に呼び寄せて幸せな家庭をつくろうと思い立ち
つきあっている10人の女性と手を切ることにしました。
上手く別れられるように、ものすごい美人を連れて女性たちに会いに行くことにします。
でもその美人、普段はとてもだらしなく、大食いで、金に意地汚い女性でした。

10人て…マメな人もあったもんですね。
大胆不敵で金も自信もそこそこある、今までに無い男性主人公象が新鮮でした。
この物語は長篇になる予定だったそうです。
書きかけの作品を残して自ら命を絶つというのは、無念じゃなかったのかしら?

16篇の物語が収められた短篇集です。
随所に「おれはだめなやつ」「酒飲みでしようがない」「生きていたくない」という
ネガティブな一文が登場しますけど、自虐ネタだと思えなくもありませんでした。
“ ナイーブな俺 ” のポーズなんじゃないかと…

文章からは、一緒にいたら愉快な時が過ごせそうな印象を受けるのですけれど…

グッド・バイ  新潮社


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