事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「マンチュリアン・リポート」 浅田次郎著 講談社

2011-11-19 | 本と雑誌

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マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-09-17

満州事変の真相を知るために、密偵として満州に送り込まれたのは「天皇は人間である」として治安維持法改悪を批判した軍人であり、送りこんだのは昭和天皇自身だった……こんなトンデモ設定を成立させているのは

「ふいに、前を歩んでいた二人の女官が屈みこんだかと思うと、滑るように膝行した。膝を揃えたまま、両手で櫂を操るように漕ぎ進むのである。女官たちの慣れた動作についてゆくのは難しかった。」

というような描写の力にある。「蒼穹の昴」「中原の虹」などにつづくドラゴンボールサガの最新作。めざしたのは物語るダイナミズムよりも司馬遼太郎的な思想信条の発露にあったようで

「(日本が)植民地を欲しているのではなく、すべてを欲しがっているのだ」

あるいは

「キリストは目に見えないが、現人神は具体があるので、責任をなすりつけることができるのです」

という浅田なりの日中戦争観が鋭い。張作霖、西太后、そして春雲の“祭りの後”が哀しく、そして清々しい。挿入される英国製の機関車のモノローグには、みんな一斉に「トーマスかよっ!」とつっこんだはず。

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明細書を見ろ!2011年年末調整号~年末調整マニュアル2011

2011-11-17 | 明細書を見ろ!(事務だより)

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YouTube: Kerris Dorsey performs "The Show" by Lenka acoustic song from Moneyball

10月号「監査終了」はこちら

2010年バージョンはこちら

さて、今年も年末調整の季節。さまざまな変更があった近年ですが、さすがに今回は去年の記入方法とあまり変更はありません。来年の配偶者控除もどうやら変化せず。まあ、その先にあるのは消費税アップでしょうが。

書き方がわからないときは事務室に来い!(○島の場合は電話よこせ!)であることも去年とかわりません。よろしく。

例によってみなさんにやってもらうのは

◆去年記入した平成23年分扶養控除申告書の内容をチェックする。

◆平成23年分保険料控除申告書を記入する(証明書を忘れずに)。

◆住宅ローンがある人は、住宅借入金控除申告書を記入する。

◆平成24年分扶養控除申告書を記入する。

……です。マニュアルなのでもっと具体的に言うと

誕生日が平成9年1月1日までの人は上、1月2日以降の扶養親族は下に書く。

これにつきます。

本日の一曲は「マネーボール」より“THE SHOW”

平日夜の最終回上映でウチの某職員といっしょになるくらい「ステキな金縛り」はヒットしていますが、このブラピの作品もお忘れなく。自分が愛するほどには野球に愛されなかった選手が、GMとして成功していく……どっかのチームの某会長も見ろよな。

2011年12月ボーナス号~「全国最低アゲイン。」につづく

2012年バージョンはこちら

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芸談好き~「上方演芸大全」大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)編

2011-11-16 | 芸能ネタ

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上方演芸大全 上方演芸大全
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2008-11

まことにお堅いお役所(しかし例によって橋下府政によって予算削減の憂き目にあっている)が上梓した関西芸能の歴史。こんな本が読みたかったのである。

江戸の演芸については落語中心に多く語られているものの、現在隆盛を誇っている、いわゆる関西弁の演芸について、わたしはあまりにも知らなすぎた。漫才、落語、喜劇、浪曲、講談など、それぞれのジャンルの盛衰が一望できる。

わたしが不思議なのは、戦前から戦後にかけて圧倒的に庶民に人気のあった浪曲や講談が、いまやまったく見向きもされなくなっているあたり。ジャンルごと消えようとしているのだ。

確かに戦中に軍部の意向にそった戦争ものばかりやった影響はあるとはいえ、ここまで一気に……逆に、落語という考えてみれば窮屈なジャンルが、いまでも演芸の中心にいる不思議。

米朝がはからずも語ったように、吉本が落語を切り捨てようとしていたころ、春団治や米朝がこつこつと積みあげた苦労がなければ、いまや関西の落語は浪曲と同じことになっていたかもしれない。

つまり芸能とはそれほどに危ういものなのであり、同時にスターを必要としていることがわかる。そして、劇場の意向がどれだけ大きいかも、この冷静な書で理解できる。お勉強になりました。

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「活字と自活」 荻原魚雷著 本の雑誌社

2011-11-15 | 本と雑誌

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活字と自活
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2010-07-13

どうしてもまっとうな、堅気な、退屈な社会人として生きていくことができず、貧乏を覚悟でフリーライターの道に進む荻原。彼ほどそんな暮らしに意識的な人も少ないはず。

凡百の書き手ならどこかに“それでも生き残っている”ことへの誇りがありそうだけれど、彼はそんな気振りも見せず、むしろ積極的に否定している。

そんな彼に、高円寺という街はまことにやさしいようだ。人の親として、息子に高円寺に引っ越すことだけはさせまいと誓いました(笑)

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レジ袋

2011-11-14 | 日記・エッセイ・コラム

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YouTube: Kate Bush - Running Up That Hill (official 12'inch Mix)

それは昨日の夕方のこと。

いつものようにおつまみを買おうと地元のスーパーへ。エコバッグも持たずに。レジ袋ってゴミをまとめるのに便利だし。

1.8リットル入り紙パックという、社会人としていかがなものかという芋焼酎と、娘にたのまれたじゃがりこをカゴに入れ、レジに並ぶ。そのカゴには例の「レジ袋希望」って感じのカードも。

うしろから

「あの……」

とおばさんが声をかけてくる。

「使います?」

と、キチンと折りたたまれたレジ袋を差し出してくれる。

「あ、どもすみません」

いやー、親切な人もいるもんだなあ。カードを元に戻してレジ通過。

ん?でもガラスに映った自分の姿に考えこむ。朝から雨の中をお寺さんの雪囲いをやってたせいで髪はバラバラ。着てたのはパーカーに黒のジーンズ……おれ、ひょっとして“かわいそうな人”だと思われてたんじゃ

本日の一曲はEMIの版権をSONYが買うかも、というびっくりなニュースを記念してケイト・ブッシュ「Running Up That Hill」。にしても、彼女とピーター・ガブリエルって、顔もそっくりよね。

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「ステキな金縛り」に異議あり

2011-11-13 | 邦画

Kanashibari1 ・打ち首になったことに納得していない、麻婆豆腐好きの落ち武者(西田敏行)

・日ごろ冷静な先輩ぶっているくせにスイーツに目がなく、夜になるとタップダンスの練習に余念がない弁護士(阿部寛)

・超常現象を完全否定しているために、幽霊が見えることに自分を納得させられないでいる検事(中井貴一)

・誰よりもうさんくさいルックスでありながら、先祖の名誉回復のために一肌脱ぐ歴史オタク(浅野忠信)

・落ち武者が出ることを売りにするような危ない旅館を経営する、落ち武者よりもよほど怖い夫婦(戸田恵子、浅野和之

・むかしのハリウッドだってここまではやらないであろうメイクで、わかりやすい悪党を演じる夫婦と……えーとネタバレになるので自粛カップル(山本耕史、竹内結子)

・この映画の基調音になっているフランク・キャプラ作品(「素晴らしき哉、人生」「スミス都へ行く」)をこよなく愛する死神(小日向文世)

他にも、裁判長(小林隆)のとなりにおすましして座っているだけでおかしい「運命じゃない人」の中村靖日とか、なんであんたがここにいるんだよ大泉洋とか、魅力的なキャラ満載。

しかし、だ。

オープニングは、正しい少年マンガの始まり方そのもの。裁判に遅刻しそうになった女性弁護士が、さまざまなドジをふみながら法廷にたどり着く。ここで、わたしはつまずいてしまったの。ひょっとして主演女優の選択をミスってないかと。マンガらしく、

「てへ

と照れながら地球を滅亡させてしまうようなキャラを愛らしく演じるには、深津絵里はあまりにも熱演型。以降もその先入観からか、計算が見え見えの演技がしんどくて。

思えば「博士の愛した数式」「悪人」でも、彼女は懸命に役を“演じていた”。でもね、ハリウッド調のウェルメイドなコメディに仕上げるには、三谷幸喜はもっと余裕のある、天然なスター女優を選ぶべきだったと思う。

たとえば、竹内結子と役を交換していたらどんな作品になるだろうって思いませんでした?明らかにマリリン・モンローを意識していた深田恭子だと……すでに弁護士の映画じゃないかあ。

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「マネーボール」 Moneyball (2011 SONY)

2011-11-12 | スポーツ

Moneyballimg03 原作の特集はこちら

野球映画は当たらないというジンクスがある。日本の話ではなく、ベースボールの国、アメリカにおいても。

もちろん例外はあって、

「がんばれ!ベアーズ」

「さよならゲーム」

「ナチュラル」

「フィールド・オブ・ドリームス」

など、ヒット作があることはある。作品の評価ほどにヒットしたかは別として。

ただ、これらの作品には、どこかもの哀しいテイストが。アメリカ人の心の故郷のようなスポーツだからなのかな。

ベアーズは優勝できないし、ケヴィン・コスナーとスーザン・サランドンの恋愛は苦い。同じケヴィン・コスナーの「フィールド・オブ・ドリームス」を山形の劇場で見終わったら、トイレで学生らしい二人が思いきり号泣していた。ま、バート・ランカスターに

「ヘイ、ルーキー!」

とシューレスジョーが声をかけるあのラストでは、わたしも泣いてしまいましたけれど。

「マネーボール」に肌合いが近いのはロバート・レッドフォードの「ナチュラル」だろうか。遅咲きの天才打者の悲劇を描いたあの映画も素晴らしかったが、ちかごろますますレッドフォードに似てきたブラッド・ピットが製作も兼ねた「マネーボール」も、あの傑作に負けていない。

脚本がとにかく巧妙。感情を抑制できないものだから肝心のゲームを見ないGM、ビリー・ビーンを、(むかし自分もやられたように)クビを宣告することも多いので選手とあまり関わらない(そして自分が観戦すると負けるジンクスに悩む)男にアレンジしてある。

彼のチーム、オークランド・アスレチックスの負けが続くので、別れた妻(ロビン・ライト)のもとにいる娘が心配し、「絶対に他の人に聴かせないで」というメッセージとともに送られてきたCDには、彼女が歌うThe Showという曲が入っていて

♪Show(野球)を楽しみなさい♪

というリフレインが……まさかあの原作からこんなに泣けるシーンを用意できるとは。

選手としては大成できず、だから自分が愛するほどには野球に愛されなかった男が、マネーボール理論でチームを強くしていくサクセス・ストーリー。しかしそれだけではない感動がしこんであります。思わずネットでThe Showを購入してしまいました。

ビリーのShowはなおも続いている。その点、日本の巨人のGMはたいへんだ。あのチームは野球を“プレイ(遊ぶ)”することが許されないからなあ。

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「亀渕昭信のロックンロール伝」 亀渕昭信著 ヤマハミュージックメディア

2011-11-11 | 音楽

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亀渕昭信のロックンロール伝~ビートルズ以前、16歳の僕はドーナッツ盤に恋をした
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2011-07-31

ビートルズ以前の音楽、についてわたしの世代はよくわからないのが本音。革命的なできごとだったと語られるビートルズは、1960年生まれのわたしにとっては、最初から存在していたのだから。つまりわたしたちは革命後の音楽しか知らないのだ。

ニッポン放送の元DJ(断じてパーソナリティなどという意味不明なものではない)にして、のちに代表取締役となった亀渕の、ドーナツ盤を中心とした“通史”は、だから最高の教科書だった。

黒と白の融合地点にエルヴィスがいて、ドグマがたまったところに現れたのがイギリスの四人組だったわけだ。なるほどー。

例のホリエモン事件のとき、DJ時代の亀渕のリスナーが「がんばれ!」と応援のはがきをニッポン放送にたくさん送ってきたエピソードなど、泣かせる。にしてもすごくないですか、カメ&アンコーの、あのカメが社長になっちゃったんですよ。

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アンジェラ・アキは美人か。

2011-11-10 | 日記・エッセイ・コラム

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YouTube: 手紙 ~拝啓 十五の君へ~2

昨夜、酒田の某スナックで飲んでいたときだった。わたしが

「アンジェラ・アキぐらいの美人だと……」

ともらしたら店内騒然。

「え?違うのか。アンジェラ・アキって美人じゃないのか?」

「これだからなー、あんたの女の趣味は変わってるんだ」

えええええっ!?

オレも50を過ぎてこんなことを言われるとは思いませんでした。ママさんまでが

「まさかねえ。あの人が美人?」

店内の全員が呆れている。おいおい嘘だろう?アンジェラ・アキは美人じゃん!

いや、そりゃひょっとしてカーラ・ボノフや久保田早紀のように“ある方向からだけ見れば美人”という指摘ならまだしも、アンジェラ・アキに関しては文句なく美人じゃないか。あ、偶然ながら三人ともソニーのアーティストですけど。

「ためしに帰りの代行の運ちゃんに訊いてみれば?」

それもそうだ。

「あのぉ、アンジェラ・アキって……」

「知らないなあ」

「はあ」

「オレはおニャン子世代なんで」

「とすると」

「やっぱ女は新田恵利っすよっ!同い年なんすよオレ!」

「……」

今朝、ウチの職員が一刀両断にこの問題を解決してくれました。

「あのね、アンジェラ・アキは頬がこけててアゴがとんがってるでしょう?」

「うん」

「そういう人は評価が真っ二つに分かれるのよ。好きな人は好きだし、嫌いな人は大嫌いなの」

そんな法則があったのかっ!

曲は「手紙」 
壮絶ないじめにあった人にしか書けない曲ってある。

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「張込み」(1958 松竹)

2011-11-09 | 港座

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張込み (新潮文庫―傑作短篇集) 張込み (新潮文庫―傑作短篇集)
価格:¥ 660(税込)
発売日:1965-12
先日もテレビ東京でドラマ化されたようだけれど、今回は1958年の映画版のお話。

松本清張の原作はわずか二十数ページにすぎない短篇(新潮文庫)。むかしつき合っていた女のもとへ、逃亡犯が訪れるのではないかと刑事が張り込む、それだけの話なのだ。

でも何度も何度も映画化されているのには理由がある。吝嗇な夫の後妻として、日々を憂鬱にすごす人妻が、昔の恋人、石井(田村高広)に会えたその一瞬だけ輝くという横川さだ子の設定は、女優なら誰だって演じてみたいはず。そして、シンプルなストーリーからどうドラマを構築するかは脚本家の腕の見せどころ。課題曲みたいなものだろうか。

松竹は、この映画化に脚本:橋本忍、監督:野村芳太郎というゴールデンコンビを用意した。というより、清張映画の名コンビはこの映画からスタートし、のちの「砂の器」や「影の車」につながったのである。

さて、原作をこのコンビはどう変えたかというと、

1.張り込む刑事を柚木(大木実)ひとりから、下岡(宮口精二)とのふたりにした。

2.原作では一瞬にしてさだ子の住む佐賀市(原作ではS市と表記)に到着するが、映画では過酷な暑さのなかを進む刑事ふたりの描写が延々とつづく(すばらしいシーンなのでこのオープニングだけでもぜひ)。

3.原作では石井が殺人の実行犯となっているが、映画では従犯のあつかい。

……刑事の複数化はおみごとだと思う。ただでさえ起伏のないストーリーなので、柚木の独白だけですすめるのはしんどい。人生の先輩である下岡との会話から、柚木の私生活の悩みも浮かび上がる。その後のドラマ化で、ほぼこの路線が踏襲されているのは無理のない話だと思う。

刑事の安月給では、と大所帯をささえる恋人との結婚をためらい、銭湯に婿入りする話を断れないでいる男が、最後の最後に感情を激発させたさだ子に見せる温情。いいですなぁ。

そして、そんなさだ子の憂鬱と悦楽をきっちり演じてみせた高峰秀子がすごい。やはり、天才。この課題曲を、後進の女優が彼女以上に演じるのはしんどいですわ。

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