2018年 私が観た展覧会 ベスト10

あっという間に一年を終えようとしています。年末恒例の、独断と偏見による私的ベスト企画です。私が今年観た展覧会のベスト10をあげてみました。

2018年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」 横浜美術館



西洋の芸術にとって普遍的なテーマでもあるヌード表現を、イギリスのテートのコレクションから多角的に検証する展覧会でした。絵画や彫刻、写真などの多数のメディアのみならず、現代美術からジェンダーや政治にまで踏み込んだキュレーションが面白く、ともかくロダンを超えた付近から、夢中で見入っていたことを覚えています。これほどスリリングでかつ興奮した展覧会もそうないかもしれません。

2.「ムンク展―共鳴する魂の叫び」 東京都美術館



ムンクの輝かしいまでの色彩美に強く魅了されました。何かと「叫び」のイメージが強く、メランコリックに捉えられがちでもあるムンクですが、「夏の夜、人魚」や「太陽」、それに「生命のダンス」などは、何やら生命、自然賛歌とも呼べるような世界が開けているようで、熱気にのまれるような活力すら感じました。この展覧会で初めてムンクのことを知ったような気がしました。

3.「ピエール・ボナール展」 国立新美術館



大好きなボナールの待ちに待った大回顧展でした。二度の戦争を経験しながらも、色彩溢れる絵画は、どこか多幸感に満ちていて、ともかく心を掴んでなりません。また出展作の多くを占めた、オルセーの質の高いコレクションにも目を引かれました。

4.「芳年-激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」 練馬区立美術館



ようやく芳年の大規模な回顧展を見ることが出来ました。いずれも世界屈指の芳年コレクションを誇る西井正氣氏の作品で、まとめて公開されたのは、15年ぶりのことでした。代表的な無惨絵はもとより、新聞挿絵や美人画にも優品が少なくなく、芳年がマルチに活動していたことが見てとれました。大好きな「月百姿」も揃いで楽しむことが出来ました。

5.「ルドンー秘密の花園」 三菱一号館美術館



ドムシー男爵が城館を飾るためにルドンに注文した一連の装飾画が、初めて「グラン・ブーケ」との邂逅を果たしました。植物をモチーフとした連作は、淡い色彩を伴った、装飾性の高い作品ばかりで、ルドンが空間を意識して制作していたこともよく分かりました。「グラン・ブーケ」のある一号館美術館だからこそ実現し得た展覧会でした。

6.「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館



2006年に一括して国宝に指定された「琉球国王尚家関係資料」を含む、琉球に関した文化財が一堂に公開される貴重な機会でした。染色、工芸のみならず、あまり紹介されて来なかった琉球絵画にも魅惑的な作品が少なくなく、琉球に花開いた芸術に目を奪われることしきりでした。しかしながら失われた美術品があまりにも多いことを知ると、改めて沖縄戦で被った甚大な被害が痛ましく思えてなりませんでした。

7.「ゴードン・マッタ=クラーク展」 東京国立近代美術館



1970年代にニューヨークで活動したゴードン・マッタ=クラークの、アジア初の大規模な回顧展でした。常に街へ出ては、切断や破壊などのパフォーマンスを繰り返したクラークは、時に滑稽ながら、社会に立ち向かうかのようにチャレンジングで、不思議な共感を覚えました。中でも木っ端微塵に車がスクラップされる「フレッシュキル」が妙に面白く、思わず手に汗を握って見入りました。「プレイグラウンド」をコンセプトとした会場構成も効果的でした。

8.「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」 町田市立国際版画美術館



全く見知らぬ版画家ながらも、気がつけば大きく惹かれるものを感じた展覧会でした。世界を旅しては風景を描き続けたシュマイサーの作品は、どこか抽象性を帯びつつ、幻視的でもあり、その変化する作風を追っていくと、シュマイサーと一緒に各地を旅しているかのようでした。

9.「小村雪岱ー「雪岱調」のできるまで」 川越市立美術館



かつて「小村雪岱とその時代展」(2010年。埼玉県立近代美術館。)で出会った雪岱の久しぶりの回顧展でした。主に挿絵の仕事に注目し、雪岱の画風を確立していくプロセスを見る内容で、出展数も資料を含めて190点と不足はありませんでした。近年、発見された「おせん」の挿絵原画も展示されるなど、直近の研究成果も交えていて、雪岱の魅力を改めて再確認することが出来ました。

10.「縄文―1万年の美の鼓動」 東京国立博物館・平成館



縄文時代の全6件の国宝をはじめとした、200件もの縄文関連の文物が並ぶ光景は、まさに圧巻の一言でした。土器の用途にも目を向けつつ、草創期、早期、前期、中期、後期、晩期と時代で変遷する造形の「美」を追っていて、縄文の多面的な世界を知ることが出来ました。ラストの岡本太郎へと繋げる展開も、目線が変わって面白かったのではないかと思います。*なお本展の感想はWebメディアの「楽活」にまとめました。

次点.「内藤礼―明るい地上には あなたの姿が見える」 水戸芸術館

またベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)

「吉村芳生 超絶技巧を超えて」 東京ステーションギャラリー
「フィリップス・コレクション展」 三菱一号館美術館
「エミール・ガレ 自然の蒐集」 ポーラ美術館
「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険/PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」 泉屋博古館分館
「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」 東京オペラシティアートギャラリー
「石井林響展-千葉に出づる風雲児」 千葉市美術館
「さわひらき 潜像の語り手」 KAAT神奈川芸術劇場
「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」 世田谷美術館
「大千住 美の系譜―酒井抱一から岡倉天心まで」 足立区立郷土博物館
「村上友晴展―ひかり、降りそそぐ」 目黒区美術館
「中国近代絵画の巨匠 斉白石」 東京国立博物館・東洋館
「生誕110年 東山魁夷展」 国立新美術館
「駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙」 横浜美術館
「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」 東京国立博物館・平成館
「横山華山」 東京ステーションギャラリー
「原安三郎コレクション 小原古邨展」 茅ヶ崎市美術館
「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」 原美術館
「狩野芳崖と四天王」 泉屋博古館分館
「フェルメール展」 上野の森美術館
「1968年 激動の時代の芸術」 千葉市美術館
「世界を変えた書物展」 上野の森美術館
「ミラクル エッシャー展」 上野の森美術館
「没後50年 河井寬次郎展」 パナソニック汐留ミュージアム
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館
「木版画の神様 平塚運一展」 千葉市美術館
「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」 東京都美術館
「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」 世田谷文学館
「モネ それからの100年」 横浜美術館
「ミケランジェロと理想の身体」 国立西洋美術館
「線の造形、線の空間」 菊池寛実記念智美術館
「岡本神草の時代展」 千葉市美術館
「長谷川利行展 七色の東京」 府中市美術館
「特別展 琳派 俵屋宗達から田中一光へ」 山種美術館
「人間・高山辰雄展―森羅万象への道」 世田谷美術館
「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」 森美術館
「大名茶人・松平不昧」 三井記念美術館
「名作誕生ーつながる日本美術」 東京国立博物館
「つなぐ、神奈川県博―Collection to Connection」 神奈川県立歴史博物館
「五木田智央 PEEKABOO」 東京オペラシティアートギャラリー
「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」 東京都美術館
「百花繚乱列島-江戸諸国絵師めぐり」 千葉市美術館
「東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村」 板橋区立美術館
「ビュールレ・コレクション」 国立新美術館
「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」 21_21 DESIGN SIGHT
「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」 国立西洋美術館
「寛永の雅」 サントリー美術館
「会田誠『GROUND NO PLAN』展」 青山クリスタルビル
「いのちの交歓」 國學院大學博物館
「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」 東京都美術館
「仁和寺と御室派のみほとけ」 東京国立博物館
「小沢剛 不完全-パラレルな美術史」 千葉市美術館
「南方熊楠ー100年早かった智の人」 国立科学博物館
「石内都 肌理と写真」 横浜美術館
「毛利悠子 グレイ スカイズ」 藤沢市アートスペース

いつものごとく、絞りきれずに、多くの展覧会をあげてしまいましたが、今年は、これまで私の知らなかった芸術家の回顧展が特に印象に残りました。

例えば府中市美術館の「長谷川利行展 七色の東京」では、長谷川の壮絶な画業を知るとともに、走馬灯のように巡る風景画などに魅せられました。また「石井林響展-千葉に出づる風雲児」(千葉市美術館)でも、歴史画、風景画、文人画と作風を変えて制作を続けた、千葉の絵師、林響の全体像を知る良い機会となりました。

「横山華山」(東京ステーションギャラリー)や「原安三郎コレクション 小原古邨展」(茅ヶ崎市美術館)、それに「木版画の神様 平塚運一展」(千葉市美術館)についても、いずれも殆ど初めて見知り、惹かれた絵師と呼んでも差し支えありません。中でも小原古邨展は、口コミで話題を集めたのか、会期後半には大勢の人が詰めかけ、大変な盛況となりました。そして小原古邨は、来年にも太田記念美術館で回顧展(2月1日~3月24日)が予定されています。茅ヶ崎とは出品内容が異なるだけに、また大いに楽しめそうです。

東京では33年ぶりの大規模な展覧会となった「線の造形、線の空間」(菊池寛実記念智美術館)も、私にとって新たな竹工芸なる芸術との出会いとなりました。そこで取り上げられた飯塚小玕齋は、来年2月より太田市美術館で「生誕100年 飯塚小玕齋展―絵画から竹工芸の道へ」(2月2日~4月7日)と題した展覧会もはじまります。あわせて見に行くつもりです。

日本美術では東京国立博物館の仏像関連の展覧会が充実していました。「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」では、快慶のリアリティーのある「十大弟子立像」に驚かされ、「仁和寺と御室派のみほとけ」では、葛井寺「千手観音菩薩坐像」の佇まいに惹かれるとともに、観音堂の33体の再現展示に圧倒されました。

西洋美術にも充実した展覧会が目立ちました。そのうち、ともに個人のコレクションによって形成された「フィリップス・コレクション展」(三菱一号館美術館)と「ビュールレ・コレクション」(国立新美術館)では、想像を超えるほどに魅惑的作品ばかりで感心させられました。また「フィリップス・コレクション展」では、作品の成立年代や画家別ではなく、コレクターのダンカン・フィリップスが収集した年代の順に並べた構成も良かったと思います。

現代美術では、ベスト10の次点にあげた「内藤礼―明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館)をはじめ、「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」(原美術館)も強く印象に残りました。ともに美術館の空間そのものを作品に取り込んでいて、見るというよりも、場所を体感、ないし共有する喜びのような感情が湧き上がる展覧会でした。また過去から現在の作品を、あたかも1つの物語に紡ぐかのように展開していた「さわひらき 潜像の語り手」(KAAT神奈川芸術劇場)と、都市の抱える諸問題を抉りつつも、いつもながらに刺激のある展示を繰り広げていた「会田誠『GROUND NO PLAN』展」(青山クリスタルビル)も面白く見られました。

改修を終え、再開館した神奈川県立歴史博物館の「つなぐ、神奈川県博―Collection to Connection」も大変に興味深い展示でした。「つなぐ」をテーマに、神奈川県博の歴史を踏まえながら、コレクションを多面的に見せる構成が優れていて、学芸員の方のメッセージも強く伝わってきました。コレクションをどう見せるのかについて、1つのあり方を示した展覧会ではなかったと思います。

今年は特に後半、色々と手が回らずに、ブログの更新が滞ってしまいました。展覧会を見た回数は、例年とほぼ同じだったものの、感想をアウトプットせずに、そのままにしてしまうことも少なからずありました。また遠征も殆ど出来ませんでした。

皆さんは今年一年、どのような美術や展覧会との出会いがありましたでしょうか。このエントリをもちまして、年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合いくださりどうもありがとうございました。それではどうぞ良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)
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「ヘスス・ラファエル・ソト PENETRABLE BBL BLEU」 エスパス ルイ・ヴィトン東京

エスパス ルイ・ヴィトン東京
「ヘスス・ラファエル・ソト PENETRABLE BBL BLEU」
2018/12/7〜2019/5/12



エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の「ヘスス・ラファエル・ソト PENETRABLE BBL BLEU」を見てきました。

1923年にベネズエラのシウダ・ボリバルで生まれたヘスス・ラファエル・ソト(1923〜2005)は、戦後フランスへ渡り、アバンギャルドモダニズムに傾倒しては、抽象芸術の一員として活動しました。



一面の青い立方体が姿を現しました。その名は「PENETRABLE BBL BLEU」で、天井の金属フレームより、青色のポリ塩化ビニルの管を吊り下げた作品でした。実にシンプルでかつ幾何学的でありながらも、どこか優美でもあり、まるで緩やかに落ちる水の流れのようにも見えなくはありません。



1960年代よりキネティック・アートを手がけたソトは、「PENETRABLE」、つまり「浸透可能なるもの」と呼ばれる作品において、没入型のインスタレーションとして制作しました。実際に会場でも、青い管へ自由に立ち入ることが出来ました。



中へ進むと、左右より管が身体にまとわり付く、言い換えれば浸食してくるかのようで、ひたすらに掻き分けては、前へ進むしか出来ませんでした。ともかくまばゆいばかりの青に包まれた空間は、思いがけないほどに美しく、浮遊感があり、何やら空にでも投げ出されたかのような錯覚に陥るかのようでした。



ほかの鑑賞者が立ち入っては変化する景色も見どころで、しばし出入りを繰り返しては、この青いミニマムなインスタレーションの生み出す視覚的効果に見入りました。



ソトは1967年、初めて吊り下げ型のインスタレーションを発表し、以降、「PENETRABLE」として展開させました。それはナイロンやアクリル樹脂、鋼や工業的塗料などを素材とし、直線的で動的な構造の作品で、キャリアを終える2000年まで進化させ続けました。なお今回展示された作品は、1999年にブリュッセルの銀行で開催された、ソトの回顧展のために制作されたものでした。



昼間の晴天時に出かけたためか、殊更に青が映えていましたが、日没後の暗くなった空間で見ると、また印象が変わるかもしれません。時間を変えて鑑賞するのも楽しそうです。



ロングランの展覧会です。2019年5月12日まで開催されています。

「ヘスス・ラファエル・ソト PENETRABLE BBL BLEU」 エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:2018年12月7日(金)〜2019年5月12日(日)
休廊:不定休
時間:12:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩約3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩約10分。
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年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2018/2019

いよいよ年の瀬も間近になってきました。一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)における、主な美術館と博物館の休館情報をまとめてみました。

【最新】2019/2020年版はこちら→年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2019/2020



【上野】

・上野の森美術館 無休 
 「フェルメール展」(~2/3)
 http://www.ueno-mori.org

・国立科学博物館 12/28~1/1休
 「日本を変えた千の技術博」(~3/3)
 http://www.kahaku.go.jp

・国立西洋美術館 12/28~1/1休
 「ルーベンス展」(~1/20)
 http://www.nmwa.go.jp

・東京藝術大学大学美術館 ~1/7休
 「本郷寛展/木島隆康展/美術教育の森/北川原温展/トム・ヘネガン展」(1/8~)
 https://www.geidai.ac.jp/museum/

・東京国立博物館 12/26~1/1休
 「博物館に初もうで」(1/2~)
 http://www.tnm.jp

・東京都美術館 12/31~1/1休
 「ムンク展」(~1/20)
 http://www.tobikan.jp

・弥生美術館・竹久夢二美術館 12/25~1/2休
 「バロン吉元☆元年/竹久夢二美人画展」(1/3~)
 http://www.yayoi-yumeji-museum.jp



【丸の内・日本橋・新橋】

・出光美術館 ~1/11休
 「染付─世界に花咲く青のうつわ」(1/12~)
 http://idemitsu-museum.or.jp

・東京国立近代美術館 12/28~1/1休
 「MOMATコレクション」(~1/20)
 http://www.momat.go.jp

・東京ステーションギャラリー 12/29~1/1休
 「吉村芳生 超絶技巧を超えて」(~1/20)
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

・パナソニック汐留ミュージアム ~1/11休
 「子どものための建築と空間展」(1/12~)
 https://panasonic.co.jp/es/museum/

・三井記念美術館 12/26~1/3休
 「国宝 雪松図と動物アート」(~1/31)
 http://www.mitsui-museum.jp

・三菱一号館美術館 12/31~1/1休
 「フィリップス・コレクション展」(~2/11)
 http://mimt.jp

・ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 12/25〜1/8休
 「冬の浜口陽三展 優雅なオブジェ」(〜1/27)
 https://www.yamasa.com/musee/

・ブリヂストン美術館(アーティゾン美術館) 美術館建替工事のため休館中
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp



【表参道・青山】

・太田記念美術館 ~1/4休
 「かわいい浮世絵 おかしな浮世絵」(1/5~)
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp

・岡本太郎記念館 12/28~1/4休
 「瞬間瞬間に生きるー岡本太郎とジャズ」 (~2/24)
 http://www.taro-okamoto.or.jp

・根津美術館 ~1/9休
 「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」(1/10~)
 http://www.nezu-muse.or.jp

・ワタリウム美術館 12/31~1/3休
 「浅野忠信 3634展」(〜3/31)
 http://www.watarium.co.jp



【新宿・渋谷】

・NTTインターコミュニケーション・センター  12/28~1/4休
 「イン・ア・ゲームスケープ ヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」(~3/10)
 http://www.ntticc.or.jp/ja/

・國學院大學博物館 12/26~1/6休
 「列島の祈り―祈年祭・新嘗祭・大嘗祭」(~1/14)
 http://museum.kokugakuin.ac.jp

・渋谷区立松濤美術館 12/29~1/3休
 「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」(~1/31)
 http://www.shoto-museum.jp

・東京オペラシティ アートギャラリー ~1/11休
 「石川直樹 この星の光の地図を写す」(1/12~)
 https://www.operacity.jp/ag/

・東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 ~1/11休
 「絵画のゆくえ2019 FACE受賞作家展」(1/12~)
 http://www.sjnk-museum.org

・文化学園服飾博物館 12/29~1/6休
 「華やぐ着物-大正、昭和の文様表現」(~2/16)
 http://museum.bunka.ac.jp

・Bunkamura ザ・ミュージアム 1/1休
 「ロマンティック・ロシア」(〜1/27)
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/



【六本木・虎ノ門】

・菊池寛実記念 智美術館 12/28〜1/1休
 「川瀬忍 作陶50年の間展」(~3/24)
 http://www.musee-tomo.or.jp

・国立新美術館 ~1/8休
 「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」(1/18~)
 http://www.nact.jp

・サントリー美術館 12/30~1/1休
 「扇の国、日本」(~1/20)
 https://www.suntory.co.jp/sma/

・21_21 DESIGN SIGHT 12/26~1/3休
 「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」(~2/24)
 http://www.2121designsight.jp

・森アーツセンターギャラリー 無休
 「カードキャプターさくら展」(~1/3)
 https://macg.roppongihills.com/jp/

・森美術館 無休
 「カタストロフと美術のちから展」(~1/20)
 https://www.mori.art.museum/jp/

・泉屋博古館分館 施設メンテナンスのため休館
 https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/



【恵比寿・白金・目黒・品川・台場】

・東京都写真美術館 12/29~1/1休
 「建築×写真 ここのみに在る光/日本の新進作家 vol.15/マイケル・ケンナ写真展」(~1/27)
 http://topmuseum.jp

・日本科学未来館 12/28~1/1休
 「常設展」(1/2〜)、「工事中!~立ち入り禁止!?重機の現場~」(2/8〜)
 http://www.miraikan.jst.go.jp

・山種美術館 12/29~1/2休
 「皇室ゆかりの美術ー宮殿を彩った日本画家」(〜1/20)
 http://www.yamatane-museum.jp

・東京都庭園美術館 12/28~1/4休
 「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」(~1/14)
 http://www.teien-art-museum.ne.jp

・松岡美術館 12/29~1/4休
 「松岡コレクション-中国動物俑の世界/松岡コレクションの日本油彩画」(~2/11)
 http://www.matsuoka-museum.jp

・原美術館 ~1/4休
 「ソフィ カル ─ 限局性激痛 原美術館コレクションより」(1/5~)
 http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/

・畠山記念館 ~1/18休
 「光悦と光琳ー琳派の美」(1/19~)
 http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/

・目黒区美術館 ~1/18休
 「めぐろの子どもたち展」(1/19~)
 http://mmat.jp



【両国・清澄白河・駒込】

・江戸東京博物館 〜1/1休
 「お正月は、江戸博へ!/春を寿ぐー徳川将軍家のみやび」(1/2〜)
 https://www.edo-tokyo-museum.or.jp

・すみだ北斎美術館 12/29~1/1休
 「大江戸グルメと北斎」(~1/20)
 http://hokusai-museum.jp

・たばこと塩の博物館 12/29~1/3休
 「産業の世紀の幕開け ウィーン万国博覧会」(~1/14)
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html

・刀剣博物館 12/25〜1/11休
 「特別展 筑前左文字の名刀」(1/12〜)
 https://www.touken.or.jp/museum/
 
・東洋文庫ミュージアム 12/30〜1/2休
 「大♡地図展―古地図と浮世絵」(〜1/14)
 http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/

・東京都現代美術館 大規模改修工事のため休館中
 http://www.mot-art-museum.jp



【池袋・目白・板橋・練馬】

・永青文庫 ~1/11休
 「石からうまれた仏たちー永青文庫の東洋彫刻コレクション」(1/12〜)
 http://www.eiseibunko.com

・古代オリエント博物館 12/26〜1/3休
 「ベツレヘム聖誕教会モザイク壁画の発見」(〜2/4)
 http://aom-tokyo.com

・ちひろ美術館・東京 12/28~1/1休
 「作家で、母でつくるそだてる 長島有里枝」(~1/31)
 https://chihiro.jp/tokyo/

・練馬区立美術館 12/29~1/3休
 「人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技」(~2/11)
 https://www.neribun.or.jp/museum.html

・講談社 野間記念館 ~1/11休
 「四季の彩りと趣き 十二ヶ月図展」(1/12~)
 http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp

・板橋区立美術館 改修工事のため休館中
 http://www.itabashiartmuseum.jp



【世田谷】

・五島美術館 12/25~1/4休
 「茶道具取合せ展」(~2/17)
 http://www.gotoh-museum.or.jp

・静嘉堂文庫美術館 ~1/28休
 「岩﨑家のお雛さまと御所人形」(1/29~)
 http://www.seikado.or.jp

・世田谷美術館 12/29〜1/3休
 「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」(〜1/27)
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp



【武蔵野・多摩】

・多摩美術大学大学美術館 12/25~1/5休
 「生誕120年記念 福沢一郎―語りて屈さぬ絵画の地平」(~2/24)
 http://www.tamabi.ac.jp/museum/

・東京富士美術館 12/25~1/4休
 「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」(1/5〜)、「藤田嗣治 本のしごと」(1/19~)
 http://www.fujibi.or.jp

・八王子夢美術館 12/29~1/3休
 「粋(いき)な古伊万里 江戸好みのうつわデザイン」(~1/20)
 http://www.yumebi.com

・町田市立国際版画美術館 12/28~1/4休
 「新収蔵作品展 Present for you」(1/5~)
 http://hanga-museum.jp

・三鷹市市民ギャラリー 12/29〜1/4休
 「タータン 伝統と革新のデザイン展」(〜2/17)
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/

・武蔵野市立吉祥寺美術館 〜1/11休
 「岩本拓郎 すべての いろと かたち」(1/12~)
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

・府中市美術館 改修工事のため休館中
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/



【神奈川】

・馬の博物館 12/25〜1/4休
 「馬頭観音像~道端の守り神の魅力」(〜2/11)
 http://www.bajibunka.jrao.ne.jp/uma/

・岡田美術館 12/31~1/1休
 「開館5周年記念展 美のスターたち」(~3/30)
 http://www.okada-museum.com

・神奈川県民ホールギャラリー 12/30〜1/4休
 「5RoomsⅡ ーけはいの純度」(〜1/19)
 http://www.kanakengallery.com

・神奈川県立金沢文庫 12/28〜1/4休
 「顕われた神々 ―中世の霊場と唱導」(〜1/14)
 https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

・神奈川県立近代美術館葉山館 12/29~1/3休
 「堀内正和展 おもしろ楽しい心と形」(~3/24)
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp

・神奈川県立歴史博物館 12/28〜1/4休
 「常設展」(1/5〜)、「かながわの遺跡展 潮風と砂の考古学」(1/19〜)
 http://ch.kanagawa-museum.jp

・川崎市岡本太郎美術館 12/29~1/3休
 「イサム・ノグチと岡本太郎―越境者たちの日本」(~1/14)
 http://www.taromuseum.jp/

・そごう美術館 〜12/31休
 「URUSHI 伝統と革新展」(1/1〜)
 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

・茅ヶ崎市美術館 12/27〜1/3休
 「現代版画の可能性」(〜2/3)
 http://www.chigasaki-museum.jp

・平塚市美術館 12/29~1/3休
 「土田泰子展 導~ Whereʼ s a will,thereʼ s a way」(~4/7)
 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/

・藤沢市アートスペース 12/28〜1/4休
 「Fujisawa Art Re;public – 藤沢で再発見!まちのアート探訪」(〜1/11)
 http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS

・ポーラ美術館 無休
 「モダン美人誕生―岡田三郎助と近代のよそおい」(~3/17)
 http://www.polamuseum.or.jp

・横須賀美術館 12/29~1/3休
 「常設展」(1/4〜)、「第71回児童生徒造形作品展」(1/12~)
 http://www.yokosuka-moa.jp

・横浜市民ギャラリーあざみ野 12/29〜1/3休
 「あざみ野フォト・アニュアル 長島有里枝展」(1/26〜)
 https://artazamino.jp

・横浜美術館 12/28~1/4休
 「コレクション展 リズム、反響、ノイズ」(1/4〜)、「イサム・ノグチと長谷川三郎」(1/12〜)
 http://yokohama.art.museum

・BankArt Studio 新拠点へ移転作業中
 http://www.bankart1929.com



【埼玉】

・うらわ美術館 12/27~1/4休
 「美術への挑戦 1960's-80's:秘蔵されていたアート・ブック」(~1/14)
 http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/index.html

・川口市立アートギャラリー・アトリア 12/29~1/3休
 「アートな年賀状展2019」(1/8~)
 http://www.atlia.jp

・川越市立美術館 12/29~1/3休
 「相原求一朗の軌跡―大地への挑戦―」(〜3/24)
 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/

・河鍋暁斎記念美術館 12/24~1/3休
 「亥年の福神画」(1/4~)
 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html

・原爆の図丸木美術館 12/29〜1/3休
 「今日の反核反戦展2018」(〜1/26)
 http://www.aya.or.jp/~marukimsn/

・埼玉県立近代美術館 12/27~1/4休
 「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」(〜1/20)
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

・埼玉県立歴史と民俗の博物館 12/29〜1/1休
 「埼玉の官衙―律令時代のお役所」(1/2〜)
 http://www.saitama-rekimin.spec.ed.jp

・鉄道博物館 12/29~1/1休
 「てっぱく鉄はじめ 2019」(1/2~)
 http://www.railway-museum.jp



【千葉】

・市原市湖畔美術館 12/29~1/3休
 「ジョゼ・デ・ギマランイス展~アフリカは魅了する」(〜1/14)
 http://lsm-ichihara.jp/

・佐倉市立美術館 12/28~1/4休
 「美しきをより美しく 秋山庄太郎展」(1/29~)
 http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

・千葉県立美術館 12/28~1/4休
 「中山忠彦ー永遠の美を求めて」(~1/20)
 https://www.chiba-muse.or.jp/ART/

・千葉市美術館 12/29~1/3休
 「石井林響展−千葉に出づる風雲児」(〜1/14)
 http://www.ccma-net.jp

・DIC川村記念美術館 12/25〜1/1休
 「言語と美術─平出隆と美術家たち」(〜1/14)
 http://kawamura-museum.dic.co.jp

・成田山書道博物館 ~12/31休
 「新春特別展 江戸の書と絵画」(1/1〜)
 http://www.naritashodo.jp

・ホキ美術館 12/30~1/1休
 「人・ひと・人ー人って面白い」(~5/12) 
 https://www.hoki-museum.jp


【元日(火)から開館する美術館・博物館】

・上野の森美術館 「フェルメール展」
・森アーツセンターギャラリー 「カードキャプターさくら展」
・森美術館 「カタストロフと美術のちから展」
・そごう美術館 「URUSHI 伝統と革新展」
・ポーラ美術館 「モダン美人誕生―岡田三郎助と近代のよそおい」
・成田山書道博物館 「新春特別展 江戸の書と絵画」

まずは元日から開館する美術館です。上野の森美術館(フェルメール展)、森アーツセンターギャラリー(カードキャプターさくら展)、森美術館(カタストロフと美術のちから展)、ポーラ美術館(モダン美人誕生―岡田三郎助と近代のよそおい)には、年末年始のお休みがありません。また、そごう美術館(URUSHI 伝統と革新展)と成田山書道博物館(江戸の書と絵画)は、年内がお休みで、元日より新たな展覧会がスタートします。


【2日(水)から開館する美術館・博物館】

・国立科学博物館 「日本を変えた千の技術博」
・国立西洋美術館 「ルーベンス展」
・東京国立博物館 「博物館に初もうで」
・東京都美術館 「ムンク展」
・東京国立近代美術館 「MOMATコレクション」
・東京ステーションギャラリー 「吉村芳生 超絶技巧を超えて」
・三菱一号館美術館 「フィリップス・コレクション展」
・Bunkamura ザ・ミュージアム 「ロマンティック・ロシア」
・菊池寛実記念 智美術館 「川瀬忍 作陶50年の間展」
・サントリー美術館 「扇の国、日本」
・東京都写真美術館 「建築×写真 ここのみに在る光/日本の新進作家 vol.15/マイケル・ケンナ写真展」
・日本科学未来館 「常設展」
・すみだ北斎美術館 「大江戸グルメと北斎」
・江戸東京博物館 「お正月は、江戸博へ!/春を寿ぐー徳川将軍家のみやび」
・ちひろ美術館・東京 「作家で、母でつくるそだてる 長島有里枝」
・岡田美術館 「開館5周年記念展 美のスターたち」
・埼玉県立歴史と民俗の博物館 「埼玉の官衙―律令時代のお役所」
・鉄道博物館 「てっぱく鉄はじめ 2019」
・DIC川村記念美術館 「言語と美術─平出隆と美術家たち」
・ホキ美術館 「人・ひと・人ー人って面白い」


2日は多くの美術館や博物館が始動します。東京国立博物館では恒例の「博物館に初もうで」展が開催され、新春名品紹介として国宝の「松林図屏風」が公開されるほか、干支のイノシシに因んだ特集展示、ないし獅子舞や和太鼓の演舞などのお正月に関連したイベントが行われます。


改修のために休館していた江戸東京博物館でも、2019年は「お正月は、江戸博へ!」と題し、夢からくりの公演や筝と尺八の演奏、書初め体験などの新春イベントが催されます。また2日と3日は常設展の観覧料が無料となります。 *企画展「春を寿ぐー徳川将軍家のみやび」も観覧可。


同じく2日に開館する東京都写真美術館では、「トップのお正月」が開催され、同日は「建築×写真」と「日本の新進作家 vol.15」の観覧料が無料となります。(ただしマイケル・ケンナ写真展は別料金。)また福袋の販売や雅楽の演奏も披露されます。


【3日(木)から開館する美術館・博物館】

・弥生美術館・竹久夢二美術館 「バロン吉元☆元年/竹久夢二美人画展」
・東洋文庫ミュージアム 「大♡地図展―古地図と浮世絵」
・山種美術館 「皇室ゆかりの美術ー宮殿を彩った日本画家」

「皇室ゆかりの美術」展を開催中の山種美術館は、3日に開館し、お正月限定企画として、プチギフト(先着100名)や甘酒の配布をはじめ、新春福袋(限定50個)が販売されます。


【4日(金)から開館する美術館・博物館】

・三井記念美術館 「国宝 雪松図と動物アート」
・ワタリウム美術館 「浅野忠信 3634展」
・渋谷区立松濤美術館 「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」
・21_21 DESIGN SIGHT 「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」
・たばこと塩の博物館 「産業の世紀の幕開け ウィーン万国博覧会」
・古代オリエント博物館 「ベツレヘム聖誕教会モザイク壁画の発見」
・練馬区立美術館 「人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技」
・世田谷美術館 「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」
・八王子夢美術館 「粋(いき)な古伊万里 江戸好みのうつわデザイン」
・神奈川県立近代美術館葉山館 「堀内正和展 おもしろ楽しい心と形」
・川崎市岡本太郎美術館 「イサム・ノグチと岡本太郎―越境者たちの日本」
・茅ヶ崎市美術館 「現代版画の可能性」
・平塚市美術館 「土田泰子展 導~ Whereʼ s a will,thereʼ s a way」
・横須賀美術館 「常設展」
・川越市立美術館 「相原求一朗の軌跡―大地への挑戦―」
・河鍋暁斎記念美術館 「亥年の福神画」
・原爆の図丸木美術館 「今日の反核反戦展2018」
・市原市湖畔美術館 「ジョゼ・デ・ギマランイス展~アフリカは魅了する」
・千葉市美術館 「石井林響展−千葉に出づる風雲児」


【5日(土)から開館する美術館・博物館】

・太田記念美術館 「かわいい浮世絵 おかしな浮世絵」
・岡本太郎記念館 「瞬間瞬間に生きるー岡本太郎とジャズ」
・NTTインターコミュニケーション・センター 「イン・ア・ゲームスケープ ヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」
・東京都庭園美術館 「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」
・松岡美術館 「松岡コレクション-中国動物俑の世界/松岡コレクションの日本油彩画」
・原美術館 「ソフィ カル ─ 限局性激痛 原美術館コレクションより」
・五島美術館 「茶道具取合せ展」
・東京富士美術館 「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」
・町田市立国際版画美術館 「スティップル・エングレーヴィングとメゾチント」
・三鷹市市民ギャラリー 「タータン 伝統と革新のデザイン展」
・馬の博物館 「馬頭観音像~道端の守り神の魅力」
・神奈川県民ホールギャラリー 「5RoomsⅡ ーけはいの純度」
・神奈川県立金沢文庫 「顕われた神々 ―中世の霊場と唱導」
・神奈川県立歴史博物館 「常設展」
・藤沢市アートスペース 「Fujisawa Art Re;public – 藤沢で再発見!まちのアート探訪」
・横浜美術館 「コレクション展 リズム、反響、ノイズ」
・うらわ美術館 「美術への挑戦 1960's-80's:秘蔵されていたアート・ブック」
・埼玉県立近代美術館 「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」
・佐倉市立美術館 「美しきをより美しく 秋山庄太郎展」
・千葉県立美術館 「中山忠彦ー永遠の美を求めて」

新年を迎え、新たにはじまる展覧会も少なくありません。5日に開館する原美術館では、同日より「ソフィ カル ─ 限局性激痛 原美術館コレクションより」が開催されます。さらに太田記念美術館では「かわいい浮世絵 おかしな浮世絵」、また町田市立国際版画美術館では「新収蔵作品展 Present for you」展が、それぞれ5日よりスタートします。


【6日(日)から開館する美術館・博物館】

・多摩美術大学大学美術館 「生誕120年記念 福沢一郎―語りて屈さぬ絵画の地平」


全ての美術館や博物館を網羅しているわけではなく、抜け落ちている情報や、記載ミスもあると思います。お出かけの際は、各館の公式サイトを改めてご確認下さい。
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「森堯之写真展 朝鮮・1939年」 JCIIフォトサロン

JCIIフォトサロン
「森堯之写真展 朝鮮・1939年」
11/27〜12/25



JCIIフォトサロンで開催中の「森堯之写真展 朝鮮・1939年」を見てきました。

1915年に徳島で生まれ、帝国美術学校で西洋画を学んだ森堯之(1915〜1944)は、前衛画家としてデビューしつつも、日本工房へカメラマンとして入社し、瀧口修造らの設立した前衛美術協会に参加するなどして活動しました。そして森は、1939年、日本工房の刊行した季刊「NIPPON」の18号の取材のため、朝鮮半島へと渡り、現地の人物や風景を撮影しました。

その一連の活動を紹介するのが、「森堯之写真展 朝鮮・1939年」で、80年を経て日本工房関連のネガより見出された、77点の写真が展示されていました。

季刊「NIPPON」は、1934年、ドイツで報道写真家であった名取洋之助が、欧米向けに創刊した対外文化宣伝グラフ誌で、まさに日本を紹介すべく、文化、産業、建築など、幅広い内容を取り上げていました。写真は、森のほかに土門拳、デザインは山名文夫や亀倉雄策、記事はブルーノ・タウトや柳宗悦らが書くなど、錚々たるメンバーが参加していました。



森は朝鮮において、町の史跡や民族美術館の工芸品、さらに街ゆく人々を、編集者の要望に応えるべく、演出を交えながら、端正に写し出しました。そこには報道写真家に徹したプロの視線、ないし力量も伺い知ることが出来るかも知れません。



とりわけ魅惑的であるのは、何気ない人の表情を写した写真で、どこかモデルの息遣いが伝わってくるかのようでした。しかしながら当時の朝鮮は、日本の統治下であり、老人が苦々しい様子でレンズを睨む「街を行く老人」や、赤ん坊を背負う女性があたかも視線を逸らすような「子守」などには、現地の人々の奥底にあった感情が滲み出ているのかもしれません。

森は本シリーズを撮影したのち、しばらく「NIPPON」で仕事を続け、計6冊に名を記しました。しかし18号以外は、どの写真を森が撮影しているのかよく分かっていないそうです。



1939年、森はシュルレアリスムの作家の集う美術文化協会の創立会員となり、前衛美術を代表する1人として目されるようになりました。また翌年に結婚し、1941年には妻の実家のあった大連に滞在しましたが、のちに応召し、結果的に1944年、出征先のビルマで戦病死してしまいました。時に29歳でした。


実のところ、前もって森の存在を知らず、新聞の紹介記事を見て行きましたが、しばらく作品を前にしていると、思いがけないほどに惹かれていることに気がつきました。それにしても戦争とはいえ、才能のある人物が、若くして亡くなってしまったのが残念でなりません。



解説の付されたリーフレットが800円で販売されていました。即購入したのは言うまでもありません。(写真はリーフレットより引用しました。)

会期末です。12月25日まで開催されています。

「森堯之写真展 朝鮮・1939年」 JCIIフォトサロン
会期:11月27日(火)〜12月25日(火)
休館:月曜日。
 *祝日の場合は開館。
時間:10:00~17:00 
料金:無料。
住所:千代田区一番町25番地 JCIIビル1階
交通:東京メトロ半蔵門線半蔵門駅4番出入口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線麹町駅3番出入口より徒歩8分。
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「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」
10/19〜12/24



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」へ行ってきました。

1979年に東京で生まれた建築家の田根剛は、26歳にしてエストニア国立博物館の国際設計競技に勝利するなど、若くしてヨーロッパと日本を中心に多くのプロジェクトを手がけてきました。

その田根の美術館の初の個展が「未来の記憶 Archaeology of the Future」で、「Digging & Building」と題し、建築の場所の記憶を掘り下げながら、今も進行する田根の多様なプロジェクトを紹介していました。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

もしあるとすれば、一般的な建築展を想像すると、良い意味で期待を裏切られるかもしれません。冒頭に登場するのは、床面に半ば散乱するようにして置かれた古材で、京都で進行中のプロジェクトで用いられたものでした。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

続くスペースには、写真やデッサンほか、無数のイメージが、床から壁の全てを氾濫するかのように広がっていました。これは、田根が「記憶の発掘」として、古代から未来へ向かう記憶を考古学的にリサーチした結果で、各プロジェクトにおいて実施する手法を、美術館の空間で再現しました。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

リサーチは、「CLASSIFICATION 記憶は整理される」や「IMPACT 衝撃は最も強い記憶にある」、それに「COMPLEXITY 複雑性に記憶はない」など12のテーマが設定されていて、地図や図面のほか、遺跡や地形、さらには気象や災害の痕跡、はたまた生き物や人体の一部を捉えた写真など、実に多岐に渡る素材が展開していました。ともすると、一見、建築とは結びつかないかもしれません。


「エストニア国立博物館」 タルトゥ 2006年〜2016年

全長10メートルにも及ぶ巨大模型が姿を現しました。それこそが「エストニア国立博物館」の模型で、50分の1のスケールで作られました。


「エストニア国立博物館」 タルトゥ 2006年〜2016年

同博物館の敷地は、かつてのソビエトの軍用施設として占拠された滑走路があり、設計に際しては、その記憶を継承すべく、滑走路の延長線上に接続されました。田根の最終案の採用より、約10年の歳月をかけ、2016年に開館したそうです。


「エストニア国立博物館」 タルトゥ 2006年〜2016年

そして模型の周囲には、古材とともに、田根が「記憶の発掘」をリサーチする過程で集められた、資料やオブジェクトが展示されていました。一連のオブジェクトからは、建築へ至った、田根の思考も伺い知れるかもしれません。


「新国立競技場案 古墳スタジアム」 東京 2012年

「エストニア国立博物館」に次いで目立っていたのは、「新国立競技場案 古墳スタジアム」でした。これは言うまでもなく、2020年の東京オリンピック招致に向けて建て替えの決まった、新たな国立競技場の競技デザイン案で、田根はオリンピックと古代日本最大のピラミッドである古墳が一体となる建築を提案しました。


「新国立競技場案 古墳スタジアム」 東京 2012年

こんもりと積もる森は、まさに神宮の森に連なるかのようで、実に特徴的な景観を見ることが出来ました。ただし、既に知られるように田根案は採用されず、最優秀賞を獲得したザハ・ハディド案から紆余曲折を経て、最終的には隈研吾案が決まり、現在も工事が続いています。


「新国立競技場案 古墳スタジアム」 東京 2012年

模型を覆う苔は本物で、会期中も定期的に水遣りを欠かせないそうです。また明治神宮外苑の古地図や、リサーチに用いられた古墳の資料なども出展されていました。


「Todoroki House in Valley」 東京 2017年〜2018年

ほかにも会場では、「10 kyoto」(京都、2017年〜進行中)や「A House for Oiso」(神奈川、2014〜2015年)、それに「Todoroki House in Valley」(東京、2017〜2018年)など、計7つのプロジェクトが、大型模型とオブジェクトによって紹介されていました。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

いずれもキャプションこそあるものの、明確にスペースが区切られていなく、緩やかに繋がるように展開していました。古い遺物などを見やりながら、縫うように歩いていると、さながら森の中に迷い込んだかのような錯覚に陥るかもしれません。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

ラストには、完成、未完、さらにコンペの勝利有無を問わず、これまでに田根が提案してきた100以上のプロジェクトが、年表の形式で紹介されていました。


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

ここでは、例えば「新井淳一の布」(東京オペラシティーアートギャラリー、2013年)の会場構成や、舞踊団Noismの「劇的舞踊 ラ・バヤデール 幻の国」(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、2016年)の舞台美術など、単に建築だけに留まらない、田根の幅広い活動も見ることが出来ました。


「エストニア国立博物館」 映像:藤井光

アーティストの藤井光が「エストニア国立博物館」などを捉えた、大型プロジェクションの映像作品も迫力がありました。田根の思想に共鳴した藤井は、竣工プロジェクトやパリのアトリエを訪問し、撮影を行ったそうです。


TOTOギャラリー・間での展示風景

「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research」TOTOギャラリー・間
会期:10月18日(木)~12月23日(日・祝)
https://jp.toto.com/gallerma/

また田根は、本展と同時に、ギャラリー・間でも同名のタイトルでの個展を開催し、今度は「Search & Research」のテーマの元、建築における思考や考察のプロセスを模型などで紹介しています。(12月23日終了。)


「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」会場風景

ともに会期末を迎えましたが、初台と乃木坂の双方で、田根の過去と現在、そして未来への活動を知る良い機会と言えそうです。

「田根 剛 アーキオロジーからアーキテクチャーへ/TOTO出版」

撮影も可能です。12月24日まで開催されています。

「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:10月19日(金)〜12月24日(月)
休館:月曜日。
 *但し12月24日は開館。
時間:11:00~19:00 
 *金・土は20時まで開館。
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の「収蔵品展064 異国で描く」、「project N 73 中村太一」の入場料を含む。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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「ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」 アクセサリーミュージアム

アクセサリーミュージアム
「アメリカンドリーマー ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」
2018/11/13~2018/12/22、2019/1/17~2019/4/14



アクセサリーミュージアムで開催中の「アメリカンドリーマー ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」を特別鑑賞会に参加して来ました。

コスチューム・ジュエリーのトップブランドである「ミリアム・ハスケル」は、創設者のミリアム・ハスケルが、1924年にニューヨークで開いたセレクトショップにはじまりました。

そのミリアム・ハスケルのジュエリーを一堂に紹介したのが、「ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」で、ミリアム・ハスケルの研究で知られ、ジュエリーを30年近くに渡って収集し続けた渡辺マリ氏のコレクションが公開されていました。


「メタルリーフイエローデミパリュールセット」 1930年代

元々、ハスケルのショップでは、シャネルをはじめとしたフランスのジュエリーを輸入していましたが、次第に自身でもジュエリーを制作したいと考えるようになりました。


「ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」会場パネル

ハスケルのジュアリーは、1人のデザイナーとの協働によって生み出されました。名はフランク・ヘスで、1926年、ヘスのウィンドウディスプレイに惚れたハスケルは、デザイナーとしてスカウトし、自身はプロデューサーとして、ジュエリーを世に送り出しました。ハスケルは「人と同じものをつけさせない、つけない。」ことをモットーとしていて、一番美しいものを作るべく、手作業で、パーツの全てまでがオリジナルなジュエリーを作りました。


「スティックピン」 1940年代

ジュエリーの制作に際しては、極力、接着剤や溶接の技術を用いず、糸や針を、一つ一つ手で組み上げていて、修理やセミオーダー形式での手直しも可能としていました。それ故に、今も修理をすることが出来るそうです。


「メタルフラワーイエローネックレス」 1930年代

ハスケルの最大の魅力は、立体的なデザインを伴うことでした。ジュエリーは正面だけでなく、上下左右のどこから見ても、女性を引き立てるように作られました。またネックレスは複数の使い方が出来るようなっていて、その日の服装などに合わせ、ショートとロングの双方に対応するように工夫されました。


「黄金花束ブローチ」 1940年代

自分の名前を入れることに執着のなかったハスケルは、当初、ブランドサインを付けませんでした。ジュエリーは、主に植物をモチーフとしていて、木や貝などの自然の材料が多く使われました。またハスケルは、同じ作品を3つ作り、1つは見本、もう1つは店内ディスプレイ用、最後の1つは販売用とすることもありました。


「ソンメルソガラスネックレス」 1940年代

1930年頃から、客の求めによって、サインが入れられるようになりました。しかし人気の高まりゆえか、偽物も出回るようになったため、今度は名前の代わりに、亀や小鳥の金具を付けるようになりました。


「ウランガラス3連ネックレス」 1950年代

素材はベネツィアのガラスなども使われましたが、中にはガラスにウランを入れたネックレスもあり、照明を落として、ライトを当てると、緑色に光り出しました。


「シノワズリデミパリリュールセット」 1940年代〜1950年代

ハスケルの作品には、ランクに応じて、カジュアルのC、フォーマルのB、そしてスペシャルのAの3つのラインがありました。うちAラインは、パーティーなどの特別な場につけていくことを想定していて、ほかのラインに比べて、大ぶりで豪華でした。


「ターコイズパリュールセット」 1950年代

ハスケルは人気を博し、次々と店舗が増え、アメリカからヨーロッパへも拡大し、コスチュームジュエリーのクイーンと称されるほどになりました。しかし残念ながら、ハスケルの活躍は、必ずしも長く続きませんでした。1940年頃に鬱病を患うと、しばらくはフランクの助けもあって支えられるものの、1950年にはクリエイターとしての仕事が困難となり、会社を離れてしまいました。


「デザイン画」 ラリー・オースチン 1930年代〜1940年代

ジュエリー制作をやめたハスケルは、結果的に長い療養生活の末、1981年に亡くなりました。また現在も会社こそ存続しているものの、ハスケルの当時とは方針が変わり、大量生産方式を採用しているそうです。


「ドーム花パリュールセット」 1940年代〜1950年代

渡辺マリ氏のコレクションも、ハスケルとフランクの2人が制作したものにこだわっていて、主に1920年から50年代の作品でした。いずれのジュエリーもオリジナリティーに溢れていて、ハスケルが制作にかけた、創意工夫が感じられるのではないでしょうか。また単に美しい云々だけではなく、ハスケルとフランクの2人の作り手の熱意も伝わってくるかもしれません。


「グリーン花モチーフパリュール」 1940年代〜1950年代

最後に会期の情報です。年末年始を含む冬季休館日を挟み、前期と後期に分かれています。(一部に展示替えあり。)

「ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」
前期:2018年11月13日(火)~2018年12月22日(土)
後期:2019年1月17日(木)~2019年4月14日(日)

12月23日から1月16日までが冬季休館日です。年内は12月22日まで、年明けは1月17日からの開館となります。お出かけの際はご注意下さい。


「ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」会場風景

通常入館料で観覧可能です。ぐるっとパスにも対応しています。


「シルバーメタルチェーンラリエット」 1930年代

2019年4月14日まで開催されています。

「アメリカンドリーマー ミリアム・ハスケル~渡辺マリコレクション」 アクセサリーミュージアム@acce_museum
会期:2018年11月13日(火)~2018年12月22日(土)、2019年1月17日(木)~2019年4月14日(日)
休館:月曜・第4、5日曜日。
 *冬季休館(12月23日~1月16日)、及び8月休館(8/1~8/31)
時間:10:00~17:00
 *入館は16時半まで。
料金:一般1000円、学生(小学生以上)600円。ぐるっとパスでフリー。
住所:目黒区上目黒4-33-12
交通:東急東横線祐天寺駅中央改札口側西口1より徒歩7分。

注)写真は特別鑑賞会の際に美術館の許可を得て撮影しました。
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コスチューム・ジュエリーが一堂に。アクセサリーミュージアムへ行ってきました

貴金属や宝石などで作るジュエリーとは異なり、ファッション性を重視し、素材を問わずに作られた装身具であるコスチューム・ジュエリー。ファッションに関心のある方であれば、身近に触れる機会も少なくないかもしれません。


アクセサリーミュージアム
http://acce-museum.main.jp

コスチューム・ジュエリーを国内最大級のスケールで展示するミュージアムが、東京の目黒区上目黒にあります。


「アクセサリー・ミュージアム」入口。祐天寺の閑静な住宅地の中に位置します。

その名はアクセサリーミュージアムで、田中美晴、元子夫妻のコレクションを公開するため、個人の邸宅を改装し、2010年に開館しました。最寄りは東急東横線の祐天寺駅で、住宅街を経由し、細い路地を抜けた先に位置していました。駅からは歩いて10分もかかりませんでした。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM1 アール・デコ)

受付の先にはアール・デコを模した展示室が広がり、1920年から30年代にかけ流行した、アール・デコのアクセサリーが展示されていました。この時代は、女性の社会進出や交通手段の発達により、シンプルな服装が求められ、幾何学的なデザインや、オリエンタルなモチーフをアレンジしたアクセサリーが好まれました。直線のモチーフや、色の対比などが、特徴としてあげられるそうです。


ペーストによるアクセサリー

宝石の代用品であった、ペーストのアクセサリーも目を引くかもしれません。ガラスをカットして作られていて、安価なジュアリーとして、アール・デコ以前から人気を博していました。


「ペークライトブレスレット」 1920年〜1930年 フランス

合成樹脂の初期の形であるペークライトが登場したのもアール・デコの時代で、色々な形に成形しやすいこともあり、モダンなデザインのアクセサリーが生み出されました。


「スコティッシュジュエリー」 ほか

最も古いコレクションは、1837年から1901年のヴィクトリア朝のアクセサリーでした。イギリスの貴族文化の価値観を重視し、荘厳でかつ華麗な装飾を特徴としていて、前期にはロマンテックなものや自然、後期には過去の文物やデザインを取り込んだモチーフが流行しました。


「モーニング(喪)・ブレスレット」

またヴィクトリア女王が、長く夫のアルバート公の喪に服したことから、黒が広く着用されました。さらに象牙も流行し、カメオも作られました。ケルトのデザインのアクセサリーも魅惑的かもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM4 アール・ヌーボー)

19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーに関したアクセサリーも充実していました。イスラムや中国、日本の文化の影響を顕著に受けていて、動物や植物などの流動的な曲線を特徴としていました。さらに当時としては新しい素材であった、ガラスや鋼鉄も積極的に取り入れられました。


「虫ブローチ」 1850年〜1900年 フランス

中には、本物のタマムシをブローチに仕立てた「虫ブローチ」もありました。またベルトを身につける習慣があり、バックルが多いのも特徴の1つでした。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM4 オートクチュール)

ヴィクトリアン、アール・ヌーボー、アール・デコに続くのは、1940年から60年の間のオートクチュールの時代でした。1940年代は第二次世界大戦の影響でミリタリー風のファッションが流行しました。そして戦後にパリでオートクチュールが再開すると、1947年にディオールが最初のコレクションを発表して、世の中に衝撃を与えました。


「ブローチ」 1950年代 アメリカ ほか

1950年代には、正統派のクチュールと若者のファッションが対峙していていて、1960年代に入ると、オートクチュールメゾンにプレタポルテの波が押し寄せました。またヤングファッションも革命期を迎え、ジーンズやミリタリー、アイビー・ルックなど、新たなカルチャーを反映したファッションが生み出されました。一方のアクセサリーでは、自然の素材として、象牙などが好まれました。


「ハートブローチ」 1970年代 フランス

1970年代に入ると、プレタポルテでは若いデザイナーが台頭し、豪華なクチュールのモードは一部の人のものとなりました。また同時にアンチモードへの時代でもあり、ヒッピーなどの文化もファッションに影響を与えました。ヤングアクセサリーのポップなモチーフも目を引くかもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

時代の最先端をいくような前衛的なモチーフが好まれたのが、アヴァンギャルドの時代とされる1980年代でした。トレンドは目まぐるしく変化していく中、人々は自分の好きなスタイルでファッションを表現し、ファッションを楽しみました。日本ではバブル景気を反映し、派手で華美なコスチューム・ジュエリーが人気を博しました。いわゆる「デコ盛り」の先駆けとも言えるようなジュエリーも目立っていました。


シャネル・オートクチュール アクセサリー

あくまでも個人の邸宅であるため、スペースとしては必ずしも広くありませんが、地下1階、地上1階、2階の3層の建物には、合計9の展示室があり、いずれも所狭しとアクセサリーで埋め尽くされていて、総数は2000以上にも及び、想像以上に見応えがありました。サンローラン、ディオール、シャネルと、よく知られたブランドのアクセサリーも少なくありません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

一部では絵画の参照があったり、衣装のコレクションも目に付くなど、アクササリーを通じて、1850年から2000年へと至った、各時代の文化や風俗がよく伝わるような展示でした。アクササリーファンだけでなく、美術ファンにも見ておきたい内容と言えるかもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

入館料は一般1000円ですが、ぐるっとパスを利用すると、フリーで入場出来ます。お得なパスの利用をおすすめします。


ミュージアムショップ

ミュージアムショップも充実していました。ヴィンテージから現代のコスチューム・ジュエリーやアクセサリーパーツだけでなく、アクセサリーに関したカタログやグッズなどが数多く販売されていました。また横のスペースでは、少人数制のアクセサリー教室が開催されるほか、アクセサリークリニックとして、アクセサリーのアフターケアについての相談も受け付けていました。


館内では、「アメリカンドリーマー ミリアム・ハスケル」と題し、コスチューム・ジュエリーの創始者とも呼ばれる、ミリアム・ハスケルの企画展も開催されていました。そちらも次のエントリでご紹介したいと思います。

「アクセサリーミュージアム」@acce_museum
休館:月曜・第4、5日曜日。
 *冬季休館(12月23日〜1月16日)、及び8月休館(8/1~8/31)
時間:10:00~17:00
 *入館は16時半まで。
料金:一般1000円、学生(小学生以上)600円。ぐるっとパスでフリー。
住所:目黒区上目黒4-33-12
交通:東急東横線祐天寺駅中央改札口側西口1より徒歩7分。

注)写真は美術館の許可を得て撮影しました。
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「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展」 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展」 
11/28~12/25



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展」を見てきました。

1940年にフランスで生まれ、イメージメーカーとして世界的に活動してきたジャン=ポール グードは、シャネルと20年以上に渡って協働関係を築き、多くのコラボレーション作品を生み出してきました。

それを紹介するのが、「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展」で、シャネルとのコラボのみならず、グードのアート作品や、インスタレーションも紹介されていました。



全てがグードの世界観で満たされていました。冒頭の通路状の左右の壁面に連なるのが、「ポンピドゥーでの大舞踏会」と、一連のドローイングで、正面には、巨大なパノラマパネルが壁一面に広がり、スピード感の伴う照明彫像のインスタレーションが、色に光を変えつつ、多様なイメージを映し出していました。



そのパネルをしばらく見やっていると、突如、白いドレスを着た1人の女性のダンサーが現れました。彼女は、まさにバレエを演じるかのごとく、軽やかな動きで、足を巧みにステップさせつつ、場内を自由に行き来しては、僅かな笑みを観客に振りまいていました。



そしてある時、鏡の前の椅子に座り、両手を広げ、鏡の中に炎を浮かべながら、グノーのオペラ「ファウスト」のアリア、「宝石の歌」を歌い出しました。これは2001年のファインジュエリーコレクションのための「The Five Elements」の1つである「ファイヤー インスタレーション」を表現したもので、基本的に会期中、常にダンサーによってパフォーマンスが披露されています。その姿は大変に優雅で美しく、ダンサーの行方を追っていると、しばらく時間を忘れるほどでした。



シャネルとの作品では、香水瓶をボーリングに見立てた「チャンス シャネル」や、女優のヴァネッサ・パラディがカナリアに扮した「ココ」のビジュアルがよく知られているかもしれません。ほかには、「日本ツアーのポスタープロジェクト」や「ソウルの女王陛下」に目を引かれました。



なお先のパネルの映像のほかに、奥のミニシアターでは、グードの作品や活動を記録した映画、「SO FAR SO GOUDE」も上映されていました。上映時間は75分ほどでした。(座席数に限りあり。)



会場は、シャネル銀座の4階ですが、通常とは異なり、店内用のエレベーターでは入場出来ません。入口は、店舗正面の銀座通り側ではなく、向かって右手の銀座マロニエ通りに位置していました。

グードは本展の開催に際して来日し、写真やドローイングを自らセレクトしたそうです。ともかく空間自体から洗練されていて、グードの一連の業績を知らずとも、体感的に楽しめる展覧会と言えるかもしれません。



映画「SO FAR SO GOUDE」以外は撮影も可能です。



12月25日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。

「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展」 シャネル・ネクサス・ホール
会期:11月28日(水)~12月25日(火)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:12:00~19:30。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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「WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE」
11/23〜12/24



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE」を見てきました。

シンガポール出身の写真家、レスリー・キー(1971〜)は、東京で写真を学んだのち、ファッションや広告写真を手がけつつ、ポートレートを撮り続けては、世界各地で活動してきました。

そのレスリー・キーにとってのライフワークが、様々な国籍や人種、職業、親子、恋人や友人など、500名を撮った「SUPER LOVE」のシリーズでした。いずれの作品もヌードで複数の人々が、1枚の色鮮やかなスカーフにを身を包みつつ、時にダンスをするかのようにポーズを構えていました。



ともかくカップルの1つを取っても、多幸感に溢れていて、性差も年齢も分け隔てなく、ただ愛のみが強く滲み出ていました。またスカーフが、被写体同士を繋ぐような役割を果たしていたかもしれません。



もう一方のシリーズは、100組ものLGBTカップルのブライダルフォトを撮影した「harMony SUPER LGBT WEDDING」で、にこやかな笑みを浮かべつつ、正装しては、手を取り合い、抱き合うカップルの姿が写し出されていました。先の「SUPER LOVE」と同様、どのカップルも愛に包まれては、幸せそうな表情を見せていて、華やいだ雰囲気に包まれていました。レスリー・キーは、「すべての愛は、うつくしい」を掲げては、一連の作品を撮影しました。



これほどストレートに愛の様々な形を表現した写真も少ないかもしれません。いわゆるダイバーシティーが唱えられつつも、何かと垣根や障壁の築かれる中、「愛の限界」(解説より)を超えた、高らかな愛の賛歌とも言うべきメッセージが強く感じられました。


12月24日まで開催されています。

「WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:11月23日(金・祝)〜12月24日(月・祝)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「吉村芳生 超絶技巧を超えて」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「吉村芳生 超絶技巧を超えて」 
2018/11/23~2019/1/20



東京ステーションギャラリーで開催中の「吉村芳生 超絶技巧を超えて」のプレス内覧会に参加してきました。

1950年に山口県で生まれ、版画やドローイングの画家としてデビューした吉村芳生は、身の回りの日常を見据えては、主に鉛筆で細密に描き出しました。


奥:吉村芳生「ドローイング 金網」 1977年

その吉村の制作にとって重要だったのは、写しの行為でした。一例が「ドローイング 金網」で、金網の網目のみを、おおよそ1万8千個も写しとりました。


吉村芳生「ドローイング 金網」(部分) 1977年

いずれもケント紙と金網を重ねてプレス機にかけ、紙に写った痕跡を鉛筆でなぞったもので、長さは17メートルにも及んでいました。吉村は「機械文明が人間から奪った感覚を自らに取り戻す」として、1日5時間、約70日間かけて完成させました。


吉村芳生「ドローイング 新聞 ジャパンタイムズ」 1979年〜80年 ほか

同じく「ドローイング 新聞」も、写しを半ば極めた作品で、インクの乾ききっていない新聞紙面にアルミ板をあて、プレス機で圧着させたのち、また紙をあて、最終的に紙に転写した薄いインクを元に、鉛筆で文字や写真を写していました。ともかく精巧に出来ていて、近くに寄っても、単なる古い新聞紙と見間違えてしまうかもしれません。


吉村芳生「SCENE No.36(河原)」 1983年

吉村が初期に描いた題材は、川辺や通り、駐車場、ジーンズ、灰皿など、ごくありふれた風景でした。制作に際しては、対象を凝視して直接的に紙へ描くのではなく、撮影した写真を利用し、リトグラフやシルクスクリーンなどの版画の技法も取り入れました。そのために主観性は排除され、作業はより機械的なものになりました。


右:吉村芳生「ジーンズ」 1984年
左:吉村芳生「ジーンズ 下絵(数字)」 1984年


「ジーンズ」も写しにこだわった作品でした。まず本物のジーンズをモノクロで撮影し、引き伸ばしたうえ、今度は鉄筆で2.5ミリ四方のマス目を引き、濃度に応じて0から9までの数字をマス目に書きました。それが、上の写真左の「ジーンズ」で、目をこらすと、確かに細かな数字がマス目に書き込まれていることが分かりました。


右:吉村芳生「ジーンズ」(部分) 1984年

一方で、右の「ジーンズ」はどのように描かれたのでしょうか。今度は写真と同じサイズの方眼紙を用意し、先に2で書いた数字を写したのち、同じサイズの透明フィルムを上から重ね、左端の行から、数字の0に斜線1、数字の1に斜線2、数字の5に斜線6本のように、1つのルール対応した斜線をインクで引いていました。つまりこの「ジーンズ」は、全て斜線のみで描かれていて、色の濃度のみが示されているにも関わらず、写真のように見えるわけでした。


吉村芳生「SCENE 85-8」 1985年 東京ステーションギャラリー

何気ない路上の1コマを捉えた「SCENE 85-8」も、同じく写真のように見えるかもしれません。吉村は雨に濡れた路面を、鉛筆で表現していて、写真のブレまでも描ききっていました。

吉村は生涯を通して自画像を描き続けた画家でした。うち目立つのが新聞紙の上に自画像を描いたシリーズで、吉村は新聞を「社会の肖像であり、自画像と同じである。」と捉えていました。


右:吉村芳生「新聞と自画像 2008.8.9 読売新聞」 2008年
左:吉村芳生「新聞と自画像 2008.10.8 毎日新聞」 2008年


「新聞と自画像」に目を奪われました。ノーベル賞の受賞や、オリンピックの開幕を告げる新聞の一面に、吉村自身の顔が浮かび上がっていました。


吉村芳生「新聞と自画像 2008.8.9 読売新聞」(部分) 2008年

ここで驚くのは、新聞紙自体も鉛筆で描かれていることで、吉村は紙面をコピーしたうえ、カーボン紙で紙に転写したのち、文字や写真の全てを鉛筆や色鉛筆で漏らさずに写し取りました。何やら描く、写すことに対して、執念すら感じないでしょうか。


吉村芳生「新聞と自画像 2009年」 2009年

新聞と自画像のシリーズには2パターンあり、1つがともに描くタイプで、もう1つが既存の新聞紙の上に自画像を描くものでした。うち「新聞と自画像 2009年」では、1年分の新聞の1面に、毎日撮影した自画像を拡大して描いていて、休刊日の1月2日を除くと、全部で364日、つまり364枚にも及んでいました。顔の表情は、新聞の記事の内容に対応していると言われています。


吉村芳生「3.11から 新聞と自画像」 2011年

「3.11から 新聞と自画像」では、東日本大震災の発生と惨状を伝えた新聞を素材にしていて、3月12日から1ヶ月分の新聞に、「見」、「光」、「阿」、「吽」、「叫」などと言った、8種類の自画像をシルクスクリーンで刷り込みました。吉村は、震災の発生当初は描けなかったものの、1ヶ月経過して、やはり描くべきだと考え、新聞を取り寄せては、顔を加えたそうです。また作品を売却して、チャリティーにあてたこともありました。


吉村芳生「コスモス」 2000〜07年

吉村は何もモノクロームの作品だけ制作していたわけではありません。1990年頃にはじめて花を題材にして以降、次第に色鉛筆で描く花の作品に制作の重心を移していきました。その前に東京から山口に移住し、そこで目にした花、とりわけ休耕田のコスモスに出会い、色を発見したと指摘されています。この頃の吉村は、従来の鉛筆のモノクロにやや息苦しさ感じていて、スランプに陥っていましたが、花の絵を色鮮やかに描くことにより、新たな境地を切り開きました。


吉村芳生「無数の輝く生命に捧ぐ」 2011〜13年

フェンス越しの藤の木が一面に広がるのが、「無数の輝く生命に捧ぐ」で、吉村は東日本大震災を契機に、花の1つ1つに亡くなった人の魂を思って描きました。元にはやはり写真が参照されているものの、実際の光景とは異なっていて、背後には何も描かず、ただマス目だけが微かに記されているだけでした。


吉村芳生「無数の輝く生命に捧ぐ」(部分) 2011〜13年

また画面右手の花が消えるように描かれているのも、吉村の意図した表現でした。かつてはモチーフに意味を持たせなかった吉村ですが、特に2000年を過ぎると、何らかのメッセージを込めた作品を制作するようになりました。

1990年代以降、故郷の山口を中心に活動していた吉村ですが、2007年に東京の森美術館で開催された「六本木クロッシング」に出展すると、大きな話題を呼び、各地の美術館でも作品が展示されるようになりました。しかしながら2013年、病に倒れて亡くなってしまいました。時に63歳でした。


吉村芳生「コスモス(絶筆)」 2013年

絶筆も「コスモス」でした。やはり一面の花畑を表していて、ちょうど画面の4分の1を残して筆がとまっていました。ここで明らかなのは、吉村が最後に至るまでマス目にそって、1つずつ塗り進めていたことで、残りの白い画面には、一切の下書きもなく、ただ小さなマス目のみが残されているだけでした。


「吉村芳生 超絶技巧を超えて」会場風景

出展数は、62件、600点と不足はありません。モノクロとカラーの双方で、オリジナルの画風、ないし制作法を確立した吉村の作品は、ほかでは代え難い魅力が存在していました。


中国、四国地方以外の美術館では初めての個展でもあります。2019年1月20日まで開催されています。少し遅くなりましたが、おすすめします。

「吉村芳生 超絶技巧を超えて」 東京ステーションギャラリー
会期:2018年11月23日(金・祝)~2019年1月20日(日)
休館:月曜日。但し12月24日、1月14日は開館。12月25日(火)は休館。年末年始(12月29日~1月1日)。
料金:一般900(700)円、高校・大学生700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)

注)写真はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「鈴木理策 写真展:知覚の感光板」 キヤノンギャラリーS

キヤノンギャラリーS
「鈴木理策 写真展:知覚の感光板」 
2018/11/28~2019/1/16



キヤノンギャラリーSで開催中の「鈴木理策 写真展:知覚の感光板」を見てきました。

暗室の中で煌めくのは、美しき自然の風景が捉えられた、色に光に満ちた写真でした。チラシ表紙を飾る一枚も、青い空の下、大きな樹木が、葉を風に揺らしていて、手前には緑の草が生い茂り、その向こうには、太陽の光を受けて、白く輝いた小径が続いていました。さらに草を前に、大空を写した写真も魅惑的で、白い雲が綿あめのように浮かんでいました。どの作品も人の姿は殆ど見られず、あくまでも自然が写されていて、しばらく眺めていると、何とも言い難い多幸感が滲み出してくるかのようでした。

写真家の鈴木は、本展への出品に際し、近代の画家がモチーフにした土地を選んで撮影しました。それは例えばモネの睡蓮の池であったり、同じくモネやクールベの描いたノルマンディーのエトルタの海岸であったり、鈴木がかねてより撮り続けて来た南仏のサント・ヴィクトワール山であったりしました。ただし撮影地は必ずしも明示されていないため、いくつかの特徴的な景観を除けば、どの場所であるのかを具体的に知ることは出来ませんでした。そこはむしろ見る側の自由な発想に委ねられているのかもしれません。

おそらくは朝陽の登る光景を水平線越しに写した、一枚の海景に魅せられました。空も海もピンク色の光に染まっていて、極めて穏やかな波が岸へ打ち寄せていました。実際の場所こそ明らかではないものの、モネの「印象、日の出」のイメージと一部が重なるかもしれません。

「知覚の感光板」とは、セザンヌの言葉で、画家は「先入観を忘れ、ただモチーフを見よ、そうすれば、知覚の感光板に全ての風景が刻印されるだろう。」(チラシより)と語ったそうです。



必ずしも広いスペースではありませんが、作品数は20点超と思いの外に多く、見応えがありました。

日曜、祝日はお休みです。2019年1月16日まで開催されています。

「鈴木理策 写真展:知覚の感光板」 キヤノンギャラリーS
会期:2018年11月28日(水)~2019年1月16日(水)
休廊:日・祝日。年末年始(12月29日~1月6日)。
時間:10:00~17:30
料金:無料
住所:港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1階
交通:JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行線品川駅より徒歩約10分
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「2019年 見逃せない美術展」 日経おとなのOFF

年の瀬も近づき、今年の展覧会の振り返りとともに、来年を見据えた記事も目立つようになってきました。

「日経おとなのOFF/2019年見逃せない美術展/日経BP社」

そのうち、毎年恒例と化しているのが、雑誌「日経おとなのOFF」の「絶対見逃せない美術展」特集で、2019年の展覧会の開催情報を多く掲載していました。



まず冒頭を飾るのが、カラヴァッジョの「ホロフェルネスの首を斬るユディト」と、クリムトの「ユディトI」、それに同じくクリムトの「パラス・アテナ」などで、いずれも2019年に開催される「カラヴァッジョ展」、「クリムト展 ウィーンと日本1900」、それに「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」で出展される作品でした。実際のところ、クリムトに関しては、大型の展覧会が2件も続くだけに、2019年で最も注目される西洋美術展になるのではないでしょうか。


つい先だっても、「クリムト展 ウィーンと日本1900」に、クリムトの最大規模の作品となる「女の三世代」(ローマ国立近代美術館)の追加出品も決まりました。

また全国3会場を巡回する「カラヴァッジョ展」は、約10点の作品が来日するものの、会場で一部の出展作が異なるため、どこで見るのか悩ましく思う方も多いかもしれません。

「カラヴァッジョ展」 北海道立近代美術館(8月10日~10月14日)
 *名古屋市美術館(10月26日~12月15日)ほか、あべのハルカス美術館へ巡回。
「クリムト展 ウィーンと日本1900」 東京都美術館(4月23日~7月10日)
 *豊田市美術館(7月23日~10月14日)へ巡回。
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」 国立新美術館(4月24日~8月25日)
 *国立国際美術館(8月27日~12月8日)へ巡回。



そして続くのが、雑誌表紙も飾ったマネの「フォリー=ベルジェールのバー」の出展される「コートールド美術館展」、「ギュスターヴ・モロー展」、「ラファエル前派の軌跡展」、「ゴッホ展」などで、今年の「フェルメール展」、「ムンク展」と同様、2019年も西洋絵画に関した展覧会に人気が集まりそうです。

「コートールド美術館展」 東京都美術館(9月10日〜12月15日)
 *愛知県美術館(2020年1月3日〜3月15日)ほか、神戸市立博物館へ巡回。
「ギュスターブ・モロー展 サロメと宿命の女たち」 パナソニック汐留ミュージアム(4月16日〜6月23日)
 *あべのハルカス美術館(7月13日〜9月23日)ほか、福岡市美術館へ巡回。
「ラファエル前派の軌跡展」 三菱一号館美術館(3月14日〜6月9日)
 *あべのハルカス美術館(10月5日〜12月15日)へ巡回。
「ゴッホ展」 上野の森美術館(10月11日〜2020年1月13日)
 *兵庫県立美術館(2020年1月25日〜3月29日)へ巡回。

一方の日本美術で大きく取り上げられていたのは、若冲、蘆雪、蕭白、国芳らに加え、白隠や其一の作品が一堂に会する「奇想の系譜展 江戸絵画 ミラクルワールド」でした。奇想と言えば、一昨年、東京都美術館で開催された「若冲展」が、連日、凄まじい行列となり、社会現象となるほどに話題を呼びました。ひょっとすると「奇想の系譜展」でも、美術ファンの垣根を超えたムーブメントがおきるのかもしれません。


「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」 東京都美術館(2月9日〜4月7日)

「絶対見逃せない 2019年 美術展」は読み物としても充実していました。冒頭のカラヴァッジョやクリムトも、「2019年に見るべきスキャンダラスな美女たち」と題した、作家の中野京子さんのガイドで、ほかにも美術史家の山下裕二先生と、画家の山口晃さんの「奇想の系譜展 Special対談」も読み応えがありました。



そもそも単に特集は、「噂のポートレイト」や「数寄者達の事件簿」、それに「名僧の至宝」など、テーマをもって構成されていて、単なる展覧会の紹介ではありませんでした。さらに各記事も、例えば「カラヴァッジョの濃すぎる人生」ではバロック美術が専門の宮下規久朗先生、また「スター絵師たちのヒットの法則」では北斎館の安村敏信館長がアドバイザーとしてコメントを寄せるなど、専門家の見地も加わっていました。



「2019年に見られる名画でつづる 西洋美術史入門」も有用で、来年に見られる西洋絵画を参照しながら、大まかな西洋美術史を俯瞰していました。また雑誌の本編以外にも、美術館の広告が多いのが特徴で、各館の展示情報を得ることも出来ました。心なしか、年々、美術館の広告が増しているかもしれません。

日本美術でほかに着目しているのが、「佐竹本三十六歌仙と王朝の美」で、いわゆる絵巻切断事件で37幅に切り分けられた佐竹本三十六歌仙絵のうち、少なくとも21幅(以上)が京都国立博物館で公開されます。一部の佐竹本は、単発的に見る機会も少なくありませんが、これほどまとまって紹介されるのは稀で、実際にも過去最大のスケールの展示となります。

「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」 京都国立博物館(4月13日〜6月9日)
「佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」 京都国立博物館(10月12日〜11月24日)


さらに同じく京都国立博物館では、「一遍聖絵」の12巻、130メートル超が公開される「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」も開催されます。ともに同館の単独の展覧会で、巡回はありません。



特別付録の「美術展100ハンドブック」も情報が満載でした。年間を通した100の美術展をカレンダー形式で掲載されている上、各展覧会の情報を、開催館、会期、見どころなどに分けて紹介していました。その中より、私が特に注目したい展覧会をいくつかピックアップしてみました。(上に掲載した展覧会を除く)

「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」 愛媛県美術館(2018年12月19日~3月24日)
 *Bunkamura ザ・ミュージアム(4月27日~6月30日)ほか、静岡市美術館、広島県立美術館へ巡回。
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」 ひろしま美術館(1月3日~3月24日)
 *東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(4月20日~6月30日)へ巡回。
「世紀末ウィーンのグラフィック」 京都国立近代美術館(1月12日~2月24日)
 *目黒区美術館(4月13日~6月9日)へ巡回。
「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」 国立新美術館(1月18日~4月1日)
「クリスチャン・ボルタンスキー」 国立国際美術館(2月9日~5月6日)
 *国立新美術館(6月12日~9月2日)ほか、長崎県美術館へ巡回。
「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ」 国立西洋美術館(2月19日~5月19日)
「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」 国立新美術館(3月20日~5月20日)
 *京都国立近代美術館(6月14日~7月28日)へ巡回。
「国宝 東寺 空海と密教曼荼羅」 東京国立博物館(3月26日~6月2日)
「百年の編み手たち 流動する日本の近現代美術」「MOTコレクション ただいま/はじめまして」 東京都現代美術館(3月29日~6月16日)
「アイチアートクロニクル 1919-2019」(仮) 愛知県美術館(4月2日~6月23日)
「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」 千葉市美術館(4月13日~5月26日)
 *静岡市美術館(6月8日~7月28日)へ巡回。
「塩田千春展:魂がふるえる」 森美術館(6月15日〜10月27日)
「メスキータ展」 東京ステーションギャラリー(6月29日〜8月18日)
「原三渓の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館(7月13日〜9月1日)
「円山応挙から近代京都画壇へ」 東京藝術大学大学美術館(8月3日〜9月29日)
 *京都国立近代美術館(11月2日〜12月15日)へ巡回。
「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(8月31日〜10月20日)
 *山口県立美術館(11月2日〜12月22日)へ巡回。
「美濃の作陶」 サントリー美術館(9月4日〜11月10日)
「バスキア展」 森アーツセンターギャラリー(9月21日〜11月17日)
「大浮世絵展〜五人の絵師の競演」 江戸東京博物館(11月19日〜2020年1月19日)

2019年は改修工事などを終え、再開館する美術館が幾つかあります。うち東京では、都現代美術館が3年の休館を挟み、2019年3月にリニューアルオープンします。それを記念したのが、「百年の編み手たち 流動する日本の近現代美術」と「MOTコレクション ただいま/はじめまして」で、全館規模でコレクションが公開されます。また愛知でも4月に県美術館がリニューアルを終え、「アイチアートクロニクル 1919-2019」で再開し、愛知県の地域コレクションが紹介されます。ともに美術館の核である、コレクションに目を向ける良い機会となりそうです。


現代美術では「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」(国立新美術館)に、「クリスチャン・ボルタンスキー」(国立国際美術館・国立新美術館・長崎県美術館)、「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館)のほか、「バスキア展」(森アーツセンターギャラリー)などに関心が集まるのではないでしょうか。また誌面には記載がありませんが、2019年は、「瀬戸内国際芸術祭」、「あいちトリエンナーレ2019」、「岡山芸術交流2019」などの芸術祭も予定されています。



基本的に掲載情報は、関東、関西の美術館や博物館の大型展が中心です。それ以外の地域や小さな美術館の展覧会は、あまり網羅していません。とは言え、「美術展100ハンドブック」、「2019年美術展・名画カレンダー」、「クリムト・クリアファイル」の付録もついていて、税込820円とはなかなかお得ではないでしょうか。来年の展覧会のスケジュールを大まかに把握するのに、最適な一冊と言えそうです。


「日経おとなのOFF」の美術展特集は、毎年、人気があり、去年も一時、書店で品切れとなったこともありました。まずはお早めに手にとってご覧下さい。

「日経おとなのOFF 2019年1月号 絶対見逃せない 2019年 美術展」
出版社:日経BP社
発売日:2018/12/6
価格:820円(税込)
内容:「絶対見逃せない2019年美術展」。フェルメール、クリムト、マネ、ベラスケス、カラヴァッジョ、ゴーギャン、ゴッホ、若冲、蕭白、北斎---。中野京子と読み解く恐い! ?名画美女。60年ぶりの帰還行方不明だった モネ「睡蓮」。他
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「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン
「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」
12/7~12/16



スパイラルガーデンで開催中の「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」を見てきました。

1918年に創業した精密機械メーカー「CITIZEN」は、数々の時計を世に送り出し、今年で100周年を迎えました。

それを記念したのが、「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」で、建築家の田根剛が会場構成、ないしインスタレーションを手がけていました。



スパイラルが再び黄金の時計で華やかに彩られました。それが螺旋状の吹き抜けで展開する「LIGHT is TIME」で、約7万2千個にも及ぶ地板が空中に広がっていました。いずれも照明の効果により、色が変化していて、カーテン状に連なり、隙間から中へ立ち入ることも出来ました。



再びとしたのには理由があります。2014年に同じスパイラルで開催された「CITIZEN LIGHT is TIME ミラノサローネ2014凱旋展」でのことです。同展でも田根は、時計の地板を用いたインスタレーションを出品し、大変に話題を集めました。その人気から、当初の会期が延長されたほどでした。



今回も基本的なコンセプトは同様かもしれませんが、4年前とは構成が異なっていて、前回より空間の横への繋がりを志向しているようでした。かつての展示の記憶を振り返りながら、黄金色に煌めくインスタレーションを楽しむのも良いかもしれません。



さて展示は「LIGHT is TIME」だけに留まりません。ほかにも、時計作りに関した映像や道具を並べ、シチズンの物づくりのプロセスを紹介するコーナーもありました。



寺島修司の「時をめぐる幻想」も目を引くのではないでしょうか。これは寺島がシチズン広報誌に寄稿したテキストの中より、1967年から1979年までの15編を抜粋し、気鋭の画家の描き下ろし絵を加えたもので、今年、シチズンの100周年を記念して出版されました。



さらに「Thinking Time」では、歴代の時計のモデルを展示し、時間を計測すべく、常に新たな技術に挑戦し続けてきたシチズンの歴史を辿ることも出来ました。



会期2日目の土曜に見てきましたが、会場内は盛況でした。ともかく「LIGHT is TIME」の展示が美しく、スマホを片手に撮影している方が多く見受けられました。SNSでも大いに拡散するかもしれません。



会期は10日間です。12月16日まで開催されています。

「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」 スパイラルガーデン@SPIRAL_jp
会期:12月7日(金)~12月16日(日)
休館:無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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「近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」 求龍堂

求龍堂より刊行された「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」を読んでみました。

「生誕130年 佐藤玄々/求龍堂」

明治21年に福島県の相馬で生まれた佐藤玄々(朝山)は、宮彫師の父や伯父に木彫を学んでは上京し、山崎朝雲に入門すると、野菜や小動物などの小像から、大型の歴史人物像など、多様な木彫を制作しました。



その玄々の制作の全貌を紹介するのが、「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」(求龍堂)で、時間を追って足跡を辿りつつ、日本彫刻と西洋彫刻を半ば融合した、玄々の独自に辿り着いた木彫の魅力について明らかにしていました。



玄々といえば、日本橋三越本店の1階のホールにそびえ立つ「天女(まごころ)」が圧倒的に知られていますが、何も当初から巨大な木彫を手がけていたわけではありませんでした。日本美術院の同人に参加し、奈良で仏像を研究したのち、1年半パリに留学した玄々は、ブルーデルの美術研究所に通い、ジャコメッティと交流するなど、幅広い分野の彫刻を吸収しては、制作に活かしていました。



また帰国後に取り込んだ動物の作品も可愛らしく、玄々は馬込の自宅周辺にあった牧場で、鶏やウサギ、それに牛などの動物をよく観察していたこともあったそうです。一連の動物彫刻はフランソワ・ポンポンとの類似性も指摘されていて、筍や白菜などの野菜彫刻は、中国の宋元画の蔬菜図に関連性を見る向きもあるそうです。玄々は「東西のイメージを自在に翻案」(解説より)した彫刻家でもありました。



鳩や鳥、それに蜥蜴なども魅惑的ではないでしょうか。極めて写実的に表された蜥蜴の一方、鳩などはかなり形を大胆に捉えていて、振り幅の広い作風も、玄々の面白いところかもしれません。



はじめに朝山と称していた佐藤が、玄々と号を改めたのは、戦後、昭和23年になってからのことでした。昭和26年に三越の社長より、日本橋本店に設置するための記念像を依頼された玄々は、例の「天女(まごころ)」を構想し、弟子たちとともに制作をはじめました。何せ10メートルにも及ぶ超大作だけに、2年の予定で完成するはずが、結果的に10年の歳月が費やされたそうです。本書においても、「天女(まごころ)」の制作プロセス、そして賛否入り混じった評価などについて、細かに触れていました。



なおまた戦前、戦中に関しては、震災や戦争でアトリエを焼失するなどして、多くの作品が失われました。それも、玄々の評価が定まらない一因と言えるのかもしれません。



「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」(求龍堂)には、図版はもとより、複数の論考や資料写真、さらに年譜、文献目録など、玄々の全てが記されていると言っても良いかもしれません。また玄々は過去の展覧会のカタログが完売しているため、現時点で手に入れやすい資料は、この本しかありません。また酒豪であった玄々の酒にまつわるエピソードも記載されるなど、作家の知られざる生き様も伺うことが出来ました。

最後に玄々の展覧会の情報です。現在、生地である福島県の県立美術館にて、「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」が開催されています。



「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」 (福島県立美術館)
会期:2018年10月27日(土)~12月16日(日)
https://art-museum.fcs.ed.jp

同県では初の大規模な展覧会で、木彫、ブロンズ、石膏原型、墨画など、約100点の作品が公開されています。そして本書も、玄々展の公式図録兼書籍として発売されました。

また展覧会は福島会場終了後、来年1月から3月にかけ、愛知県と東京都に巡回し、計3つの会場で行われます。

「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」 巡回スケジュール
碧南市藤井達吉現代美術館:2019年1月12日(土)~2019年2月24日(日)
日本橋三越本店: 2019年3月6日(水)~2019年3月12日(火)



東京会場は「天女(まごころ)」で有名な日本橋三越本店です。おそらく新館7階の催物会場で開かれます。福島で見るのがベストかもしれませんが、玄々畢竟の大作である「天女(まごころ)」は、当然ながら他会場では公開されません。



来春に東京へやって来る展覧会を前にして、一通り玄々について知っておくためにも、有用な一冊となりそうです。

「生誕130年 佐藤玄々/求龍堂」

「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」は求龍堂より刊行されました。

「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」
出版社:求龍堂
発売日:2018/10/31
価格:2484円(税込)
内容:福島県相馬市に生まれた彫刻家佐藤玄々(朝山)は、抜群の写生力と官能性のある生命力、彫刻の枠を超えたスケールの大きい造形が特徴的な近代木彫の大家。大正から昭和にかけて、平櫛田中、石井鶴三、戸張孤雁、中原悌二郎らとともに活躍。「宮彫師」としての日本伝統の彫刻と、「ブールデル」に学んだ西洋彫刻を融合し、近代彫刻として独自のスタイルを築く。あの巨匠横山大観をして天才と言わしめた玄々の知られざる全貌がわかる初めての作品集。
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「石井林響展-千葉に出づる風雲児」 千葉市美術館

千葉市美術館
「生誕135年 石井林響展−千葉に出づる風雲児」
2018/11/23~2019/1/14



千葉市美術館で開催中の「生誕135年 石井林響展-千葉に出づる風雲児」を見てきました。

明治17年に千葉の土気本郷町(現在の千葉市)に生まれた日本画家、石井林響(1884~1930)は、修善寺や品川に移るも、大正末期には大網に画房を築き、歴史画から風景画、風俗画、さらに文人画と画風を変えながら、多くの作品を残しました。

石井林響、本名毅三郎は、千葉の中学時代に画才を見出され、卒業後に上京し、美術を学びました。当初は洋画を志していたものの、途中で日本画へ転向し、明治34年に橋本雅邦に師事しました。

21歳の時、二葉会で銀賞賞を受賞したのが、チラシ表紙を飾る「童女の姿となりて」で、少女に扮装して、熊曾建(くまそたける)を討とうする、ヤマトタケルの姿を描いていました。その表情は凛々しく、右手を開きながら、左手で銅鏡を持っていて、足元には短刀が置かれていました。淡い色彩や細い線など、大変に緻密に描かれた作品で、特に透けた着衣が見事に表現されていました。このように初期の林響は、当時流行していた歴史画を制作しては、評価を得ました。


石井林響「木華開耶姫」 明治39年 千葉県立美術館

明治40年末から約2年間、修善寺温泉の旅館に滞在した林響は、同地で絵の修養に励みました。その頃の一枚が、「弘法大師」で、右手で五鈷杵を持ち、左に念珠を持っては、堂々とした様で座る大師の全身を捉えていました。また背景には、大きな後光が円く広がっていますが、当初は岩窟の中の姿を描くべく、下絵で岩や樹木を表していたそうです。展示では、本画と下絵を見比べることも出来ました。

林響は各方面に活動の場を広げた画家でした。明治42年には安田靫彦や今村紫紅らによる紅児会に参加すると、大正には日本美術院の院友となり、のちに帝展へと移りました。東京の南品川に居を構え、多くの画人らと交流しながら、絵を制作していたそうです。

「漁撈」に目を奪われました。六曲一双の画面に、波が打ち寄せる岩場の中、一人の男が小舟に乗る様子を描いていて、人物を大きく引き延ばすように表していました。また寒山拾得も得意とした画題の1つで、「寒山子」では、爪を伸ばし、不気味な笑みを浮かべる寒山の姿を描いていました。

縦横2メートルは超える「王者の瑞」も目立っていたかもしれません。二曲一双の屏風で、右に聖帝、そして左には背を曲げた麒麟の姿がありましたが、林響は実際のキリンの剥製を写生してから、本画の制作に取り掛かったそうです。


石井林響「総南の旅から 砂丘の夕」 大正10年 山種美術館 (展示期間:11月23日~12月20日)

大正に入って、号を天風から林響へと改めると、それまでの歴史画ではなく、中国風俗画や、南画風の作品を多く描くようになりました。大正期は「カラリスト」と呼ばれるほど色を多用した一方、南画に傾倒すると、モノクロームを基調とした、軽妙な作風へと変化しました。ともかく林響は変わる画家で、ともすると最初期と晩期の作品が、同一の人物によるとは思えないかもしれません。

林響は古画のコレクターでもありました。中でも中国・清の画家、石濤の「黄山八勝画冊」を大正末に購入し、一時期、所有していました。のちに林響の手から離れ、住友家へ移り、現在は泉屋博古館に所蔵され、重要文化財にも指定されています。


石濤「黄山八勝画冊」 中国・清時代 泉屋博古館 (重要文化財)

この「黄山八勝画冊」が絶品でした。画冊ゆえに、一辺は20~26センチほどの小さな作品ですが、細かい線が震えるように広がり、淡い色彩を伴いながら風景を築いていて、覗き込むと、場の空気や臨場感が伝わるかのようでした。(会期中は場面替えで展示されます。)

大正15年に千葉の大網宮谷に画房「白閑亭」を築いて移住すると、さながら南画を極めべく、さらに絵画を描き始めました。またアトリエは自然に囲まれていて、林響も草花を育てつつ、多くの鳥を飼いながら、日々の生活を送っていました。林響は部類の鳥好きでも知られ、実際に作品にも多くの鳥が描かれていました。


石井林響「野趣二題(池中の舞)(枝間の歌)」から「池中の舞」 昭和2年 東京国立近代美術館

この頃を代表するのが、「野趣二題 枝間の歌・池中の舞」ではないでしょうか。2幅の画面には、墨と淡い色彩で、水中の魚や樹木を描いていて、筆は大変に素早く、なおかつ密でもあり、まるで大気が空間を満たすように広がっていました。玉堂の世界を思わせる面があるかもしれません。

こうして再び郷里の千葉で活動していた林響ですが、昭和5年、突然、脳溢血にて亡くなってしまいます。時に48歳でした。


石井林響「薄暮」 大正末期 佐野市立吉澤記念美術館

今でこそ林響は知る人ぞ知る存在かもしれませんが、当時は「西に関雪あり、東に林響あり」と称されるほど、高く評価されていました。言い換えれば「千葉に林響あり」とも呼べるかもしれません。

展示替えの情報です。会期中に一度、一部の作品が入れ替わります。

「生誕135年 石井林響展−千葉に出づる風雲児」出品リスト(PDF)
前期:11月23日(金・祝)~12月20日(木)
後期:12月21日(金)~2019年1月14日(月・祝)

なお林響展に続く、所蔵作品展「林響の周辺」では、林響と関係のあった画家や弟子、それに玉堂の作品などを丹念に紹介していました。もちろん林響展のチケットで観覧出来ます。お見逃しなきようおすすめします。


出品は約130点です。千葉県内の美術館はもとより、伊豆市のほか、個人蔵の作品も多くやって来ています。おおよそ28年ぶりとなる大規模な回顧展です。千葉単独の開催で、巡回はありません。



2019年1月14日まで開催されています。

「生誕135年 石井林響展−千葉に出づる風雲児」 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2018年11月23日(金・祝)~2019年1月14日(月・祝)
休館:12月3日(月)、12月29日(土)~1月3日(木)
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *おなまえ割引:姓が「石井」あるいは名前に「天」「風」「林」「響」がつく方は観覧料2割引。(要証明書)
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口よりC-bus(バスのりば16)にて「中央区役所・千葉市美術館前」下車。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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