「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館

原美術館
「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」
6/16~9/2



原美術館で開催中の「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」を見てきました。

現代美術家の小瀬村真美は、かねてより17世紀の西洋の静物画などを援用した「静物動画」を制作し、時間や空間の構造、それに虚構性など、イメージに対しての様々な考察を続けてきました。



その小瀬村による美術館の初個展です。写真、映像、インスタレーションを問わず、新旧作をあわせて、約30点を出展されていました。



一つの大きな物語を紡ぐかのように展開しているのも、展覧会の大きな特徴と言えるかもしれません。はじまりは「はじまりとおわりの部屋」で、展示作品の「きっかけや残骸」(解説より)が置かれていました。



それらは一見、個々に何ら関わりあうようで、またそうでもないようにも見えるかもしれません。そもそも意味は明らかにされておらず、一周して展示を見終えた際、改めて「点が結ばれる」(解説より)としていました。



続くのが、小瀬村を代表する作品というべき、西洋絵画をモチーフとしたシリーズでした。それらは確かに映像でありながら、絵画とも写真とも似つかぬもので、静止していると思いきや、突如、動き出す場合がありました。



小瀬村は、数ヶ月間で撮影した、数千枚の写真を加工し、時にはデジタルでドローイングを施した上、いわばコマ撮りののようにしてアニメーションに仕上げています。また静物画と同様の構図を、果物や器で再現し、撮影しては、映像に繋ぎ合わせています。それらは実に精巧であるため、今、目にしているのが、そもそも絵画なのか、事物であるのか、分からなくなるほどでした。



17世紀ネーデルラントの画家、コルネリス・デ・ヘームを引用した「餐」では、作品とともに、撮影で用いられたセットも公開されていました。いわば作品の制作プロセスを明らかにする試みで、当然ながらオブジェクトは朽ち果てていました。



「氏の肖像」は、15世紀に描かれた絵画の顔と、実在のモデルの横顔を掛け合わせた作品で、いずれも顔の輪郭を、元の絵の人物に沿うように変形させていました。その様子は、どこか無表情でありながらも、時折、瞬きするなどしていて、さも絵画の人物が世に蘇ったかのようでした。



一転して、海外での滞在経験を作品に表現したのが、「ニューヨークの部屋」でした。ここでは、カメラを振り子に見立て、チェルシーのタウンハウスの一室を映像に仕上げていて、まるで現実の空間が歪み、異次元へと入ったような錯覚にとらわれました。



ラストは「黒い静物画の部屋」でした。中核をなすのは「Drop Off」と題した映像インスタレーションで、広い食卓の上には、楽器、果物、器、グラス、燭台などが置かれていました。必ずしも特定の絵画こそないものの、まさに静物画を思わせる静謐な世界が広がっていました。



しばらく眺めていると、激しいアクションが加わりました。と言うのも、上から突然、皿などの器物が落下し、食卓の上で破損し、さらに他の全てのものもずれ落ちては、下へと崩れていくからでした。ただし動きは非常に遅く、それこそスローモーションを目にしているかのようでした。



結論からすれば、4秒のアクションを、12分まで引き伸ばしたもので、時間と空間を歪ませた、動く静物画というわけでした。しかしながら、そのスピードのゆえか、崩壊のプロセスは、もはや神々しいほどに美しく見えました。全ては、あくまでも、はかなく崩れていきました。



原美術館の内部空間との相性も抜群でした。これほど同館の建物を、作品世界へ引き付けた展示も少ないのではないでしょうか。まるで作品は古くから館内を飾っていたかのようでした。


会期末を迎えました。9月2日まで開催されています。ご紹介が大変に遅くなりましたが、おすすめします。

「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館@haramuseum
会期:6月16日(土)~9月2日(日)
休館:会期中無休。
時間:11:00~17:00。
 *水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
 *20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
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「フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」 目黒区美術館

目黒区美術館
「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」
7/14~9/6



目黒区美術館で開催中の「フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」を見てきました。

近代フィンランド陶芸の形成過程には、ナショナリズムの高まりにおける、ロシアからの独立運動とも関わりがありました。

そうしたフィンランドの陶芸史を追う展覧会が、「フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」で、岐阜県現代陶芸美術館のほか、フィンランド陶磁器の世界的コレクターとして知られる、キュオスティ・カッコネンのコレクションが数多く紹介されていました。

19世紀のフィンランドの陶芸に影響を与えたのは、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動でした。当時のフィンランドは、ロシアからの独立の機運が高まっていて、陶芸においても、ナショナル・ロマンティシズムと呼ばれる独自の展開を見せていました。

アルフレッド・ウィリアム・フィンチは、「花瓶」に、フィンランドの国花として知られるスズランを描きました。一方で、エルサ・エレニウスは「ボウル」に、銅の釉薬を用いて、どこか中国風の器を作り上げました。ほかにもミハエル・シルキンは、猫や兎を具象的に象っていて、中にはキュッリッキ・サルメンハーラの「ボウル」のように、ルーシー・リーを思わせるような器もありました。ともかく作家によって個性が際立っていて、到底、一口に括ることは出来ませんでした。

フィンランドの陶芸の活動を支えていたのは、ヘルシンキの美術工芸中央学校と、アラビア製陶所でした。実際にも、アラビア製陶所の作品が大半を占めていて、同製陶所の果たした重要な役割を目の当たりにすることが出来ました。

オーガニック・モダニズムとピクトリアリズムも、重要なキーワードと言えるかもしれません。前者は、有機的なフォルムを特徴としていて、まるで干し草のように伸びるトイニ・ムオナの「筒花瓶」などが印象に残りました。先のキュッリッキ・サルメンハーラも、オーガニック・モダニズムを代表する作家の1人でした。


*参考図版:ルート・ブリュック「聖体祭」拡大パネル (撮影可)

ルート・ブリュックの「聖体祭」も美しい作品ではないでしょうか。いわゆるピクトリアリズムを牽引した陶芸家で、文字通り、聖体祭の光景を陶板に描きました。さらに「ノアの箱舟」など、宗教的な主題を陶板に表しましたが、一方で、「タイル・コンポジション」など、構成主義を思わせる作品もありました。

ビルゲル・カイピアイネンの「飾皿」は、群青色のすみれを大きく描いた作品で、色彩に花が沈み込み、幻想的な面持ちをたたえていました。さらに、小さなビーズを細かく連ねて鳥を象った「ビーズ・バード」も目立っていました。

ラストはプロダクト・デザインでした。カイ・フランクの食器セットなどは、日本でも人気を集めているかもしれません。

これほどのスケールでフィンランド陶器を見ることからして初めてでした。特にプロダクト・デザイン以前の展開は、日本で詳しく紹介されていたとは言いがたく、大変に興味深いものがありました。また単に作品を紹介するだけでなく、陶芸を取り巻く社会的背景についても踏み込んでいるのも、展覧会の特徴と言えるかもしれません。


マリメッコ・コーナー (撮影可)

エントランスにあるルート・ブルュックの「聖体祭」のパネル画像と、第5章「プロダクト・デザイン」のマリメッコのコーナーのみ撮影も出来ました。椅子に座って記念撮影も可能です。

[フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア 巡回予定]
岐阜県現代陶芸美術館:2018年11月17日(土)~2019年2月17日(日)
山口県立萩美術館・浦上記念館:2019年4月20日(土)~6月30日(日)
大阪市立東洋陶磁美術館:2019年7月13日(土)~10月14日(日)

一部に露出展示もありました。ただし、手荷物が作品にあたってしまっては大変です。あらかじめロッカーに入れておくことをおすすめします。


9月6日まで開催されています。

「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」 目黒区美術館@mmatinside
会期:7月14日(土)~9月6日(木)
休館:月曜日。但し7月16日(月・祝)は開館し、7月17日(火)は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は17時半まで。
料金:一般800(600)円、大高生・65歳以上600(500)円、小中生無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
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「ヒロシマ・アピールズ展 2018」 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
「ヒロシマ・アピールズ展 2018」
8/4~9/9



21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催中の「ヒロシマ・アピールズ展 2018」を見てきました。

1983年より、広島国際文化財団と日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が、「広島の祈りと願い」(解説パネルより)を伝えるべく続けてきた「ヒロシマ・アピールズ」も、今年で21年目を迎えました。



「ヒロシマ・アピールズ」は、毎年、一人のグラフィックデザイナーが、「ヒロシマの心」を訴えるべく、ポスターを無償で作り続けていて、第1回目は、東京オリンピックのポスターでも知られる亀倉雄策が、「燃え落ちる蝶」を提供しました。

その歴代のポスターが、21_21 DESIGN SIGHTへ一堂に会しました。そして今年のポスターは、広告、書籍、展覧会などのデザインを幅広く手がける服部一成が、「疑問符、2018」を制作しました。



まず目を引くのが、第1回目の「燃え落ちる蝶」で、炎に包まれた色とりどりの蝶が、無残にも落下する光景を表していました。直接的に原爆の描写こそないもの、美しさとともに、死を思わせるモチーフは鮮烈で、何とも言い難いを恐怖感を覚えてなりませんでした。



自らを「広島を代弁する資格も力量もない。」とする服部一成は、「疑問符、2018」において、水色の空にはてな雲の浮かぶポスターをデザインしました。広島が問うていることを、それぞれが考え続けるとのメッセージが込められているそうです。



また、一連の「ヒロシマ・アピールズ」のポスターのほかに、13歳の時に被曝し、「平和アピール」などのポスターで、平和への願いを込めた片岡脩の作品もあわせて展示されていました。



原爆投下後の広島を写した、一枚のパノラマ写真に目が止まりました。まさに街は灰燼に帰していて、原爆ドームや幾つかの建物の残骸を除けば、ほぼ何も存在しないと言って良いかもしれません。73年前の出来事ながらも、その惨状はリアルで、しばらく動くことが出来ませんでした。


当初の会期が延長されました。9月9日まで開催されています。

「ヒロシマ・アピールズ展 2018」 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(@2121DESIGNSIGHT
会期:8月4日 (土) ~9月9日 (日)
休館:火曜日。
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
料金:無料。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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「ゴードン・マッタ=クラーク展」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「ゴードン・マッタ=クラーク展」 
6/19~9/17



東京国立近代美術館で開催中の「ゴードン・マッタ=クラーク展」を見てきました。

1970年代にニューヨークを中心に活動したゴードン・マッタ=クラークは、取り壊し前の建物を切断する「ビルディング・カット」などで活動し、没後40年の今もなお、人気を集めています。

意外にもアジア初の大規模な回顧展です。写真、資料、映像など、約200点にて、ゴードン・マッタ=クラークの制作を紹介していました。


「サーカスまたはカリビアン・オレンジ」 1978年 イースト・オンタリオ通り235番地(イリノイ州シカゴ)

ともかく切断に次ぐ切断でした。「サーカスまたはカリビアン・オレンジ」は、結果的にマッタ=クラークが最後に手がけたビルディング・カットで、シカゴ現代美術館が、隣接する住宅を別館に改修する際、作家にプロジェクトを依頼しました。


「無題(ベラス・アルテスの切断)」 1971年 チリ国立美術館

「無題(ベラス・アルテスの切断)」は、チリの国立美術館を舞台にしていて、マッタ=クラークは、屋根に穴あけ、空間を切り開いては、光を取り込む試みをしました。マッタ=クラークの切断した建物は、ほぼ全て失われましたが、殆ど唯一の現存する作品とも言われています。

そもそも1970年代のニューヨークは、戦後の開発により、古いコミュニティが失われ、不況下の元、市の財政破綻とともに、特に貧困層の住環境が悪化していました。そうした中、マッタ=クラークは、時に無断で打ち棄てられた建物の中に入っては、家屋の床や壁を切るビルディング・カットをはじめました。何でも廃屋となった倉庫に侵入し、壁面に大きな穴を開けた「日の終わり」の制作の際は、ニューヨーク市から逮捕状が出たそうです。


「ブロンクス・フロアーズ」 1972〜1973年 マンハッタン、ブルックリン、ブロンクス(ニューヨーク州 ニューヨーク市)

「ブロンクス・フロアーズ」も、マッタ=クラークが友人らとともに空き家へ侵入して制作しました。床や壁の一部を四角く切り抜くことで、階下が奈落として現れる一方、天井は貫かれ、「1つの空間からもう1つの空間へと視界が生み出され」(解説より)ました。


「スプリッティング:四つの角」 1974年 サンフランシスコ近代美術館

ビルディング・カットで最大級の立体作品、「スプリッティング:四つの角」が、初めて日本へやって来ました。やはり「ブロンクス・フロワーズ」と同様、空き家を切断していて、建物に約2.5センチ間隔で2本の線を引き、電動のこぎりで線を貫いては、隙間の素材を取っ払いました。


「スプリッティング」 1974年 東京国立近代美術館

さらに土台のブロックを除き、ジャッキで支え、また後ろ側を下へ降ろすなど、単に切断といえども、かなり複雑なプロセスを行なっていました。破壊とは異なり、切断は、建物や空間を再構築する取り組みでもあります。空き家などの打ち捨てられた建物を、切断によって、また異なった空間へと転化させていると言えるかもしれません。

マッタ=クラークは、時に人々や物が行き交う、ストリートを舞台として活動しました。都市空間に潜む「隙間や余剰」(解説より)に着目し、作品を制作しました。


「ごみの壁」 1970年/2018年

その1つが「ごみの壁」で、まさに街で集めて来たゴミを、木製の型枠にはめ込んでは、石膏などで固めた作品でした。実際には、パフォーマンスの舞台として使用され、最後は取り壊し、ゴミのコンテナへと捨てられました。


「ごみの壁」 1970年/2018年

それを東京で再制作した作品が、美術館の前庭に展示されていました。テレビや携帯電話、時計にパソコン、さらにタイヤやゲーム機などが、セメントなどで固められていました。早稲田大学建築学科の学生と共同で制作されたそうです。


「フレッシュキル」 撮影:1971年/編集:1972年 ステタン島フレッシュキルズごみ埋立地(ニューヨーク州 ニューヨーク市)

一方で、本来的に機能を持っていたものを、ゴミへと変えたのが、「フレッシュキル」でした。マンハッタンの南、ステタン島にあった、ごみ埋立地を舞台としていて、マッタ=クラークの運転する小型トラックが、ブルドーザーに衝突し、さらに今度はブルドーザーによってスクラップとされ、埋め立てられるという作品でした。


「フレッシュキル」 撮影:1971年/編集:1972年 ステタン島フレッシュキルズごみ埋立地(ニューヨーク州 ニューヨーク市)

これが驚くほど迫力のある映像でした。車がぶつかり、ブルドーザーによって、じわじわと、それでいて木っ端微塵にスクラップにされる光景は、確かに「暴力的」(解説より)ながらも、もはやスリリングと言えるのではないでしょうか。思わず手に汗を握るほどでした。


「クロックシャワー」 1973年/74年 ブロードウェイ346番地、マンハッタン(ニューヨーク州 ニューヨーク市)

時にユーモアを感じる点があるのも、マッタ=クラークの魅力であるのかもしれません。一例が「クロックシャワー」で、マッタ=クラークは、ニューヨーク市所有のビルの時計台でパフォーマンスを行いました。それは、時計台に登っては、歯を磨き、シェービングクリームでひげを剃り、泡に包まれて横になった後、水のシャワーを浴びるものでした。


「クロックシャワー」 1973年/74年 ブロードウェイ346番地、マンハッタン(ニューヨーク州 ニューヨーク市)

日常的な動作を、時計台の上で行う様は、何とも滑稽で、「ばかばかしさ」(解説より)とありましたが、笑ってしまうほどでした。


「ゴードン・マッタ=クラーク展」会場風景

1978年5月、マッタ=クラークは結婚するも、その年の8月に、僅か35歳の若さで亡くなってしまいます。膵臓がんだったそうです。


「オフィス・バロック」模型(縮尺1:8) 2018年

常に街へと繰り出し、切断し、またパフォーマンスをし続けたマッタ=クラークに、奇妙なまでの共感を覚えたのは私だけでしょうか。早く亡くなったのは残念ではありますが、マッタ=クラークの生きた、1970年代のニューヨークのダイナミズムが伝わるような展示と言えるかもしれません。「プレイグラウンド(公園)」をコンセプトとした会場構成も効果的でした。


「フード」の記録 1972年

マッタ=クラークが運営に参加した、レストラン「フード」に関する資料もありました。料理の消化のプロセスから、都市のコミュニティにも関心があったそうです。


「ゴードン・マッタ=クラーク展」会場風景

会場内の撮影も出来ました。


9月17日まで開催されています。おすすめします。

「ゴードン・マッタ=クラーク展」 東京国立近代美術館@MOMAT60th) 
会期:6月19日(火)~9月17日(月・祝)
休館:月曜日。
 *但し7/16、9/17は開館。7/17(火)は休館。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜・土曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般1200(900)円、大学生800(500)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *リピーター割引:使用済み入場券を持参すると、2回目以降は特別料金(一般500円、大学生250円)で入場可。
 *本展の観覧料で当日に限り、「MOMATコレクション」も観覧可。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館

サントリー美術館
「琉球 美の宝庫」 
7/18~9/2



サントリー美術館で開催中の「琉球 美の宝庫」を見てきました。

15世紀に統一王朝が誕生し、長らく海洋王国として繁栄した琉球には、独自の美術や工芸の文化が花開きました。

その琉球に関した文化財をまとめて紹介するのが、「琉球 美の宝庫」で、中でも琉球を治めてきた尚家に伝わり、2006年に一括して国宝に指定された、「琉球国王尚家関係資料」の一部も展示されていました。

冒頭は染織でした。そもそも染織は、王国を「象徴する美」(解説より)であり、王族や貴族は、型紙を用いて模様を染める紅型を着用していました。ともかく目を引くのは、朱やオレンジなどの色彩で、大陸に由来した鳳凰や龍、それに日本的な桜や梅などを鮮やかに表現していました。また一部には、幾何学的なパターンもあり、花鳥風月云々だけではない、幅広い意匠を見ることも出来ました。琉球には、中国や東南アジアから伝わった織物も少なくありませんでした。

同地で制作された絵画、つまり琉球絵画も、1つの目玉と言えるかもしれません。王府には、中国や日本の絵画も集められていて、お抱え絵師らは、それら参照しながら、多様な作品を描いていました。中でも、王府から中国の福州に派遣された、福州画壇と言われる作品に、独特な味わいが感じられました。


「花鳥図」山口宗季(呉師虔)筆 1715年 大和文華館 *展示期間:8/8~9/2

山口宗季(呉師虔)の「花鳥図」に魅せられました。紅白の花が爛爛と咲き誇る中、小さな鳥が群れる光景を描いていて、鮮やかな色彩だけでなく、花弁や葉の繊細な筆触も目を引きました。琉球を代表する絵師であった山口は、薩摩や京都にも名を轟かせ、制作の依頼を受けました。


孫億の「花鳥図巻」も美しい作品でした。20種類の蝶と50種の植物を描いた画巻で、琉球では「永遠の手本、国用の宝物」と称されました。孫億は福建省で活動していて、琉球の画家らも学んだことから、中国画の受容を位置付けた人物としても知られています。なお、琉球絵画の多くは、沖縄戦で甚大な被害を受け、必ずしも全容は明らかではありません。

北斎の「琉球八景」も興味深いのではないでしょうか。おそらくは、中国の冊封使、周煌のまとめた「琉球国志略」を元にして描いた連作で、南国風の植物とともに、北斎なりのアレンジなのか、富士山らしき山の姿も見ることが出来ました。当時の江戸の人々は、使節団の往来もあり、琉球に対する関心が強く、それを反映した描いた作品ではないかとも言われています。



ハイライトは「琉球国王尚家関係資料」に関する一連の文化財でした。金杯や銀碗などから成る「美御前御揃」は、儀式や祝宴に用いた食器のセットで、いずれも漆に金箔を押した沈金を施した台の上に載せられていました。

なお、一連の資料は、琉球処分の際、一部が東京に移されたもので、結果的に沖縄戦の被害を受けることはありませんでした。とは言え、沖縄戦では、先の琉球絵画をはじめ、首里城しかり、数多くの文化財が失われました。今、我々が目に出来る沖縄の美術工芸品が、実は一端に過ぎないことを考えると、あまりにも残念でなりませんでした。

ラストは琉球の漆芸でした。そもそも同地における漆芸品は、重要な輸出品であり、日本や中国にも送られました。やはり鮮やかなのは、貝を貼った螺鈿の品々で、龍などの吉祥主題を七色で表現していました。

最後に展示替えの情報です。会期は5つに分かれていて、8月22日より最終の期間に入りました。

「琉球 美の宝庫」出展リスト(PDF)

チラシ表紙の国宝「王冠(付簪)」が公開されるのも、8月22日から展示末日までです。そのタイミングを狙って出かけるのも良いかもしれません。

これほどまとまって琉球の美術品を見ること自体がはじめてでした。9月2日まで開催されています。おすすめします。

「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:7月18日(水)~9月2日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *8月14日は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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「フェルメール光の王国展 2018」 そごう美術館

そごう美術館
「フェルメール光の王国展 2018 フェルメール全37点のリ・クリエイト(複製画)で350年前の謎を解く」 
7/28~9/2



オランダの画家、ヨハネス・フェルメールの絵画を高精細に再現した、リ・クリエイト、すなわち複製画が、横浜のそごう美術館にて公開されています。

それが「フェルメール光の王国展 2018」展で、帰属に議論のある作品を含め、全37点の複製画が一堂に会しました。


「マリアとマルタの家のキリスト」

いずれも最新のデジタルマスタリング技術により、当時の色調やテクスチャを推測して作られた複製画で、実寸大であり、額までも所蔵美術館と同様に施されていました。


左:「絵画芸術」/右:「赤い帽子の女」

最も興味深い点は、作品の大きさを把握出来ることでした。と言うのも、国内ではフェルメールをまとめて見る機会が極めて少ない上に、そもそも全ての作品を一度に目にすることは叶いません。しかし、「フェルメール 光の王国展」では、複製とはいえ、制作年代順に作品を並べているため、それぞれの大きさを見比べられました。


「窓辺で手紙を読む女」

また、作品自体の再現度も思いの外に高く、フェルメール画に特有な光の粒の表現も細かに見ることが出来ました。もちろん、作品の前に停止線もなく、まさに目と鼻の先で観賞することも可能でした。


「デルフトの眺望」

やはり、充実しているのは、「デルフトの眺望」や「絵画芸術」で、特に前者は、マウリッツハイス美術館から門外不出とされるために、実物を見るためには、オランダのデン・ハーグへ行くほかありません。


「バロック・ギター」

前半の複製画に続くのが、フェルメールが作品に描いた楽器の展示でした。ここでは、「音楽の稽古」や「ヴァージナルの前に立つ女」などに登場するヴァージナルをはじめ、「ギターを弾く女」のバロック・ギターなどが並べられていました。いずれの当時のものではなく、近年に製作された楽器でした。


「手紙を書く女と召使い」一部再現展示

後半はフェルメールについての解説パネルで、ラストには、デルフトタイルが床面近くに置かれた、「手紙を書く女と召使い」の一部を再現したコーナーがありました。


「合奏」

1990年に盗難の被害にあり、今も行方不明である「合奏」の複製画も目を引くのではないでしょうか。会場内は、ほぼ全ての撮影が可能で、接写も出来ました。


左:「女と召使い」/右「天文学者」

さて、「フェルメール 光の王国展」として思い出すのは、2012年、当時の銀座ソトコトロハス内にオープンした「フェルメール・センター銀座」での展覧会でした。


「天文学者」(拡大)

やはり、同じく実寸大のフェルメール画の複製を紹介していて、アトリエ再現コーナーもありました。今回のように楽器の展示はなかったかもしれませんが、ほぼ同一の内容と捉えて差し支えありません。


「天秤を持つ女」(拡大)

以来、「フェルメール 光の王国展」は、1つのパッケージとして、全国各地を巡回しているようです。


「真珠の首飾りの少女」

秋に上野の森美術館で展覧会を控えた、フェルメールへ親しむための、1つの良い機会と言えるかもしれません。ちょうど夏休みの最中だけあってか、場内はファミリーで賑わっていて、記念撮影を楽しむ方も多く見受けられました。ジュニア版のガイドも充実していました。


「ヴァージナル」

9月2日まで開催されています。*作品写真は全て複製画。

「フェルメール光の王国展 2018 フェルメール全37点のリ・クリエイト(複製画)で350年前の謎を解く」 そごう美術館
会期:7月28日(土)~9月2日(日) 
休館:会期中無休。
時間:10:00~20:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
交通:JR線横浜駅東口よりポルタ地下街通路にて徒歩5分。
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「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」 東京都美術館

東京都美術館
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」
7/21~10/8



東京都美術館で開催中の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」を見てきました。

誰しもが食し、日常の生活に根ざしたお弁当。自他の調理を問わず、人気の駅弁しかり、好みの弁当を挙げるとすれば、1つや2つで収まらないかもしれません。

その弁当を入れるための容器、すなわち弁当箱から展示がはじまりました。江戸時代の花火弁当から、明治・大正時代の白陶や楼閣型の弁当箱、また輪島塗りやブリキの手提げ弁当箱、さらにはブータンやポルトガルなど、アジア、ヨーロッパ、アフリカの弁当箱などがずらりと揃っていました。

江戸由来の変わり種として、舟型や碁盤型、宝袋型の弁当箱も面白いのではないでしょうか。国内の弁当箱に関しては、お辧當箱博物館、北区飛鳥山博物館、新宿区立新宿歴史博物館、ないし個人の所蔵で、海外の弁当箱は、国立民族学博物館のコレクションでした。

一部の弁当箱については、触れることも可能でした。見て、触って、意匠に多様な弁当箱を体感的に知ることが出来ました。

さて、後半は、弁当箱から一転し、現代美術家らが登場しました。そもそも弁当は、常に一人で食すわけではなく、宴などの共食の場でも用いられました。また、一人用の弁当箱であっても、作り手と食べる人を繋ぐ、言わばコミュニケーションのツールでもありました。

そのコミュニケーションこそが、展覧会の最大のテーマと言えるかもしれません。おべんとうを切っ掛けに、コミュニケーションの諸問題について取り組んだ、日本と海外の8名の作家が、主に参加型を志向したインスタレーションを出展していました。


小倉ヒラク「おべんとうDAYS」 2018年

「発酵デザイナー」として、発酵菌の働きをデザインとして可視化しようとする、小倉ヒラクは、アニメーションの「おべんとうDAYS」を制作しました。「歌って踊るお弁当」がコンセプトで、ポップなメロディーを聞いていると、不思議と見ている側も踊りたくなるような作品でした。弁当の楽しみは万国共通として、弁当の作る文化の多様性についても踏み込んでいました。

出張料理「あゆみ食堂」として、イベントや展示会などでケータリングを行う大塩あゆ美は、「23人の手紙からうまれたレシピ」を出展していました。これは「お弁当を贈りたいのは誰ですか?」として、全国から寄せられたレシピを元に考案した弁当を写したプロジェクトで、実際に弁当箱ともに投稿者へ送り届けられました。


小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年

美術家、小山田徹の「お父ちゃん弁当」は、小学生の姉が、幼稚園の弟のためのお弁当の指示書を書き、父が弁当に仕立てる記録で、「火山」や「どぶうさぎ」、「みちの下」といった、風代わりな指示を、何とか弁当として作った様子が写されていました。


小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年

そのお題を記入できるスペースもありました。どのようなお題を考えるのかも楽しいのではないでしょうか。


マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年

オランダのイーティング・デザイナーのパイオニアであるマライエ・フォーゲルサングは、「intangible bento」において、お弁当の精霊を頼りに、弁当の中に入りこむインスタレーションを作り上げました。


マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年

「精霊フォン」なる音声ガイドを頼りに、恐らくは弁当の世界観をイメージしたリボンの森の中を歩く体験は、どこか摩訶不思議でもあり、時折、現れる「お弁当の精霊」の囁きから、弁当を巡るコミュニケーションや、社会の環境問題などについて喚起させられました。


マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年

リボンの森は迷路で、ルートも決まっていないため、自由に歩くことが出来ました。弁当を探検する発想からして、新奇と言えるかもしれません。


北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年

美術家の北澤潤は、会場内にマーケットを作り上げました。その名は「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」で、東南アジアなどの屋台を思わせるブースに、玩具、日用品、装身具、衣服、文房具のほか、古びた扇風機やカセットテープ、さらには一見するとガラクタとしか言えないようなものが所狭しと並んでいました。


北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年

実はこれらは、様々な人々からおすそ分けによって集まった品々で、会場でも「おすそわけリスト」に記入し、実際に持ち込むことも出来ました。もちろん持ち帰ることも可能です。


北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年

おすそ分け用の箱まで用意されていましたが、中には車でなければ持ち帰れないほどに大きいものもありました。


北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年

北澤は弁当について考えていた時、インドネシアの島に滞在していて、日本の弁当とは、中身や所作のかけ離れたものの間にある、「おなじ」を探したかったと語っています。


北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年

まさに「おすそわけ」こそ、モノを繋いでの、人同士のミュニケーションではないでしょうか。何か持ち込むものを持って出かけるのも良いかもしれません。


「BENTO おべんとう展」会場風景

最初に「おべんとう展」なる展覧会が開催されると聞いた際、率直なところ、内容について全く想像も出来ませんでした。しかしながら、現代アーティストらの切り口には創意があり、意外な発見も少なくありません。思いの外に楽しめました。



同時開催の「没後50年 藤田嗣治展」のチケットを提示すると、当日料金から一般300円引きとなります。


一部の作品のみ撮影が出来ます。10月8日まで開催されています。

「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」@bento_tobi) 東京都美術館@tobikan_jp
会期:7月21日(土)~10月8日(月・祝)
時間:9:30~17:30
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。9月18日(火)、25日(火)。但し8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開館。
料金:一般800(600)円、大学生・専門学校生400円、65歳以上500円。高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土曜、翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
*10月1日(月)は「都民の日」により無料。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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「第12回 shiseido art egg 宇多村英恵展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第12回 shiseido art egg 宇多村英恵展」
8/3~8/26



資生堂ギャラリーで開催中の「第12回 shiseido art egg 宇多村英恵展」を見てきました。

1980年に生まれた宇多村は、ロンドン大学を卒業後、しばらく同地に滞在し、「文明の進歩」(解説より)を考察すべく、映像やパフォーマンス、それにインスタレーションを制作してきました。



会場に忽然と現れたのが、大きな黒い箱で、展覧会のタイトルでもある「Holiday at War」、すなわち「戦争と休日」と名付けられた作品でした。青白い光に包まれていて、ちょうど上から3分の1付近に写真がはめ込まれていました。近づくとリゾート地のホテル、あるいはマンションのような施設が写されていることが分かりました。



その部分は、まるで灯台の明かりのような光の旋回によって、明るくなったり、暗くなったりしていて、ぐるりと一周、追いかけていると、海辺のリゾートの大パノラマを前にしているかのようでした。しかし、その時点で、そもそも一体、どの場所を表しているのか、皆目、見当もつきませんでした。



箱の周囲の壁にヒントがありました。と言うのも、そこには宇多村による、日本語と英語のテキストが2段で記されているからでした。

「私は海に沿って歩いている。ドイツのリューゲン島のプローラという地にある浜辺だ。海岸の目の前には、4.5kmの長さに及ぶ巨大な建物がそびえ立っている。」 *会場のテキストより



それは、古くからの保養所でもあったバルト海に面したリューゲン島に、ナチスが築き上げた、4.5kmにも伸びた建物でした。ナチスは、プロパガンダのために、労働者のリゾートを作るべく、一連のビルを建設し、約2万名もの人々が休暇を過ごせるように計画しました。しかし、第二次世界大戦がはじまると、建設は中止され、一時は疎開した人々を受け入れたものの、ソビエト軍によって占領されると、基地として使用されました。その後、結果的にビルは長らく放置されました。「プローラの巨人」とも呼ばれていたそうです。



しかし、2006年頃、再利用の計画が持ち上がり、2011年には一部に宿泊施設が開業しました。つまり、その光景が、窓の部分に写されていたわけでした。



「プローラの巨人」の建築家をコンペで選んだのが、ヒトラーの寵愛を受けた、アルベルト・シュペーアでした。彼は、ナチスの党主任建築家として活動し、パリ万博のドイツ館やニュルンベルクの党大会会場を設計した上、政権では軍需相を担ったこともありました。



その後、戦争が終結すると、ニュルンベルク裁判で起訴され、戦犯として20年の禁固刑を言い渡されました。そしてシュペーアが投獄された独房と、余暇のためのプローラの部屋のサイズが、殆ど同じであり、その部屋こそが、まさに会場に置かれた黒い箱と同じ大きさでした。

「黒い箱と壁との間の空間を、私は「人類の彼岸」と呼びます。この作品では、鑑賞者は、歩きながら、時空間を越え、思考する歩行者になっていくでしょう。」 *解説より



一つのシンプルな黒い箱からは、予想もし得ないような、時間を超えた、大きな物語が紡がれていました。宇多村は自らの展示手法を「空間シネマ」と呼んでいるそうですが、巡り行く景色を追っていると、確かに一つの映画に入り込むかのような錯覚に陥りました。

「第12回 shiseido art egg展」
冨安由真展:6月8日(金)~7月1日(日)
佐藤浩一展:7月6日(金)~7月29日(日)
宇多村英恵展:8月3日(金)~8月26日(日)


8月26日まで開催されています。 *写真は全て「Holiday at War」

「第12回 shiseido art egg 宇多村英恵展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:8月3日(金)~8月26日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」 世田谷文学館

世田谷文学館
「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」 
7/14~9/17



世田谷文学館で開催中の「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」を見てきました。

1948年に東京で生まれ、アートディレクターや映画監督としても活動する信藤三雄は、数多くのミュージシャンのCDジャケットを手がけ、延べ1000枚も作り上げました。



ジャケットが世田谷文学館の展示室を埋め尽くしました。ともかく右を向いても、左を向いても、無数のジャケットが連なっていて、CDに限らず、レコードもありました。空間のプロデュースは信藤三雄が自ら行い、会場デザインを、舞台美術や住宅設計などで知られる、建築家でデザイナーの遠藤治郎が担いました。



信藤は、1984年、松任谷由実のシングルのデザインを担当し、本格的にジャケットのデザインの仕事に関わるようになりました。その後、ピチカート・ファイヴのシングル、「ピチカート・ファイヴ・イン・アクション」をきっかけに、ピチカートの多くのCDやレコードのアートディレクションを手がけました。



そしてサザンオールスターズ、Mr.Children、MISIAなどのデザインも行い、同時代の音楽シーンをデザインの面からも牽引しました。いずれもヒット曲が多く、馴染みのあるジャケットも少なくありませんでした。



ライターの故・川勝正幸は、信藤三雄をして、「ミュージシャンと一緒に走っている勢いがデザインにもある。要するに同時代性を感じさせる」(*)と評したそうです。*展覧会リリースより



私も10代や20代前半の頃、Mr.ChildrenやMy Little LoverのCDを購入しては、繰り返し聞いていたことを思い出しました。



若い頃に聞いた音楽は、同時代の体験とともに、耳と体に染み付いているものです。ジャケットを前にすると、かの頃の、どこか甘酸っぱく、懐かしい思い出が、色々と蘇ってくるのを感じました。



信藤が監督したミュージックビデオの映像も上映もありました。(全8本)さらに書道家としても活動していて、作品の展示も行われていました。



会場内、動画、フラッシュ以外であれば、全ての撮影も出来ました。



ネット配信が主流となりつつある中、「ジャケット買い」なる言葉は、死語となりつつあるかもしれません。しかし、信藤三雄のジャケットの生み出した、力強いまでの熱気に、終始、圧倒されました。


9月17日まで開催されています。

「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」 世田谷文学館@SETABUN
会期:7月14日(土)~9月17日(月・祝)
休館:月曜日。但し7月16日(月・祝)および9月17日(月・祝)は開館し、7月17日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般800(640)円、大学・高校生・65歳以上600(480)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:世田谷区南烏山1-10-10
交通:京王線芦花公園駅より徒歩5分。
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「いちばんやさしい美術鑑賞」 青い日記帳

アートブロガーの草分け的存在で、いつもお世話になっている「青い日記帳」のTak(@taktwi)さんが、8月6日、ちくま新書より「いちばんやさしい美術鑑賞」を上梓されました。

「いちばんやさしい美術鑑賞/青い日記帳/筑摩書房」

「いちばんやさしい美術鑑賞」は、年間、数百の展覧会をご覧になり、日々、ブログ「青い日記帳」を更新されているTakさんが、「美術の骨の髄まで味わいつくす」べく、書かれたもので、構想から2年越し、全250ページにも及ぶ、大変な労作になっています。



内容は、大きく「西洋美術を見る」と、「日本美術を見る」の二本立てで、グエルチーノ、フェルメール、モネ、セザンヌ、ピカソ、それに雪舟、光琳、若冲、松園など、各作家の作品を引用し、Takさんならではの鑑賞のコツ、ないし楽しみ方をまとめていました。全ての作品が、国内の美術館のコレクションであるのも特徴で、本を読んだ上、実際の作品を鑑賞するのにも、あまり障壁はありません。また、おおまかに年代順に取り上げられているため、美術の流れを掴み取ることも出来ました。



はじまりの第1章は、グエルチーノでした。2015年の春に国立西洋美術館で回顧展が開催され、Takさんの言われるように、一般的に「聞いたこともない画家」でありながらも、作品の第一印象を大切して見る点や、キャプションの読み方などについて触れ、画中の「手」こそ、鑑賞のポイントであると書かれています。



いわゆる美術の解説本ではないのが、最大の特徴と言えるかもしれません。前書きに、「素人による素人のための指南書」と記されているように、Takさん独自の視点から、美術の見かたのヒント、ないしコツについてのアドバイスをされています。筑摩書房の編集者である大山悦子さんも、「美術史家の書くことはか書かなくて良い。あくまでも鑑賞術を書いて欲しい。」として、Takさんに執筆を依頼されました。よって、編集の段階で、Takさんの書かれた専門的な内容の部分を、あえて削ることもあったそうです。



そもそも執筆の切っ掛けになったは、先に三菱一号館美術館の高橋明也館長が上梓した「美術館の舞台裏」にありました。ここで、打ち上げと題し、Takさんを交えた飲み会的な会合で、大山さんから新書執筆への依頼がなされました。当初、Takさんも社交辞令と思っていたものの、その後、正式にメールでお願いがあり、書くことを決めたそうです。

元々、大山さんはTakさんのブログを読んでいましたが、「美術館の舞台裏」が、「青い日記帳」に取り上げられたことにより、爆発的に本が売れたと言います。そこで、「青い日記帳」の勢いを目の当たりにした大山さんは、ブロガーでもあるTakさんのような、プロではない視線による美術の本があれば面白いのではないかと思い、筆をとってもらうことになりました。ブログで、「アート好き」が前面に出ていることに、とても好感を持たれていたそうです。



執筆に際しては、まず第1章、すなわちグエルチーノの章から書かれ、一部に構成上の入れ替えがあったものの、順番通りに15章まで書き進められました。第1章が完成した際、大山さんは、率直に面白いと感じられたそうです。また、写真作品(グルスキー)や浮世絵を入れるのかについて、色々と議論があったものの、最終的にはTakさんが書きたい作品で、章立てが決まりました。

しかし、さすがに紆余曲折あり、当初の期日であった2017年の8月末に間に合いませんでした。中でも、第12章の曜変天目は時間がかかり、最後の最後まで取り掛かっていたそうです。しかし、そもそも大山さんは、腰を据えて書くのであれば、新書は2年ほどかかると言い、結果的に、7~8回は熟読の上、校閲へのチェックがなされました。編集に際しては、内容を縮小するよりも、節を入れ替えるなどの、再構成が多かったそうです。

Takさんが、15作品にて、特に好きに書いたのが、第11章の若冲で、セザンヌも積極的に進めたものの、大山さんは面白さを伝えるのが難しいと考えておられたそうです。また、第9章の永徳も楽しく筆が進み、第13章の並河靖之は、当初、大山さんは不要と考えたものの、東京都庭園美術館での展覧会を見て、書いてもらうことが決まりました。元は224ページで構想され、最終的には250ページに達しました。



現代美術では、美人画で有名な池永康晟さんが取り上げられました。ここでTakさんは、池永さんについて、「昔の浮世絵につながる(美人画の伝統や系譜)を現代版にアレンジされている」と言い、美人画に新しい流れが生まれていると指摘されました。第11章の上村松園から、最終、第12章の池永康晟さんへの展開は、美人画の系譜を追う点でも、興味深いかもしれません。

本書の核心は鑑賞のアドバイスにありました。「美術鑑賞は妄想のラビリンス」、「モネ絵画の抜け感」、「たくさん見ることこそ面白さに繋がる」、「複眼的な視点で立体的に鑑賞する」、またあえて「好きか嫌いかで見る」や、「作品の一つの色に着目して見る」、「分からない作品はとことん付き合って見る」、などは、長年、ファンとして美術に接してきた、Takさんならでのオリジナルな視点ではないでしょうか。また、曜変天目には炊きたての白米を盛り付けたいとされるなど、作品から様々なイメージを膨らませて見る点も、面白く感じられました。



また「WEBで一目惚れ」し、実際の作品を見ることの意味を書かれるなど、美術とWEBとの関係にも踏み込まれていました。この辺りは、常日頃、ブログで、美術について書きとめられているTakさんの姿勢が現れているのかもしれません。

本編とあわせて、2つのコラム、「便利な美術鑑賞必需品」と、「美術館の年間パスポート」も、エンタメとしての美術の見かたを知る際に有用でした。クリアファイル、単眼鏡などは、私も常に持ち歩くようにしています。

たまにTakさんと展覧会をご一緒していると、初めから漫然ではなく、要点を絞って見ておられる印象があります。この「いちばんやさしい美術鑑賞」も同様で、温和な語り口ながらも、時に熱が入り、かと思えば、さり気なく脱線的なエピソードを交えるなど、実にメリハリのある内容になっていました。ブログ同様に、読み手を引き込む文章で、相当の量ながらも、最初から最後まで、一気に読むことが出来ました。

編集の大山さんは、本書を読み、やはり「アート鑑賞は作品への愛がないと駄目だということをよく学んだ。」とし、改めて作品を見る面白さを学んだと語っています。そして、新書という形態を取ることで、美術に関心が薄い人にも、気軽に読まれることを望まれました。



なお、内容は前後しますが、本の刊行に際し、「青い日記帳」のTakさんと、編集を担当された筑摩書房の大山悦子さんに、書籍の内容や、刊行へ至った経緯、さらにはTakさんの個人的な美術への関心などについてインタビューしました。

その詳細は、同じくインタビューを行った、@karub_imaliveさんの「あいむあらいぶ」に前後編へ記載されています。

ブログ「青い日記帳」Takさんにいろいろインタビューしてみた!~新書『いちばんやさしい美術鑑賞』出版によせて~(前編)
ブログ「青い日記帳」Takさんにいろいろインタビューしてみた!~新書『いちばんやさしい美術鑑賞』出版によせて~(後編)

2時間以上のロングインタビューとなりましたが、たくさんの興味深いお話をお聞きすることが出来ました。あわせてご覧下さい。(本エントリでもインタビューを反映してあります。)


なお、刊行に合わせ、Takさんのトークショーも、各種、開催されます。

【『いちばんやさしい美術鑑賞』×美術書カタログ『defrag2』ダブル刊行記念トークイベント カリスマ美術ブロガーが語る《もっと美術が好きになる!》】
日時:2018年08月17日(金) 19:30~
出演:中村剛士(アートブログ「青い日記帳」主宰)、ナカムラクニオ( 「6次元」店主・アートディレクター)
会場:ジュンク堂書店池袋本店 9Fギャラリースペース
住所:東京都豊島区南池袋2-15-5
参加費:無料
申込み:要予約。ジュンク堂書店池袋本店1階サービスコーナーもしくは電話(03-5956-6111)にて。
URL:https://honto.jp/store/news/detail_041000026934.html

まずは、ジュンク堂書店池袋本店でのトークで、6次元のナカムラクニオさんを迎え、「いちばんやさしい美術鑑賞」と美術書カタログ「defrag2」について語られます。事前の予約が必要です。(無料)*本イベントは定員に達したため、受付が締め切られました。

【美術館に出かけてみよう! ~いちばんやさしい美術鑑賞~】
日時:2018年8月29日 19:00~20:30
出演:『青い日記帳』Tak氏(中村剛士氏)、株式会社筑摩書房 編集局第一編集室 大山悦子氏
会場:DNPプラザ(市ヶ谷)セミナー会場
住所:東京都新宿区市谷田町1丁目14-1 DNP市谷田町ビル
集客人数:100名(先着順)
参加費:無料
URL:https://rakukatsu.jp/maruzen-event-20180806/

申込みは下記のURLから↓↓
https://peatix.com/event/416560/view

続くのが、「いちばんやさしい美術鑑賞」の編集者である大山悦子さんを迎えてのトークで、本の内容に触れながら、西洋、日本美術を問わず、Takさんおすすめのアート鑑賞法などについて語られます。出版に際しての苦労話などがお聞き出来そうです。


インタビューに際し、Takさんから読者の皆さんへのメッセージを頂戴しました。

takさん:一つのきっかけになってくれればいいなと。これの見方は、正しいとか、正しくないとか、これをしなくちゃいけないと強制的なものではなくて、こんなふうにしたらいいんだよ的な感じで書いてあるので、真似する必要は全然ないんですけど、この本を読んで、もし面白いなと思ったら、実際に絵の前に立って見て下さいね。

まさに、美術鑑賞の見かたを楽しく学び、新たなヒントを与えてくれる「いちばんやさしい美術鑑賞」。私も改めて熟読の上、作品や絵の前に立ってみたいと思いました。

「いちばんやさしい美術鑑賞」(ちくま新書)「青い日記帳」著 
内容:「わからない」にさようなら! 1年に300以上の展覧会を見るカリスマアートブロガーが目からウロコの美術の楽しみ方を教えます。アート鑑賞の質が変わる必読の書。
新書:全256ページ
出版社:筑摩書房
価格:994円(税込)
発売日:2018年8月6日
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「棚田康司 全裸と布」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「棚田康司 全裸と布」
8/1〜9/1



ミヅマアートギャラリーで開催中の「棚田康司 全裸と布」を見てきました。

1968年に兵庫県で生まれ、一木にて少年少女の像を作り続けてきた棚田康司は、今回の「全裸と布」に際し、以前とは異なった大人の裸婦像を出展しました。



ぐるりと空間を一周、取り囲むように並ぶのが、一連の裸婦像で、木の豊かな質感を露わにしていました。しかし、目を凝らすと、細部に小さな金属板のような欠片で、装飾がなされていることも分かりました。



その多くは、タイトルが示すように全裸で、一部には布をまとっている像もありました。また、中にはトルソーであったり、木の表面に絵具のような液体が塗られていることも見て取れました。さらに、爪にはマニュキュアのように色がついている像もいました。



「力強く世界を立ち上げる」(*)という言葉が、心に響きました。祈りや平穏とともに、何とも言い難い生命感を感じたのは私だけでしょうか。やや誇らしげな面持ちで、上を見据える裸婦の姿からは、どこか内面の強い意思が滲み出ているようにも見えました。



棚田の展覧会で思い出すのが、2012年に練馬区立美術館で行われた「棚田康司 たちのぼる。展」でした。

「棚田康司 たちのぼる。展」 練馬区立美術館(はろるど)

旧作から新作の木彫、またスケッチを交えた、大規模な個展で、明暗のある空間を効果的に用い、各々の木彫が、どこか関係し合うかのように置かれていたのが、とても印象に残りました。青幻舎より作品集も刊行されました。



棚田は、昨年夏に伊丹市立美術館で開催されたO JUNとの二人展で、「結果的には辟易するほどに自分自身と向き合う機会になった」(*)と振り返っています。



新たな展開を示す展覧会と言えるかもしれません。あどけない少年や少女とはまた違った、美しい裸婦の姿にも魅力を感じました。


9月1日まで開催されています。おすすめします。*「」内はギャラリーサイトより

「棚田康司 全裸と布」 ミヅマアートギャラリー@MizumaGallery
会期:8月1日(水) 〜 9月1日(土)
休廊:日・月・祝。夏季休廊:8月11日(土)〜15日(水)。
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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2018年8月に見たい展覧会~芳年・芳幾、そして内藤礼〜

関東では、熊谷で史上最高の41.1度を記録するなど、大変に暑い日々が続いています。いかがお過ごしでしょうか。

先日、閉幕した「ミラクル・エッシャー展」(上野の森美術館)が、大いに人気を集め、会期後半は長蛇の列が出来ました。最終的には、54日間で、20万名超もの入場者を集めたそうです。巡回先のあべのハルカス美術館(11/16~2019/1/14)でも、また混雑するかもしれません。

そのほか、夏休みを迎え、「デザインあ展 in TOKYO」(日本科学未来館)、「昆虫」(国立科学博物館)、「モネ それからの100年」(横浜美術館)などが、混み合ってきています。いずれの展覧会も、さらに大勢の人で賑わいそうです。


7月は思うように展覧会を見られませんでしたが、質量ともに圧倒的スケールだった「縄文」(東京国立博物館)、現代美術に魅せる作品の多い「モネ それからの100年」(横浜美術館)、そして竹工芸の精緻な技を目の当たりにした「線の造形、線の空間」(菊池寛実記念智美術館)が、強く印象に残りました。「縄文」に関しては、7月末に国宝6件も出揃ったため、近々、再度、見に行くつもりです。

それでは、8月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展─動物たちの息吹」 ホテルオークラ東京(~8/23)
・「ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画」 DIC川村記念美術館(~8/26)
・「名作展 ベストセレクション 龍子記念館の逸品」 大田区立龍子記念館(~8/26)
・「没後40年 濱田庄司展」 世田谷美術館(~8/26)
・「落合芳幾」 太田記念美術館(8/3~8/26)
・「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館(~9/2)
・「三沢厚彦 ANIMALS IN YOKOSUKA」 横須賀美術館(~9/2)
・「第7回 新鋭作家展 見しらぬ故郷/なじみの異郷」 川口市立アートギャラリー・アトリア(~9/2)
・「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館(~9/2)
・「ルーヴル美術館展 肖像芸術」 国立新美術館(~9/3)
・「水を描く―広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしお」 山種美術館(~9/6)
・「フィンランド陶芸―芸術家たちのユートピア」 目黒区美術館(~9/6)
・「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」 東京ステーションギャラリー(~9/9)
・「巨匠たちのクレパス画展 日本近代から現代まで」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~9/9)
・「木版画の神様 平塚運一展」 千葉市美術館(~9/9)
・「江戸名所図屏風と都市の華やぎ」 出光美術館(〜9/9)
・「没後50年 河井寬次郎展」 パナソニック汐留ミュージアム(~9/16)
・「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」 三菱一号館美術館(~9/17)
・「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館(~9/17)
・「杉浦邦恵 うつくしい実験」 東京都写真美術館(~9/24)
・「涯(ハ)テノ詩聲(ウタゴエ) 詩人 吉増剛造展」 渋谷区立松濤美術館(8/11~9/24)
・「芳年—激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」 練馬区立美術館(8/5~9/24)
・「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」 水戸芸術館(~10/8)
・「没後50年 藤田嗣治展」 東京都美術館(~10/8)
・「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」 21_21 DESIGN SIGHT(~10/14)
・「横山操展 ~アトリエより~」 三鷹市美術ギャラリー(8/4〜10/14)
・「マジック・ランタン 光と影の映像史」 東京都写真美術館(8/14~10/14)
・「いわさきちひろ生誕100年 Life展 あそぶ plaplax」 ちひろ美術館・東京(~10/28)

ギャラリー

・「第12回 shiseido art egg 宇多村英恵展」 資生堂ギャラリー(8/3~8/26)
・「Every Day Is A Good Day ―日々是好日」 スパイラルガーデン(8/6〜12)
・「現代陶芸 ‘90s」 ギャラリー小柳(~8/25)
・「棚田康司 全裸と布」 ミヅマアートギャラリー(8/1〜9/1)
・「竹中大工道具館企画展 南の島の家づくり-東南アジアとうしょ島嶼部の建築と生活」 ギャラリーA4(8/20~9/28)
・「藤村龍至展 ちのかたち」 TOTOギャラリー・間(7/31~9/30)

今月はまず浮世絵に着目したいと思います。練馬区立美術館で、幕末・明治の浮世絵師、月岡芳年の回顧展が開催されます。



「芳年—激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」@練馬区立美術館(8/5~9/24)

幕末の江戸に生まれ、国芳に入門し、明治維新後は、いわゆる血みどろ絵で名を知らしめた月岡芳年は、晩年に至るまで、武者絵や物語絵を描き続け、数多くの傑作を残しました。


近年でも、芳年に関する展示が行われたほか、出版物が刊行されるなど、その知名度も高まってきましたが、画業を網羅するような回顧展は、意外と行われませんでした。

まさに待望の芳年展です。世界屈指の芳年コレクションを有する西井正氣氏の収蔵品、250点超にて、芳年の画業の全般を俯瞰します。過去最大スケールの芳年展となりそうです。

その芳年とほぼ同時代の浮世絵師が、落合芳幾でした。太田記念美術館にて「落合芳幾」展が行われます。



「落合芳幾」@太田記念美術館(8/3~8/26)

芳幾も国芳の門人で、幕末は武者絵や戯画、美人画などの浮世絵を描き、明治には新聞や歌舞伎雑誌の創刊に関わるなどして、幅広く活動しました。


しかしながら、現在、その画業は知られているとは言えません。何せ、芳幾の全貌を紹介する「世界で初めて」(公式サイトより)の展覧会です。芳年展とあわせて見たいと思います。

最後は現代美術です。水戸芸術館にて、内藤礼の個展がはじまりました。



「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」@水戸芸術館(~10/8)

私が内藤礼に強く惹かれるきっかけになったのが、今から8年ほど前、2010年に、当時の神奈川県立近代美術館で見た、「内藤礼 - すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」と題した個展でした。インスタレーションが建物空間の魅力をさらに引き出すような展示で、なんとも言い難い、至福とも呼びうる体験をしたことを覚えています。


久しぶりの美術館での個展です。全て自然光のみで展示されるそうですが、水戸芸術館の空間へどう響くのかにも期待したいと思います。

7月はブログの更新がやや滞りました。8月もしばらく不定期で更新する予定です。いつもながらのマイペースとなりますが、何卒お付き合いくだされば幸いです。
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「モネ それからの100年」にて夜間開館の追加開催が決定しました

7月14日(土)より横浜美術館で開催中の「モネ それからの100年」展。モネの作品を切っ掛けに、画家に影響を受けた現代美術家らの制作を紹介しています。



「モネ それからの100年」(横浜美術館)
会期:7月14日(土)~9月24日(月)

夏休みの時期に入り、連日、かなりの盛況だそうです。そのため、夜間開館の追加開催が決まりました。

【夜間開館 開催日 計8回】
8月10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)
9月14日(金)、15日(土)、21日(金)、22日(土)

*10時から20時30分まで開館

夜間開館実施日は上記の通りです。当初(9/14、9/15)より6日増え、計8日間行われます。



また、9月15日(土)は、18時半より19時まで、学芸員によるギャラリートークも実施されます。 (事前申込不要、当日有効の観覧券が必要。)

「モネ それからの100年」 横浜美術館(はろるど)



私も会期2日目に行きましたが、確かに予想以上に賑わっていました。8月1日現在、平日こそ待ち時間こそないものの、土日を中心に20分程度のチケットの購入列が出来ています。混雑情報については、「モネ それからの100年」の公式Twitterアカウント(@monet2018yokobi)が、適宜、発信しています。


横浜美術館のチケットブースはあまり大きくありません。当日券は、公式サイトからオンラインで購入することも可能です。手数料もかからず、スマートフォン専用チケットもあります。これからお出かけの際は、予めチケットを購入しておかれることをおすすめします。

私としては、モネの睡蓮の数作と、鈴木理策の「水鏡」が向き合う展示が、特に印象に残りました。モネと現代美術の意外な邂逅は、時に思わぬ景色を生み出していました。



「モネ それからの100年」は9月24日まで開催されています。

「モネ それからの100年」@monet2018yokobi) 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:7月14日(土)~9月24日(月)
休館:木曜日。但し8月16日は開館。
時間:10:00~18:00
 *9月14日(金)、15日(土)は20時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1500)円、大学・高校生1200(1100)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
 *当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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