『アブソリュート・チェアーズ』 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
『アブソリュート・チェアーズ』
2024/2/17~5/12


石田尚志『椅子とスクリーン』 2002年

1982年の開館時から近代以降のデザイン椅子を収集してきた埼玉県立近代美術館は、椅子を館内に設置するだけでなく、教育普及事業や展覧会の開催を通して椅子の魅力を発信し続けてきました。

その埼玉県立近代美術館が、デザインの視点ではなく、現代アートの観点から椅子の持つさまざまな意味を考察するのが『アブソリュート・チェアーズ』で、国内外の28組の作家による平面や立体など83点の作品が展示されていました。


ジム・ランビー『トレイン イン ヴェイン』 2008年

まず冒頭では「美術館の座れない椅子」と題し、デュシャンや高松次郎、それにジム・ランビーなの文字通り座れない椅子を用いた作品が並んでいて、既製の椅子を素材に取り込みつつも、それぞれの手法によって機能を変容させ、コンセプチャルな問いを発するようすを見ることができました。


クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)『肘掛け椅子』 2012年

また「権力を可視化する」のセクションではウォーホルの『電気椅子』などが目立っていて、死や暴力、あるいは権力と椅子の関係を問い直したアーティストらの表現を知ることができました。


名和晃平『Pix Cell-Tarot Reading(Jan.2023)』 2023年

こうした権力の象徴などとは対照的に、日常の生活の延長線にある役割としての椅子を表した作品も面白いのではないでしょうか。


YU SORA『my room』 2019年

そのうちYU SORAは無造作に置かれた椅子を白い布と黒い糸をもとにして表現し、座るはずの椅子が時折物置き台として使われることを示しました。


宮永愛子『waiting for awakening -chair-』 2017年

さらにナフタリンで象られた椅子を樹脂に封入した宮永愛子のオブジェなども、椅子の記憶や物語を呼び起こす作品といえるかもしれません。


副産物産店による「美術館の座れる椅子」

山田毅と矢津吉隆によるユニット・副産物産店がによる作品輸送用のクレートや過去作品の残材などを再利用して作った風変わりな椅子も設置され、展示室内にて自由に座ることも可能でした。


ミシェル・ドゥ・ブロワン『樹状細胞』 2024年

カナダ出身のミシェル・ドゥ・ブロワンが、約40脚の会議椅子を用いて作った『樹状細胞』もハイライトを飾っていたかもしれません。


オノ・ヨーコ『白いチェス・セット/信頼して駒を進めよ』 1966 / 2015年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金

椅子という存在がアーティストらにさまざまなインスピレーションを与え、それが新たなイメージとして作り出されていくようすを楽しむことができました。


現代アートを通して、椅子が持つ多様な意味を考察。『アブソリュート・チェアーズ』が面白い!|Pen Online

5月12日まで開催されています。なお埼玉での展示を終えると、愛知県美術館(会期:7月18日〜9月23日)へと巡回します。

『アブソリュート・チェアーズ』 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2024年2月17日(土) ~5月12日(日)
休館:月曜日。ただし4月29日、5月6日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1040)円 、大高生1040(830)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOMASコレクション(常設展)も観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『マティス 自由なフォルム』 国立新美術館

国立新美術館
『マティス 自由なフォルム』
2024/2/14~5/27


ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内部空間の再現)

フランスの芸術家、アンリ・マティスは、フォーヴィスムの中心人物としてパリで頭角を現すと、後半生の大半を過ごしたニースではモデルやオブジェを精力的に描きながら、色が塗られた紙をハサミで切り取り、紙に貼り付ける切り紙絵に取り組みました。

その切り紙絵に着目しながらマティスの創作を紹介するのが『マティス 自由なフォルム』で、会場にはニース市マティス美術館のコレクションを中心に、絵画、彫刻、版画、テキスタイル等の作品や資料、約150点が公開されていました。

まず冒頭ではマティスの初期の絵画や彫刻作品などが並んでいて、巨匠たちの作品を模写したという『ダフィッツゾーン・デ・ヘームの「食卓」に基づく静物』や、絵画と並行して制作した彫刻の連作「ジャネット」シリーズなどを見ることができました。

またニース滞在後、アトリエに花瓶や家具調度品を飾って描いた「ヴァンス室内画」の優品も並んでいて、マティスがコレクションしていたオブジェと見比べることもできました。

さらにバレエ・リュスからの依頼による「ナイチンゲールの歌」の衣装をはじめ、実業家のアルバート・C・バーンズから依頼された『ダンス』といった舞台や壁画に関する仕事も紹介されていて、マティスが絵画や彫刻を超えて幅広い領域で仕事を手がけていたことを知ることができました。


アンリ・マティス『ブルー・ヌードⅥ』 1952年 オルセー美術館(寄託:ニース市マティス美術館)

マティスが切り紙絵に取り組んだのは1940年代、実に70歳を迎えてからのことで、切り紙絵を用いた挿絵を文芸雑誌などに提供したほか、代表的なアルバム『ジャズ』、さらには切り紙絵によるマケットをもとにしたタペストリーも制作しました。


アンリ・マティス『花と果実』 1952〜1953年 ニース市マティス美術館

ロサンゼルスのヴィラの壁面装飾の構想を練る中で制作した、切り紙絵の大作『花と果実』も一際目立っていたかもしれません。4つの花びらと3つの果実がさまざまな色に反復した作品で、本展のためのフランスでの修復を経て、日本で初めて公開されました。


ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内部空間の再現)

このほか最晩年に熱心に取り組んだ、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設プロジェクトに関する展示も充実していました。


カズラ(上祭服)のためのマケット展示風景

ヴァンス礼拝堂の原寸大再現展示とともに、海藻類のフォルムを着想源にしたというカズラと呼ばれる上祭服の美しいデザインに見入りました。


カズラ(上祭服)のためのマケット展示風景

一部内容が重なりますが、Figaro.jpでも展覧会の見どころを紹介しました。

注目の『マティス 自由なフォルム』! 見るべきポイント10。madameFIGARO_jp


『マティス 自由なフォルム』展示風景

一部展示スペースの撮影も可能です。


5月27日まで開催されています。

『マティス 自由なフォルム』@matisse2024) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2024年2月14日(水) ~5月27日(月)
休館:火曜日。ただし4月30日(火)は開館
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20:00まで
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2200円、大学生1400円、高校生1000円、中学生以下無料。
 *4月3日(水)~8日(月)は高校生無料観覧日。(学生証の提示が必要)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『建立900年 特別展「中尊寺金色堂」』 東京国立博物館

東京国立博物館 本館特別5室
『建立900年 特別展「中尊寺金色堂」』
2024/1/23~4/14



東京国立博物館 本館特別5室にて『建立900年 特別展「中尊寺金色堂」』が開かれています。

今回の展覧会で最大の見どころは、金色堂の中央壇の壇上に安置された国宝の仏像11体が公開されていることで、いずれも独立した展示ケースに入れられているため、360度の角度から鑑賞することができました。

このうち『阿弥陀如来坐像』とは清衡発願の当初の像と推定されるもので、後頭部の螺髪の刻み方や、右肩にかかる衣を別材で作るなどの点において、当時としては新たな造形と技法が用いられたと指摘されていました。



またともに力強い動きを伴う『増長天立像』と『持国天立像』も大変な力作で、のちの慶派仏師が得意とする鎌倉様式を先取りしたような造形意識も感じることができました。

このほかかつて金色堂を荘厳していた『金銅迦陵頻伽文華鬘』といった工芸品や、秀衡の遺骸を納めていた中央壇の棺である『金箔押木棺』なども見どころかもしれません。

幅約7m×高さ約4mの大型ディスプレイ上に、原寸大の金色堂を超高精細CG(8KCG)再現した映像も没入感に満ちあふれていました。


金色堂模型 縮尺5分の1 昭和時代・20世紀 中尊寺蔵 *撮影コーナー

Penオンラインにて展示の見どころをまとめました。

世界遺産・平泉の国宝仏像が東博へ!特別展『中尊寺金色堂』の見どころ|Pen Online

開幕早々より連日かなりの人出で賑わっているそうです。今後、会期が進むにつれて入場規制などが行われる場合があります。混雑状況については公式SNSアカウント(@chusonji_annai)をご参照ください。


4月14日まで開催されています。

『建立900年 特別展「中尊寺金色堂」』@chusonji2024) 東京国立博物館 本館特別5室(@TNM_PR
会期:2024年1月23日(火)~4月14日(日)
休館:月曜日、2月13日(火)。ただし、2月12日(月・休)、3月25日(月)は開館。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600円、大学生900円、高校生600円、中学生以下無料。
 *当日に限り、総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1 9 5 7 - 1 9 7 9』 国立工芸館

国立工芸館
『印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1 9 5 7 - 1 9 7 9』 
2023/12/19〜2024/3/3


右:井田照一『The Spy Surrounds the Spy』 1974年 京都国立近代美術館蔵

国立工芸館にて『印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1 9 5 7 - 1 9 7 9』が開かれています。

これは1957年から1979年までの間、ほぼ2年に1回のペースで11回開催された「東京国際版画ビエンナーレ展」への受賞作や出品作を通し、戦後日本における版画やグラフィックデザインの動向を追うもので、あわせて当時のデザイン界たち巨匠による展覧会ポスターも紹介されていました。


左:田中一光「第3回東京国際版画ビエンナーレ展」ポスター 1962年 国立工芸館蔵 右:加納光於『星・反芻学』 1962年 東京国立近代美術館蔵

1957年にはじまった「東京国際版画ビエンナーレ」とは、世界各国より作品を集めた国際的な規模の版画展で、東京国立近代美術館や京都国立近代美術館などを会場に開かれると、当時の気鋭の版画家らが数多くの作品を出品しました。


左:池田満寿夫『夏 1』 右:宮下登喜雄『作品B』 ともに1964年、東京国立近代美術館蔵

そのうち29カ国が参加した第1回展では、読売会館と国立近代美術館の2つの会場にて829点(日本:160点)の作品が公開され、日本にいながらにして世界の美術の動向を感じられる貴重な機会として人気を集めました。


榎倉康二『二つのしみ』 1972年 東京国立近代美術館蔵

そして同ビエンナーレでは、池田満寿夫に加納光於、また高松次郎や榎倉康二などの作家たちが、時に現代美術の最前線に近いような作品を手がけ、版画表現のあり方そのものを問い直しました。


左:勝井三雄「第11回東京国際版画ビエンナーレ展」ポスター 1979年 国立工芸館蔵 右:石岡瑛子「第10回東京国際版画ビエンナーレ展」ポスター 1976年 国立工芸館蔵

今回の展覧会でとりわけ魅惑的なのは、同ビエンナーレの展覧会ポスターが全11回分すべて展示されていることで、田中一光や永井一正、それに横尾忠則らによる斬新ともいえるグラフィカルな表現を見ることができました。


杉浦康平「第8回東京国際版画ビエンナーレ展」ポスター(銀) 1972年 国立工芸館蔵

そのうち杉浦康平による第8回のホイル版のポスターも目立っていたかもしれません。銀地のホイル版が鏡面として機能することで、3次元的な空間が広がっていました。


左:志村ふくみ『紬織着物 鈴虫』 1959年 右:森口華弘『古代縮緬地友禅訪問着 早春』 1955年 いずれも国立工芸館蔵

このほか、特集展示「プレイバック1977年ー工芸館の開館記念展」では、東京国立近代美術館工芸館の第1回目の展覧会をふり返っていて、富本憲吉や濱田庄司、それに志村ふくみらの工芸作品もあわせて楽しむことができました。


新たな「版」の表現に挑んだ気鋭の作家たち。国立工芸館にて開催中の『印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1 9 5 7 - 1 9 7 9』|Pen Online


横尾忠則『責め場 1』、『責め場 2』、『責め場 3』 1969年 東京国立近代美術館蔵

国立工芸館は元日の能登半島地震の影響により一時臨時休館しましたが、1月6日より展示が再開しました。



一部を除いて撮影も可能です。3月3日まで開催されています。

『印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1 9 5 7 - 1 9 7 9』 国立工芸館@ncm2020
会期:2023年12月19日(火)〜2024年3月3日(日)
休館:月曜日。(ただし1月8日、2月12日は開館)、年末年始(12月28日〜1月1日)、1月9日、2月13日。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300(250)円、大学生150(70)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:石川県金沢市出羽町3-2
交通:いずれもJR金沢駅東口(兼六園口)から。路線バス3番乗り場より乗車し、「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車、徒歩7分。6番乗り場より乗車(「柳橋」行を除く)し、「出羽町」下車、徒歩5分
。8番乗り場より乗車し、「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車、徒歩9分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』 森アーツセンターギャラリー

森アーツセンターギャラリー
『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』  
2023/12/9~2024/2/25


『アンディ・マウス』 1986年 中村キース・ヘリング美術館蔵

アメリカ北東部ペンシルベニア州に生まれたキース・ヘリングは、1980年代にアンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアとともにカルチャーシーンを牽引すると、エイズによる合併症により31歳の若さで亡くなるまで多様に制作を行いました。


『無題』 1983年 中村キース・ヘリング美術館蔵

そのヘリングの創作世界を紹介するのが『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』で、会場ではサブウェイ・ドローイングからトレードマークとなったモチーフによる『イコンズ』、それに彫刻やポスターから晩年の大型作品など150点の作品が公開されていました。


『無題』 1988年 中村キース・ヘリング美術館蔵

まず今回のヘリング展の特徴として挙げられるのが、「公共のアート」や「アートはみんなのために」といった6つのテーマ別に作品を紹介していることで、ヘリングのアーティストとして活動した10年の軌跡を辿ることができました。


左:核放棄のためのポスター 1982年 右:ヒロシマ 平和がいいに決まってる‼︎ 1988年

また数度にわたる来日が縁で生まれた貴重な作品や資料も展示していて、1988年の2度目の来日時に広島で行われたコンサート「平和がいいに決まってる‼︎」のポスターや、ポップショップ東京のスタッフのために作られたスタジアムジャンパーなども見ることができました。


『サブウェイ・ドローイング』 展示風景

日本初公開5点を含む合計7点のサブウェイ・ドローイングが最大の見どころといえるかもしれません。


左:『無題(サブウェイ・ドローイング)』 1982年 タッカー・ヒューズ蔵、マルトス・ギャラリー寄託 右:『無題(サブウェイ・ドローイング)』 1986年 ジョン・フリードマン蔵、マルトス・ギャラリー寄託

これはヘリングがニューヨークの地下鉄駅構内の空いている広告板に貼られた黒いマット紙にチョークで描いたドローイングで、無許可のため剥がされてしまったものの、いつしか評判を呼んだ活動初期の作品でした。


『無題(サブウェイ・ドローイング)』 1981〜83年 中村キース・ヘリング美術館蔵

約5年間の間にヘリングは数千点ものサブウェイ・ドローイングを描いたとされるもののの、作品の性質上、保管や管理が難しく、打ち捨てられたり持ち去れられたりすることが多かったため、多く残されることはありませんでした。

それを絵画のコレクターの作品を含めて7点ほど展示していて、1980年代のニューヨークで展開されたストリートアートの熱気の一端を感じるかのようでした。


『ブループリント・ドローイング』(1990年)展示風景 中村キース・ヘリング美術館蔵

ブランドとのコラボや『イコンズ』などで有名ながらも、意外と知られていないヘリングの人生の歩みを紐解くような内容で見応えありました。


日本初公開作品も! 『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』が開催中|Pen Online

一部展示を除いて撮影も可能です。


『ドッグ』 1986年 中村キース・ヘリング美術館蔵

2月25日まで開催されています。

『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』@asahi_kh2023_25) 森アーツセンターギャラリー 
会期:2023年12月9日(土)~ 2024年2月25日(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~19:00
 *金・土曜は20:00まで。
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般・大学・専門学校生2200円、中学・高校生1700円、小学生700円
 *事前予約制(日時指定券)を導入。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )

『オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』 麻布台ヒルズギャラリー

麻布台ヒルズギャラリー
『オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』 
2023/11/24〜2024/3/31


オラファー・エリアソン『蛍の生物圏(マグマの流星)』 2023年

アイスランド系デンマーク人のアーティスト、オラファー・エリアソンの個展が、麻布台ヒルズギャラリーにて開かれています。


オラファー・エリアソン『相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』  2023年 *麻布台ヒルズ森JPタワーオフィスロビーに展示

これは今年11月に東京・虎ノ門に開業した麻布台ヒルズにあわせ、エリアソンが設置したパブリックアート『相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』で取り組んだ主題を軸に、新作のインスタレーションなどを公開しているもので、加えて水彩絵具やドローイングなども展示されていました。


オラファー・エリアソン『瞬間の家』 2010年

今回のメインとなるインスタレーションとは、暗がりの空間に広がる『瞬間の家』で、第12回ベネチア・ビエンナーレにて2010年に発表された作品を再構成した作品でした。


オラファー・エリアソン『瞬間の家』 2010年

ここでは全長20mを超える空間の中、天井からホースによって水が回転するように撒き散らされていて、ストロボの強い光によって照らされ、抽象的な彫刻として浮かび上がっていました。


オラファー・エリアソン『終わりなき研究』 2005年

こうした大掛かりなインスタレーションの一方、アナログとも呼べるような機構で動くのが『終わりなき研究』とする日本初公開の作品でした。


オラファー・エリアソン『終わりなき研究』 2005年

これは振り子を用いて幾何学像を生成する機械、ハーモノグラフを用いたもので、振り子の回転運動によってアームの接続されたペンが動き、円を描くように運動のリズムを記録するように作られていました。

そして振り子の角度や力の入れ具合により、リズムのパターンはさまざまなため、常に異なったイメージが生み出されていて、実際に作品を操作することも可能でした。*体験付チケットの購入が必要。


右手前:『オラファー・エリアソン『ダブル・スパイラル』 2001年

このほか吊り彫刻シリーズのひとつである『蛍の生物圏(マグマの流星)』や、スチール製のチューブが二重らせんの形をした円形構造状に巻かれている『ダブル・スパイラル』なども見どころだったかもしれません。



またベルリンに設立された「スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン(SOE)」とコラボレーションした「THE KITCHEN」といった食とのコラボレーションも興味深く思えました。


世界初公開作品や食との新たなコラボも!麻布台ヒルズギャラリーで開催中の『オラファー・エリアソン展』|Pen Online

3月31日まで開催されています。

『オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』 麻布台ヒルズギャラリー@ah__gallery
会期:2023年11月24日(金)〜2024年3月31日(日)
休館:1月1日。
時間:月/水/木/日 10:00〜19:00、火 10:00〜17:00、金/土/祝前日 10:00〜20:00
料金:一般1800円、高校・専門・大学生1200円、4歳〜中学生900円。
住所:港区虎ノ門 5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ A MB 階
交通:東京メトロ日比谷線 神谷町駅5番出口地下1階から直結
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『落合陽一展 「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』 清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館

清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館
『落合陽一展 「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』 
2023/10/22~12/20



清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館にて、メディアアーティストの落合陽一による展覧会『ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』が開かれています。



まず目を引くのが1階の奥にて展示された高輝度LEDによる光の空間彫刻で、その表面の光学的性質を万華鏡のイメージにように変化させながら、鮮やかな光を放ちつつ、暗い闇の画面を広げていました。



また空間全体には強く胸を打つ鼓動のような音が打ち鳴らされ、それとともに表面の表情が終始移り変わっていました。



一方の2階では有機的変形機構を持つ鏡状の音響彫刻が展示されていて、新素材のミラー膜にて作られたというシルバーの表面が時間とともに目まぐるしく波打つように変形していました。

この表面は鏡として観客や周囲の景色を反射していたかと思うと、突然伸縮しながら、まるで液体を引き出すような動きを見せていて、何らかの動力を得た有機生命体を目にしているかのようでした。



有機的な変形ミラーは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で落合がテーマ事業プロデューサーを手がけるシグネチャーパビリオン「null²」の動く外装の実装実験を兼ねていて、安藤の独特の建築空間の中へ近未来的ともいえる光景を生み出していました。



天井から差し込む自然の光の移ろいによっても雰囲気が変わるかもしれません。あたりが暗くなる夕方以降は特に彫刻の光が映えているように思えました。


安藤忠雄/光の美術館で震撼する「ヌルの共鳴」。落合陽一の展覧会が清春芸術村にて開催中!|Pen Online



なお現在、清春芸術村を中心とする山梨県北杜市の各所にて「山梨国際芸術祭 八ヶ岳アート・エコロジー2023」が開かれています。



会期最終日は落合陽一展と同じ日です。芸術祭の鑑賞を兼ねて出かけるのも良いかもしれません。



間もなく会期末です。12月20日まで開催されています。

『落合陽一展 「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』 清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館
会期:2023年10月22日(日)~12月20日(水)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜)
時間:10:00~17:00
 *最終入館は16:30。
料金:一般1500円、大高生1000円、小中学生無料。
住所:山梨県北杜市長坂町中丸2072
交通:JR中央本線新宿駅より2時間。長坂駅下車タクシー5分、バス10分、徒歩30分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『FUJI TEXTILE WEEK 2023』 山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域

山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
『FUJI TEXTILE WEEK 2023』(フジテキスタイルウィーク2023) 
2023/11/23〜12/17


スタジオ ゲオメトル『Changes of the Mountain』 会場:旧山叶

山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域にて布の芸術祭、『FUJI TEXTILE WEEK 2023』(フジテキスタイルウィーク2023)が開かれています。

これは「甲斐絹」など織物の産地として長い歴史を歩んできた富士吉田市が、伝統産業および地域活性を目的として2021年より行っているもので、今年で3回目を迎えました。


パシフィカ コレクティブス『Small Factory』 会場:旧糸屋

今年のテーマは「Back to Thread / 糸への回帰」で、アート展では富士吉田市下吉田本町通り周辺地域の工場跡地や空き家を中心に、世界6の地域と国内から参加した11組のアーティストが作品を公開していました。


右の建物が旧山叶(やまかの)

そのうち最も作品数が多いのが、かつての織機工場の跡地で、長年にわたって富士吉田の織物産業を支えながらも、2023年3月に廃業した旧山叶(やまかの)でした。


池田杏莉《それぞれのかたりて / 在り続けることへ》 会場:旧山叶

ここではネリー・アガシをはじめ、池田杏莉、スタジオ ゲオメトル、顧剣亨、ジャファ・ラムの5組のアーティストがさまざまな作品を展示していました。


ネリー・アガシ『mountain wishes come true』 会場:旧山叶

まず目を引くのがネリー・アガシの『mountain wishes come true』で、壁から垂らした巨大な織物の生地を富士山に見立てていました。


顧剣亨『Map Sampling_Fujiyoshida』 会場:旧山叶

富士吉田市のさまざまな時代の地図を引用した、顧剣亨の『Map Sampling_Fujiyoshida』も力作といえるかもしれません。2枚の透け感のある生地に地図をプリントし、立体感と浮遊感のあるイメージを浮かび上がらせていて、上から見下ろすと富士吉田の街を鳥瞰しているような気分にさせられました。


ジャファ・ラム『あなたの山を探して』 会場:旧山叶

富士山を背に白い布が風に靡くジャファ・ラムの『あなたの山を探して』もこの場所ならではの作品だったのではないでしょうか。


沖潤子『anthology』 会場:旧糸屋

このほか、古い蔵のKURA HOUSEでの清川あさみの刺繍作品や、旧糸屋の沖潤子の糸巻きを用いたインスタレーションなど、サイトスペシフィックと呼べる展示も充実していました。


津野青嵐《ねんねんさいさい》 会場:旧文化服装学院

WEBメディアのイロハニアートへ『FUJI TEXTILE WEEK 2023』の見どころについて寄稿しました。


伝統織物産業と現代アートが織りなす国内唯一の布の芸術祭。『FUJI TEXTILE WEEK 2023』が富士吉田市にて開催中! | イロハニアート


デザイン展より「甲斐絹を見る」展示風景 会場:FUJIHIMURO

会期も残るところ約1週間となりました。



12月17日まで開催されています。

『FUJI TEXTILE WEEK 2023』(フジテキスタイルウィーク2023) 山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
会期:2023年11月23日(木・祝)〜12月17日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~16:00
 *各会場への入場は15:30まで
料金:一般1200円。
 *富士吉田市民、高校生以下及び18歳未満、65歳以上、心身に障害のある方及び付添者1名は無料。
 *「アート展」、「デザイン展」、「FUJI SKY ROOF」に入場可能。
 *一部、無料で参加、観覧できるイベントや会場あり。一般1500円、大高生1000円、小中学生無料。
住所:山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
交通:富士急行線下吉田駅降車徒歩5分、もしくは月江寺駅降車徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃』 アーティゾン美術館

アーティゾン美術館
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』
2023/9/9~11/19


山口晃『来迎圖』(2015年) 作家蔵

アーティゾン美術館にて『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』が開かれています。

これはアーティストと学芸員が共同し、石橋財団コレクションからインスパイアされた新作や、コレクションとアーティストの作品のセッションによって展覧会を構成する『ジャム・セッション』の一環として行われているもので、第4回目に当たる今年はアーティストの山口晃が参加しました。


山口晃『汝、経験に依りて過つ』(2023年) 展示風景

ここで山口は「感覚」を表すフランス語で、セザンヌが制作について語る話によく出てくる言葉であるサンサシオンを引用し、それを問い直すような作品を展開していて、中では平衡感覚が奪われ、にわかに歩くのも難しいような体験ができるインスタレーションもありました。


山口晃『セザンヌへの小径(こみち)』(2023年) 作家蔵

今回、山口が石橋財団コレクションより引用したのは、セザンヌや雪舟といった作品で、セザンヌでは『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』と『帽子をかぶった自画像』とともに、前者を模写した『セザンヌへの小径(こみち)』といくつかのスケッチを公開していました。


山口晃『東京圖1・0・4輪之段』(2018〜2023年) 作家蔵

このほかではいずれも初めて展示された『東京圖1・0・4輪之段』や、東京メトロ日本橋駅のパブリックアート『日本橋南詰盛況乃圖』も見どころだったかもしれません。


『山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』展示風景

中央にはペンや切り紙、小さなスケッチなどが入れられた一種の装置のようなアクリルボックスが立ち、四方に「談話室」や「東京こりごりん」などと名付けられた展示室が連なる、いわば入れ子のような会場構成も面白く感じました。


山口晃が問いかけるサンサシオンとは?アーティゾン美術館の『ジャム・セッション 山口晃』の見どころ|Pen Online


右:雪舟『四季山水図』(室町時代 15世紀)石橋財団アーティゾン美術館、重要文化財 左:山口晃『オイル オン カンヴァス ノリバケ』(2023年) 作家蔵

会期末を迎えました。11月19日まで開催されています。

『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』 アーティゾン美術館@artizonmuseumJP
会期:2023年9月9日(土)~11月19日(日)
休館:月曜日(9月18日、10月9日は開館) / 9月19日 / 10月10日。
時間:10:00~18:00
 *11月3日を除く毎週金曜日は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1200円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
 *日時指定予約制。
 *ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『さいたま国際芸術祭2023』 旧市民会館おおみや

旧市民会館おおみや(メイン会場)
『さいたま国際芸術祭2023』
2023/10/7~12/10



『さいたま国際芸術祭2023』が、さいたま市大宮区の旧市民会館おおみや(メイン会場)にて開かれています。

今回の芸術祭のテーマは「わたしたち」で、現代アートチームの目[mé]のディレクションのもと、国内外から参加した多様なアーティストたちが作品を展示、また公演を行っていました。



まず注目したいのは、旧市民会館おおみやの大ホールが芸術祭の中核となっていることで、連日、音楽のみならず、パフォーミングアーツ、映画上映などさまざまな公演が行われていました。



このメイン会場では目[mé]によって透明板の会場導線が築かれていて、いずれの導線のフレームは「窓」の機能をもち、その向こう側の何気ない備品と思われるようなものが「見る対象」として置き換えられていました。



また受付にてフロアマップが配布されているものの、順路などは一切なく、導線によって迷路のような空間が連続していて、時に目の前に見える作品へもフレームによってすぐにたどり着くことができないこともありました。



フレームによる「窓」は、会場内を歩く観客をも「見る対象」に変えていたかもしれません。また大ホール内にも導線が築かれていたのには驚かされました。



透明板による導線に導かれつつ、また時に遮られながら会場内を歩きつつも、いつしか導線の中に迷い込むような体験も特異だったかもしれません。



このほか、必ずしも存在が明示されない「スケーパー(SCAPER)」の活動も芸術祭に新たな概念や視点を取り込んでいました。


今年の「さいたま国際芸術祭」は目[mé]がディレクター。その見どころは?|Pen Online

連日公演などが入れ替わりながら続く芸術祭ゆえに、事前に公演のスケジュールを確認して出かけるのも良いのではないでしょうか。またリハーサル風景などを導線から鑑賞することもできました。



12月10日まで開催されています。

『さいたま国際芸術祭2023』@art_saitama) 旧市民会館おおみや(メイン会場)
会期:2023年10月7日(土)~12月10日(日)
メイン会場休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館) 。
メイン会場開催時間:10:00~18:00[日・火~木]、10:00~20:00[金・土] 
メイン会場チケット情報:一般2000円、さいたま市民1500円。
 *1DAYチケット:入館日のみメイン会場を鑑賞可能 (再入館可)。
 *フリーパスも発売。
住所:さいたま市大宮区下町3-47-8
メイン会場交通:JR線さいたま新都心駅、およびJR線・東武アーバンパークライン・ニューシャトル大宮駅より徒歩約15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『new born 荒井良二』 千葉市美術館

千葉市美術館
『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』
2023/10/4~12/17



自ら「絵本もつくる人」と称する荒井良二は、日本絵本賞大賞を受賞した『きょうはそらにまるいつき』をはじめとする数多くの絵本のほか、「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」の芸術監督を担うなど、絵本だけではなく、絵画、音楽、舞台美術などジャンルを超えて活動を続けてきました。

その荒井の多様な制作を紹介するのが『new born 荒井良二』で、会場には絵本原画、新作インスタレーション、絵画、立体作品から私蔵のガラクタなど約300点もの作品が展示されていました。



まず目を引くのが「ぼくはこんな絵本を作ってきたんだ」と題し、『あさになったのでまどをあけますよ』をはじめとする絵本原画の展示で、原画に加えて小さなスケッチや「展示案」とする展示プランのメモなども公開されていました。



また展示台など会場には「思い切りやりたいことを描いて 失敗とか成功ということよりも 人に贈るギフトみたいにしようと思ってる」など、直筆のメッセージも書かれていて、さながら荒井のインスピレーションの源泉を見るかのようでした。



「山形ビエンナーレ2018」を再構成した展示も見どころといえるかもしれません。ここでは屋台のような作品やマスコット、また楽器と組み合わせた動物のかたちをした立体作品、さらに絵画などが並んでいて、作曲家の野村誠が展示のために作曲した音楽がBGMとして流れていました。



今回の展示のための新作、『旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す』とは、2010年に発表した絵画『逃げる子どもI』から着想を得たインスタレーションで、約40の名前のない家たちによって構成されていました。



それぞれの家には車輪がついている上、小さな子どもたちが住んでいて、あたかも船や車に乗り、子どもたちがキャラバンを組んで旅していくかのような光景が築かれていました。


「絵本もつくる人」荒井良二のイマジネーションに満ちた創作世界、千葉市美術館にて個展が開催中!|Pen Online

12月17日まで開催されています。

『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2023年10月4日(水)~12月17日(日) 
休室日:10月10日(火)、23日(月)、11月6日(月)、20日(月)、12月4日(月)*第1月曜日は全館休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『杉本博司 本歌取り 東下り』 渋谷区立松濤美術館

渋谷区立松濤美術館
『杉本博司 本歌取り 東下り』
2023/9/16~11/12


『杉本博司 本歌取り 東下り』 展示風景

渋谷区立松濤美術館にて『杉本博司 本歌取り 東下り』が開かれています。

これは和歌の作成技法のひとつである「本歌取り」を作品制作に援用する杉本が、昨年に姫路市立美術館で行った『杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔』の内容を再構成して開いているもので、会場には歴史的な絵画を本歌とした写真による屏風といった新作を中心に、旧作から古典の作品などが公開されていました。


杉本博司『富士山図屏風』 2023年 作家蔵 

このうち『富士山図屏風』とは、北斎の『冨嶽三十六景 凱風快晴』を本歌にした新作で、杉本は通称「赤富士」の描かれた場所と推定される山梨県の三ツ峠山に出かけて撮影を行い、一部をデジタルにて処理した上で、かつて北斎も見たと思われる富士山の雄大なすがたを写し出しました。


「Brush Impression」シリーズ 展示風景

コロナ禍においてニューヨークのスタジオに戻ることができず、古くなってしまった印画紙の活用を模索する中で生まれた「Brush Impression」のシリーズも興味深いかもしれません。

ここで杉本は周囲のほとんど見えない暗室に入り、印画紙に現像液、または定着液に浸した筆で文字を書いていて、書の技法を本歌取りしつつ、自らの感覚を頼りに生み出された文字を力強く表していました。


右上:杉本博司『宙景 001』 2023年 杉本表具 作家蔵

代表的な「海景」において古代と同じ目で海を見ようとした杉本が、今度は同じく太古より人々が暮らしてきた地球のすがたを捉えようとしたのが「宙景」と呼ぶ作品で、ソニーやJAXAなどが共同開発した人工衛星「EYE」のカメラを遠隔操作して撮影した地球を写し出していました。


杉本博司『フォトジェニック・ドローイング 015 :タルボット家の住み込み家庭教師、アメリナ・ぺティ女史と考えられる人物 1840〜41年頃』 2008年

このほかイギリスの科学者で数学者のウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットのネガを本歌とした「フォトジェニック・ドローイング」も見どころといえるかもしれません。


『杉本博司 本歌取り 東下り』 展示風景

杉本が深く敬愛するという白井晟一による建築空間と作品が響き合う光景にも魅力を感じました。

10月15日にて前期展示が終了し、17日より後期展示がはじまりました。これ以降の展示作品の入れ替えはありません。


白井晟一の名建築で見る杉本博司の「本歌取り」、渋谷区立松濤美術館にて展覧会が開催中|Pen Online

11月12日まで開催されています。

『杉本博司 本歌取り 東下り』 渋谷区立松濤美術館@shoto_museum
会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)
 *前期:9月16日(土)~10月15日(日)、後期:10月17日(火)~11月12日(日)
休館:月曜日。(ただし、9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
時間:10:00~18:00 
 *毎週金曜日は20時まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(640)円、高校生・60歳以上500(400)円、小中学生100(80)円。
 *( )内は団体10名以上、および渋谷区民の入館料。
 *渋谷区民は毎週金曜日が無料。
 *土・日曜、祝日は小中学生が無料。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023』 富山県富山市富岩運河沿いの3エリア

富山県富山市富岩運河沿いの3エリア
『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023 物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー』
2023/9/15~10/29


上田バロン 展示作品

今日的な観点から工芸の魅力を発信する芸術祭、『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023』が、富山県富山市富岩運河沿いの3つのエリアにて開かれています。


富岩運河環水公園 奥は久保寛子の展示作品

そのうち最も富山駅に近いのが環水公園エリアで、ここでは環水公園と富山県美術館、そして同エリアの事実上の主会場である樂翠亭美術館にて展示が行われていました。


近藤高弘 展示作品

樂翠亭美術館で目を引くのは土を素材とした作品で、辻村塊の信楽壺がエントランスに並び、和室では自らを象ったという近藤高弘の坐像が物静かな佇まいを見せていました。


金理有 展示作品

また同館では付属する日本庭園にも作品が展開していて、土地と人の営みの関係をテーマに活動する野村由香が土を押し出すインスタレーションを制作していたほか、蔵の中では金理有による一つ目のオブジェが妖しい眼差しを覗かせていました。


中島閘門

この環水公園エリアから富岩運河を北上し、ちょうど富山湾と半分あたりの地点に位置するのが、中島閘門エリアでした。


横野明日香 展示作品

中島閘門とはパナマ運河方式で約2.5メートルの水位差を調整する現役の閘門で、展示は閘門横のスペースと操作場、また少し離れた場所にある通称「電タク」と呼ばれる建物にて行われていました。


定村瑤子 展示作品

かつてのタクシー会社の社屋であった「電タク」では、建物内部と屋外、さらにギャラリーにて主に絵画をメインとした作品が展示されていて、黒部ダムの風景を量感あふれた描写で表現した横野明日香や、かつての社長室の空間からインスピレーションを受けて絵画を描く定村瑤子の作品に見応えがありました。


葉山有樹 展示作品

3つのエリアで最も富山湾に近いのが、江戸時代には北前船の寄港地として栄え、現在も酒蔵などの古い街並みを残す岩瀬エリアでした。


コムロタカヒロ 展示作品

ここでは北前船の北陸五大船主であった馬場家や、酒蔵桝田酒造店といった8ヶ所の歴史的建造物などにて作品が展開していて、歴史ある街並みと工芸やアートが響き合う光景を見ることができました。


古川流雄 展示作品


Penオンラインでも『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023』の見どころについて寄稿しました。

遊覧船で巡る「水の都」富山の芸術祭、『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023』が開催中!|Pen Online


ささきなつみ 展示作品

いわゆる旧来の工芸の概念を拡張し、より現代アートに引き付けたような芸術祭といえるかもしれません。富山の運河沿いに開けた、思いの外に多様な作品に見入りました。


葉山有樹 展示作品

会期も残すところあと半月となりました。10月29日まで開催されています。

『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023 物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー』@goforkogei) 富山県富山市富岩運河沿いの3エリア
会期:2023年9月15日(金)–10月29日(日)
休場日:樂翠亭美術館(水曜)、富山県美術館(水曜、9月19日)、ほか会期中無休
時間:10:00~16:30
 *入場は16時まで
チケット(ガイドブック付き):一般2500円、高校生1500円。
 *会場購入・引換:樂翠亭美術館(水曜休)、電タク、桝田酒造店 満寿泉
場所:富山市奥田新町2-27(樂翠亭美術館)
交通:JR「富山駅」北口から徒歩8分、富山港線 「インテック本社前駅」から徒歩5分。(樂翠亭美術館)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『手塚治虫 ブラック・ジャック展』 東京シティビュー

東京シティビュー
『手塚治虫 ブラック・ジャック展』
2023/10/6~11/6



今年連載50周年を迎えた手塚治虫の『ブラック・ジャック』の世界を紹介する展覧会が、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューにて開かれています。

今回の『手塚治虫 ブラック・ジャック展』の最大の見どころは、「週刊少年チャンピオン」に掲載された531点もの直筆原稿が展示されていることで、記念すべき第1話目「医者はどこだ!」の全ページも原稿で読むことができました。



また「B・J遍歴」や「人体の神秘」10のキーワードによって『ブラック・ジャック』のストーリーを追う構成となっていて、あわせて手塚の医大時代の資料や、作品の誕生に迫る手塚プロの関係者や出版に携わった証言映像も公開されていました。



このほか、「B・J蘇生」と題し、現代と当時の視点で『ブラック・ジャック』を紐解く展示も興味深いかもしれません。



コロナ禍や昨今の世界情勢において、改めて意味を持つ生命の尊さや、医療の重要性や課題などのテーマも作品の随所に表れていて、手塚のメッセージは今の時代も強く響いているように思えてなりませんでした。



Penオンラインでも『手塚治虫 ブラック・ジャック展』の見どころを寄稿しました。


連載50周年!『手塚治虫 ブラック・ジャック展』が東京シティービューにて開催中|Pen Online

フォトスポットのみ撮影が可能です。11月6日まで開催されています。*Penの記事の写真撮影と掲載は主催者の許可を得ています。

『手塚治虫 ブラック・ジャック展』@BJExTwt) 東京シティビュー@tokyo_cityview
会期:2023年10月6日(水)~11月6日(月) 
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *入場は閉館の21:00まで。
料金:一般2100円、高校・大学生1600円、4歳~中学生800円、65歳以上1800円。
 *平日オンライン料金。土日祝オンライン、また平日窓口、土日祝窓口料金の設定あり。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』 神戸・六甲山上

今年で14回目を迎えた『六甲ミーツ・アート芸術散歩』が、神戸の六甲山上の9つのエリアにて開かれています。


武田真佳『case』

今回の『六甲ミーツ・アート芸術散歩』の最大の特徴は、過去の芸術祭よりも規模を拡大していることで、招待アーティストの拡充し、芸術祭の拠点を作ったほか、従来の会場に加えてハイキングルートで作品を見られるトレイルエリアを設置するなどの新たな施策が行われました。


コニシユウゴ『Moon Plants』

そのうち新たに拠点となったのがROKKO森の音ミュージアムで、アーティストグループ山中suplexのメンバーであるコニシユウゴ(たま製作所)が、池の上にドーム型の『Moon Plants』を築いたほか、新たに整備された野外アート作品展示ゾーンでは、三梨伸による御影石を用いたオブジェや船井美佐のステンレスミラーを素材とした作品などが公開されていました。


中﨑透『Sunny Day Light/ハルとテル』

トレイルエリアの中﨑透による『Sunny Day Light/ハルとテル』がハイライトを飾る作品といえるかもしれません。ここで中崎はかつて山荘を利用していた人物にインタビューを敢行し、60年以上前にこの地で結ばれたハルとテルの愛の物語を、テキストで綴られる16のエピソードとともにツアー型のインスタレーションとして表現しました。


中﨑透『Sunny Day Light/ハルとテル』

さまざまな素材を用いて作り込んだ廃屋寸前の山荘内部は、かつての記憶を呼び起こしながらも、造作からしても極めて存在感がありました。


中﨑透『Sunny Day Light/ハルとテル』

避暑地としての山荘文化が築かれた六甲山ならではのインスタレーションだったかもしれません。古き恋の物語を鬱蒼とした森の奥の山荘にてたどることができました。


川俣正『六甲の浮き橋とテラス』

このほか、同じくトレイルエリアの新池における川俣正のテラスの作品も六甲の森を借景にした美しい作品だったのではないでしょうか。


わにぶちみき『Beyond the FUKEI』

六甲高山植物園や六甲ケーブル山上駅、また風の教会などと、エリアごとに展開するさまざまな作品に見入りました。


北浦和也『Picnic on Circle Circus』

なお本日、9月23日よりROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園において、夜間のプログラム「ひかりの森~夜の芸術散歩~」もスタートしました。


船井美佐『森を覗く 山の穴』


『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』の事前の概要をイロハニアート、そしてプレスツアーに参加しての見どころをPenオンラインに寄稿しました。あわせてご覧いただければ嬉しいです。

六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyondが神戸・六甲山上にて開催! | イロハニアート

関西を代表する芸術祭へ、『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』が開催中!|Pen Online


菅原陸『となりにいてあげる』

11月23日まで開催されています。

『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』@RokkoMeetsArt) 神戸・六甲山上
会期:2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)
休館:会期中無休。
 *ただし六甲山サイレンスリゾートのみ8月~10月の毎週月曜日休業(月曜祝日の場合は火曜に振替休業)。
時間:10:00~17:00
 *会場により営業時間が異なります。
鑑賞パスポート:大人2900円、小人1100円。
 *Webチケットサービスでの販売料金。
 *大人:中学生以上 小人:4歳から小学生まで
 *このほか、「ひかりの森~夜の芸術散歩~」の入場がセットになったナイトパス付鑑賞パスポートを販売。
場所:神戸市灘区六甲山町北六甲4512-145(ROKKO森の音ミュージアム)
交通:阪神御影・JR六甲道・阪急六甲から市バス16系統で「六甲ケーブル下」下車(約15分~30分)六甲ケーブルで「六甲ケーブル山上駅」下車、六甲山上バスで各施設へ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ