『企画展「銘仙』 埼玉県立歴史と民俗の博物館

埼玉県立歴史と民俗の博物館
『企画展「銘仙』
2022/10/15~12/4



埼玉県立歴史と民俗の博物館で開催中の『企画展「銘仙』を見てきました。

平織の絹織物を指す銘仙は、関東地方の養蚕業や織物業が盛んな地域で生産され、技術の発達によって作られた模様銘仙は、大正から昭和にかけて大きく流行しました。

そうした銘仙の魅力を紹介するのが『企画展「銘仙』で、会場では銘仙の優品とともに、養蚕・製糸道具をはじめ、糸に色付けする捺染(なっせん)と呼ばれる道具から現代の新作銘仙などが公開されていました。


右手前『着物 黒地花文様銘仙』

まず冒頭では「銘仙ってどんなきもの?」と題し、銘仙の歴史やほぐし織といった織り方、また併用絣と呼ばれる技法について紐解いていて、いわば銘仙のイロハを学ぶことができました。


左『着物 薔薇文様銘仙』

元は「太織」と呼ばれる丈夫な織物である銘仙は、江戸時代の後半には広く流通していて、当初は縞や無地の柄が主流でした。しかし明治40年代、ほぐし織と呼ばれる技法が確立すると、色鮮やかな銘仙が作られるようになり、多くの女性たちに親しまれました。ちなみに銘仙とは当初、緻密な織物を意味する目専などに由来し、明治以降、百貨店で販売されると、当て字として銘仙と称されるようになりました。


右:『着物 玉虫地篠竹文様銘仙』

このほぐし織の銘仙のうちの1つである玉虫織とは、経糸と緯糸に補色や反対色などの異なる色を使うことにより、光沢感のある質感に仕上げる技法で、主に埼玉県の秩父が得意としていた技法でした。このほか、群馬県の伊勢崎では併用絣や緯総絣、また栃木県の足利では半併用絣などが用いられるなど、産地によってさまざまな技法が生み出されました。


『企画展「銘仙』展示風景

これに続くのが銘仙の生産過程をたどるコーナーで、主に秩父地域ゆかりの生産用具などが展示されていました。蚕種箱に桑扱き台にはじまり、捺染糸や実際に使われた型紙なども、興味深い資料だったかもしれません。


左『着物 楓文様銘仙』

ラストでは昭和時代から近年作られた銘仙までが一堂に介していて、色とりどりに染まった銘仙を目で楽しむことができました。


右『着物 浅葱地ヨット文様銘仙』

ここでは伝統的な麻の葉の模様を大胆にデザインあしらったものや、街灯ランプやヨットの模様、はたまた鶴といった吉祥柄の銘仙などが並んでいて、実に多様なデザインを見ることができました。


左『着物 薔薇文様銘仙』

銘仙は日常的な装いでありながら、人の成長にあわせてハレの日を飾る着物としても用いられて、まさに幅広い生活シーンに取り入れられた装いでもありました。


「秩父銘仙」ポスター 昭和時代

質量ともに銘仙展の決定版としても差し支えないかもしれません。想像以上に充実した展示でした。


埼玉県立歴史と民俗の博物館 常設展示室

なお埼玉県立歴史と民俗の博物館は、本展を終えると大規模改修工事のため、来年秋頃を目処に休館します。


埼玉県立歴史と民俗の博物館 常設展示室

埼玉県の歴史を豊富な資料にて紹介する常設展を含めて、長期休館前の見納めとなりそうです。


一部を除いて展示室内の撮影も可能です。まもなく会期末です。12月4日まで開催されています。

『企画展「銘仙』 埼玉県立歴史と民俗の博物館@saitama_rekimin
会期:2022年10月15日(土)~12月4日(日)
休館:月曜日。但し11月14日は開館。
時間:9:00~16:30。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般400(250)円、高校・大学生200(150)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金
住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4-219
交通:東武アーバンパークライン(野田線)大宮公園駅より徒歩5分。
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『江口寿史イラストレーション展 彼女』 千葉県立美術館

千葉県立美術館
『江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている』
2022/10/29~2023/1/15



千葉県立美術館で開催中の『江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている』を見てきました。

1956年生まれの漫画家、江口寿史は、『すすめ‼パイレーツ』や、『ストップ‼ひばりくん!』といった作品で人気を博すと、その後、雑誌の表紙や挿画、装幀本、それに商品広告などを手がけ、イラストレーターとしても長く活躍してきました。

その江口の描いた女性のモチーフに着目したのが『江口寿史イラストレーション展 彼女』で、会場には初期から新作までの原画や複製など500点もの作品が公開されていました。



まず冒頭では、江口が本の表紙などに描いた女性をインクジェットプリントにてカンヴァス上へ引き出した作品が展示されていて、リキテンスタイン風のひばりくんやウォーホルの絵画を連想させるカウガールなどを見ることができました。



こうした作品の例からしても、江口の色彩や構図のルーツに、1960年代のポップアートがあることが指摘されていて、大衆的な日用品や流行に目を向ける江口のセンスなども伺い知ることができました。



これに続くのが江口が40年間あまりにわたって描いたイラストの原画、および出力原画で、雑誌、単行本カバーをはじめ、熊本地震の復興イラストやデニーズのメニューといった実にさまざまな作品が並んでいました。



創刊から現在まで70枚以上を手がけ、今後も毎シーズン制作されるという季刊『リアルワインガイド』は、江口のイラストレーションとしては最長のシリーズで、いずれもワインボトルを手にした女性などが鮮やかな色彩をもって表現されていました。



この『リアルワインガイド』のように、江口のイラストには時代における若い女性のファッションなどが巧みに描きこまれていて、音楽といった流行も見事に取り込んでいました。それこそ現代の美人画、風俗画とも呼べるのかもしれません。



江口のキャリアの原点とも言える、『すすめ‼パイレーツ』の扉絵イラストも見どころではないでしょうか。熊本県生まれの江口は、10代を千葉県にて過ごしていて、『すすめ‼パイレーツ』も同県を舞台にしていました。



漫画家、江口寿史の個展で見たい、45年にわたって描き続けた「彼女」|Pen Online

最終入館時間が16時、閉館が16時半です。少し早めに閉まります。お出かけの際はご注意ください。


会場内の撮影も可能です。2023年1月15日まで開催されています。*写真はすべて『江口寿史イラストレーション展』展示作品、および展示風景。

『江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている』 千葉県立美術館@chiba_pref_muse
会期:2022年10月29日(火)~2023年1月15日(日)
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は開館し、翌日休館。年末年始(12月28日〜1月4日)。
時間:9:00~16:30。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、高校・大学生250(200)円、中学生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金
住所:千葉市中央区中央港1-10-1
交通:JR線・千葉都市モノレール千葉みなと駅より徒歩約10分。
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『ブラチスラバ世界絵本原画展』が千葉市美術館にて開かれています

スロバキア共和国の首都ブラチスラバで2年ごとに開催される「ブラチスラバ世界絵本原画展」には、日本はもとより、近年は韓国といったアジアの地域の絵本作家も数多くの受賞作家を輩出してきました。



この「ブラチスラバ世界絵本原画展」を起点に、近年の日韓の絵本文化を紹介するのが『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉-日本と韓国のいま』で、展示の内容についてイロハニアートへ寄稿しました。

ブラチスラバ世界絵本原画展でアジアの扉を開こう! | イロハニアート

さて今回の見どころは、「日本と韓国のいま」とのサブタイトルが示すように、日韓の出品作家による原画と絵本にあるといえるかもしれません。

日本とは異なり、創作絵本の歴史の浅い韓国では、イラストレーションを中心とした絵本が作られ、従来の絵本の枠にとらわれることがなく、新しいメディアとして世代を超えて絵本を受容するような文化が築かれれいきました。

そして原画においてもデジタルの技術が多く用いられ、文字のないサイレントブックが作られたり、装丁でも表紙に穴を開けるなど、日本ではあまり見られないようなユニークな試みがなされました。

また展示では単に原画や絵本を公開するだけでなく、日韓の出版社の編集者にインタビューを行ったり、作家に絵本づくりを聞き取るなど、「どのように絵本が作られるのか」という点にも掘り下げていました。韓国のAIやITを組み合わせたコンテンツの開発や普及活動も興味深い内容だったかもしれません。



『ブラチスラバ世界絵本原画展』の受賞作品を起点に、日韓を取り巻く絵本文化の「いま」を知ることができる展覧会だったのではないでしょうか。比較文化の観点からも見入るべき点の多い内容でした。


北城貴子『Resonating Light 1』 2009年

なお同展は、『新収蔵作品展―現代美術の作品を中心に』と同時開催で、8階展示室にて『ブラチスラバ世界絵本原画展』、そして7階にて『新収蔵作品展―現代美術の作品を中心に』が行われています。


本城直季『small planet 幕張メッセ』 2021年 ほか

『新収蔵作品展―現代美術の作品を中心に』では、2021年に市内で開催された「CHIBA FOTO」に出品された写真作品をはじめ、「2000年以降の絵画」と題し、福田美蘭や杉戸洋、それに工藤麻紀子といった現代の作家の絵画が目立っていました。あわせて鑑賞されることをおすすめします。


12月25日まで開催されています。

『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉-日本と韓国のいま』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2022年11月12日(土)~12月25日(日)
休館日:12月5日(月)*休室日:11月21日(月)。
時間:10:00~18:00。
 *入場受付は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *7階「新収蔵作品展」、常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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『おいしいボタニカル・アート』 SOMPO美術館

SOMPO美術館
『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』
2022/11/5~2023/1/15



SOMPO美術館で開催中の『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』を見てきました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

古代ギリシアにさかのぼり、18世紀から19世紀にはイギリスをはじめ、ヨーロッパ各地で盛んに描かれたボタニカル・アートには、多くの食にまつわる植物もモチーフとして取り上げられました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

そうしたボタニカル・アートからイギリスの食文化を紹介するのが『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』で、ロンドンのキュー王立植物園の協力のもと、食用の植物を描いた作品などが公開されていました。

まずプロローグではボタニカル・アートに先立ち、食にまつわる絵画などが並んでいて、とりわけ繊細なタッチと瑞々しい水彩にてひまわりの咲く野を描いたジョージ・サミュエル・エルグッドの『ヒマワリ』に心を引かれました。

それに続くのがジャガイモやトウモロコシ、それにトマトといった野菜のボタニカル・アートで、単に作品を並べるだけでなく、それぞれの野菜がどのような経緯を辿ってイギリスへと入り、また食されていったのかについても細かに説明していました。

そのうち南アメリカのアステカを原産とするジャガイモは、16世紀にスペインを介して伝わったものの、芽や茎や葉に有毒な成分が含まれていることが周知されず、多くの食中毒を引き起こしてしまいました。そのために人々に忌避されてしまい、普及には長い時間がかかりました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

ロンドン園芸協会のお抱えの画家である、ウィリアム・フッカーの代表作『ポモナ・ロンディネンシス』が魅惑的と言えるかもしれません。「ロンドンの果物」を意味する同連作は、リンゴやモモなどの果物を植物学的に正確にでかつ生き生きと描いていて、まさに「おいしいボタニカル・アート」と呼べるような表現を見ることができました。


18世紀末から19世紀初頭のティー・セッティング 中期ジョージ王朝様式から摂政様式

茶やコーヒー、またチョコレートや砂糖、それにアルコールにまつわるボタニカル・アートも充実していて、茶やコーヒーに関しては食卓を飾るティー・セットなどもあわせて展示されていました。ミントンやウェッジウッドといった器好きにも嬉しい内容と言えるかもしれません。


アーツ・アンド・クラフツ運動の時代の喫茶文化

ボタニカル・アートそのものの展示は珍しいことではないかもしれませんが、食にテーマを絞り、そこからイギリスの歴史や文化を引き出した好企画ではないでしょうか。海外より多くの植物がもたらされ、それが食材としてイギリスの人々に食されるプロセスを知ることができました。


ウィリアム・フッカー『ポモナ・ロンディネンシス』

イロハニアートにも展示の見どころについて寄稿しました。

おいしいボタニカル・アート | 見どころは? | イロハニアート


ヴィクトリア朝のダイニング・テーブル・セッティング

一部の展示スペース、作品の撮影も可能です。


2023年1月15日まで開催されています。

『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』 SOMPO美術館@sompomuseum
会期:2022年11月5日(土)~2023年1月15日(日)
休館:月曜日。但し1月9日は開館。12月29日~1月4日は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1600)円、大学生1000(1100)円、高校生以下無料。
 ※( )内は電子チケット「アソビュー!」での事前購入料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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『ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク』 たばこと塩の博物館

たばこと塩の博物館
『ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク』
2022/9/10~12/25



たばこと塩の博物館で開催中の『ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク』を見てきました。

ヨーロッパで誕生し、主に喫煙に使われた着火具のライターは、時に意匠を凝らした銘品も作られ、愛好家の目を楽しませてきました。

そうしたライターの魅力を紹介するのが『ヴィンテージライターの世界』で、会場ではライターの前身である着火具をはじめ、ダンヒルやエバンスなどのメーカー品、またはユニークなテーブルライターなど約200点が公開されていました。


左:「マッチレス・シガーライター」 1890年代 右:「セミオート式ヒューズライター」

最初は1920年代にオイルタイターが普及するまでの歩みを紹介していて、オイルライター以前の着火具やさまざまな仕組みのライターを見ることができました。


右:「ルミナスライター」 フランス 19世紀後半

ここで面白いのは実に多様な着火方法で、紙火薬を用いた「マジック・ポケットランプ」や電解液を使った「ルミナスライター」、さらにはコイルに電気を流して電熱で着火させるライターなどに目を引かれました。


「アクアリウム」シリーズ ダンヒル 1940年代

1920年代の欧米においてオイルライターが普及しはじめると、単に着火具としてだけでなく、装身具や調度品としての外観も重要視されるようになりました。また工作機械の導入などによる技術の進展により、金工品の量産化が可能となると、金工品や服飾品のメーカーが次々とライターの製造に乗り出しました。


「オート式ポケットライター」 エバンス アメリカ合衆国 1930〜50年代

そして1950年代にかけてはアール・デコの影響も強く受けるようになり、幾何学的なデザインを取り入れたライターも作られるようになりました。


「デキャンタ」、「クイーン・アン」、「メルローズ」ほか ロンソン アメリカ合衆国 1930〜50年代

アメリカの金工品メーカーのロンソンは、当初ブックエンドや置き時計などを手がけていたものの、のちにオイルライターの事業に参画し、「バンジョー」などのヒット作を生み出しました。


「インペリアル・イースターエッグ風テーブルライター」 エバンス アメリカ合衆国 1940〜50年代

またレンブラントの「夜警」の図入りのテーブルライターや、ロシアのインペリアル・イースターエッグを模したテーブルライターといったにユニークな造形を用いるものも少なくありませんでした。


「ビュー・ライター」 スクリプト 1950年代

第二次世界大戦下においてアメリカ軍の「ジッポー」など、兵士の携帯品としてライターが定着する一方、金属は重要な物資でもあったため、製造に制約がかかることがありました。また1960年以降はガスライターが普及し、簡便な着火方式も開発されると、ライターはより多くの人々に使われるようになりました。


「電話機造形ライター」 日本

ラストの「ライター珍品奇品」の展示も面白いのではないでしょうか。それらは一体どこから火がつくのか見当もつかないものや、そもそもライターに見えないような造形など、驚くほどバラエティに富んでいました。


左:「ろうそく造形ライター」 カシーエ 右:「飛行機造形ライター」

まるで宝飾品やミニチュア、それにフィギュアを思わせるものなど、実に多種多様なライターに見入りました。


撮影も可能でした。12月25日まで開催されています。

『ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク』 たばこと塩の博物館@tabashio_museum
会期:2022年9月10日(土)~12月25日(日)
休館:月曜日。但し9/19、10/10は開館。9月20日(火)、10月11日(火)。
時間:10:00~17:00。*入館は16時半まで。
料金:一般・大人100円、小・中・高校生50円。
住所:墨田区横川1-16-3
交通:東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅より徒歩8分。都営浅草線本所吾妻橋駅より徒歩10分。東京メトロ半蔵門線・都営浅草線・京成線・東武スカイツリーライン押上駅より徒歩12分。
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太田記念美術館にて『闇と光―清親・安治・柳村』が開催されています

明治時代初期、浮世絵師の小林清親らによって描かれた光線画は、西洋に由来する油彩画や石版画などの表現を木版画に取り入れ、のちの新版画の先駆けとも呼ばれるほど新たな世界を切り開きました。



その光線画の魅力に迫る『闇と光―清親・安治・柳村』の内容について、WEBメディアのイロハニアートへ寄稿しました。

「光線画」を知っていますか?明治の人々が見た闇と光。 | イロハニアート

まず会場では光線画の始祖である小林清親の作品が紹介されていて、「夜」と題したコーナーでは明治時代の暗い夜の中、ガス灯の点る東京の街を描いた作品などを見ることができました。

輪郭線を省略し、色の面で人物を捉え、ぼかしや網目、短い横線によって陰影をつけるのが光線画の特徴で、いずれも光と闇の対比を強調して描いていました。



吉原遊廓の南西にあった神社を舞台とした『浅草田甫太郎稲荷』に心を引かれました。誰もいない神社から鳥居越しに川面を望んでいて、あたりは裏寂れるようにして静まり返っていました。この神社は幕末こそ多くの参拝客で賑わっていたものの、明治に入ると廃れたとされていて、清方はかつての名所だった頃を懐かしむようにして描き出しました。

この清方の弟子だったのが井上安治で、四つ切判のシリーズの『東京真画名所図解』を出版しては、文明開化にて変化する東京の風景などを描きました。

もう1人の浮世絵師である小倉柳村は、生没年や経歴が不明とされていて、光線画を手がけたものの作品はわずか9点ほどしか残されませんでした。

とはいえ、湯島天神の男坂の上に立つ2人の男性を満月ともに描いた『湯嶋之景』などは、情緒深く、かつミステリアスな雰囲気をたたえていて、清親や井上とは異なった魅力が感じられました。


最後に展示替えの情報です。会期中、前後期にてすべての作品が入れ替わります。

『闇と光―清親・安治・柳村』出品リスト(PDF)
前期:11月1日(火)~11月23日(水・祝)
後期:11月26日(土)~12月18日(日)

詳しくは公式サイトより出品リストにてご確認ください。


前後期をあわせて出品される約200点の光線画は、当時制作された作品の約9割に相当します。まさに光線画の展覧会の決定版といえそうです。

12月18日まで開催されています。

『闇と光―清親・安治・柳村』 太田記念美術館@ukiyoeota
会期:2022年11月1日(火)~12月18日(日)
 *前期:11月1日(火)~11月23日(水・祝)、後期:11月26日(土)~12月18日(日)前期と後期で全点入れ替え。
休館:月曜日、および11月24日(木)、25日(金)。
時間:10:30~17:30(入館は17時まで)
料金:一般1000円、大・高生700円、中学生以下無料。
住所:渋谷区神宮前1-10-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩5分。
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『琳派の花園 あだち』 足立区立郷土博物館

足立区立郷土博物館
『琳派の花園 あだち』 
2022/10/9~12/11



足立区立郷土博物館で開催中の『琳派の花園 あだち』を見てきました。

江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一の周辺には、現在の足立区と千住にて活動した絵師たちが多く存在しました。

そうした足立と千住における琳派の系譜をたどるのが『琳派の花園 あだち』で、江戸時代後期から明治時代にかけて描かれた約70点の作品が公開されていました。


村越其栄『秋草図屏風』 江戸時代後期

まずプロローグでは「琳派の花園」と題し、ともに千住を拠点とした絵師、村越其栄や子の向栄といった屏風絵が展示されていて、とりわけたらし込みを駆使して秋の草花を可憐に描いた其栄の『秋草図屏風』に魅せられました。


村越向栄『四季草花人物図屏風』 明治時代

其一の弟子である其栄は、下谷より千住に移ると寺子屋を営みながら絵師として活動していて、琳派の画風を受け継いだ草花図などを多く描きました。また向栄は明治時代に活動した其栄の子で、父から譲り受けた琳派の画法にてさまざまな作品を制作しました。

1800年頃、千住の地で建部巣兆を中心とした俳諧のグループが作られると、当時下谷に住んでいた抱一とも親交を深め、谷文晁や亀田鵬斎らも加わり、千住と下谷の俳人らの交流が生まれました。


亀田鵬斎、酒井抱一、大田南畝、谷文晁 他『高陽闘飲図巻』 江戸時代 文化14(1817)年頃

こうした関わりを伝えるのが2度にわたって開かれた「千住酒合戦」で、抱一や文晁、それに大田南畝らの合作である『高陽闘飲図巻』には、酒量を競っている場面や賓席の文人たち、また酒や料理を準備する人々といった酒合戦の様子が描かれました。

其一も抱一と同様、千住の文人と交流を深めていて、其栄の時代には千住の絵師たちも掛軸や摺物を多く手がけるなど一つの成熟期を迎えました。


『関屋里元追善集』 江戸時代 天保3(1832)年

千住の文人、関屋里元の死を悼み、ゆかりの人々が絵を詩を寄せた追善集には、其一も加わっていて、墨のグラデーションを巧みに用いた夜桜の絵を見ることができました。


村越向栄『八橋図屏風』 明治時代

明治時代に活動した向栄は、千住の教育者や町絵師として地域と深く関わると、光琳派と呼ばれた酒井道一らと会を結成するなど明治画壇でも頭角を現しました。そして千住では向栄を中心に、有力者が美術品を持ち寄って展覧会を開くなどして活動しました。


村越向栄『月次景物図』 明治時代

向栄の『月次景物図』とは、抱一の手がけた十二ヶ月図花鳥図の系譜を受け継いだもので、花鳥に加えて京都や日光といった風景も描きました。こうした作品は千住の名家に飾られては、大切に引き継がれ、今に残されてきました。


中野其玉『朝顔図』 明治32(1899)年

千住ゆかりの人物で、其一の孫弟子である中野其玉の『朝顔図』も魅惑的ではないでしょうか。琳派の画風を踏襲し、朝顔の咲く様子を鮮やかな色彩をもって描いていました。


『琳派の花園 あだち』展示風景

足立区では2010年より文化遺産調査を行いながら、千住や足立での琳派の活動を紹介していて、これまでにも『千住の琳派 - 村越其栄・向栄父子の画業』(2011年)や『美と知性の宝庫 足立ー酒井抱一・谷文晁とその弟子たち』(2016年)などで作品を公開してきました。


左:田中抱二『牡丹図』 江戸時代後期〜明治時代

今回の展覧会でも最新の知見を交え、琳派と千住の関係を丹念に紐解いていたのではないでしょうか。解説や資料の多く掲載されたカタログも充実していました。

一部を除き、撮影も可能です。12月11日まで開催されています。

『琳派の花園 あだち』 足立区立郷土博物館
会期:2022年10月9日(日)~12月11日(日)
休館:毎週月曜日。但し月曜が休日の場合は開し、翌火曜は休館。
時間:9:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人(高校生以上)200円、団体(20名以上)100円。
 *70歳以上は無料。
 *毎月第2・第3土曜日は無料公開日。
場所:足立区大谷田5-20-1
交通:JR亀有駅北口から東武バス八潮駅南口行、足立郷土博物館下車徒歩1分。もしくは東武バス六ツ木都住行、東渕江庭園下車徒歩4分。東京メトロ千代田線綾瀬駅西口から東武バス六ツ木都住行、東渕江庭園下車徒歩4分。駐車場有。
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青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.3弘前レンガ倉庫美術館・弘南鉄道アート列車



青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.2青森県立美術館・国際芸術センター青森

青森駅を9時過ぎに発車する特急つがるに乗って弘前駅へと着くと、まずは弘前れんが倉庫美術館へと向かいました。


弘前駅

弘前では『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展を鑑賞するのと、11月13日まで弘南鉄道弘南線にて運行されているアート列車に乗ることを目的としていました。


弘前れんが倉庫美術館

弘前れんが倉庫美術館は、戦前の酒造工場や戦後の倉庫跡に由来するれんが造りの建物で知られ、田根剛の設計のもとに2020年に美術館としてオープンしました。


弘前れんが倉庫美術館

シードル・ゴードルの屋根が特徴的な建物の内部には、5つの展示室をはじめ、貸出用の3つのスタジオ、市民ギャラリーなどが整備されていて、同じくれんが造りの別棟にはカフェとミュージアムショップが入居していました。


『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展 展示風景

現在開催中の『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展とは、美術館の前身の煉瓦倉庫時代に開かれた奈良美智の3度の展示を振り返るもので、一連の展示に関する資料や写真、また出展作品などが公開されていました。


『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展 展示風景

一連の膨大な資料とともに強く感じたのは、3度の展示をきっかけに多くの人々のつながりが生まれたことで、ボランティアスタッフの記録写真などからは、当時の弘前に渦巻いた熱気すら伝わってきました。


『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展 展示風景

また「弘前エクスチェンジ」と題し、ボランティアに参加してアーティストの道へと進んだ佐々木怜央のガラスの作品や、若い世代が「奈良美智展弘前」をリサーチし、短い演劇を創作する「もしもし演劇部」といった市民参加型の活動も行われていて、単に過去を振り返るだけでなく、未来へとつながるような取り組みも目を引きました。*『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』についてはPenオンラインに寄稿しました。


『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展 展示風景(佐々木怜央作品)

きっかけは一本の電話から?奈良美智の弘前での3度の展覧会を振り返る|Pen Online

『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展を鑑賞したのちは、隣のカフェ『CAFE & RESTAURANT BRICK』にて少し早いランチタイムとすることにしました。


『CAFE & RESTAURANT BRICK』にて

開館時の2年前にも一度、美術館を訪ねたことがありましたが、その際は偶然にもカフェが貸切営業として利用できませんでした。人気の同カフェはパーティ等にて貸切になることも少なく、事前に公式サイトにて営業状況を確認するのをおすすめします。


『CAFE & RESTAURANT BRICK』にて

ワンプレートをいただきながらのんびりと過ごしたのちは、弘南鉄道アート列車に乗るために起点の弘前駅へと向かいました。


『青森をアートでたどるプロジェクト』よりアート列車(弘前駅にて)

弘南鉄道アート列車とは、沿線をアートの視点で見直し、住民や観光客へ新たな体験を提供しようとする『青森をアートでたどるプロジェクト』の企画で、現代アーティストの原高史がタイムトラベルをテーマにしたピンク色のアート列車を制作しました。


『青森をアートでたどるプロジェクト』よりアート列車

アート列車は弘前と黒石の間を1日約9往復していて、車内の窓はおろか、天井の扇風機や吊り革の広告部分などもピンク色のカッティングシートにて覆われ、想像以上にピンク色に染まっていました。


『青森をアートでたどるプロジェクト』よりアート列車

そして床や窓には西暦の数字や「どの時代に行きたいですか?」といった言葉が記され、それぞれの乗客が記憶などの中で時間を行き来するような空間が作られていました。


『青森をアートでたどるプロジェクト』よりアート列車

それとともにピンクに染まった窓から景色も美しく、雄大な岩木山のすがたも目にすることができました。*弘南鉄道アート列車についてはイロハニアートに寄稿しました。

弘南鉄道がピンクに染まる?!青森でアート列車に乗ってみよう | イロハニアート


『青森をアートでたどるプロジェクト』よりアート列車(黒石駅にて)

弘前と黒石の間をアート列車で1往復すると、初日の十和田市現代美術館にはじまる青森の美術館をめぐる旅も終わりに近づいてきました。


スターバックスコーヒー弘前公園前店(登録有形文化財)

2年前に弘前に来た時はちょうどお城でお祭りが行われ、どこも大変な人出だったため、あまりゆっくり観光することができませんでした。


土手の珈琲屋 万茶ン

よって今回は東北では最古の珈琲屋で知られる万茶ンにてコーヒーをいただきながら、帰りの電車の時間まで弘前の街を散歩しました。


弘前れんが倉庫美術館

次に青森に出向く際は、スケジュールの関係で立ち寄れなかった八戸市美術館もあわせて巡りたいと思います。


『「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展』 弘前れんが倉庫美術館@hirosaki_moca
会期:2022年9月17日(土)~2023年3月21日(火・祝)
休館:火曜日。12月26日(月)~1月1日(日) ※3月21日(火・祝)は開館
時間:9:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般1300(1200)円、大学・専門学校生1000(900)円。
 *( )内は20名以上の団体料金
住所:青森県弘前市吉野町2-1
交通:JR弘前駅より徒歩20分。弘南バス(土手町循環100円バス)「中土手町」下車徒歩4分。

『青森をアートでたどるプロジェクト 原 高史 〈AOMORI MAPPINK MEMORY 「記憶の未来」〉』  弘南鉄道弘南線車両及び主要駅(弘前駅・平賀駅・ 黒石駅)ほか
会期:2022年9月14日(水)~11月13日(日)
時間:1日9往復を予定。
 *車両点検で運休となる日あり
 *電車の最新の運行状況は弘南鉄道 Twitter(@konantetsudo)にて要確認
料金:周遊チケット:「わのパス MAPPINK TICKET」1100円
 *弘南鉄道弘南線1日乗車券 + プロジェクトの特別冊子付き
 *「わのパス」持参で弘前れんが倉庫美術館が100円引など特典あり
交通:弘南鉄道弘南線―JR奥羽本線「弘前駅」より乗り換え。
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青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.2青森県立美術館・国際芸術センター青森



青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.1十和田市現代美術館



青森駅近くのホテルを出て、三内丸山遺跡前行のバス乗り、青森県立美術館へと着いたのは9時15分頃でした。


青森県立美術館

この日は全国を巡回していた『ミナ ペルホネン/皆川明』の青森での最後の開催日で、各地で話題を集めていた展示ということもあり、9時半の開館前には若干の列もできていました。


青森県立美術館

私はすでに『ミナ ペルホネン/皆川明』展を東京都現代美術館で鑑賞していたため、まずはアレコ・ホールにはじまるコレクション展を見ることにしました。


マルク・シャガール、バレエ「アレコ」の舞台背景画 展示風景

アレコ・ホールとはマルク・シャガールのバレエ「アレコ」の背景画を展示するスペースで、巨大な吹き抜けの中に、縦が約9メートル、横は約15メートルもの背景画が4点吊られるようにして公開されていました。


マルク・シャガール、バレエ「アレコ」の舞台背景画 展示風景

このうちの3点が同館の所蔵品であるものの、残りの1点をアメリカのフィラデルフィア美術館より借用しているため、すべて鑑賞することができました。*借用期間は2023年3月末までを予定。


マルク・シャガール、バレエ「アレコ」の舞台背景画 「アレコ特別鑑賞プログラム」時の展示風景

また「アレコ」の背景画を、舞台用の照明と音楽、ナレーションとともに紹介する特別プログラムも実施されていて、バレエのストーリーを分かりやすくたどることができました。


棟方志功『華厳譜』

青森県立美術館の魅力は、版画家の棟方志功をはじめ、現代アーティスト奈良美智、それに怪獣デザインで知られる彫刻家で特撮美術監督の成田亨といった、青森にゆかりの深い郷土作家のコレクションが充実していることでした。


奈良美智作品 展示風景

まず奈良美智では、絵画からオブジェ、インスタレーションなどが展示されていて、屋内からは青森の現代アートのシンボルとも化したあおもり犬も望めました。


奈良美智作品 展示風景

さらに棟方志功や草間彌生、また成田亨の作品などを見終えたのちは、屋外へと出て奈良美智のあおもり犬と『Miss Forest/森の子』を見学しました。なお青森県立美術館では一部の展示を除いて撮影が可能です。


あおもり犬

翌日より空調工事などにて休館する同館でしたが、休館中にあおもり犬の塗り替えも行われるため、ちょうど塗り替え前の最後の一般公開日での観覧となりました。*休館は11月22日までを予定。


奈良美智『Miss Forest/森の子』

八角堂での『Miss Forest/森の子』も一部改修が行われるとのことで、長く風雪に耐えてきた森の子のすがたを目に焼き付けました。


カフェ『4匹の猫』にて。あべ鶏と青森産りんごのカレーライス

一通り鑑賞するとランチタイムになっていたので、カフェ『4匹の猫』にてあべ鶏と青森産りんごのカレーライスと果汁100%リンゴジュースをいただきました。ジュースは弘前タムラファームによるもので、カレーもりんごで煮込んでいるからか甘味のある優しい味でした。カフェ『4匹の猫』は店内も広く、個々のテーブルの間もゆとりがあり、のんびりと食事を楽しむこともできます。


国際芸術センター青森

青森県立美術館を堪能したのちは、一度バスで青森駅へと戻り、同じ青森市内にあるもう1つのアートスポットを目指すことにしました。


国際芸術センター青森

それが2001年に開館し、現在は青森公立大学が運営する国際芸術センター青森でした。建物の設計を手がけたのは安藤忠雄で、市南部の八甲田山麓の森の中に位置していました。


国際芸術センター青森

青森駅よりバスに揺られること約40分、市街地を抜けて山道に差し掛かると、入口が見えるのが国際芸術センター青森でした。


国際芸術センター青森 展示棟

鬱蒼とした森の中にある国際芸術センター青森は、馬蹄型の展示棟をはじめ、創作棟と宿泊棟の3棟からなっていて、これまでにアーティスト・イン・レジデンス(AIR)を中心に、教育普及や展覧会の開催といった活動が行われてきました。


国際芸術センター青森 展示棟

この日は展示が行われていなかったため、建築物と屋外に点在する彫刻を鑑賞することにしました。


国際芸術センター青森 創作棟

屋外ステージを備えた展示棟をはじめ、創作棟と宿泊棟も、森の中に沈み込むように配されていて、彫刻も自然に溶け込むようにして置かれていました。


国際芸術センター青森 屋外彫刻作品

バスの本数が限定的なため、あまり長く滞在できませんでしたが、建物からしても一見の価値のある施設るかもしれません。


青森港から青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸

この後は市内のホテルへと戻り、青森港を散策しつつ、近くの和食店で手の込んだ料理やお酒をいただいて夜を過ごしました。


青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.3弘前レンガ倉庫美術館・弘南鉄道アート列車へと続きます。

『シャガール「アレコ」全4作品完全展示』 青森県立美術館@aomorikenbi
会期:2017年4月25日~2023年3月末(予定)
休館:毎月第2、第4月曜日 (祝日の場合は、翌日休館)。年末年始(12月26日~1月1日)。この他、展示替え休館、館内改修工事のための臨時休館日あり。
 *11月22日まで館内工事のため休館
時間:9:30~17:00 
 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人510(410)円、大・高校生300(240)円、中学生・小学生100(80)円。
 *常設展観覧料。
 *企画展は別料金。
住所:青森市安田字近野185
交通:JR新青森駅東口よりルートバスねぶたん号「県立美術館前」下車。青森駅前6番バス停より「三内丸山遺跡行」より「県立美術館前」下車。駐車場あり。

国際芸術センター青森@acac_aomori
休館:年末年始(12月29日~1月3日)及び大学入学試験に関わる日程。
時間:9:00~19:00
 *展覧会:10:00~18:00
料金:無料
住所:青森市大字合子沢字山崎152-6
交通:JR青森駅からJRバスまたは青森市営バス「モヤヒルズ、青森公立大学行」に乗車、「青森公立大学」下車。(バス乗車時間は約40分)
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青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.1十和田市現代美術館

青森県立美術館をはじめ、十和田市現代美術館や2021年に開館した八戸市美術館など、青森県には現代アートなどのコレクションを有する5つの美術館とアートセンターが存在します。



私が約2年ぶりに青森の美術館を訪ね歩いたのは10月の初旬のことでした。現在、十和田市現代美術館では『名和晃平 生成する表皮』展、また弘前れんが倉庫美術館では『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』展などが開かれていて、まずは最初の目的地である十和田市現代美術館を目指すことにしました。

十和田市現代美術館の東北新幹線での玄関口は八戸駅、もしくは七戸十和田駅で、十和田へは両駅よりバスを利用する必要がありました。


十和田市民交流プラザ

はやぶさに乗って八戸駅に13時に着いたものの、良いタイミングにて十和田へ向かうバスがなかったため、青い森鉄道にて三沢駅へと移動し、そこから十和田へ行くバスに乗ることにしました。三沢から十和田への所要時間は約30分で、朝夕を除けば1時間に1本程度運行されていました。


十和田市現代美術館

2008年、東北初の現代美術館として開館した十和田市現代美術館は、十和田市の中心部の官庁街通りに位置しています。


十和田市現代美術館

西沢立衛の設計による建物は、白い箱のような展示室が独立して続く構成となっていて、外へと向けて開けた大きなガラス窓を特徴としていました。


ジム・ランビー『ゾボップ』 2008年

ジム・ランビーによってカラフルに彩られたスペースにて受付をすませ、ガラスの廊下を用いて次の展示室へと向かうと、ロン・ミュエクの『スタンディング・ウーマン』がすがたを現しました。


ロン・ミュエク『スタンディング・ウーマン』 2008年

同館では1展示室1作家1作品の展示を基本としていて、いずれも現代アーティストによる大掛かりなインスタレーションを中心としていました。


塩田千春『水の記憶』 2021年

塩田千春の『水の記憶』やトマス・サラセーノの『オン・クラウズ (エア-ポート-シティ)』といったホワイトキューブに映える作品とともに、ハンス・オプ・デ・ビークらによる暗室を用いたインスタレーションも面白いかもしれません。


マリール・ノイデッカー『闇というもの』 2008年

このうちマリール・ノイデッカーは『闇というもの』において、樹木を象ったジオラマを公開していて、深い夜の森の奥へと彷徨っているような気持ちにさせられました。


アナ・ラウラ・アラエズ『光の橋』 2008年

幾何学的の彫刻でありながら、SFに登場するような宇宙船を思わせるのがアナ・ラウラ・アラエズの『光の橋』で、橋とあるように内部を渡り歩くこともできました。


レアンドロ・エルリッヒ『建物―ブエノスアイレス』 2012/2021年

このほか、森美術館での個展が大変な人気を集めた、レアンドロ・エルリッヒの『建物―ブエノスアイレス』も楽しい作品といえるかもしれません。


オノ・ヨーコ『念願の木』 1996/2008年
 
ガラスの通路を行き来しつつ、階段から屋上、また外壁にまで点在するコレクションは想像以上に充実していて、企画展示室での『名和晃平 生成する表皮』とあわせて楽しむことができました。*名和展の内容についてはイロハニアートに寄稿しました。


名和晃平『PixCell-Deer#52』 2018年

名和晃平の個展が開催中@十和田市現代美術館 十和田限定オリジナル展示も! | イロハニアート

さて十和田市現代美術館にて特筆すべきなのは、まちなかへの展開、つまり美術館外でも作品の展示が行われていることでした。


草間彌生『愛はとこしえ十和田でうたう』 2010年 *アート広場より

道路を挟んだアート広場では草間彌生やインゲス・イデーらの作品が展示されていて、一部に関しては遊具のように触れたり、中へ入ったりすることも可能でした。


エルヴィン・ヴルム『ファット・ハウス』 2010年

この日も実際に子どもたちが楽しそうに草間の作品に入ったりしていて、アートが人々の身近な場所に根ざしていくさまを見ることができました。



アート広場から南へ徒歩7分の場所にある「space」もサテライトスペースとして用いられていて、ちょうどアーティストの青柳菜摘の個展『亡船記』の会場として公開されていました。


青柳菜摘『亡船記』 展示風景

「space」とはアーティスト目[mé]が空き家をホワイトキューブに改装したもので、建物を切り抜いたような大きな窓が目立っていました。



さらに街中に目を転じると、お茶や器を扱いながら、現代アートを展示したり美術館と連動した企画を行う松本茶舗といった存在もユニークといえるかもしれません。


松本茶舗内より毛利悠子のインスタレーション

ここでは店内に毛利悠子や栗林隆といった作品が展示されていて、見学を申し出るとオーナーの松本さんが丁寧に案内してくださいました。


十和田市地域交流センター

このほか、9月にオープンしたばかりの十和田市地域交流センターを見学していると、いつの間にか17時頃となっていました。この日は青森市にホテルをとっていたため、夜までに青森へ移動しなくてはなりません。



青森へ向かうバスの時間まで少しあったため、市内の馬肉料理店で馬肉鍋を美味しくいただき、その後バスにて青森へと向かいました。


青森の美術館をめぐる旅:十和田・青森・弘前 Vol.2青森県立美術館・国際芸術センター青森へと続きます。

『名和晃平 生成する表皮』  十和田市現代美術館@ArtsTowada)、十和田市地域交流センター
会期:2022年6月18日(土)~11月20日(日)
 *十和田市地域交流センター:2022年10月1日(土) 〜11月20日(日)
時間:9:00~17:00
 *入場は閉館の30分前まで
料金:一般1800円、高校生以下無料
 *十和田市地域交流センターは無料
住所:青森県十和田市西二番町10-9(十和田市現代美術館)
交通:八戸駅より十和田観光電鉄バス「八戸駅」東口5から乗車、「官庁街通」バス停下車、美術館まで徒歩5分。(所要時間 約1時間)七戸十和田駅より十和田観光電鉄バス「七戸十和田駅」南口2番から乗車(所要時間 約35分)
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『ピカソのセラミック-モダンに触れる』 ヨックモックミュージアム

ヨックモックミュージアム
『ピカソのセラミック-モダンに触れる』 
2022/10/25~2023/9/24



ヨックモックミュージアムで開催中の『ピカソのセラミック-モダンに触れる』を見てきました。

第二次世界大戦後、60歳を超えたピカソは、パリから南フランスへと拠点を移すと、同地の陶器職人らと協働しながらセラミックの作品の制作をはじめました。

そうしたピカソのセラミックをモダンの観点から読み解くのが『ピカソのセラミック-モダンに触れる』で、キュビスム的なデザインからメタモルフォーズ、さらにダンスを表した作品などが展示されていました。



まず冒頭ではキュビスム的な静物やモチーフをカモフラージュしたようなセラミックが並んでいて、まるで魚を皿に並べた様子を描いたような作品に目を奪われました。



それらはどこか古代の遺物を思い起こさせるプリミティブな雰囲気をたたえていて、魚のかわいらしい表現にも心を引かれました。



メタモルフォーズ的なセラミックも面白いかもしれません。そのうち地中海を泳ぐ魚を4面に配した作品からは、あたかも魚が水の中でぐるぐると回遊する光景が浮かび上がっていて、ピカソの遊び心も垣間見ることができました。



『仮面をつけた顔』はピカソの意図かどうかは別に、セラミック制作の際に生じるひび割れが作品に面白い効果をあげていて、コミカルな仮面の表情にも魅力を感じました。



ピカソがマティスを参照し、踊り子をデフォルメしたようなダンスのセラミックも楽しいのではないでしょうか。ピカソが踊り子をいわば記号化し、新たに再解釈して表現したすがたに見入りました。



現在、上野の国立西洋美術館の『ピカソとその時代』(2023年1月22日まで)でもピカソの絵画が多数公開されていますが、あわせて見るのも楽しいかもしれません。



常設展示、およびフォトスポットを含め、私的利用に限り作品の撮影もできました。



なお美術館はヨックモック青山本店と同じ南青山に位置しますが、店舗と同じ場所ではありません。



表参道駅より骨董通りを経由、あるいは青山学院大学側から六本木通り方面の住宅街へ進むと建物が見えてきます。初めてお出かけの際は公式サイトの地図をご確認ください。



私も初めて出向きましたが、暗い地下と2階の明るい開放的な空間の対比、ないし邸宅にお邪魔したような落ち着いた雰囲気が印象に残りました。



また鑑賞したのちは、中庭に面したカフェでミニャルディーズをいただきながら、のんびりと時間を過ごすことができました。

2023年9月24日まで開催されています。*写真は『ピカソのセラミック-モダンに触れる』展示作品、および館内風景。

『ピカソのセラミック-モダンに触れる』 ヨックモックミュージアム
会期:2022年10月25日(火)~2023年9月24日(日)
休館:月曜日・年末年始。
 *ただし月曜日が祝日の場合は開館。
料金:一般1200円、大学・高校・中学生800円、小学生以下無料。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:港区南青山6-15-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口から徒歩9分。
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東京造形大学附属美術館にて『ヤマザキマリの世界』が開かれています

『テルマエ・ロマエ』 の漫画や著作で人気を集め、東京造形大学の客員教授も務めるヤマザキマリにスポットを当てた展覧会が、東京造形大学附属美術館にて行われています。



その『ヤマザキマリの世界』の内容について、Penオンラインに寄稿しました。

漫画家・ヤマザキマリの創作の源とは? 学生とともに作り上げた展覧会が開催中|Pen Online

まず会場では代名詞とも言える『テルマエ・ロマエ』 をはじめとした漫画の原稿などが並んでいて、あわせて「漫画ができるまで」と題し、制作プロセスも紹介されていました。


さらに『プリニウス』や『オリンピア・キュクロス』などの原画も公開されていて、ヤマザキマリの漫画家としての活動を追うことができました。

これに続くのがヤマザキマリの人生の足跡、ないし画家としての活動をたどる展示で、幼少期のお絵描きから15歳の時の「女性の肖像」、はたまたシュルレアリスム風のドローイングなどが並んでいて、画家としての原点を見ることができました。


『山下達郎の肖像』と『立川志の輔の肖像』とは、ヤマザキマリが実に22年ぶりに描いた油彩の肖像画で、油彩の豊かな質感表現と、モデルの特徴を捉えた緻密とも言える描写に目を引かれました。ヤマザキマリは現在、漫画家、および著述家として幅広く活動していますが、そもそもイタリアで油彩を学ぶなど画家を志していただけに、今後は画家としても新たな方向性が示されるのかもしれません。

今回の個展で最も重要なのは、単にヤマザキマリを資料で紹介するのではなく、東京造形大学の学生による二次創作と言える作品も公開されていることでした。漫画作品を組み合わせてヤマザキマリの肖像を表したモザイクアート『ヤマザキマリの肖像』も面白いのではないでしょうか。



一連の附属美術館に続き、第2会場のZOKEIギャラリーでも主にヤマザキマリの著作に関する展示が行われていて、作家の軌跡を示す年表などとあわせて見ることができました。



漫画、著述、さらにメディアへの出演など、実に幅広く活躍するヤマザキマリの創作世界の魅力を、東京造形大学の学生が向き合いながら巧みに引き出した好企画といえるかもしれません。手作り感のある展示内容も魅力的に思えました。


日曜・祝日は休館日ですが、11月6日は開館します。また会期中の閉館時間は16:30ですが、11月7日(月)と11月25日(金)に限り、19:00まで開館します。(最終入館は閉館の30分前まで)



入場は無料です。11月26日まで開催されています。*第2会場ZOKEIギャラリーの会期は11月18日まで。

『ヤマザキマリの世界』@yamazakimari_W) 東京造形大学附属美術館@tzuartmuseum
会期:2022年10月25日(火)~11月26日(土)
休館:日曜・祝日。
 *10月30日(日)と11月6日(日)は開館。
料金:無料
時間:10:00~16:30。
 *11月7日(月)、11月25日(金)は19:00まで開館
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:東京都八王子市宇津貫町1556
交通:JR線相原駅よりスクールバス5分(徒歩15分)。
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2022年11月に見たい展覧会【闇と光/パリ・オペラ座/加藤泉】

晩秋に入り、関東では朝晩を中心に冷え込むようになりました。



10月はいつものように都内近辺の展示を見ただけでなく、月の初めに青森へ行き、幾つかの美術館を巡りました。イロハニアートやPenオンラインにも展示やイベントをご紹介しましたが、改めてブログでもまとめたいと思います。

名和晃平の個展が開催中@十和田市現代美術館 十和田限定オリジナル展示も! | イロハニアート
弘南鉄道がピンクに染まる?!青森でアート列車に乗ってみよう | イロハニアート
きっかけは一本の電話から?奈良美智の弘前での3度の展覧会を振り返る|Pen Online

それでは11月に気になる展示をリストアップしてみました。

展覧会

・『旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる』 東京都庭園美術館(9/23~11/27)
・『アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』 府中市美術館(9/23~12/4)
・『没後80年記念 竹内栖鳳』 山種美術館(10/6~12/4)
・『小江戸文化シリーズ5 小茂田青樹展』 川越市立美術館(10/22~12/4)
・『将軍家の襖絵 屏風絵でよみがえる室町の華』 根津美術館(11/3~12/4)
・『見るは触れる 日本の新進作家 vol.19』 東京都写真美術館(9/2~12/11)
・『加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―』 国立歴史民俗博物館(10/4~12/11)
・『琳派の花園 あだち』 足立区立郷土博物館(10/9~12/11)
・『静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅰ響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―』 静嘉堂文庫美術館(10/1~12/18)
・『つながる琳派スピリット神坂雪佳』 パナソニック汐留美術館(10/29~12/18)
・『闇と光 ―清親・安治・柳村』 太田記念美術館(11/1~12/18)
・『生誕150年記念 板谷波山の陶芸』 泉屋博古館東京(11/3~12/18)
・『柴田是真と能楽 江戸庶民の視座』 国立能楽堂 資料展示室(10/29〜12/23)
・『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉―日本と韓国のいま』 千葉市美術館(11/12~12/25)
・『三浦太郎展 絵本とタブロー』 板橋区立美術館(2022/11/19~2023/1/9)
・『ポーラ美術館開館20周年記念展 ピカソ 青の時代を超えて』 ポーラ美術館(9/17~2023/1/15)
・『マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち』 DIC川村記念美術館(10/8~2023/1/15)
・『江口寿史イラストレーション展 彼女 ―世界の誰にも描けない君の絵を描いている』 千葉県立美術館(2022/10/29~2023/1/15)
・『おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』 SOMPO美術館(11/5~2023/1/15)
・『ビーズ—つなぐ かざる みせる 国立民族学博物館コレクション』 渋谷区立松濤美術館(2022/11/15~2023/1/15)
・『野口里佳 不思議な力』 東京都写真美術館(10/7~2023/1/22)
・『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』 国立西洋美術館(10/8~2023/1/22)
・『マン・レイと女性たち』 神奈川県立近代美術館 葉山館(10/22~2023/1/22)
・『桃源郷通行許可証』 埼玉県立近代美術館(10/22~2023/1/29)
・『ヴァロットン―黒と白 Félix Vallotton,noir et blanc』 三菱一号館美術館(10/29~2023/1/29)
・『中﨑透 フィクション・トラベラー』 水戸芸術館(2022/11/5~2023/1/29)
・『DOMANI・明日展 2022-23』 国立新美術館(2022/11/19~2023/1/29)
・『マリー・クワント展』 Bunkamura ザ・ミュージアム(2022/11/26~2023/1/29)
・『祈り・藤原新也』 世田谷美術館(11/26~2023/1/29)
・『月に吠えよ、萩原朔太郎展』 世田谷文学館(10/1~2023/2/5)
・『大竹伸朗展』 東京国立近代美術館(2022/11/1~2023/2/5)
・『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』 アーティゾン美術館(2022/11/5~2023/2/5)
・『特別展 毒』 国立科学博物館(2022/11/1~2023/2/19)
・『ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台』 東京都現代美術館(2022/11/12~2023/2/19)
・『加藤泉―寄生するプラモデル』 ワタリウム美術館(2022/11/6~2023/3/12)

ギャラリー

・『Julian Opie「OP.VR@PARCO」』 PARCO MUSEUM TOKYO(10/21~11/14)
・『岡崎裕子 私を紡ぐもの』 小山登美夫ギャラリー六本木(11/5~11/19)
・『衣川明子、長谷川さち 川と子』 ANOMALY(10/29~11/26)
・『日本のアートディレクション展 2022』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー、クリエイションギャラリーG8(11/1~11/30)
・『三輪美津子「Full House」』 SCAI THE BATHHOUSE(11/1~12/10)
・『髙畠依子 CAVE』 シュウゴアーツ(11/19~12/24)
・『訪問者 クリスチャン・ヒダカ&タケシ・ムラタ展』メゾンエルメス8階フォーラム(10/21~2023/1/31)
・『How is Life?―地球と生きるためのデザイン』 TOTOギャラリー・間(10/21~2023/3/19)

まずは日本美術からです。太田記念美術館にて『闇と光 ―清親・安治・柳村』が開かれます。



『闇と光 ―清親・安治・柳村』@太田記念美術館(11/1~12/18)


これは明治時代初期、小林清親が西洋から移入した油彩画や石版画、それに写真などの表現を木版画に取り込み、光や影の移ろう風景が描いた光線画に着目したもので、井上安治と小倉柳村の作品をあわせて約200点(展示替えあり)が公開されます。

近年、新版画の人気が高まり、各地で展覧会も続々行われていますが、光線画はその先駆けとも言われるだけに、改めて注目が集まるかもしれません。

続いてはオペラ座に着目した異色とも言える展覧会です。アーティゾン美術館にて『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』が行われます。



『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』@アーティゾン美術館(2022/11/5~2023/2/5)

展示では17世紀にさかのぼるパリ・オペラ座の歴史を辿りながら、特に19世紀から20世紀初頭の芸術的展開を紹介していて、フランス国立図書館の所蔵するオペラ、バレエ関係の資料約200点や、オルセー美術館のドガの『バレエの授業』といった作品が公開されます。


総合芸術とも呼ばれるオペラは、作曲家はもちろん、歌手やダンサー、また合唱団といった出演者、それに台本作家や演出家など多様な表現者が関わることで初めて上演が実現しますが、そうした幅広い芸術へのつながりを紐解く展覧会ともなりそうです。

ラストは現代美術です。ワタリウム美術館にて『加藤泉―寄生するプラモデル』が開催されます。



『加藤泉―寄生するプラモデル』@ワタリウム美術館(2022/11/6~2023/3/12)

2000年代より木彫作品を発表した加藤は、ソフトビニールや石、布、さらにはプラモデルなどを素材として制作を続け、国内外にて個展を開くなどして活動してきました。


そして加藤はコロナ禍の中、プラモデルを制作しつつ、木彫などの自らの作品に取り入れたとしています。そうしたプラモデルをコラージュした作品などを中心としたのが今回の個展で、さらに組立説明書などをコラージュしたユニークな作品も公開されます。加藤といえば、2019年の原美術館の個展の記憶も新しいところですが、また違った趣きの展示になるのかもしれません。

一部、内容が重なりますが、イロハニアートへも11月のおすすめの展覧会を寄稿しました。

11月おすすめ展覧会はこれ!【2022最新版】ボタニカル・アートからパリ・オペラ座、150年後の国宝まで | イロハニアート

それでは今月もよろしくお願いいたします。
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