「2021年宇宙の旅」 GYRE GALLERY

GYRE GALLERY
「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」 
2021/2/19~4/25



GYRE GALLERYで開催中の「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」を見てきました。

1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」は、CGもない当時、圧倒的な映像美をもって宇宙空間を描くともに、人類の未来を予言するように表現したストーリーで多くの人々の心を捉えてきました。

そうした映画のビジョンを現代アートの視点から再考するのが「2021年宇宙の旅」と題した展覧会で、アニッシュ・カプーアや森万里子といった国内外の9組のアーティストの作品が公開されていました。


「モノリス」

まず入口左手にて目を引くのが映画の代名詞ともいえる「モノリス」で、各辺比1:4:9の黒光りした四角柱が行手を遮るかのようにそびえ立っていました。ちょうど下には黒い石が無数に転がっているからか、映画の中で「モノリス」が月面で発見された時の光景と重なって見えました。


左:アニッシュ・カプーア「Syphon Mirror- Kuro」 2008年

アニッシュ・カプーアの「Syphon Mirror- Kuro」も印象に深い作品の1つかもしれません。実際に前へ立つと自分の姿がわずかに映り込むものの、黒い円の奥底へと誘われるような錯覚に囚われて、あたかも全てを飲み込むブラックホールのような雰囲気を醸し出していました。また漆を塗った表面の滑らかな質感も魅惑的に感じられました。


手前:森万里子「トランスサークル」 2004年
奥:ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年

森万里子の「トランスサークル」は縄文遺跡や太陽系惑星に着想を得た作品で、9色の光を点滅させた9体の人工石が環を描いて置かれていました。そして「トランスサークル」の奥には、キャラクターのアン・リーがたった一人で月面を歩く風景を表現したピエール・ユイグのアニメーション「100万年王国」が映し出されていました。


ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年

このアニメーションにはデジタル合成された宇宙飛行士アームストロングの声により、アポロ11号月面着陸計画の物語をベルヌの小説「地底探検」の一節と混ぜ合わせたナレーションが朗読されていて、それこそ月面世界をさまよっているような気にさせられました。


第2展示室「月面とポストトゥルース」会場風景。左はオノデラユキ「月の裏側 No.1」 2020年

され今回の展覧会では「AIの反乱」、「非人間的な知性」、「人工的な進化」など、映画「2001年宇宙の旅」にも描かれた諸問題がテーマとされていましたが、特に興味深いのはアーティストたちが思いがけないようなアプローチで新たな時代の未来観を示していることでした。


ネリ・オックスマン「流離う者たち」 2014年

例えばネリ・オックスマンは「流離う者たち」において、宇宙で人間が生きられるように臓器の機能を拡張したコルセットを提案していました。現在、人間が宇宙空間で活動するには分厚い宇宙服が必要ですが、そもそも人の身体構造からして宇宙に適用させようとする斬新なアイデアと言えるかもしれません。


プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」 2020年

人工的に地球外の生命を作ろうとする「プロトエイリアン・プロジェクト」もユニークな取り組みではないでしょうか。人類の宇宙への進出と地球外生命の関わりについて考えさせられるものがありました。


4月25日まで開催されています。*最上段の写真は、プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」より。会場内の撮影が可能でした。

「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」 GYRE GALLERY
会期:2021年2月19日(金)~4月25日(日)
休廊:不定休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
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「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」 練馬区立美術館

練馬区立美術館
「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」
2021/2/28~4/18



練馬区立美術館で開催中の「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」の特別内覧会に参加してきました。

明治初期、日本で使われはじめた電線や電柱は、時に美観を損ねるものとされながら、現在に至るまで全国各地に張り巡らされてきました。

そうした電線や電柱と美術の関係に着目したのが「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」で、明治や大正時代の浮世絵に版画から絵画、さらには現代美術など約140点の作品が展示されていました。


樋畑翁輔「ペリー献上電信機実験当時の写生画」 嘉永7(1854)年 郵政博物館

国内において最も古く電線が描かれたのは、電信が実用化される約20年前の幕末のことでした。日米和親条約締結のため2度目の来日を果たしたペリーは、日本へモールス信号機を献呈し、1854年に横浜にて電信線を張る実験が行われました。それを記録したのが樋畑翁輔の写生画で、アメリカの船団が望む横浜の地にて、応接場から民家へと電信柱が立ち並ぶ光景をスケッチしていました。


小林清親「東京五大橋之一 両国風景」 明治9(1876)年 浅井コレクション

1869年に東京に電信局が開局すると、電信が横浜から東京まで開通し、初めて電信柱と電信線が一般の前に姿を現しました。そして2年後には東京と長崎の間の電信線の建設がスタートして、同時期の文明開化をモチーフとした開花絵にも多くの電信が描かれました。


左:楊洲周延「上野公園の夜景」 明治28(1895)年 電気の史料館
右:三代歌川国貞「凌雲閣機絵双六」 明治23(1890)年 電気の史料館

電信に遅れること20年、1887年に東京の日本橋に電燈局が開設されると、今度は都内各所にて電気供給事業がはじまり、電柱も次々と建てられました。


椿貞雄「鵠沼風景」 大正11(1922)年 東京ステーションギャラリー

こうした電柱や電線は岸田劉生や椿貞雄らも絵画に表していて、かつては文明開花の象徴でもあった電線などが、都市の拡張とともに一般的な光景として根付いていく様子を見ることができました。


近藤浩一路「京橋」 明治43(1910)年 東京藝術大学大学美術館

東京で初めて電車が姿を現したのは、1890年の上野の内国勧業博覧会での展示運転のことで、8年後の1903年には新橋と品川の間で路面電車が運行されました。


小絲源太郎「屋根の都」 明治44(1911)年 東京藝術大学大学美術館

こうした路面電車の走る風景を描いた作品にも多くの電柱や電線が登場していて、小絲源太郎は「屋根の都」において上野公園から浅草方向へと走る市電の姿を捉えていました。たくさんの電線が家々の屋根を覆うように横へ伸びていて、まさに都市に特徴的な景観が広がっていました。


左:川瀬巴水「芝大門」 大正15(1921)年 渡辺木版美術画舗
右:川瀬巴水「歌舞伎座」 大正14(1925)年 渡辺木版美術画舗

大正時代の新版画でも電線や電柱が風景に取り込まれていて、川瀬巴水の「芝大門」や「歌舞伎座」でも電柱の立つ様子を表していました。


吉田博「東京拾二題隅田川」 大正15(1926)年 東京都現代美術館

一方で吉田博は、東岸から隅田川の風景を眺めた「東京拾二題隅田川」にて、実際にあった電線を消して表現しました。このように吉田は東京や日本各地の風景を描きながらも電柱を除いていて、巴水らとは電線や電柱に対する異なった意識も伺えました。


上:西沢笛畝「大正震火災木版画集 黄昏の日本橋」 大正12〜13(1923〜24)年 浅井コレクション

1923年の大正関東大震災に襲われた東京では、多くの電柱が倒壊したり焼失し、実に現在の23区にして約25パーセントの電柱が被害を受けました。西沢笛畝の「大正震火災木版画集」においても地震後の都下の様子を記録していて、「黄昏の日本橋」では橋の照明灯を背にして切れた電線が吊り下がる光景を表していました。


左:佐伯祐三「下落合風景」 大正15(1926)年頃 ポーラ美術館
右:佐伯祐三「下落合風景」 大正15(1926)年頃 東京国立近代美術館寄託

東京の拡大とともに郊外でも電線が伸びていくと、当時の下落合などの西郊と呼ばれた地に住んでいた、若き坂本繁二郎や佐伯祐三らも電柱のある風景を描きました。道路と鉄道の立体交差に架線や電柱の並ぶ佐伯祐三の「下落合風景」も印象に深い作品かもしれません。


朝井閑右衛門「電線風景」 制作年不詳 横須賀美術館

今回の「電線絵画展」にて目立っていたのは、ミスター電線風景と呼ばれた朝井閑右衛門の絵画でした。終戦後、横須賀の田浦にアトリエを構えていた朝井は、1950年頃からアトリエの窓から見える鉄道の架線と電線の交わる風景を集中的に描いていて、自ら「電線風景」と名付けました。


朝井閑右衛門「電線風景(トンネル)」 昭和27(1952)年頃 横須賀美術館

朝井の電線絵画で特徴的なのは、電線が密に重なり束となって、画面全体へエネルギーを解き放つように描かれていることで、塗り込まれた絵具の質感とともに大変な迫力を帯びていることでした。それこそ鉄道の線路にもかかわらず、電車の姿はなく電線の様態のみを表していて、朝井の電線に対する強い執着心がひしひしと感じられました。


手前:久野彩子「35°42′36″N,139°48′39″E (Skytree)」 2020年 作家蔵

ラストでは「新・電線風景」として、現代美術における電線や電柱の表現を紹介していました。


山口晃「演説電柱」 2012年 個人蔵

ここでは電柱に新たな美意識を見出そうとする山口晃や、電線を切り取っては抽象のように見せた阪本トクロウ、さらに水墨の細密描写で電線のある都市を描く山口英紀などの作品が展示されていて、電線を通した思わぬ表現の広がりを見ることができました。


「電線絵画展」より碍子展示風景

また電線などの導体を電柱といった支持体より絶縁するための碍子も目を引くのではないでしょうか。そのうち松風陶器合資会社の「高圧碍子」は陶製による日本初の高圧碍子で、美しい曲線を描いた造形を前にしていると、それこそ工芸品を愛でているような味わいが感じられました。


手前:「松風陶器合資会社 高圧碍子」 明治39(1906)年 東京工業大学博物館

あまりにも身近でありながら、普段ほとんど意識することのない電線や電柱の存在や意味を、多様な美術作品を通して再確認できるような展覧会だったかもしれません。


山口英紀「往来〜京王9000系」 2021年 作家蔵

一通り展示を見て、外へ出て見えた電柱のある光景が、心なしかいつもと違って感じられたのも不思議でなりませんでした。


予約は不要です。4月18日まで開催されています。おすすめします。

「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」 練馬区立美術館@nerima_museum
会期:2021年2月28日(日)~4月18日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人1000円、大・高校生・65~74歳800円、中学生以下・75歳以上無料。
 *ぐるっとパス利用で500円。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。

注)写真は特別内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
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新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報 第十一報

第一報(2020年3月2日)、第二報(3月9日)、第三報(3月16日)、第四報(3月24日)、第五報(4月1日)、第六報(4月9日)、第七報(5月2日)、第八報(6月2日)、第九報(6月25日)、第十報(2021年1月9日)に続きます。新型コロナウイルス感染症への対応に伴う、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の主な美術館と博物館の休館情報をまとめてみました。

最新の情報は→新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報 第十四報(2021年6月1日現在)



新型コロナウイルスのパンデミックから1年以上経過しました。年末年始における急速な感染拡大こそ一時的に落ち着きましたが、首都圏を中心に感染者が下げ止まり、再び増加する傾向も見られ、依然として先が見通せない状況が続いています。

今年1月に発出された緊急事態宣言は3月21日をもって全都道府県で解除されました。それにより長期にわたって臨時休館していた美術館や博物館も再開しています。

【緊急事態宣言解除に伴って再開する美術館】

・ちひろ美術館・東京 3/16~再開
 「没後1年 田畑精一『おしいれのぼうけん』」 3/16〜6/13
・馬の博物館 3/24〜再開
 「小さな騎士(ナイト)たち」 3/24〜4/18
・神奈川県立近代美術館葉山館 3/23~再開
 「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 3/23〜4/11
・神奈川県立歴史博物館 3/23~再開
 「出土文字資料からみる古代の神奈川」 3/23〜3/28
・神奈川県立金沢文庫 3/26~再開
 「武蔵国鶴見寺尾郷絵図の世界」 3/26〜5/23
・川越市立美術館 3/23~再開
 「常設展 第4期 1980年代以降の美術―関根伸夫など」 3/23~3/28
・埼玉県立近代美術館 3/23〜再開
 「コレクション 4つの水紋」 3/23〜5/16
・埼玉県立歴史と民俗の博物館 3/23〜再開
 「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」 3/23〜5/16
・市原市湖畔美術館 3/23~再開
 「常設展示 絵と詩」 3/23〜4/4
・千葉県立美術館 3/23~再開

1月9日からはじまり、僅か3日間で臨時休館した神奈川県立近代美術館葉山館の「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」は3月23日に再開し、4月11日まで開催されます。なお再開に際して事前予約制が導入されたため、前日までにオンラインで日時を指定する必要があります。


同じく3月23日より再開した神奈川県立歴史博物館も、入館に際して事前予約が必要となりました。


コロナ禍によって美術展や芸術祭の開催スケジュールに影響が続いています。当初より1年以上延期され、3月20日より開幕するはずだった「いちはらアート×ミックス2020+」は、会期・開催方法を全面的に見直し、感染状況に応じて「部分エリア」と「全エリア」に分けて行われることになりました。

一度延期され、5月29日よりはじまる予定だったアーティゾン美術館の「クロード・モネ ー風景への問いかけ」展は、さらに会期を変更し、10月2日から開催されることが決まりました。それにより現在の「STEPS AHEAD:Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」が9月5日まで開かれます。

東京オペラシティアートギャラリーでは「ライアン・ガンダーわれらの時代のサイン」が延期され、代わって「ストーリーはいつも不完全…色を想像するライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」が開催されることになりました。同展はガンダーが同ギャラリーのコレクションをキュレーションするもので、作家本人から申し出があり、収蔵品展のスペースを拡大して全館規模で行われるそうです。

一方で昨年3月2日より1年以上に渡って臨時休館し、全ての展覧会を中止していた出光美術館が、いよいよ4月13日より再開し、「松平不昧 生誕270年 茶の湯の美」を5月30日まで開催します。また新たにオンラインによる日時指定予約システムが導入されました。4月1日より「茶の湯の美」の予約が開始されます。


この他、昨年夏の会期が延期された東京国立博物館の「国宝 鳥獣戯画のすべて」も、4月13日の開幕に向けて準備が進んでいます。チケットは事前予約制で、3月30日よりオンライン、またはコンビニで購入が可能になるそうです。

以下、東京、神奈川、埼玉、千葉県内の美術館と博物館の開館情報です。(3月24日現在。)



【上野】

・上野の森美術館 開館中 
 「VOCA展」 ~3/30
 http://www.ueno-mori.org

・国立科学博物館 開館中 金曜・土曜日の夜間開館を中止。
 「大地のハンター展」 ~6/13 予約制
 http://www.kahaku.go.jp

・国立近現代建築資料館 新しい展示を準備中
 http://nama.bunka.go.jp

・国立西洋美術館 館内施設整備のため休館中
 http://www.nmwa.go.jp

・台東区立朝倉彫塑館 12/26~3/31臨時休館
 http://www.taitocity.net/zaidan/asakura/

・東京藝術大学大学美術館 開館中
 「Welcome, Stranger, to this Place」 3/20〜4/4 予約制
 「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」 3/27~
 https://www.geidai.ac.jp/museum/

・東京国立博物館 開館中 夜間開館を中止。17時まで。
 「博物館でお花見を」 ~4/11 予約制
 「国宝 鳥獣戯画のすべて」 4/13〜 予約制
 http://www.tnm.jp

・東京都美術館 開館中
 「没後70年 吉田博展」 〜3/28
 http://www.tobikan.jp

・弥生美術館・竹久夢二美術館 開館中
 「田渕由美子展/夢二デザイン1910〜1930」 ~6/6 予約制
 http://www.yayoi-yumeji-museum.jp



【丸の内・京橋・日本橋・新橋】

・アーティゾン美術館 開館中 金曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「STEPS AHEAD:Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」 ~9/5 予約制
 https://www.artizon.museum

・相田みつを美術館 開館中 17時までの短縮開館
 「みつをが遺したもの I 自分の言葉・自分の書」 ~6/20
 http://www.mitsuo.co.jp/museum/

・出光美術館 新型コロナウイルス感染症の状況に鑑み長期休館中
 「松平不昧 生誕270年 茶の湯の美」 4/13〜 予約制
 http://idemitsu-museum.or.jp

・国立映画アーカイブ 開館中
 「川本喜八郎+岡本忠成 パペットアニメーショウ2020」 ~3/28
 https://www.nfaj.go.jp

・東京国立近代美術館 開館中
 「あやしい絵展」 ~5/16 予約制(当日券の販売もあり)
 http://www.momat.go.jp

・三の丸尚蔵館 休館中
 https://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/sannomaru.html

・東京ステーションギャラリー 開館中
 「没後70年 南薫造」 ~4/11 予約制
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

・パナソニック汐留ミュージアム 休館中
 「クールベと海 展―フランス近代 自然へのまなざし」 4/10~ 予約制
 https://panasonic.co.jp/es/museum/

・三井記念美術館 開館中 金曜日のナイトミュージアムを中止。16時までの短縮開館。
 「小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ」 ~4/18 予約制
 http://www.mitsui-museum.jp

・三菱一号館美術館 開館中 3月中は夜間開館を中止
 「テート美術館所蔵 コンスタブル展」 ~5/30 予約制(当日券の販売もあり)
 http://mimt.jp

・ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 開館中
 「沈潜と蒸留 浜口陽三 濱田祐史 二人展」 〜4/4
 https://www.yamasa.com/musee/



【表参道・青山】

・太田記念美術館 開館中 17時までの短縮開館
 「笠松紫浪 ―最後の新版画」 〜3/28
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp

・岡本太郎記念館 開館中
 「暮らしのなかの芸術」  3/17〜
 http://www.taro-okamoto.or.jp

・根津美術館 開館中
 「狩野派と土佐派」 〜3/31 予約制
 http://www.nezu-muse.or.jp

・ワタリウム美術館 開館中
 「まちへ出よう展」 ~6/6
 http://www.watarium.co.jp



【新宿・渋谷】

・NTTインターコミュニケーション・センター  休館中
 http://www.ntticc.or.jp/ja/

・草間彌生美術館 開館中
 「我々の見たこともない幻想の幻とはこの素晴らしさである」 ~3/29 予約制
 https://yayoikusamamuseum.jp

・國學院大學博物館 12/27~1/12休 水曜〜土曜日の12時~17時のみ短縮開館
 「縄文早期の居家以人骨と岩陰遺跡」 〜5/8
 http://museum.kokugakuin.ac.jp

・渋谷区立松濤美術館 休館中
 「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 4/20〜 土日祝は予約制(予定)
 http://www.shoto-museum.jp

・東京オペラシティ アートギャラリー 休館中
 「ストーリーはいつも不完全…色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」 4/17~
 https://www.operacity.jp/ag/

・中村屋サロン美術館 開館中
 「浅見貴子展 変容のプロセス」 ~4/11
 https://www.nakamuraya.co.jp/museum/

・文化学園服飾博物館 開館中
 「ヨーロピアン・モード」 〜4/22
 http://museum.bunka.ac.jp

・Bunkamura ザ・ミュージアム 開館中
 「写真家ドアノー/音楽/パリ」 ~3/31 3/27、28の土日のみ予約制
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/

・SOMPO美術館 開館中
 「モンドリアン展」 ~6/6 予約制
 https://www.sompo-museum.org



【六本木・虎ノ門】

・大倉集古館 休館中
 「彩られた紙―料紙装飾の世界」 4/6〜
 https://www.shukokan.org

・菊池寛実記念 智美術館 開館中
 「三輪龍氣生の陶 命蠢く」 4/17〜
 http://www.musee-tomo.or.jp

・国立新美術館 開館中 
 「佐藤可士和展」 〜5/10 予約制
 http://www.nact.jp

・21_21 DESIGN SIGHT 開館中 17時半までの短縮開館
 「トランスレーションズ展」 ~6/13
 http://www.2121designsight.jp

・森アーツセンターギャラリー 休館中
 「僕のヒーローアカデミア展」 4/23〜 予約制
 https://macg.roppongihills.com/jp/

・森美術館 改修工事のため休館中
 「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力」 4/22~ 予約制
 https://www.mori.art.museum/jp/

・サントリー美術館 休館中
 「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」 4/14〜
 https://www.suntory.co.jp/sma/

・泉屋博古館分館 改修工事のため休館中
 https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/



【恵比寿・白金・目黒・品川・台場】

・アクセサリーミュージアム 開館中
 「IN~ハンドバッグとその中身~」 3/23〜
 http://acce-museum.main.jp

・WHAT(建築倉庫ミュージアム) 開館中
 「謳う建築」 ~5/30 予約制
 https://archi-depot.com

・東京都写真美術館 開館中 木曜・金曜日の夜間開館を中止。18時まで。
 「白川義員写真展/澤田知子 狐の嫁いり」 〜5/9
 http://topmuseum.jp

・日本科学未来館 開館中 
 「震災と未来展 -東日本大震災10年」 〜3/28 予約制
 http://www.miraikan.jst.go.jp

・日本民藝館 改修工事のため休館中
 「改修記念 名品展 I ―朝鮮陶磁・木喰仏・沖縄染織などを一堂に」 4/4〜
 http://www.mingeikan.or.jp

・山種美術館 開館中 平日は16時までの短縮開館
 「川合玉堂」 ~4/4 予約制(当日券の販売もあり)
 http://www.yamatane-museum.jp

・東京都庭園美術館 1/13~庭園の公開を中止
 「20世紀のポスター[図像と文字の風景]」 ~4/11
 http://www.teien-art-museum.ne.jp

・目黒区美術館 展示入替中
 「マニュエル・ブルケール 20世紀パリの麗しき版画本の世界」 4/21~
 http://mmat.jp

・畠山記念館 施設改築工事のため休館中
 http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/

・松岡美術館 所蔵作品の修復調査、設備点検のため休館中
 http://www.matsuoka-museum.jp



【両国・清澄白河・駒込】

・江戸東京博物館 開館中 土曜日の夜間開館を中止。17時半まで。
 「古代エジプト展 天地創造の神話」 ~4/4
 https://www.edo-tokyo-museum.or.jp

・すみだ北斎美術館 開館中
 「筆魂 線の引力・色の魔力」 ~4/4
 http://hokusai-museum.jp

・たばこと塩の博物館 開館中
 「ミティラー美術館コレクション展」 ~5/16
 https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html

・東京都現代美術館 開館中 
 「ライゾマティクス_マルティプレックス/マーク・マンダース」 3/20〜 予約制(当日券あり)
 「Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021 受賞記念展」 3/20〜
 「MOTコレクション 第2期 コレクションを巻き戻す」 当面休室
 http://www.mot-art-museum.jp

・刀剣博物館 開館中
 「埋第66回重要刀剣等新指定展」 〜4/11
 https://www.touken.or.jp/museum/
 
・東洋文庫ミュージアム 開館中
 「大清帝国展 完全版」 ~5/16
 http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/



【池袋・目白・板橋・練馬】

・板橋区立美術館 休館中
 「さまよえる絵筆ー東京・京都 戦時下の前衛画家たち」 3/27〜
 http://www.itabashiartmuseum.jp

・古代オリエント博物館 開館中 16時半までの短縮開館
 http://aom-tokyo.com

・ちひろ美術館・東京 開館中
 「没後1年 田畑精一『おしいれのぼうけん』展」 3/16〜
 https://chihiro.jp/tokyo/

・練馬区立美術館 開館中
 「電線絵画展-小林清親から山口晃まで」 ~4/18
 https://www.neribun.or.jp/museum.html

・永青文庫 開館中
 「細川家四代展 ―護立・護貞・護熙・護光」 ~4/11
 http://www.eiseibunko.com

・講談社 野間記念館 建て替えのため休館中
 http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp



【世田谷】

・五島美術館 開館中
 「中国の陶芸展」 ~3/28
 http://www.gotoh-museum.or.jp

・静嘉堂文庫美術館 開館中
 「岩崎家のお雛さま」 ~3/28
 http://www.seikado.or.jp

・世田谷美術館 開館中
 「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」 3/20〜
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp

・世田谷文学館 開館中
 「ムットーニのからくり文学館」 〜3/31 予約制
 「あしたのために あしたのジョー!展」 〜3/31
 https://www.setabun.or.jp
 


【武蔵野・多摩】

・東京富士美術館 開館中
 「絵画のドレス|ドレスの絵画」 ~5/9
 http://www.fujibi.or.jp

・八王子夢美術館 開館中
 「土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像」 ~3/28
 http://www.yumebi.com

・府中市美術館 開館中
 「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」 ~5/9
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

・町田市立国際版画美術館 開館中
 「アーティストたちの室内画 」 〜4/11
 http://hanga-museum.jp

・三鷹市市民ギャラリー 開館中
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/

・武蔵野市立吉祥寺美術館 開館中
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

・多摩美術大学大学美術館 休館中
 「現代日本画の系譜-タマビDNA展」 4/3~
 http://www.tamabi.ac.jp/museum/



【神奈川県】

・馬の博物館 開館中
 「小さな騎士(ナイト)たち」 ~4/18
 http://www.bajibunka.jrao.ne.jp/uma/

・岡田美術館 開館中
 「画遊人・若冲 ―光琳・応挙・蕭白とともに」 ~3/28
 http://www.okada-museum.com

・神奈川県民ホールギャラリー 開館中
 http://www.kanakengallery.com

・神奈川県立近代美術館葉山館 開館中
 「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 〜4/11 予約制
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp

・神奈川県立歴史博物館 開館中
 「出土文字資料からみる古代の神奈川」 ~3/28 予約制
 http://ch.kanagawa-museum.jp

・鎌倉文華館鶴岡ミュージアム 開館中
 「鶴岡八幡宮鎌倉彫名品展」 3/19〜
 https://tsurugaokamuseum.jp

・川崎浮世絵ギャラリー 開館中
 「黄金期の浮世絵師たち」 〜4/4
 https://ukiyo-e.gallery

・川崎市岡本太郎美術館 開館中
 「第24回岡本太郎現代芸術賞」 ~4/11
 http://www.taromuseum.jp/

・そごう美術館 休館中
 「篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」 4/3〜
 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

・茅ヶ崎市美術館 開館中
 「ネットで楽しむ・つくる・アート体験」 ~3/28
 http://www.chigasaki-museum.jp

・BankArt KAIKO + BankART Temporary 
 http://www.bankart1929.com

・平塚市美術館 開館中
 「宮川慶子展」 ~4/4
 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/

・藤沢市アートスペース 休館中
 http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS

・ポーラ美術館 開館中
 「Connections-海を越える憧れ、日本とフランスの150年」 ~4/4
 http://www.polamuseum.or.jp

・横須賀美術館 開館中
 「ヒコーキと美術」 〜4/11
 http://www.yokosuka-moa.jp

・横浜市民ギャラリーあざみ野 開館中
 https://artazamino.jp

・横浜美術館 大規模改修工事のため休館中
 http://yokohama.art.museum

・神奈川県立金沢文庫 3/26〜開館
 「武蔵国鶴見寺尾郷絵図の世界」 3/26〜/31
 https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

・神奈川県立近代美術館鎌倉別館 改修のため休館中
 http://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex

・川崎市市民ミュージアム 令和元年東日本台風の浸水被害により休館中
 https://www.kawasaki-museum.jp



【埼玉県】

・岩槻人形博物館 開館中
 「天野家の雛祭り」 〜5/5
 https://ningyo-muse.jp

・うらわ美術館 開館中
 「MUCHA(ミュシャ) グラフィック・バラエティ」 4/17〜
 http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/index.html

・角川武蔵野ミュージアム 開館中
 「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」 ~5/31 予約制
 https://kadcul.com

・川口市立アートギャラリー・アトリア 開館中
 http://www.atlia.jp

・川越市立美術館 開館中
 「常設展 第4期 1980年代以降の美術―関根伸夫など」 ~3/28
 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/

・河鍋暁斎記念美術館 開館中
 「暁斎・暁翠が描く花鳥画」 〜4/25
 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html

・原爆の図丸木美術館 開館中
 「山内若菜展 はじまりのはじまり」 ~4/10
 https://marukigallery.jp

・埼玉県立近代美術館 開館中
 「コレクション 4つの水紋」 〜5/16
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

・埼玉県立歴史と民俗の博物館 開館中
 「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし」 〜5/16
 http://www.saitama-rekimin.spec.ed.jp

・さいたま市大宮盆栽美術館 開館中
 「コレクション名品展・早春」 ~3/31
 https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/

・鉄道博物館 開館中 予約制 17時までの短縮開館
 http://www.railway-museum.jp



【千葉県】

・市原市湖畔美術館 開館中
 「常設展示 絵と詩」 ~4/4
 http://lsm-ichihara.jp/

・航空科学博物館 開館中
 http://www.aeromuseum.or.jp

・国立歴史民俗博物館 開館中
 「アイヌ文化へのまなざし-N.G.マンローの写真コレクションを中心に」 ~5/9
 https://www.rekihaku.ac.jp

・佐倉市立美術館 開館中
 「収蔵作品展 ちばのいろ」 〜5/16
 http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

・千葉県立美術館 開館中
 https://www.chiba-muse.or.jp/ART/

・千葉市美術館 開館中
 「千葉市美術館所蔵品による『房総ゆかりの美術』」 〜3/26
 「大・タイガー立石展 POP-ARTの魔術師」 4/10〜
 http://www.ccma-net.jp

・DIC川村記念美術館 改修工事のため休館中
 http://kawamura-museum.dic.co.jp

・成田山書道博物館 開館中
 「今日の書壇 新井光風展」 〜3/25
 「成田山の文化財 書・絵画・工芸」 4/1〜
 http://www.naritashodo.jp

・ホキ美術館 開館中
 「ホキ美術館ベストコレクション展」 ~5/16 予約制
 https://www.hoki-museum.jp

各美術館において消毒や検温の対応、さらには予約制の導入など、新型コロナウイルス感染症への対策が行われています。また宣言解除に伴って夜間開館を再開する動きも見られますが、感染状況を鑑みて時短での開館を続ける美術館もあります。

最新の開館情報は各美術館のウェブサイトをご覧ください。
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三井記念美術館にて「小村雪岱スタイル展」が開催中です

大正から昭和にかけて装幀や挿絵、舞台装置などで活動した小村雪岱の業績を振り返る展覧会が、三井記念美術館にて行われています。



その「小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ」の展示内容について、私が一部を担当しているpen-onlineのアートニュースに寄稿しました。

いまも古びることない雪岱の美意識。『小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ』の見どころは?
https://www.pen-online.jp/news/art/kobayashi/1

今回の雪岱展の最大の特徴は、肉筆や版画、それに装幀本などを紹介するだけでなく、雪岱の美意識を培う土壌となった明治工芸や、後に影響を与えた現代美術家らの作品も展示されていることでした。


彦十蒔絵 見立漆器「苫舟日本橋蒔絵」 2019年 個人蔵

とりわけ現代美術では、雪岱へオマージュとしての新作が公開されていて、現代美術ファンにとっても見入るものがありました。過去に多様な雪岱展が行われてきましたが、現代美術を参照した展覧会はほとんどなかったのではないでしょうか。


なお展示は前後期の2期に分かれていて、一部の作品が途中で入れ替わります。

「小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ」(出品リスト
前期:2月6日(土)~3月14日(日)
後期:3月16日(火)~4月18日(日)

3月16日より後期展示に入りました。これ以降の入れ替えはありません。


泉鏡花「日本橋」 大正3(1914)年 清水三年坂美術館

なお同じ雪岱の展覧会としては、今月23日まで日比谷図書文化館にて「複製芸術家 小村雪岱」が開かれていました。こちらは主に雪岱の装幀と挿絵の仕事を紹介する内容でした。

「複製芸術家 小村雪岱 ~装幀と挿絵に見る二つの精華~」 日比谷図書文化館
https://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/b982851394ccd09de10174aa083d186e

一方で東京国立近代美術館ではじまった「あやしい絵展」においても、エピローグに雪岱の「おせん 傘」や邦枝完二の「お傳地獄」の墨画などが出展されています。あわせて鑑賞するのも良さそうです。


小村雪岱「おせん 傘」 1937年 資生堂アートハウス *「あやしい絵展」にて。撮影が可能でした。

新型コロナウイルス感染症対策に伴う混雑防止のため、日時指定予約制が導入されました。入場に際しては事前にWEBサイトで予約する必要があります。



4月18日まで開催されています。*「おせん 傘」以外の写真は、三井記念美術館の撮影OKスペースより。

「小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ」 三井記念美術館
会期:2021年2月6日(土)~4月18日(日)
休館:月曜日。2月28日(日)。
時間:11:00~16:00
 *短縮開館を実施。
 *入館は閉館の30分前まで。 
料金:一般1300円、大学・高校生800円、中学生以下無料。
 *団体受付を中止。
 *リピーター割引:会期中、一般券、学生券の半券を提示すると、2回目以降は団体料金(一般200円引、大学・高校生100円引)を適用。
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅1番出口より徒歩5分。
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「VOCA展2021」 上野の森美術館

上野の森美術館
「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」
2021/3/12~3/30



上野の森美術館で開催中の「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」を見てきました。

40歳以下の現代作家の平面表現を紹介する「VOCA展」も、第28回目を迎えるに至りました。

今回も例年同様、学芸員や研究者などが40歳以下の作家を推薦し、それぞれの作家が新作を出品する方式がとられていて、31名の推薦委員より選ばれた30作家の作品が展示されていました。そして5名の選考委員の審議を経て、VOCA賞や奨励賞、それに佳作賞などが決定されました。


尾花賢一「上野山コスモロジー」 VOCA賞

まずVOCA賞を受賞したのは尾花賢一の「上野山コスモロジー」で、木のフレームや額縁を組み合わせ、上野を舞台とした過去と現在の情景を吹き出しの入った漫画風の絵画に描いていました。



上野の美術館や動物園、さらには公園のカフェやカラスなどの生き物、はたまたホームレスの人の暮らしなどをモチーフとしていて、中にはモナリザの日本初公開を伝える記事や、父と一緒に東京都美術館へと足を運んだ思い出なども表されていました。上野の多様な世界を複層的に表現した作品と言えるかもしれません。


弓指寛治「鍬の戦士と鉄の巨人」 VOCA佳作賞

VOCA佳作賞の弓指寛治の「鍬の戦士と鉄の巨人」も迫力があったのではないでしょうか。青やオレンジなど色彩豊かな画面には、脱線するかのような勢いで突き進む旧満洲の蒸気機関車が描かれていて、農作業をする人などがいる一方、機関車に轢かれている人もいました。



作家の祖父は10代にして満蒙開拓民として当地へ渡り、鉄道レールの敷設に従事したそうですが、繁栄と侵略の象徴でもある同鉄道の両面性を巧みに表しているように思えました。


八木祐介「共喰い」

八木祐介の「共喰い」も目立っていました。縦長の画面には奥へ伸びる一本道と林立する電柱、そして複雑に張り巡らされた電線が描かれていて、強調された遠近感ゆえか中へと吸い込まれるような錯覚に囚われました。



電柱の立ち並ぶ様子は日常的と言えるかもしれませんが、何も周囲に見当たらない暗がりの風景だからか、しばらく見ていると一抹の不安感を覚えてなりませんでした。また隆起したような土絵具による画面の質感も独特だったかもしれません。それこそ現在、練馬区立美術館で開催中の「電線絵画」展に出品しても何ら不思議はありませんでした。


桑原理早「私の中の彼女」

墨や岩絵具を用いて群像を描いた桑原理早の「私の中の彼女」も魅惑的だったのではないでしょうか。一面には細い線により女性の裸体などが表されていて、まるで空間に浮きつつ、それぞれの身体が透けて溶け合っているような光景を見せていました。



桑原は人間をテーマに制作をしているものの、コロナ禍によってモデルを呼ぶことが困難になり、過去に描いた群像をベースにして本作を描いたそうです。互いに重なり合うような女性を前にしていると、確かにリアルな表現ながら、夢の中の幻想的な光景を目の当たりにしているような気にもさせられました。


盛圭太「Bug report(Booster)」

糸を切断し、グルーガンで貼ることを繰り返しながら線を描いた、盛圭太の「Bug report(Booster)」も印象に残りました。細い縦長の画面には塔と機械とも呼べるようなモチーフが浮かび上がっていて、青や白い糸が集積回路のように断片的に張り巡らされていました。



盛は昨年に東京都現代美術館にて開かれた「ドローイングの可能性」においても、同じグルーガンを用いて大規模なドローイングを展開していましたが、糸が互いに接着しては分断するような動きが感じられるのも面白いところかもしれません。


水戸部七絵「picture Diary 20200910(左)、20200904(右)」 VOCA奨励賞

入場に際しての予約は不要です。撮影も出来ました。


岡本秀「複数の真理とその二次的な利用」 VOCA佳作賞 大原美術館賞

3月30日まで開催されています。

「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」 上野の森美術館@UenoMoriMuseum
会期:2021年3月12日(金) ~3月30日 (火)
休館:会期中無休。
時間:10:00~17:00
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般800円、大学生500円、高校生以下無料
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
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「鬼頭健吾展」 上野の森美術館ギャラリー

上野の森美術館ギャラリー
「鬼頭健吾展」
2021/3/12~3/30



1977年に生まれた鬼頭健吾は、フラフープやスカーフなどの日常的な素材を用いたインスタレーションで知られ、個展やグループ展などで幅広く活動してきました。

最近ではアトリエを共有してパートナーでもある竹村京と「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」に参加し、糸や繊維、また絵具や写真のイメージが複層的に重なる「Playing Field」などを出展しました。

その鬼頭の単独の個展が、現在、上野の森美術館ギャラリーにて開かれています。


「Untitled(hula-hoop)」 2021年

まず目に飛び込んでくるのが、鬼頭の代名詞とも言えるフラフープを用いた「Untitled(hula-hoop)」で、青、赤、黄、緑色をしたフラフープが展示室の過半を埋め尽くすように広がっていました。またフラフープの群れは密であったり時に疎であったりして、密度は必ずしも一定ではありませんでした。



それぞれのフラフープは複雑に絡み合いながら曲線を描いていて、まるでチューブ状の有機物が踊っているようなイメージも頭に浮かび上がりました。


「cartwheel galaxy」 2017年

そうしたフラフープに面する壁に展示されたのが、3点のアクリル画「cartwheel galaxy」でした。



いずれも深いワイン色や紫色をベースにしていて、まるで色糸を絡ませたモールのような光沢感のある絵具が塗り込まれていました。



また表面には赤い絵具が爛れるように広がっていたり、青や緑の絵具を垂らしたような筆触も残っていて、中にはインスタレーションと呼応するかのような回転するフラフープを思わせる線も見られました。



展示室奥から外の方向を眺めると、公園内の緑が目に飛び込んできました。同ギャラリーは外の光を取り込む空間ゆえに、時間によって作品の見え方が変わってくるかもしれません。



現在、同館では現代の新進作家の平面表現を紹介する「VOCA展」(有料)が開かれています。そして鬼頭も2006年の「VOCA展」にて作品を発表しました。



新型コロナウイルス感染症対策に伴う検温や消毒のため、直接ギャラリーへ入退場できる上野公園側の出入口はクローズしていました。「VOCA展」入口側の正面玄関へ回る必要があります。


入場は無料です。3月30日まで開催されています。

「鬼頭健吾展」 上野の森美術館ギャラリー(@UenoMoriMuseum
会期:2021年3月12日(金) ~3月30日 (火)
休館:会期中無休。
時間:10:30~17:00
 *入場は閉館30分前まで。
料金:無料
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
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「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」  ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)

ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)
「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」 
2021/3/13~4/18



ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)で開催中の「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」の内覧会に参加してきました。

藤子・F・不二雄による「ドラえもん」は、テレビアニメや映画、さらにはキャラクター商品などでも展開し、日本を代表する国民的漫画として世代を超えて愛されてきました。

その「ドラえもん」の漫画の一コマに着目し、原画の迫力に迫ったのが「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」で、原画を高解像度でスキャンし、拡大して印刷した作品がずらりと展示されていました。


「ミチビキエンゼル」 小学五年生 1973年11月号

そして全ての複製原画は額装されているのが特徴で、あたかも美術館で絵画を鑑賞しているような気持ちにさせられました。


「ゆうれい城へ引っこし」 週刊少年サンデー 1976年6月15日増刊号

一連の作品において印象に深いのは、登場人物たちの「顔・感情」で、言い換えれば喜怒哀楽が、言葉を通さずとも絵だけで見事なまでに表現されていることでした。


「ぼくの生まれた日」 小学四年生 1972年8月号

そのうち「僕の生まれた日」はひどく怒られた後ののび太を描いた作品で、悲しくも悔しいのか、半目を見開きながら溢れんばかりの涙で顔を濡らすのび太の姿を見ることができました。



黒い背景から浮かび上がる顔の表情そのものも鬼気迫るようで、跳ね上がるような眉やきりりと閉じた口元からは、何かに立ち向かうような強い意志すら感じられました。


「宝くじ大当たり」 小学三年生 1971年8月号

「宝くじ大当たり」は、タイムマシンで過去の宝くじ売り場へ行き、パパが当たりくじを購入している場面を知ったママの様子を捉えていて、口を大きく開けては驚く姿を描いていました。目の不思議な形も独特で、「ロッピャクマンエン!?」との言葉も、嬉しさというよりも動揺しているのか、文字そのものが引きちぎられるように表現されていました。


「のろいのカメラ」 小学三年生 1970年10月号

「のろいのカメラ」では、シャッターを押した瞬間に衝撃を受けるのび太の顔を描いていて、驚きのあまりに時間が停止したかのような姿を見せていました。しかもこの作品で面白いのは、のび太が「のろいのカメラ」と知らずして写していることで、全く予期せずに受けた振動によって茫然自失しているように表されていました。また背景の渦巻く雲のような描写も、今後の不穏な展開を予兆させるものがあるかもしれません。


大長編ドラえもん「のび太の恐竜」 月刊コロコロコミック 1980年2月号

こうした登場人物の「顔・感情」だけでなく、会場では「構図」や「ワイド」などに着目して複製原画を紹介していて、1コマ1コマの中に見せ場を築くため、藤子・F・不二雄が驚くほどに多様な描写を盛り込んでいるのかを見ることができました。


超大作特撮映画「宇宙大魔神」 小学四年生 1979年11月号

そのうち「構図」の観点で面白く感じたのは、誰もが特撮映画を撮れるという「イージー特撮カメラ」を手にしゃがみ込み、どら焼きを接写するドラえもんの後ろ姿を描いた作品でした。丸い足を後ろに差し出し、同じく丸い尻尾とお尻をこちらに向けていて、カメラの効果音か「ジー」いう音が表されていました。曲線とお尻の直線を組み合わせた幾何学的とも受け止められるシンプルな構図ながら、一目でドラえもんと分かること自体も表現として見事ではないでしょうか。


左:「未来の町にただ一人」 小学四年生 1979年7月号

のび太が一人で未来のトーキョーに向かった「未来の町にただ一人」は、ほぼ直線のみで構成された無機質な街にぽつんと佇む姿を描いていて、奥行きを極端なまでに強調した構図などで孤独感を巧みに表していました。


大長編ドラえもん「のび太の宇宙開拓史」 月刊コロコロコミック 1980年9月号

映画シリーズの「大長編ドラえもん」の複製原画も見どころかもしれません。実のところ私自身「大長編ドラえもん」がとても好きだったことだけあり、「のび太と大魔境」や「のび太と宇宙開拓史」などの複製原画は懐かしく感じられました。


大長編ドラえもん「のび太の大魔境」 月刊コロコロコミック 1982年2月号

それにしても高解像度での複製だけに、鉛筆で描かれた文字や貼り付けられたテープ、さらにホワイトの修正した跡などまでも目の当たりにできました。



一コマ一コマを追いながら、細部へと目を凝らすと、それこそ自分も映画の中へと入り込むような錯覚にさえ陥るかもしれません。子どもの頃、父に連れてもらった映画館にて、のび太やドラえもんたちと一緒に冒険している気持ちで「大長編ドラえもん」に見入っていたことを思い出しました。



さて今回の展覧会の開催に際しての切っ掛けとなったのが、4月7日に小学館から刊行される豪華本「THE GENGA ART OF DORAEMON ドラえもん拡大原画美術館」でした。



これは「漫画を読む」ではなく「絵を鑑賞する」をコンセプトに、藤子・F・不二雄の初の本格画集でかつ美術書として制作されたもので、「ドラえもん」の直筆原画を拡大した130点以上のコマが掲載されました。



コマは「顔・表情」や「構図」、それに「ひみつ道具」などの7つのテーマに沿って選ばれていて、いずれも一般的な印刷物の2倍にあたる高解像度での撮影されました。



また単に画集としてではなく、橋本麻里さんの日本美術の視点から『ドラえもん』に迫るコラムや、漫画家の浦沢直樹氏とむぎわらしんたろう氏の対談などの読み物も収録されました。

世界へドラえもんの魅力を伝えるべく全文に英訳が付いていて、サンプルを「1コマ拡大鑑賞展」内でのショップで閲覧することができました。なお初回限定特典の「特大アートカード」などがついた「ほぼ日購入特典」付きの書籍は、4月3日よりショップで先行発売されます。


金箔や透明箔の加工をした特別ケースなど豪華本としての作りも充実していました。こうした漫画の拡大原画を収録した書籍を刊行するのは、小学館としても初めてのことだそうです。



一連の原画を所蔵する「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」についてのパネル展示も行われていました。同ミュージアムは通常、日時指定の予約制となっていますが、今回は特別に日時指定の不要なチケットが会場内で発売されています。(日時指定チケットは枚数に限りあり。)



流石に抜群の知名度と人気を誇るドラえもんだけに、グッズにも事欠きませんでした。1つ1つのコマを独立した絵画として捉えることで、ドラえもんファンや漫画ファンはもちろん、美術ファンにとっても注目したい展覧会と言えそうです。


予約は不要ですが、混雑時は時間指定の整理券制となります。最新の情報はほぼ日曜日の公式アカウント(@hobo_nichiyobi)をご覧ください。


「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」会場風景

入場は無料、撮影も可能です。4月18日まで開催されています。

「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」 ほぼ日曜日@hobo_nichiyobi
会期:2021年3月13日(土)~4月18日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料。
住所:渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO8階
交通:JR線、東急東横線・田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線・半蔵門線渋谷駅より徒歩5分。
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「こがはくde国宝VR」で楽しむ「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」

新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言のため、会期途中で打ち切りとなった「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」を、オンラインの「こがはくde国宝VR」にて鑑賞することができます。


こがはくde国宝VR(画像:古河歴史博物館特設ウェブサイトより)

これは国立文化財機構文化財活用センターの「ぶんかつ」が、国立博物館が所蔵する文化財を全国各地のミュージアムに貸し出す「貸与促進事業」の一環として古河歴史博物館にて行った展覧会で、古河藩家老を描いた国宝「鷹見泉石像」(東京国立博物館蔵)や古河出身の河鍋暁斎の絵画など地域ゆかりの貴重な作品や資料が公開されました。



当初の会期は2020年10月17日から11月23日であったものの、政府の緊急事態宣言発出によって予定通りの開催が困難となり、改めて2021年1月9日から2月7日に変更されました。



そして展覧会は1月9日に無事開幕し、国宝「鷹見泉石像」の83年ぶりの里帰りなどで注目を集めましたが、1月17日に茨城県独自の緊急事態宣言発令によって、僅か8日間の会期にて閉幕しました。

再開や会期の延長を望む声が古河歴史博物館へと寄せられたものの、年間の展示計画や作品保存の観点からも調整が付かず、再開は事実上困難な状態にありました。しかしそれでも緊急事態宣言期間が短縮される可能性もあり、作品は当初の会期最終日まで陳列した状態で残されました。


撮影とデータ確認の様子

そこで「ぶんかつ」と古河歴史博物館では、一般財団法人VR革新機構のボランティア撮影の協力を得て、「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」を3Dビュー&VR映像で撮影し、誰もがオンラインにて無料で作品を鑑賞できる「こがはくde国宝VR」を公開しました。

使い方は至って簡単です。まず「こがはくde国宝VR」にアクセスし、博物館のエントランスより床面に表示される白い◎印に沿って進むと、順に館内の画像へと切り替わり、あたかも実際に博物館へ立ち入っているような体験を得ることができます。


3Dビュー+VR映像による展示室のドールハウス表示@古河歴史博物館

また画面左下には建物アイコンと平面図アイコンがあり、それぞれクリックするとドールハウスと建物を鳥瞰した平面フロア図が表示されます。そちらから直接、任意のスポットに行くことも可能です。

「こがはくde国宝VR」を撮影したのは、国立科学博物館の「おうちで体験!かはくVR」などを手掛けた一般社団法人VR革新機構でした。これまでに同機構では40もの施設で3D+VR映像を制作していて、今回はコロナ禍の博物館・美術館応援プロジェクトとして無償で撮影していただけたとのことです。



いくつかの作品にはキャプションの部分に青緑の◎があり、クリックすると作品の画像とともに、簡単な解説や制作年代などの情報が掲載された国立文化財機構所蔵品統合検索システム「ColBase」を閲覧することができました。



一通りの作品をオンラインで鑑賞して特に印象に深かったのは、鮮やかな色彩により花鳥を描いた河鍋暁斎の「花鳥図」と、蒔絵が目映いほどに美しい「若松桜蒔絵化粧道具」でした。また桜の咲き誇る墨田川を情緒豊かに表現した奥原晴湖の「墨堤春色図屏風」も魅惑的な作品ではないでしょうか。これほどの作品を集めながらも、会期早々に中止になってしまったのは残念でなりませんが、「こがはくde国宝VR」にて会場や作品の様子を臨場感をもって楽しめました。



また作品の細部までを目の当たりにするような高精細な画像を特徴としていますが、最新のAIの技術によって画像の歪みや色を補正なども行われたそうです。

そうした「こがはくde国宝VR」の撮影時の様子や「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」の展示内容については、文化財活用センターの「ぶんかつブログ」について詳細に記されています。こちらも是非ご覧ください。

古河歴史博物館「国宝参上。」展を振り返る
幻の展覧会「国宝参上。」展 VR制作の舞台裏(前編)
幻の展覧会「国宝参上。」展 VR制作の舞台裏(後編)

コロナ禍において、全国各地の展覧会が中止や延期に追い込まれることが少なくない中、美術館や博物館では様々なオンラインでの取り組みがなされています。

「ぶんかつブログ」に古河歴史博物館の学芸員である永用俊彦さんがコメントを寄せていますが、時間や場所を問わずに楽しめるのもオンライン鑑賞の大きな特徴です。


古河歴史博物館では「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」の図版目録の通信販売も行われています。図版目録を取り寄せながらオンラインにて内容を追っていくのも、コロナ禍においての新たな鑑賞のあり方なのかもしれません。

「こがはくde国宝VR」は2022年9月30日まで(予定)公開されています。

「国宝参上。-鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財-」 古河歴史博物館@koga_city_m
会期:2021年1月9日(土)~2月7日(日) *1月17日にて臨時休館に伴い展示中止。
休館:1月12日(火)、22日(金)
時間:9:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般400(300)円、小・中・高生100円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:茨城県古河市中央町3-10-56
交通:JR線古河駅より徒歩15分。東武日光線新古河駅より徒歩20分。

注)本エントリ内の画像は文化財活用センターの許可を得て同センターブログから転載したものです。
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「佐藤可士和展」 国立新美術館

国立新美術館
「佐藤可士和展」
2021/2/3~5/10



1965年に生まれたクリエイティブデザイナーの佐藤可士和は、ユニクロやセブンイレブンなどのブランドクリエイティブディレクションを手掛けたほか、近年は日清食品関西工場といった大規模な建築プロジェクトに参加して幅広く活動してきました。

その佐藤自らがキュレーションを行い、約50件にも及ぶ各種プロジェクトを紹介する展覧会が、国立新美術館にて開催されています。


「ADVERTISING AND BEYOND」展示風景

まず「ADVERTISING AND BEYOND」では、Mr.ChildrenやMy Little LoverといったCDジャケットからPARCOのポスター、それにユニクロのショッピングバックやビールの「極生/生黒」のパッケージデザインなどが紹介されていて、とりわけ屋外ポスターに至っては発表時の巨大なスケールで展示されていました。



いずれも佐藤が広告代理店にてアートディレクターとして活動し、後にクリエイティヴスタジオ「SAMURAI」として独立した1990年代から2000年代にかけてのプロジェクトで、誰もが一度は目にしたことのあるようなデザインばかりでした。



当時、テレビやラジオ、そして新聞に雑誌が広告の主軸とされる中、佐藤は人が見るもの全てが有効なメディアになりうると考えていて、広告デザインのあり方そのものを刷新させました。


「THE LOGO」展示風景

それに続くのが佐藤が制作したロゴを紹介する「THE LOGO」でした。ここで面白いのは佐藤の趣向により、ロゴを巨大なオブジェとして見せていることで、もはやロゴによる一大インスタレーションというべき空間が広がっていました。



それらのロゴは楽天やユニクロ、セブンプレミアムなどの見慣れたものばかりで、「ADVERTISING AND BEYOND」での作品しかり、いかに日常の生活が佐藤のデザインに囲まれているのかがひしひしと感じられました。多かれ少なかれ佐藤のデザインは、日本に住む大勢の人々の暮らしに根差しつつあると言えるかもしれません。


「ロゴの設計図」

またこうした一連の巨大ロゴと合わせて10種類の詳細な設計図も展示されていて、どのようにロゴが作られているかの一端を伺うこともできました。オブジェとしてのロゴとはまた異なった印象を見せていて、あたかも緻密な集積回路を目の当たりにしているかのようでした。

企業や教育機関、さらに文化施設や地域産業など、多様なジャンルのブランディングのプロジェクトを紹介する「ICONIC BRANDING PROJECTS」も圧巻の内容だったのではないでしょうか。


「ICONIC BRANDING PROJECTS」(セブンイレブン)展示風景

そのうちセブンイレブンでは、オリジナル商品のパッケージデザインが床から天井付近までを埋め尽くすように展示されていて、膨大な商品の中へと飲み込まれるような感覚に陥りました。佐藤は棚一面に商品が並んだ状況を想定しながらデザインを考案していて、1つ1つのパッケージこそシンプルながらも、全体で揃うとセブンイレブンのデザインとして強く主張しているようにも感じられました。



それらは食品、酒、日用品、はたまたカウンターコーヒーのマシンなど多岐にわたっていて、実際にコンビニの店頭で手にとったものも1つや2つではありませんでした。


「ICONIC BRANDING PROJECTS」(カップヌードルミュージアム)展示風景

2011年に開館した「カップヌードルミュージアム」の総合プロデュースも佐藤が手掛けていて、会場では日清食品のブランディングをテーマとするインスタレーションを公開していました。



そこでは創業者の安藤百福を主人公とするアニメーションから商品企画、さらに工場の見学施設のプロデュースまでを行っていて、カップヌードルなどの商品の形をした名刺なども並んでいました。


「今治タオル ブランディングプロジェクト」

この他ではくら寿司や今治タオルのブランディングも目立っていたかもしれません。さらにスペースブランディングとしてユニクロの店舗やヤンマーミュージアムなどに関するパネル展示もありました。


「LINES / FLOW」展示風景

ラストは佐藤の2つのアートワーク、「LINES」と「FLOW」を対比したインスタレーションが公開していて、岩絵具を使ったドローイングや有田焼の陶板作品が並んでいました。



いずれも依頼者の存在するデザインの仕事とは別に制作した作品で、いわばアーティストとしての佐藤の一側面を知ることができました。


「佐藤可士和」 1975年(小学校5年生の時に制作)

こうした一連のデザインとともに、私が強く印象に残ったのは一枚の小さな色紙である「佐藤可士和」と題したコラージュでした。これは1975年、当時小学校5年生だった佐藤が手掛けた作品で、早くも現在のロゴタイプの片鱗を伺わせる面がありました。佐藤は子どもの頃から漫画の表紙やロゴ、それに標識が好きだったそうですが、ここにデザイナーとして持ち得えていた天賦の才すら表れているかもしれません。



ユニクロのTシャツブランド「UT」の販売コーナーも壮観だったのではないでしょうか。なお佐藤は個展の開催に際し、巨大な倉庫を借り上げ、展示空間と同寸の壁を立ててプランを練るほどに力を入れていて、デザイナーとして表現を生み出すことに対する執念すら感じられました。



新型コロナウイルス感染予防の観点より、オンラインでの事前予約制が導入されました。但し会期中はチケットブースにて当日有効のチケットも販売されています。


「ICONIC BRANDING PROJECTS」展示風景

私は平日の夕方に出向いたために混雑していませんでしたが、既に土曜、日曜、祝日の午後の時間帯において、当日券の予約枚数が終了している場合があるそうです。


「楽天 UNLIMITED SPACE」

今後、会期中盤以降は混み合い、事前予約分でチケットが売り切れになる可能性も考えられます。最新の情報は同展の公式アカウント(@kashiwasato2020)をご覧ください。


一部を除き、撮影も可能でした。5月10日まで開催されています。

「佐藤可士和展」@kashiwasato2020) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2021年2月3日(水)~5月10日(月)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館。2月24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
 *当面の間は夜間開館を休止。
料金:一般1700円、大学生1200円。高校生800円。中学生以下無料。
 *団体券の発売は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「中川エリカ展 JOY in Architecture」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「中川エリカ展 JOY in Architecture」
2021/1/21~3/21



1983年に東京で生まれた建築家の中川エリカは、「ヨコハマアパートメント」 (西田司/オンデザインと共同設計)」や「桃山ハウス」で賞を受賞するなどして活躍してきました。

その中川の制作を辿るのが「中川エリカ展 JOY in Architecture」で、国内外の建築模型をはじめ、チリの6都市で行われた野外什器に関するプロジェクトが紹介されていました。

まず最初のGallery1では2014年以降、中川の手がけた建築の模型やドローイングが展示されていて、いずれもが実際の設計現場で使われたものでした。


「桃山ハウス」

「桃山ハウス」は中川が西田司のオンデザインより独立してから初めて設計したデビュー作で、20分の1模型をはじめ、断面図、それに実寸大の柱の模型などが並んでいました。


「高柳邸」

このほか高柳邸や丘端の家などの住宅の模型や資料も目立っていて、建築最初期の段ボール模型や基礎まわりの模型、さらには実物のサンプルを用いた模型など、実に様々な資料が展示されていました。それこそ1つの建築が作られるプロセスを追いかけつつ、その背景にあるアイデアまでも詳らかにしているかのようでした。


「蘇州のヴィラ」

私が一連の模型で特に惹かれたのは中国・蘇州のヴィラでした。ここでは美しい曲線を描いた屋根のある建物が印象的で、風情ある水路とともに現地の街並みへと迷い込んだような雰囲気も感じられました。


「TOTOギャラリー・間」

今回の個展に際して制作したギャラリー・間の20分の1模型なども並んでいて、ギャラリーを象ったスペースの中には小さな展示物の模型までが配置されていました。これは空間の密度を検討するために作った模型とのことでしたが、模型を配置するために模型を作る取り組みそのものも興味深いのではないでしょうか。


「冬の庭」展示風景

戸外の「冬の庭」と題した展示スペースでは、スケールや材料を統一した模型が並んでいて、上には光や風をコントロールする縄屋根が吊られていました。またこれらは今回の展示に際して新たに作られた模型で、春一番などの大風に耐えるために縄屋根の強度も計算されました。


「都市スタディのオルタナティブ」展示風景

ラストの階上のGallery2で行われていたのは、チリの6都市において行われた野外什器に関するリサーチプロジェクトで、サンティアゴなどにあったジュース屋や物売り荷車、露天商の屋台などの什器模型が展示されていました。



これらは人々における居場所のあり方を検討すべく、都市の最小単位である野外什器に着目したもので、中川エリカとスタッフが2020年3月から11泊13日の日程でチリに渡って実施されました。



バーベキュー用の屋外キッチンや電柱に取り付けられた立ち飲み席、それに花壇から水飲み、さらにベンチやゴミ箱まで網羅していて、さながらチリの野外什器の見本市のような様相を呈していました。ありとあらゆる什器を集めて用途などを考察していく、考現学的な視点も垣間見えるかもしれません。



なおそのリサーチを踏まえ、国内では人工透析のクリニックのプロジェクトも進行中していて、50分の1模型が公開されていました。中川はチリにて「ひとつでありながら群、群でありながらひとつ」というアイデアを見出し、「群をつなぎながら分設する廊下の魅力を再評価したコロナ時代のクリニック」を考案しました。*「」内は解説より。


「クリニックのスタディ」

公式サイトに「中川氏が考える建築の『よろこび(JOY)』が躍動感いっぱいに展示されます。」と記されていましたが、所狭しと並ぶ建築模型を鑑賞していくと、不思議と大勢の人々で賑わう縁日を歩いているのような楽しさが感じられました。


「蘇州のヴィラ」

新型コロナウイルス感染症対策に伴い、事前予約制が導入されました。オンラインでの専用予約フォームより、入場日時(15分単位)を指定しておく必要があります。


「桃山ハウス」

緊急事態宣言下において閉館時間は17時までと短縮されました。よって最終予約時間は16時半になります。



撮影が可能です。3月21日まで開催されています。

「中川エリカ展 JOY in Architecture」 TOTOギャラリー・間
会期:2021年1月21日(木)~3月21日(日)
休館:月曜日。祝日。但し3月20日(土・祝)は開館
時間:11:00~18:00
 *緊急事態宣言下においては、開館時間を17時までに変更。
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」 国立新美術館

国立新美術館
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」
2021/1/30~3/7



文化庁の新進芸術家海外研修制度に参加したアーティストの活動を紹介する「DOMANI・明日展」は、今年で23回目を迎えました。

今回はサブタイトルを「スペースが生まれる」として、過去10年間に海外で研修を行った7人の新進作家に加え、それ以前に研修を経た竹村京・鬼頭健吾、及び袴田京太朗の計10名の作品が展示されていました。


高木大地「Window」 2018年

まずイントロダクションに続くのは1982年に岐阜で生まれ、2018年から翌年にオランダで研修した高木大地の展示で、「Window」や「The moon and trees」などと題した油彩画10点が並んでいました。


高木大地「The moon and trees」 2019年

そこにはカーテンのかかった窓や木立の中に広がる陽の光などが描かれていて、いずれも静けさに満ちていました。また具象でありつつも、単純化したような色面には抽象性も感じられて、まるで夢の中の世界を覗き込むような幻想的な雰囲気も漂っていました。


利部志穂 展示風景

それこそ展示室内のスペースも作品に取り込んだ、利部志穂のインスタレーションも魅惑的だったかもしれません。


利部志穂 展示風景

ここには小さな絵画とともに、プラスチエック製品やカフェの紙袋などが、いくつかに積み上げられたダンボールの上に載っていて、黄色や水色のチェーンによって緩やかに結ばれていました。


利部志穂 展示風景

いずれもが静止していて動かないものの、しばらく見ていると全体が循環して繋がっているようで、何らかの運動が形として表されているようにも感じられました。


大田黒衣美 展示風景

昼寝中の猫の上に、ガムの切り絵を置くことからはじまったという作品を展示した、大田黒衣美も独創的な魅力が感じられるのではないでしょうか。


大田黒衣美 展示風景

ここにはガムを模したセラミックのレリーフとともに、猫の毛の上にガムを置いた様子を捉えた写真を並べていて、手足や人を連想させる形ゆえか、ポートレートを見ているような気持ちにさせられました。


袴田京太朗 展示風景

コロナ禍の中、都内のギャラリーにおいて外から観ることだけの展示を行ったという、彫刻家の袴田京太朗の作品も興味深いものがありました。


袴田京太朗「軍神ー複製」 2019年

ほぼ全ての人型の像は壁や床の方を向いていたり、カーテンの中に頭を突っ込んでいて、1つとして鑑賞者の方を向いていませんでした。またカーテンからは自転車が出ていたり、人形が寝転びながら覗き込もうとしているものの、実際に中を見ることは叶いませんでした。


袴田京太朗「六面観音ー複製1」 2020年 ほか

それに「六面観音」などは観客の存在を無視するように手を壁へ向けて合わせていて、もはや正面から見られることを拒否しているかのようでした。


新里明士「光器」 2021年

岐阜県を拠点に活動する作家、新里明士による白磁の「光器」に思わず息をのんだのは私だけではないかもしれません。


新里明士「光器」 2020年

いずれも裂け目の入った器が絶妙なライティングによって展示されていて、器から滲み出す光や影までの全てが1つの作品として表現されていました。



この裂け目は新里が工房での失敗作を見直すべく、あえて直接ひびを入れた作品で、焼成によって時にめくれるように開いていました。新里自身も「刹那的かつ瞬間的な美しさ」と記していましたが、まさに器自身の内に秘めたエネルギーが示されているかのようでした。


新里明士「累日」 2021年

また日々、日記のように作り続けたというぐい呑みを並べた展示も魅力的で、お酒などが注がれる姿を空想しながら見入りました。少し大きめのサイズの作品もあり、料理を盛っても映えて見えるかもしれません。


鬼頭健吾「cartwheel galaxy」 2020年

2010年以降アトリエを共にし、パートナーでもある竹村京と鬼頭健吾の展示も、美術館の広いスペースを効果的に活かした内容だったかもしれません。


竹村京・鬼頭健吾 展示風景

2人の共同アトリエをイメージしたという空間には、竹村の糸や綿布を用いた作品や鬼頭のフラフープなどだけでなく、共作の「Playing Field」も並んでいて、素材や色彩を超えてのコラボレーションが実現していました。


竹村京・鬼頭健吾「Playing Field 04」 2021年

特に共作の「Playing Field 00」シリーズは、糸や繊維、それにアクリル絵具や写真のイメージが絡み合っては複雑なテクスチャーを築き上げていて、レイヤー状に積み重なった細かな表現にも魅力を感じました。


山本篤「I」、「名前を知らない鳥」 2019年〜2020年

昨年にオンラインでの「DOMANI・明日展plus online2020」で発表された山本篤の映像作品「I」を、同じく映像の「名前を知らない鳥」とともに展示室内で鑑賞することができました。なおオンライン展は3月7日まで無料にて再公開されています。改めて見るのも良さそうです。


事前予約は不要です。会期末を迎えました。3月7日まで開催されています。(会場内の撮影も可能でした。)

「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」@DOMANI_ten) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2021年1月30日(土)~3月7日(日)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)は開館し、24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
 *夜間開館は休止。
料金:一般1000円、大学生500円。高校生、18歳以下無料。
 *開催中の佐藤可士和展、および公募展のチケットの提示にて一般800円、大学生300円。
 *団体受付は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「第24回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
「第24回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」
2021/2/20~4/11



岡本太郎の精神を継承し、現代美術作家を顕彰する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」も、今年で第24回を迎えました。

今回の応募総数は、前回の452点より大幅に増えて616点でした。そのうち美術専門家を審査を得て、入選を果たした作品が、川崎市岡本太郎美術館にて公開されています。


大西芽布「レクイコロス」 岡本太郎賞

まず最高賞である岡本太郎賞に選ばれたのは、2003年生まれの大西芽布による「レクイコロス」で、グロテスクとも呼べるような人間の群像が大小様々なキャンバスへと溢れるように描かれていました。



この「レクイコロス」とは、レクイエムにコロナウイルスを合成した造語で、直接的に殺戮の場面などは見られなかったものの、それこそ死を思わせるような世界が広がっていました。大西は実際にも父の影響により、幼い頃からゾンビやホラーの外国映画に親しんでいたそうです。



大西は「人間の悲惨を作品化することに衝動を感じる」としていましたが、確かに生から死へと否応なしに追い込まれた人物の魂の叫びが発露しているかのようで、猟奇的なまでのエネルギーが渦巻いていました。またねっとりとした油彩の筆触そのものにも作家の衝動が憑依しているかのようで、大変な迫力を感じました。


モリソン小林「break on through」 岡本敏子賞

岡本敏子賞を受賞したモリソン小林の「break on through」にも魅せられました。約5メートル四方の空間には、標本植物の根が枠を突き抜けながら壁や床へと伸ばしていて、それらは他の植物と繋がっていました。



また床面からもシダを思わせる植物が生え、壁には花を咲かせた朝顔と思しき植物も蔓を巻いていて、全てが有機的に絡み合っていました。



いずれの植物も精巧に象られているため、一見するところ本物を用いたインスタレーションと思ってしまいがちですが、実際には全て金属で作られていました。何とも卓越した造形技術を駆使しているようで、にわかには金属と信じられないほどでした。


小野環「再編街」 特別賞

特別賞の小野環の「再編街」も意外な素材感からして面白い作品でした。合板の台の上には紙によって作られた建築模型が置かれていて、昭和期に日本住宅公団が建てた星型のスターハウスや、現在の鎌倉文華館である旧神奈川県立近代美術館鎌倉館などがありました。



さながらジオラマのように広がる模型そのものも魅惑的でしたが、細部に目を凝らすと、百科事典や美術全集などを素材としていることが分かりました。また元になる書籍を切り取って見せたり、本棚の並ぶ書斎、さらには彫像を製作するアトリエのような空間も作り上げていました。



戦後の日本の家庭でステータスシンボルでもあった美術全集が、多くは役目を終えて取り壊されたスターハウスなどに再構成されつつ、新たに蘇った作品と言えるのかもしれません。


金子朋樹「Undulation / 紆濤 -オオヤマツミ」

麻紙に墨や顔料などを用いた金子朋樹の「Undulation / 紆濤 -オオヤマツミ」にも心惹かれました。大型の変形屏風には高層ビルのシルエットとともに、幾重にも連なる山々が描かれていて、空にはヘリコプターや飛行船が飛びつつ、全ては白い霧に包まれているかのようでした。



はじめは屏風の表のみに絵画が描かれていると思いきや、実は裏面はおろか、展示室の壁面にも紙が連なっていて、やはり山々やビルのモチーフが浮かび上がっていました。オオツヤマツミとは古より山の神を表す言葉だそうですが、霞に包まれた幻想的な光景を目にしていると、あたかも神が息を吐いては大気を満たしているようにも感じられました。


西野壮平「別府温泉世界地図」

温泉街の別府に訪ねた旅の写真をコラージュしたのが、西野壮平の「別府温泉世界地図」でした。ここには約1ヶ月間、別府市内で撮影した2万枚もの写真を地図に則してキャンバスに貼り合わせていて、別府駅や道路をはじめ、ひしめく建物から浴場、さらには同地の看板までもが縮尺を問わずにモザイクのように広がっていました。


なかざわたかひろ「ウィズコロナの肖像」

コロナ禍における巣ごもり生活をいわば反映したとも言えるのが、なかざわたかひろの「ウィズコロナの肖像」と題する連作でした。なかざわは外出も難しい中、毎日誰か一人の肖像をイラストに描いていて、政治家やスポーツ選手、それにタレントなどの著名人のポートレートが一面に並んでいました。



当初はなかなか開幕しなかったプロ野球の選手などを描きつつ、緊急事態宣言が一度開けてからは日々のニュースに登場する人物をモチーフとしていて、なかざわがコロナ禍で何に関心を持っていたのかが明らかになると同時に、ポートレートを通して昨年の社会の動向が反映されているようにも感じられました。


東弘一郎「回転する不在」

この他では多くの自転車を素材にした東弘一郎の「回転する不在」や、街灯やテレビ、それに家具に廃材などを堆く積み上げたみなみりょうへいの「雰囲気の向こう側」も目立っていました。


みなみりょうへい「雰囲気の向こう側」

会期中に行われる入選作家によるパフォーマンスに合わせて出かけるのも面白いかもしれません。(詳細は同館WEBサイトへ)


また今回も「お気に入りを選ぼう!」として、気に入った作品を投票するコーナーが用意されていました。なお投票期間は3月21日までで、結果は3月25日にWEBサイトにて発表されます。


浮遊亭骨牌 作品風景 特別賞

屋外のシンボルタワー「母の塔」の横にも、特別賞を受賞した浮遊亭骨牌の作品が展示されていました。こちらもお見逃しなきようご注意ください。(3月20日以降、会期末までの土日の14時から17時までに限り、茶室の中を見学することができます。)



常設展示を含めて撮影も可能でした。事前予約は不要です。4月11日まで開催されています。

*一番上の写真作品は植竹雄二郎の「Self portrait」(特別賞)

「第24回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館@taromuseum
会期:2021年2月20日(土)~4月11日(日)
休館:月曜日。2月24日。
時間:9:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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2021年3月に見たい展覧会【与謝蕪村/渡辺省亭/モンドリアン展】

2月後半から関東では暖かい日も増え、河津桜が見頃を迎えるなど、幾分と春めいてきました。



3月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

【展覧会】

・「DOMANI・明日展 2021 文化庁新進芸術家海外研修制度の作家たち」 国立新美術館(1/30~3/7)
・「前田利為 春雨に真珠をみた人―前田家の近代美術コレクション」 目黒区美術館(2/13~3/21)
・「震災と未来展-東日本大震災10年」 日本科学未来館(3/6~3/28)
・「VOCA展2021 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」 上野の森美術館(3/12~3/30)
・「狩野派と土佐派 幕府・宮廷の絵師たち」 根津美術館(2/25~3/31)
・「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」 ポーラ美術館(11/14~2021/4/4)
・「川合玉堂」 山種美術館(2/6~4/4)
・「20世紀のポスター 図像と文字の風景」 東京都庭園美術館(1/30~4/11)
・「没後70年 南薫造」 東京ステーションギャラリー(2/20~4/11)
・「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」 練馬区立美術館(2/28~4/18)
・「特集展示 アイヌ文化へのまなざし―N.G.マンローの写真コレクションを中心に」 国立歴史民俗博物館(12/22~2021/5/9)
・「3.11とアーティスト:10年目の想像展」 水戸芸術館(2/20~5/9)
・「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」 アーティゾン美術館(2/13~5/9)
・「澤田知子 狐の嫁いり」 東京都写真美術館(3/2~5/9)
・「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」 府中市美術館(3/13~5/9)
・「佐藤可士和展」 国立新美術館(2/3~5/10)
・「あやしい絵展」 東京国立近代美術館(3/23~5/16)
・「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」 東京藝術大学大学美術館(3/27~5/23)
・「テート美術館所蔵 コンスタブル展」 三菱一号館美術館(2/20~5/30)
・「まちへ出よう展 ~それは水の波紋から始まった」 ワタリウム美術館(2/7~6/6)
・「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」 SOMPO美術館(3/23〜6/6)
・「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年」 国立科学博物館(3/9~6/13)
・「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」 世田谷美術館(3/20~6/20)
・「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在/ライゾマティクス_マルティプレックス」 東京都現代美術館(3/20~6/20)

【ギャラリー】

・「中川エリカ展 JOY in Architecture」 TOTOギャラリー・間(1/21~3/21)
・「堀浩哉展 触れながら開いて」 ミヅマアートギャラリー(2/24〜3/27)
・「土屋仁応 キメラ」 メグミオギタギャラリー(3/2〜3.27)
・「佐藤倫子写真展 creative snap」 ザ・ギンザ スペース(3/1〜28)
・「川内倫子展 M/E」 三越コンテンポラリーギャラリー(3/17~3/29)
・「さわひらき個展『/home』」 オオタファインアーツ(2/20〜4/3)
・「柳幸典 Wandering Position 1988 - 2021」  ANOMALY(3/6〜4/3)
・「大庭大介 絵画−現象の深度」 SCAI THE BATHHOUSE(3/9〜4/3)
・「山本晶:Playing with Maps」 アートフロントギャラリー(3/12〜4/4)
・「ドラえもん1コマ拡大鑑賞展」 ほぼ日曜日(3/13〜4/18)
・「アネケ・ヒーマン&クミ・ヒロイ、潮田 登久子、片山 真理、春木 麻衣子、細倉 真弓、そして、あなたの視点」 資生堂ギャラリー(1/16~4/18)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2021―自動と構成」 ポーラ ミュージアム アネックス(3/18~4/18)
・「木村裕治展 落穂を拾う」 クリエイションギャラリーG8(3/23〜4/24)
・「2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」 GYRE GALLERY (2/19~4/25)
・「三好耕三作品展:SHASHIN 写真」 キヤノンギャラリーS(3/22~4/28)

まずは日本美術です。恒例の江戸絵画まつりの季節がやって来ました。府中市美術館にて「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」が開催されます。



「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」@府中市美術館(3/13~5/9)

今回の展示では与謝蕪村の制作を「ぎこちなさ」に着目して振り返っていて、国宝1点と重要文化財10点を含む、約100点の作品が公開されます。なお府中の春の江戸絵画まつりで一人の画家の回顧展を開催するのは、2008年の亜欧堂田善以来のことだそうです。


長らく一般に知られてこなかった幻の金屏風とされる、「山水図屏風」などの貴重な作品も出展されます。前後期で大幅に作品の入れ替えがありますが、前期チケットを購入すると2度目が半額になる割引券がついてきます。両会期を合わせて追いかけたいところです。

続いても日本美術です。東京藝術大学大学美術館にて「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」が行われます。



「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」@東京藝術大学大学美術館(3/27~5/23)

明治から大正にかけて活動した渡辺省亭は、パリ万博への出品を通して海外では評価を得たものの、国内では画壇から離れていたからか、必ずしも良く知られた画家とは言えませんでした。その省亭の画業の全貌を里帰り作品を含めて検証するもので、国内の美術館としては初めての回顧展となります。


省亭は2017年に加島美術にて「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」が開催された上、同時に山種美術館や松岡美術館などでも作品が展示されるなど、近年、再評価の機運が高まってきました。また2018年にも同じく加島美術にて「SEITEIリターンズ!!〜渡邊省亭展〜」が開かれました。

公式サイトに「次はこれだ!」とのキャッチコピーが記されていますが、ともすれば人気を決定づける機会となるかもしれません。

ラストは西洋美術です。オランダに生まれて抽象表現を切り開いた画家、ピート・モンドリアンの回顧展が、SOMPO美術館にて開かれます。



「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」@SOMPO美術館(3/23〜6/6)


これはオランダのデン・ハーグ美術館のモンドリアンコレクション50点と、国内外の美術館のモンドリアン作品と関連の作品20点を紹介するもので、初期の風景画から晩年の抽象画へと至るプロセスを辿っていきます。国内でのモンドリアン展は実に23年ぶりのことでもあります。

ところで2004年9月にはじめたブログが、今年の2月5日をもって開設6000日を迎えました。これほど長きに渡ってブログが続いたのも、全ては読んでくださる皆さまのおかげです。本当にどうもありがとうございます。

今後ともマイペースで更新を続けたいと思いますので、変わらずに「はろるど」をどうぞよろしくお願い致します。
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